次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く   作:ウィングゼロ

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30話

「さてと、これぐらいで良いかしら」

 

荷物を大きめなリュックに詰め込み一息つくアリサ。

何か忘れているものはないかとこまめにチェックして、問題ないと分かると漸く肩の荷が下りたのか、割り当てられている部屋のベッドに倒れ込む。

少し休憩と体を少し休ませていると、コンコンとノックする音が鳴り響いて、体を起こして誰?と呼びかける。

 

「アリサ。私だけど」

「優花?開いてるから入ってきていいわよ」

 

ノックしたのが優花だったために、アリサは優花を入れる。入ってきた優花も纏まった荷物を見て、旅支度がもう終わったことを察する。

 

「もう、準備できたんだ」

「まあね。明日にはここから出てホルアドに行くことになるわ」

「そっか……」

「大丈夫よ。必ず強くなって戻ってくる。そんでもって正人も取り戻す。それに……確りとお礼をしたいんでしょ?」

 

何処か心配の表情を見せる優花にアリサは大丈夫と言って、改めて正人を取り戻すと決意の言葉を告げる。

付け足すように片目でウィンクしながら優花を茶化すと、顔を赤くして「ち、違うわよ。べつにそんな……」と動揺しながら否定したものの、俯いてぶつぶつ呟き出す

 

オルクスの檜山が引き起こした事件の時、正人によって九死に一生を得た優花。戻ったらお礼をしようと意気込んでいたが、当の正人はナハトによって体を乗っ取られ、優花達の前から姿を消してしまい、結局お礼すらできなかった。

その後、アインスから正人の事情を聞かされ、自分を責める正人の悪夢に精神を摩耗したりもした。漸く落ち着いた時、自分は正人に対して何ができるだろうと思った。

最早、お礼の言葉を言うだけでは収まらないほどに正人に助けられた優花は、正人のことを考えれば長考するほどになっていた。本人はまだ自覚はないが、優花と行動する奈々や妙子、アリサ達なんかはそのことについて「これは堕ちてるわ」と察している。

 

 

それから暫く話し込み会話に花を咲かせていると、ふと今の時間を確認した優花が短い声を漏らす。

 

「もうこんな時間。ごめんアリサ、もうすぐあたし達訓練の時間だから」

「ええ、優花達も頑張りなさいよ」

 

この数日間、前に進んだのはアリサ達だけではない。

オルクスの大迷宮以来、武器を持つことすら躊躇っていた優花達もまた、訓練を受けるようになっていた。

優花達が何故そうするようになったか。それは数日前のアリサ達の……ハジメの戦いぶりを見てだった。

錬成師、非戦闘職と舐めていたハジメが、天ノ河達の決闘では錬成師ならではの戦いぶりで勝利に貢献した。

 

そんなハジメを見て、閉じこもり何もしない自分達と比較して恥ずかしくもなった。

だから少しでも頑張ろうと、自衛のためということで、優花達は再び訓練を受けることにした。

 

(着実にあんたの元へ近付いてる。待ってなさい正人。必ずあんたを助け出して見せるから!)

 

 

 

「うーん。ダンジョンに挑む道具はこれぐらいかな?」

「そうだね。まだお金はあるから、欲しいものは買っておいた方がいいかも」

 

王宮内でアリサが心の中で正人の救出を意気込む中、王都の城下町ではすずかとハジメが冒険に役に立つアイテムを買いそろえており。購入したものを見て、これで充分かな?と呟くハジメに、すずかは王宮が用意した軍資金はまだ残っていることから、役に立ちそうなものを購入しておこうとハジメに薦める。

周囲から見ればさながら恋人が買い物しているように見えるが、当の二人はあまりそう言った自覚がない。

そんな二人が店の並ぶ城下町を歩いていると少し遠くに見慣れた露店が見える

「あ、あのお店」

「覗いてみようか」

 

二人はその露店を見て立ち寄ることにして、近付いてみると並べられている商品は少なく、荷物も何処となく纏まっている様子がうかがえる中、露店の絨毯の上で猫のように丸くなり、眠っている銀髪の少女の姿

幾ら何でも無防備過ぎないかと、露店で寝ている少女を見て苦笑いを浮かべる二人。そんな二人の視線に気づいたのか、少女は閉じていた目を開けて寝ていた体を起こして、背筋を伸ばし少しぼうっとしてからハジメ達に顔を向け。

 

「いらっしゃいませ」

 

と、ふわふわと寝起きな声で来店しているハジメ達に声をかけ、それを聞いて、二人とも心の中で相変わらずだなと呟く。

 

「二人ともまた来たんだ」

「うん。買い物ついでにね。所でお店に並んでるものが少ないけど」

「そのことか……別に明日ぐらいに此処でのお店も閉めて、別の所に行くから」

 

だから、並べてる商品も少ないと少女は付け加えて言うと、ハジメ達も納得し、その反面で何処か寂しい気持ちにもなった。

 

他でも買えない鉱石などが此処に色々並んでいて、ハジメは他の店など気にせずに一目散に向かうほどに常連客になってしまった。

だからこそ、店員である少女や強面の男性、何処か抜け目のない飄々とした男性とも会えなくなる寂しさがあった。

 

「……寂しいの?」

「え?いやその……」

「ふーん、そうなんだ」

 

ハジメの顔を見て少女はハジメの心中を言い当てると、慌てるハジメは言葉を詰まらせるなか、少女は笑みを浮かべてハジメの反応を見て楽しんでいる。

 

 

「おお、なんや来とったんやな。ボン」

「小僧にツキムラも一緒か」

 

そんな中、色々旅支度のために物資を買っていたであろう荷物を持つ男性二人が帰ってきて、露店の前にいる

ハジメ達を見て声をかける。それから暫く他愛のない話が続き。そろそろ戻ろうとした時、少女に呼び止めれる

 

 

「待って」

「どうかしたの?」

「これ」

 

そういってハジメに渡されたのは、正方形の形をした箱。

「何だろう、開けていい?」とハジメは少女に答えたが、少女は首を横に振り「帰ってから見て」と忠告する。 

親しくなったことから危険なものではないだろうと判断したハジメは、少女の忠告に頷く。

それから店から離れ、夕方頃に王宮に戻ってきて箱の中身を確認したのだが、中には信じられないものが入っていて、次の日城下町に向かったのだが、彼らは既にこの街からいなくなっていた。

 

その日の夜。

月が雲に隠れ王都が魔法の明かりに照らされる中、王宮の一室では3人の少女が談笑していた。

 

「明日から香織とは暫く会えなくなってしまうのね」

「明日の朝にはここを出て、ホルアドで一泊してから迷宮に入るだったわね」

「うん、また大迷宮に潜ることになるから。大丈夫だよリリィ。強くなって戻ってくるから」

 

そういってキングサイズのベッドの上で座るパジャマ姿の香織と雫。そしてこの国の王女であるリリアーナ・S・B・ハイリヒ。通称リリィ

香織と雫は元から親友の間柄だが、リリィに関してはこの世界に来てからの仲。

召喚初日の晩餐会で話し合ってから交流を重ね直ぐに仲良くなった。

 

「……香織、本当にごめんなさい。元々、私達の問題だというのに」

 

香織の強くなるという言葉に、リリィは俯き謝罪の言葉を述べる。

元々リリィは勇者召喚で勇者が召喚されることを良く思っていなかった。

何処ぞの分からない異邦人という侮蔑の意味合いではなく。単にこちらの身勝手な理由で呼び出される罪悪感から。

本来ならこの世界の住人であるリリィ達がどうにかしなければならないことを、見ず知らずでこちらの事情など知らない香織達を巻き込んだことを後ろめたく思っていた。

 

「そんなに気にしないでリリィ。自分で決めたことだから」

「ありがとう香織……その言葉だけでも少し気が軽くなったわ」

 

そんなリリィに対して、香織は押しつけられたことではなく自分の意思だとはっきりと告げると、リリィはその言葉でのしかかっていた重みが少し軽くなる。

 

それから他愛もない談笑を交わす三人だが、気づけば雫は横になって眠っていた。

 

「雫?眠ってしまってますね」

「雫ちゃん。訓練が厳しくなってたから疲れてたのかも。」

 

眠ってしまっていた雫に気づき、反応する二人。

香織は眠ってしまった原因は、訓練が今まで以上に厳しくなったことからのものだろうと指摘する。

あの決闘以降、訓練内容はかなり厳しいものになった。

決闘で見せた天ノ河の単独行動に無茶苦茶な戦略。流石のメルドも頭を抱え、戦いが何たるかということを教えるために、心を鬼にして鞭を取った。

完全にとばっちりを受けたことで、雫の心労を更に増えたのは言うまでもなく。香織もケアのために一緒にショッピングに出かけたりと気を利かせていた。

 

「香織も朝が早いみたいだからもう眠りましょう」

「うん、そうだね」

 

雫も寝てしまったため、香織の旅立ちのことも考えて自分達も眠ろうと提案するリリィに香織も頷くと、そのまま体を寝かせて雫に続くように川の字で眠りに落ちた。

 

そうして旅立ちの前日が終わり、翌日香織達はオルクスへと旅立った。

 

 

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