次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く 作:ウィングゼロ
「くっ!」
後方に飛んだアリサは後退りながらも水蒸気の霧の中から出て来る天ノ河の一太刀を大剣で防ぐが力の差で押し切られる。
「これで勝負あったな。」
「まだ、終わってないわよ!」
「アリサちゃん!」
既に勝ったと断言する天ノ河に苛立ちを募らせながら大剣を振るい天ノ河と打ち込む中。後方からすずかが声を上げ、それを合図にアリサは後方に飛ぶと空から氷の雨が天ノ河に向かって降り注ぐ。
「なっ!?」
「聖絶!!」
降り注ぐ氷雨に戸惑うが後方に待機していた鈴が唱えた聖絶のバリアにより天ノ河は守られ氷雨が振り終えた後。聖絶のバリアも解除される。
「流石は結界師ね……香織の聖絶より強度が堅いわ。すずかの二人の調子は?」
「うん、もうすぐ終わるはずだよ」
「よし、じゃあそれまであのバカの視線を……」
そう意を決したアリサは天ノ河がいる方向へと突撃し再び切り結ぶ。
何故このような状況に発展しているのかそれは数時間前に遡る。
香織が正人救出パーティーに加わって二週間が過ぎた。
各々が正人を助けて自身達の意思を示すために力を付け今日も訓練所でアリサとすずかが訓練していたがアリサの表情には物足りなさ感が漂っていた。
「やっぱり……このまま訓練だけで追いつけるわけないわよね」
「そうだね……」
アリサに言われてすずかも訓練だけでは追いつけない。実戦を重ねていくことに同意する。
「やっぱりまた行かないとね……オルクス大迷宮に」
「……アリサちゃん」
そう呟くアリサの脳裏にはベヒモスやナハトの分身体との激闘を思い浮かべて俯き、その心中を察したすずかが呟くがそれをアリサの近場にいた彼の耳にも聞こえてしまった。
「ちょっと待つんだバニングスさん」
「げっ……天ノ河」
「今、大迷宮がどうかって聞こえた気がするんだが…」
気のせいかな?っと爽やかフェイスでアリサ達に語りかけてくる天ノ河に二人とも嫌な顔で言葉を返した。
「別にあんたの気にすることじゃないでしょ?」
「そんなわけないじゃないか。仲間のことをほったらかしになんて俺は絶対しない」
誰が仲間よ。誰がとアリサは更に嫌な顔をして天ノ河を見ているとこのまま平行線になるのも嫌だったアリサは思い切って話す。
「……はぁ……訓練だけじゃ物足りなくなってきたからオルクス大迷宮に行きたいって行ったのよ」
「そうだったのか。確かに今の俺達なら絶対に大丈夫だからな!なら……」
「ごめん。言い方が悪かったわ。私のパーティーだけでオルクス大迷宮に行きたいの」
誤解されるのも嫌だったアリサはきっぱりとアリサ達だけで向かいたいことを伝えるとそれを認識するまでに少し口を閉ざしたが直ぐにアリサに向けて言い放つ。
「駄目だ!何を考えているんだ!そんなこと俺は絶対に認めないぞ!」
「いや、あんたの許可なんて要らないでしょ」
そんな言葉を言い放つ天ノ河にアリサは予測できていたからか少し頭を抱えて反論する。
それからも二人は言い争いをするのだがそこにメルドが来てこの場を収めるために二人にこう告げた。
ならばお互いのパーティで決闘すればいいのではないか?
そのメルドの一言に二つ返事で二人とも同意し時間を空けてアリサパーティと天ノ河パーティの決闘が行われることになった。
暫くして決闘の噂を聞きつけてきたクラスメイトや同転移者。王宮住まいの騎士やメイドなどが集まり始め訓練所の両端には各々のパーティメンバーが集まっていた。
「さてと、香織も南雲もごめんねいきなりこんなことになって」
「私は別に構わないよ。どちみちこうなるんじゃないかなって予想していたから」
だから気にしないでといつもと変わりない笑顔でアリサの独断を許すとそのことにアリサもお礼を言い次にハジメの方に顔を向ける
「僕も別に良いよ。それとメルド団長にはもう言ったけど、この決闘に勝てば僕達は天ノ河くん達より先に大迷宮に挑戦できる。パーティ戦にしたのもそのことがあったからだと思うし」
他にも色々了承もらったよ。と他にもメルドに相談してきたのかハジメはそのことをみんなに伝え、考えている作戦も説明し始めた。
その頃一方訓練所の周りに居る観客勢の中に優花がいた。
優花の周りには親友の菅原妙子、宮崎奈々など、同じパーティだったメンバーが揃って訓練所を眺めていた。
「……大丈夫かしらアリサ達」
いきなり天ノ河のパーティと決闘するという話を聞いて飛び出してきた優花。アリサ達の心配をする中。妙子達はというと天ノ河たちと戦おうとするアリサ達にどうしてと疑問を感じていた。
どうして戦おうとするのか、メンバーから見ても勝てる要素なんて皆無に等しいというのに。そんな気持ちで見ていると優花はそんな様子の妙子達に気づき口を開いた。
「アリサ達だってバカじゃないし、始めから負けるって分かって決闘なんてしない。」
「優花っち凄い自信だよね」
「それはまあ、アリサ達とは付き合い長いからね」
そう言いつつもあの夜のことを思い出す。
アリサ達は正人を助け出す。その目的のために強くなろうとしている。
だからこそこの戦いは譲れない一戦、アリサ達から感じられる意気に優花は頑張れと口には出さないがアリサ達に応援を送ると園部さんとここ最近になって交流が出来た少年の声に顔を向けると後続転移者である一夏と榛名、永和。そしてそれに付き添うように水色の入った白銀のメイドもやってきた。
「一夏くん達も来たのね」
「はい。アリサさん達が決闘するって聞いたから居ても立ってもいられなくて」
まだ始まってなくて良かったと後学のために始めから見学が出来て良かったとほっとする一夏。ほっとしたらちょっと喉が渇いたなと急ぎで来たからか飲み物が欲しくなったと呟くとそれにすかさず反応したのは付き添っていたメイドだった。
「今お飲み物をお持ちしますね。一夏様。あ、他の使徒の皆様も……何か必要なものがあれば……私にお命じください」
そうメイドは恐る恐るといったあまり初対面な人達と話すのに抵抗があるように奈々達と言った関わりのない人間にはまだ歯切れが悪かった。
そんな彼女にあまり刺激しないように飲み物を注文した後。畏まりましたと礼儀正しい作法で一夏達の前から離れていくメイド。
それを見た奈々達は優花に顔を向けてあのメイドについて話を聞く。
「優花っち、あんな小さなメイドっていたっけ?」
「え?ああ奈々も妙子も知らないわよね。ユーリ・イーグレットっていって私達がここに来てからお姉さんと一緒にこの王宮に住み込みで仕事させてもらってるんだって」
「今は私やいっくんに榛名ちゃんの側付きメイドとして一緒に居ることが多いんだ。ユーリちゃん少し取り乱したりすることもあるけどお仕事も確りこなせる良い子だよ」
そう優花の言った言葉に補足する形で永和は笑みを浮かべながらユーリのことを話す永和。一夏や榛名とは同い年で直ぐに打ち解けたこともあり永和とも親しかった。
そんなユーリのことを誉める永和の前に笑みを浮かべながら近付いてくるミント髪のメイド。
「ふふ、それは姉として微笑ましい限りですね」
「え?あなたは?」
「先程、話に出てきたユーリの姉。ミュゼ・イーグレットと申します。一夏様や榛名様、ユーリと関わりのある他の使徒の方々のことは毎晩ユーリから聞き及んでいます」
優花の問に答えると共にメイド服の裾を少しつまみ上げお辞儀するミュゼと呼ばれたメイド。
まさかユーリのことを話していた直後に姉であるミュゼがここに来るなんて思いもしなかった一夏達は少し驚いているとミュゼは何処か面白そうに一夏を見つめてくすりと笑みを笑みをこぼす。
「なるほど。これはユーリの言ったとおりですね。」
「え?俺に何か……」
「ユーリは一夏様のことを想っているようですから」
「ええ!?」
「い、一夏くん!?」
ミュゼの言葉に優花達の視線はいきなりそんなことを言われて戸惑う一夏に向けられ、一夏のことを想っている榛名は少し声を荒げて一夏の名前を呼ぶ。
そんな一夏を玉井達優花パーティの男子組は「くそ!幼馴染みの次は同年代のメイドかよ!」と異性に好かれている一夏に対して嫉妬の視線と恨み言を言い優花達女性陣に冷ややかな目で見られる中。ミュゼの話は終わらない。
「はい。それはもう身も心も全て捧げたいぐらい一夏様のことを……「ミュゼお姉様!?」あらあら」
ユーリがどれだけ一夏に対して好意的なのかということを笑みを浮かべて淡々と語るミュゼの前に飲み物を準備し終えたユーリが取り乱しながら帰ってくる。
「お姉様は皆様にどうしてそのことをお話しするのですか!?」
「使徒の皆様方に姉としてユーリのことをもっと知っていていただけると思ったからです。ユーリはそういうことに関しては奥手ですから♪」
楽しげにユーリのことを指摘するミュゼにユーリは的確な指摘だったから何も言えず。
固唾を呑む中、周囲の歓声が響き渡り。遂に決闘が始まろうとしていることに優花達は気付いた。
「もう始まるみたい」
優花達一同は視線を訓練所の方に向け、そして審判役のメルドの号令と共に今後を左右する決闘が始まった。