次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く   作:ウィングゼロ

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32話

 

「さて、ここからは完全に未開の階層だけど……」

 

ベヒモスとの戦いを終えた後、階層を降りたアリサ達はモンスターのいないエリアで休息を取っていた。

ここからは誰も到達したこともない未開の階層。それだけに一層の警戒を必要だということは、この場にいる全員が承知していることだった。

 

「回復薬は充分まだあるから大丈夫だよ。南雲くん、銃弾の残弾はどれくらいなの?」

「えっと、マガジンに込めているのが8個でバラでも100発はあるよ。それにここの鉱石で作れるから弾の問題は大丈夫かな」

 

そういってハジメはガンホルスターから拳銃を取り出し、グリップ部分に内蔵されているマガジンを一度外してマガジンの残弾を確認する。

 

「それにしても南雲が銃を作ったって聞いたときは驚いたわ。よく銃の構造なんて知っていたわね」

「あはは、ゲーム製作の時に銃の大百科事典なんかも見てたから、それで何とか作れたんだ」

 

偶然だよ偶然。そう笑みを浮かべてアリサが賞賛することを鼻に掛けないハジメ。

そんなハジメにすずかは充分凄いよとハジメの凄さを素直に褒める中、ハジメは付けているガンホルスターに触れる。

 

「でも、本当にどうしてこんなものをプレゼントしたんだろう」

「……普通ありえないよね?この世界には銃なんてないのに、完全に銃を想定してる構造……」

「偶然なのかな?」

 

あの日、露店経営者の娘であるフィーから貰った荷物の中にあったガンホルスター……見たときはハジメは物凄く取り乱し混乱して、その日の内に訪ねたかったが夜分遅くそれは叶わず、翌日の朝に向かったが見つかることはなかった。

結局、プレゼントの真意は掴めず。疑問が残った旅立ちとなったハジメだが、貰ったガンホルスターは有用に扱っており、プレゼントされたこと自体にはハジメも物凄く感謝していた。

 

「取りあえず、その疑問は置いておきましょう。香織も魔法を結構使ってたけど問題ない?」

「うん。まだまだ魔法も使えるよ。アリサちゃんも大丈夫?合体技の負荷で疲れてたけど」

「もう大丈夫。さて……ここからは一層の気を引き締めていかないとね。」

 

ここからは誰も到達していない未探索エリア。どんなものが待ち構えているかと、一同は奥へと続く通路に視線を向けた。

 

そしてそれから20日の日時が流れ、ペースは落ちてはいながらアリサ達は99層に到達した。

 

「ここのボスも倒せたわね」

 

そう言いながら、倒した巨大な白骨のムカデの一部に腰を下ろし息を荒げるアリサ。

その姿は服がボロボロになっていて激戦だったことが伺える。

他のすずか達も満身創痍で疲れており、その場で倒れ込む中、香織は何とか結界を張り、魔物に襲われないように考慮する。

 

「流石に……きつかったわね」

「うん、何とか倒せたって感じだった」

 

先程の激戦を思い浮かべているのか、一度二度と経験した死の恐怖に青ざめるアリサとすずか。それでも挫けてられないと自身を奮い立たせる。

 

「南雲くん、さっきはありがとう……南雲くんが後ろで相手の分析と援護をしてくれたお陰で、誰も死ななかったから」

「僕はそれぐらいしか出来なかったし……」

「出来なかったじゃないわよ。南雲が指示してくれたお陰で何とか勝てたんだから」

 

自分を過小評価しなくて良いわよと、アリサが先の戦いで敵の動きの分析や、的確な援護と指示を出していたハジメを賞賛する

それから魔力が回復した香織に全体回復で傷を癒やして貰った後、準備を整えて最下層へと動こうとしたとき、奥の方から微かな音にすずかが気づく

 

「ねえ、アリサちゃん。奥から音がしない?」

「音?」

 

肝を冷やすすずかの問に、アリサは首を傾げながらも耳を澄ますと、すずかの言うとおり微かに聞こえてくる音を聞き取るが、その音は徐々に大きくなっているのが分かり、その音も大きくなるにつれて分かってくる。

 

「足音?でもこれって……」

「足音が軽い……大型な魔物じゃないみたい」

「100層から上ってきてるんだから、ただ者じゃなさそうね」

 

アリサ達は自身の獲物に手に取って構えて、徐々にはっきりとしてくる足音に危機感を駆り出たせる。

そしてその足音が目前まで来ていて、暗がりな通路から薄らと上がってきたそれの姿を捉えると、ハジメが短い声を上げた。

 

「え?…………女の子?」

 

徐々に姿を現すそれは魔物ではなく人間で、翡翠色ののゆるふわウェーブにエメラルドグリーンの瞳、日本でよく見られる緑を主張とした着物だが、ミニスカートという日本ではあまり見れない服装。

そして上の空で何を考えているのか分からない様子の彼女とアリサ達は目を合わせる。

 

「………………」

「………………」

 

両者、無言のまま時間が流れる中、先に口が開いたのは女の子の方だった。

 

「……こんにちは」

「え?えっと……こんにちは……」

 

ぽつりと呟くように喋った言葉が挨拶で、いきなりのことで戸惑うハジメも挨拶を返し、それで緊張がほぐれたアリサが少し呆れた表情で女の子に話しかける。

 

「えっと、あなた……ここで何してるの?」

「…………散歩?」

 

アリサの問に間を置いて首を傾げながらも答える女の子に、周りは苦笑いの笑みを浮かべる。

 

「ねえ、ここにはどうやって来たの?」

「…………?」

「あの時みたいな転移で飛ばされたのかな?」

「流石にそうじゃないかな?こんなところまで飛ばされるなんて……魔物に襲われなかったのが不幸中の幸いだったかも」

 

続いてすずかがここまでどうやって来たのかと訪ねるが、意味を理解していないのか首を傾げる彼女を見て、ハジメと香織がかつて自分達が味わった転移トラップの類いにかかって不運にも100層まで飛ばされたと推測する。

だが不幸中の幸いで魔物が現れることはなく、アリサ達から見ても汚れがないことから今まで息を潜めていたと考えればしっくり来る。とアリサ達は結論付けると次に女の子をどうするかという話になる。

 

「考えるまでもなく。引き上げるしかないわね」

「そうだね。名残惜しいけど人命とは比べられないしね」

「……別にいいよ」

悩むこともなく即決で出口へと向かうという方針を決めるが、そこに割って入るように女の子が口出しをする。

 

「いいって……強い魔物がいっぱいいるのよ。武器も持ってない女の子を一人に……」

「……武器は持ってるよ?」

「えっ?」

「……それに風はフウの味方」

「風?」

 

突拍子のない言葉を口にするフウと名乗る女の子にアリサとすずかも戸惑いを見せる中、それを他所にフウは上に向かう通路へと早走りで向かっていく。

それを見て慌てて追いかけようとするアリサ達だが、通路直前にフウは足を止めてアリサ達の方へ向き直る

 

「ま、待って!」

「……フウなら大丈夫。それより下に行った方が良い」

「え?」

「……そうした方があなた達に良い風が吹くよ」

 

そういって通路へと消えていったフウ。アリサは追いかけようとするも既に近くにはフウの姿はなく、追いかけた後に道に迷ってしまっては本末転倒だと割り切り、元の場所へ戻る。

 

「あの子……大丈夫かしら」

「うーん、確証は持てないけど大丈夫じゃないかな?本人も言ってるし、何より最下層なのに全然怯えてる様子も見れなかったし」

「確かにそうだよね……何処か不思議な子だったな」

 

フウのことが心配になるアリサにハジメは彼女の様子から本当に大丈夫なのではないかと推測すると、それに同意するように香織も頷く

 

「それより、あの子が言ってた。下に行った方が良いって……」

「確かに言ってたわね……この下って最下層なんだけど……」

「やっぱり何かあるってことなのかな?」

「悪いことじゃないみたいだし、取りあえず行ってみようよ」

 

フウが言っていた言葉に疑問を持ちながらもハジメの行こうという言葉に三人は頷き、下の階層へと向かう。

そして下の階層に到達した直後、アリサ達は足を止め、目の前にある信じられないものを目の当たりにする。

 

それは以前戦ったベヒモスと同じ種族ながらも、明らかに格上と言わんばかりの風格を漂わせる魔物。

しかしそれは動くことなく横たわっていた

 

「これ……死んでるの?」

 

アリサは戸惑いながらそう呟く。

彼女達の前に倒れるベヒモスは既に息が絶え、死骸とかしていた。

「下に降りる階段からここまで一直線だったし。これ……まさかさっきの子が?」

「体全体に無数の切り傷が出来てる。それにさっきの女の子がやったのなら、外傷もなかったし無傷で勝ったことになるよ」

 

すずかと香織もそれぞれ気になったことを上声で呟く中、あの空間から下に向かって直ぐにたどり着いた場所で、辺りを見渡しても横穴も進む道もなく行き止まり。そして恐らく最下層のボスであろう魔物がいとも簡単に倒されている光景に頭が付いて来れない。

 

唯一分かることは、彼らの先程のフウと呼ばれた少女が何者だったのかという疑問が強まっただけだった。

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