次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く   作:ウィングゼロ

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ハジメ&すずかサイドストーリー

 

 

「……よし、これでこの部品は完成。あとは」

「南雲くん…いる?」

「あっ、月村さん。開いてるよ」

 

そういって扉が開くと月村さんが馴れた表情で入ってくる。

お邪魔しますと軽く笑みを浮かべて手の指を軽くもじもじと恥じらっているのを見ると少し悩殺してきてない?っと疑いたくもなるのもしばしば…

 

そんな中、僕はというと椅子に座って机に置かれている自作した物を見ている。

月村さんも間近に近づいてきてその部品を見ると柔やかな笑みを浮かべる。

 

「凄いよ!南雲くん!確りと出来てるよ!」

「あはは、ありがとう月村さん…」

 

完成している出来を見て素直に賞賛してくれる月村さんに照れる。

 

「でもあくまで部品だから完成品ってわけじゃないんだよ?」

 

喜ばれるのは嬉しいがまだまだ完成品ではない。

今作ったのはその完成させる物のあくまで一部分。

完成まではまだまだ道程も遠い。

 

「それでもだよ。きっちり設計図まで作ってるし、南雲くんって物作りの才能に恵まれてるよ」 

 

月村さんに誉められ、ありがとうっと言葉を返し僕は机に置いていたステータスプレートに目を移す。

 

 

――――――――――――――

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:11

 

天職:錬成師

 

筋力:20

 

体力:20

 

耐性:20

 

敏捷:20

 

魔力:20

 

魔耐:20

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+複製錬成][+圧縮錬成]・言語理解

 

 

――――――――――――――

 

僕のレベルは既に二桁に入ったというのにやはり小刻みにステータスが上がっていくだけで他のみんなとは明らかに劣っている…しかし錬成においてだけ派生形が付いて凄まじいことになってる。

 

ここまで来ると錬成師らしく支援に徹するべきだろうけど……無理だろうな… 恐らく天之河くんが認めないだろう。

そんなことを考えて机の上を見る僕。これが完成すれば少なくとも弱い僕でもまともに戦うことができるだろうと…

いつか来る戦いに備え完成させなければならないのだが……此処で問題が発生している。

極めて……重要な案件だ…

 

「月村さん…」

「南雲くん?どうしたの?そんな深刻な顔をして…」

「実は…」

 

 

……

 

「南雲くん、この鉱石とかどうかな?」

「……確かに、質も良いし強度も申し分ないけど……これをフレームに使うとなるとね……」

 

商店が立ち並ぶ王国の大通り、そこは人間族の象徴とも言える神山があることから様々な代物が取りそろえられていて……此処でなら目当ての鉱石も見つかるかも知れない。

と思っていたがそう簡単ではなかった。

どれもこれも一般的な物ばかりでレアな鉱石はなかった。

そこそこ良い鉱石もあるんだけど今作ろうとしているもののスペックを考えるとそれでも物足りないのだ。

 

「はぁ、何とか王宮から出て良い鉱石がないか探してみたけど全然ないな」

 

これじゃあ駄目だ。

みんな正人くんを助けるために動き出しているのに僕だけこんな所で頓挫しているようでは付いていくことなんて……

 

「南雲くん?どうしたの?」

 

落ち込んでいると僕の表情に気がついた月村さんが下から覗くように僕を見上げる。

 

「ご、ごめん心配させちゃって……このままじゃ駄目なのに」

「ううん、私達こそ無茶なこと言ってるって自覚してるし……」

 

無理は承知だと自覚している月村さんは申し訳ない表情で問い掛ける。

今錬成で制作している武器の素材となる鉱石が底をつき。今の作っている武器に見合う鉱石を探しにこうして街まで繰り出しているのだ。

普通に王国に貯蔵されている鉱石などを使ってするべきなんだろうけど……王国の重鎮の殆どから軽視されていて僕が使うことは不可能。となればこういった露店の掘り出し物でいいものを自ら調達する以外に道はなかった。

 

(でもやっぱりいいものはないよな……)

 

色々と見て回ったけどそれでも僕が求めているレベルの鉱石は見つからなかった。

 

「どうしよう。質は落ちるけど手頃の鉱石で済ませるしかないのかな?」

「もう少し探してみない?あ、あそこの露店はどうかな?」

 

そう言われて月村さんが指さした方向に視線を向けると露店の一角……さっきまでそこには露店はなかったはずだけど今はカーペットが敷かれ扱っている商品が立ち並んでいる。

 

一目見ただけでも他のお店とは見たこともない鉱石を取り扱っているのがわかる。

 

「いらっしゃい」

 

そんな商品に釘付けになっていると露天の店員が声をかけてくる。

中々低い男性の声で一度顔を上げるとすぐに視線はその男性に釘付けになった。

一回りもでかい巨漢でドレットヘアーにサングラスと明らかに一目見ればヤが付くやばい職業の人だと思ってしまうほどの風格があり僕は視線がその人に向けられて固まるのは仕方ないことだ。

 

「え、えっと……」

 

何か話さないと僕は怖じ気づく感情を抑えながら話そうとするが上手く声にでない中、横にいる月村さんが至って普通に話し始める。

 

「あの、硬度の高い貴重な鉱石を探してるんですけどありませんか?」

 

月村さんってやっぱりこういう風な人達とも元の世界で交流とかあったのかな……

そう思えるほどに普段通りの喋っている月村さんを傍らに眺めていると屋台の奥から巨漢と似た服装を着る飄々としたサングラスを掛けた男性がやってくる。

 

「レオ、もうちょう愛嬌良くしいひんとお客逃げてまうやろ?」

「俺に押しつけておいてよく言う。そこまで言うならば、ゼノお前が変われ」

「ゼノは胡散臭いと思われるからゼノもレオもどっちもどっちだと思うけど」

 

巨漢の人……レオと呼ばれた人はやってきたゼノと呼ばれた男性に店番にそこまで言うなら替われといったけど奥の方にいた少女が二人のことを知っているからこそどっちもどっちだと言い切り二人とも図星なのか言い返せない。

 

「でも、レオの強面を前にして普通に話してるのは普通に驚いた。肝が据わってるねお姉さん」

「え?そうかな?」

「それはワイも思うたで、それで確か硬度の高いレアな鉱石やったなちょうまっとき」

 

そういってゼノと呼ばれた男性は露天の奥に向かい、荷物の中を探しはじめる。

これは期待できるかな?と思った矢先、横からの響く声に視線を向けるとなにやら警邏隊の騎士が何名か巡回しているのがわかる。

 

「あれ?巡回してるのかな?」

「うーん、露天だし。無許可で売買してる可能性があるから」

 

警邏隊を見て月村さんの呟きに僕は思ったことを口にして月村さんは確かにと納得する表情を見せ、今いる露天を見るとレオと呼ばれた人が腕を組み警邏隊を見ていて少女はそんなことお構いなしに平然としている。

 

「……こっち来るね」

「ああ」

 

そうしていると警邏隊は僕達のいる露天までやってきて先頭にいた騎士が露天の店員であるレオに話しかける。勿論見た瞬間怖じ気づいていたが話しかけた。

 

「ステータスプレートと商売権利証の提示を」

 

そう促すとレオと呼ばれた巨漢が露天の奥から商売権利証とステータスプレートを手渡すとそれに続くようにレオと呼ばれた男性と少女もステータスプレートを見せる。

 

「……確かにステータスプレートもこちらで管理している一覧と一致しています。権利証も偽造された形跡はありません」

 

お返ししますと問題ないことを確認すると何事もなく返されて、次の露店に行くと思いきや今度はこちらに顔を向けてくる。

 

「申し訳ないがあなた方もステータスプレートの提示をよろしいですか?」

「ええっ!?」

 

そのまま露店に行かないの!?と内心で思った僕は取り乱すとそれが怪しいと思われたのか警邏隊も僕を警戒して自然な形で取り囲み始め、僕と月村さんは直ぐにステータスプレートを見せるとそれを見た警邏隊の人は顔を青くしその場で土下座した。

 

「し、使徒様!?も、申し訳ございません!ま、まさか使徒様だとは知らず」

 

大声で僕達のことを使徒だと言い放ったことにより周りからの視線は僕達に集中する。

 

(最悪だ)

 

今回の件は勿論お忍びで来たから周りから見れば僕達はお店の商品を買いに来たお客にしか見えなかったのにこれでは買い物という話ではない。

 

どうしようと内心で焦り始める中、口を開けたのは思わぬ人物だった。

 

「……神の使徒か……それにしては可笑しいと思うがな……」 

「そだね。その人達って王宮に住んでるはずだからこんな露店にわざわざ買い出しに来るより、王宮にある鉱石を使うはずだしね」

「まあ、なんや……顔が似とって名前も似とったら咄嗟に見たら驚くのもしゃないわな」

 

そういって僕達を神の使徒ではなく似ている他人と擁護してくれた露店の店員達。それを聞いていた周りも何だ他人かと興味が無くなったのか集中していた視線が飛散し警邏隊も確かにそうだなと何処か無理矢理納得している表情を見せる。

 

その後、警邏隊はこの場から去っていき離れたのを確認して店員は僕らに鉱石を見せる。

 

「ほれ、これなんてどうや?此処じゃあんま出回ってない代物やと思うで」

 

そういって見せてくれたのはほかの店では見たこともない頑丈そうな鉱石。僕はその鉱石を一度手に持つと鑑定スキルで鑑定すると申し分ないほどに高性能な鉱石であることがわかった。

 

「どう?南雲くん」

「うん、この鉱石なら問題ないよ」

「そっか!それじゃあこれでいいよね。この鉱石を……」

 

そういって月村さんが手持ちのお金を出して買える分だけ購入しようとお金を渡す。

恐らくかなりのレアものだから買えても数個だろう。と思っていたがそれとは裏腹にその鉱石が入った木箱一つを僕らの前に置いた。

 

「え?こんなに……」

「別に構わんよ。坊主らが何かのためにこないな露天まで来とるちゅうことはそれほど大変なことをしようとしとるんやろ?やったらまけたるさかい。これだけ持ってき」

「ありがとうございます!」

「なんやったらこれからも贔屓してくれると助かるわ」

 

数個なら不安だったけどこれだけあればと笑みを浮かべお礼を言う僕に対してしれっとまた買いに来るように催促するところを見れば抜け目がなかった。

 

それから僕らは鉱石の入った木箱を何とか王宮まで持っていき(その過程で何度か疲れて月村さんにも手伝ってもらった)休憩した後直ぐに僕は製作作業に取り組む。

 

そして試行錯誤して数日が経過し……

 

「で、出来た」

「やったね!南雲くん!!」

 

僕の部屋で作り続けていた物が漸く完成したことに歓喜して呟き傍らにいた月村さんも完成したことで僕を誉めてくれる。

 

「けど、まだ確りと使えるか試さないと」

 

完成はしたけど実際に扱い設計通りに動くかのテストをして問題なければ晴れて完成と呼べる。

 

「南雲くんが一生懸命作り上げたものだもん。絶対に大丈夫だよ」

「月村さん……ありがとう。きっと月村さんが居なかったらこれの完成までたどり着けなかったと思う」

 

これで僕も……!と漸く足手まといからは脱したと実感する僕は月村さんと一緒に訓練所に向かっていく。

 

 

 


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