次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く 作:ウィングゼロ
オルクス大迷宮……
遙か昔から存在する7大迷宮の一つにして、王国や冒険者から訓練として扱われることが多い。
そんなオルクスに先月、王国に召喚された勇者達が訓練のために入ったが、結果は王国の騎士が一人を残して全滅し、神の使徒の一人が行方知れずになるという悲惨なものだった。
このことから、神の使徒からはオルクス大迷宮に関して、名を聞くだけで震えが止まらなくなる者も存在するほどに、彼らにとってはオルクス大迷宮は畏怖の存在だった。
だがそんな大迷宮にアリサ達は臆することなく挑む。胸の奥に決めた友人を助け出すために……
そんなアリサ達がオルクス大迷宮に潜って数日が経ち……彼女達は64層に到達していた。
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SIDE香織
「…………」
「香織」
漸くここまでたどり着いた。
64層……あの日私達は生き残るために上がっていった。
あの時も私は足手纏いで、何もできずにただ身を顧みなかった正人くんの背中を見ていることしかできなかった。
でも今は違う。正人くんを取り戻すためにここまで来た。強くなるために……
そんな思いを胸に秘めながら、私は休息を取っている場所から少し離れた所にある大穴を見下ろす。
もうこの下はあの時の場所……あの時は何もできなかった。でも今の私達なら
「大丈夫だよ。アリサちゃん」
奈落を見下ろしている私に心配して声をかけるアリサちゃんに、私は大丈夫と答えて、奈落を見下ろしていた視線をすずかちゃんや南雲くんのいる方向に向ける。
この下はあの時の場所ということもあって二人とも入念に準備している。
「いよいよだね」
「ええ。ここからが正念場……すずか、南雲も準備は良い?」
「大丈夫だよ。アリサちゃん」
「僕も大丈夫。この前立てた作戦通り動いたら良いんだよね?」
「ええ、確実に奴が復活している想定で立ててるから……みんな、ここからが正念場よ!」
アリサちゃんの一言に私達は力強く頷き、休憩を終えて下の階層……65層へと足を踏み入れる。
そしてそこに広がる光景は……崩れ落ちた石の橋が掛けられていて、通れるようになっていた。
「橋は修復済みなのね。ということは十中八九……」
そう言いつつ橋の中心にたどり着くと橋の両端に魔法陣が展開される。
私達が来た入り口には無数の魔法陣からトラウムソルジャーが出現し、反対方向からは無数の魔法陣と比べて巨大な魔法陣からベヒモスが現れる。
「以前と同じ状況……でも!」
「うん!今回は逃げるためじゃないもんね!」
「こいつらを倒して……」
「正人くんを取り戻すために!」
私達の覚悟は決めている。そのためにもここで躓いてなんていられなかった。
そんな決意を胸に臨戦態勢を取ると、ベヒモスが雄叫びを上げて突進し、反対側のトラウムソルジャーも次々と前に進んでくる。
「香織!ベヒモスを!」
「わかった。天鎖縛!」
先ずはベヒモスの動きを封じ込めるために私は魔法を唱えると、空間に出現した魔法陣から光の鎖がベヒモスへと巻き付き、突進していたベヒモスの動きを封じ込める。
それでもなお、前に進もうと足掻いている。だったら……
「ホーリーランス!」
このままだと鎖が砕け散ると判断した私は、足元にミッド式の魔法陣を展開すると、ベヒモスの周囲に魔力でできた槍を4つ生成して、槍はベヒモスの足に突き刺さる。
「これでよし!すずかちゃん!」
「うん!…………氷界!!これでダメ押し!」
ホーリーランスがベヒモスの足を貫通して地面に突き刺さると、突き刺さったホーリーランスのお陰で足は動かせなくなり、それにダメ押しと言わんばかりにすずかちゃんの氷界でベヒモスの足を氷付けにする。
「これでベヒモスは当分は動けない。先ずは後方のトラウムソルジャーを倒すわよ!」
「ベヒモスは抑えておくから……みんなお願い!」
ベヒモスを封じ込める魔法の維持のために他に余力を出せない私は、アリサちゃん達にトラウムソルジャーを任せて、魔法の維持に専念する。
ハジメSIDE
ベヒモスは白崎さんが止めてくれている。ここまでは立てていた計画通りに上手くいっているから大丈夫だ。
「いくわよ!すずか!南雲!」
バニングスさんの掛け声と共に、僕と月村さんは呼応すると直ぐさま腰に付けているガンホルスターから僕の獲物を取り出して、先ずは手近なトラウムソルジャーを三体ほど撃破する。
本来の僕なら絶対に出来ない芸当だけど、今の僕には作り上げたこれがある。
僕の両手に握られている黒光りしたマガジンタイプの拳銃。
拳銃はこの世界では存在しない武器で、僕が必死になって作り上げた一品。
これがあれば低いステータスの僕でも魔物とまともに戦うことが出来る。
それに加えて、バニングスさんが前に出て火焼閃で複数体を焼き切り、月村さんが凍雨を拡散させて放ち、広範囲でトラウムソルジャーにダメージを蓄積して倒していく。
「バニングスさん。下がって!」
「っ!分かった!」
「月村さんは足止めを!」
「うん!」
僕はタイミングを見計らってバニングスさんに下がるように指示を出すと、指示に従ったバニングスさんは後退して、トラウムソルジャーの動きを止めるために月村さんが氷界でトラウムソルジャーの足を凍らせて動けなくする。
それを見た僕はポーチからあるもの……お手製手榴弾を取り出し、安全ピンを外すとそれを複数個、トラウムソルジャーが固まる数カ所に投げる。
投げてから直ぐに爆発してトラウムソルジャーを纏めて吹き飛ばすと、爆発が収まった後にバニングスさんと月村さんがまた攻撃を再開する。
そして暫くして後方に現れたトラウムソルジャーは全滅し、僕達は後顧の憂いを断ったことで白崎さんが抑えるベヒモスに集中することにした。
NOSIDE
トラウムソルジャーを掃討したアリサ達だが、その間に足止めをしていたベヒモスを封じ込めるのも遂に限界を達した。
縛り付けていた天鎖縛の鎖とホーリーランスは砕け散り、氷付けられていた氷も砕き自由を得たベヒモス。
その眼差しは今まで動きを抑えていた香織に対して怒りの眼差しを向け、今にも食い殺そうと激昂の雄叫びを上げて香織に向かって突進してくる。
しかし、後ろを気にすることもなくなったアリサ達は臆することなく、動き出した。
「顕現せよ。氷の守り氷壁!!」
すずかが特大の氷で出来た厚い壁をベヒモスとアリサ達の間に作り上げる。
ベヒモスはそれに構うことなく氷壁に向かって突撃して氷壁を砕け散らせるが、アリサ達にとっては氷壁によって突進の速度が衰えただけで充分だった。
氷壁が砕け散る中、氷壁の向こうから駆け出すアリサと香織。どちらも身体強化で動く二人は、落下してくる氷塊を避けつつ、ベヒモスの左右の前足に向かっていく。
「燃えさかれ!火焼閃!!」
「ライトザンバー!」
アリサの炎を纏った大剣と香織の杖の先端から伸びた魔力刃が同時に左右の前足を切りつけると、突進していたベヒモスは前足を切られたことで前のめりに転倒し、顔を地面に擦り付ける。
そして漸く止まると目の前にはハジメの姿があり、手には手榴弾が持っている。
「多分、銃じゃダメだろうし、これで!」
そういってハジメは手榴弾の安全ピンを外して投擲して、ベヒモスの開いている口の中に投げ込む。
すると手榴弾が口の中で爆発した。
「まだだよ!ここに氷を望む。悪しき眼前の敵に氷の鉄槌を……氷槌!!」
口の中で爆発したことで悶絶するベヒモスに、追い打ちと言わんばかりにベヒモスの直上に氷で出来た特大のハンマーができあがり、それがベヒモスめがけて振り落とされるとベヒモスは悲鳴を上げる。
「さて、とどめといくわよ!香織!燃えさかれ猛々しい炎よ」
「うん!聖なる加護を与え、清浄なる炎で浄化せよ!」
最後の一撃とアリサは香織に掛け合うと詠唱を始め。それに呼応して香織も詠唱するとアリサの大剣に炎が纏う。
しかしその炎は赤い炎ではなく白い炎で、纏ったそれは5メートル以上も長く燃えさかっていた。
「「セイクリッドフレイム!!」」
二人の掛け声が合わさる中、振られたその一撃はベヒモスの全体を白い炎で焼き尽くし、炎が治まった後、そこにはベヒモスの姿はなく、完全に焼き尽くされたことが分かる。
「はぁ……はぁ……やったわね」
「…………うん」
力を使いすぎたのかアリサは息を荒げながら倒したのを確認し、それに応じるように香織も頷く。
後ろにいたハジメとすずかも同じく倒したと確信し、アリサと香織の元へ向かう中、アリサと香織はお互いハイタッチしてベヒモスを倒したことを喜んだ。