次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く 作:ウィングゼロ
アリサ達が100層から戻る帰路に着いた同日。
オルクス大迷宮の65層では復活したベヒモスが倒れ、その前に先頭に立つ天ノ河光輝率いる勇者一行。
「勝った?」
「マジ?」
自分達にとって悪夢とも呼べたベヒモスを倒したことに半信半疑で見ている勇者パーティーを前に、光輝が聖剣を掲げ声を上げる。
「俺達の勝利だ!」
光輝のその声を皮切りに、迷宮内ということも忘れて歓喜の声を上げるクラスメイト達。
あるものは倒したことの喜びで抱きしめあい、またあるものは涙目で嬉しさのあまり雄叫びを上げる。
そんな光景を見て、雫とメルドはなにをやっているんだかとため息を溢すが、ベヒモスを倒したことについては正直に嬉しく思ってはいた。
(コウキ達はこの短時間で良くここまで成長したものだ……しかし……)
本来ならありえないスピードでの成長に、やはり神の使徒かと選ばれた者達という特別な存在だと認識するメルドだが、その反面で分かっている事実に素直に喜べないでいる。
(このままで良いものだろうか……マサトの言うとおり、戦いが何たるかということを未だに理解していない。)
正人が王都にいた時にメルドが訪ねた光輝達への評価。それは戦いを甘く見ているという厳しい評価だった。
だからこそ、何処かで山賊を嗾けてきっちりとそういうことを教えようと思った矢先、教会からのオルクス大迷宮へ向かえという指示がまいこんできた。
そのことで時期尚早と渋るメルドだが、教会の命令は王命よりも絶対とされる神命。逆らうことは許されず、メルドは志願者を募りオルクス大迷宮へとやってくることになった。
(このままコウキ達を野放しにするわけには)
いつかとんでもないことになりかねんと、先ずは弛んでいる気を引き締めさせるために、光輝を戒めようと声を掛けようとした矢先、何処からか声が響き渡る。
「そうは問屋が卸しませんわ!!」
「っ!全周警戒!」
響き渡った女の声に、咄嗟に光輝達に周りへの警戒を促すと、光輝や他のみんなも慌てた状態で周りを警戒し始める
警戒し始めた矢先、その声の主が突然襲いかかってくることはなく、下の層へと続く道から歩いてくる。
茶髪の髪に騎士甲冑を纏い、盾と騎士剣を携える女性。
その後ろを着いてくるように、幼い銀髪の少女と先日アリサ達と出会したフウと呼ばれる少女が姿を現す。
それを見て、光輝は女の子?と警戒心を解く中、光輝を注意する余裕もないメルドは最大限の警戒心で女性達に訪ねた。
「貴様達……何者だ。こんなところにいるのだ。ただ者ではないことぐらいわかる」
「メ、メルドさん。相手は女性ですよ?そんなに警戒する必要は……」
「馬鹿者!!この階層の先は前人未踏の未開探索エリアなのだぞ!その先から出てきた者がただの女性だと思うな!」
「メルドさんの言う通りよ。光輝……正直あの鎧を着ている人、あんな平然としてるけど隙がないわ」
異様に警戒心を抱くメルドに対して、光輝は見るからに普通の女性に明らかに過剰すぎる警戒心を抱いていることを困惑しながら指摘するが、下の階層から現れた時点で普通ではないと一蹴され、付け加えるように、雫は女性が戦闘態勢に入っていないというのに隙がないと警戒を強める。
「対象の敵意を感知。些か警戒心が足りていないようですが……いかがいたしますか?」
「正直、今の反応を見ただけで試す気も失せてしまいましたが…………どうやら本命が来たみたいですわね」
そういって甲冑の女性はメルド達に背を向け、自身達が来た下層に体を向けると、奥からこの場所へ向かってくる複数の足音。そして通路からアリサ達が飛び出てくる。
「アリサ達か!」
「メルドさん!?それに雫達まで……」
「漸く、来たようですわね。」
「あっ、あんた達ね!この下の階層に待ち構えさせていた敵を用意したのは!」
叩き切るのに時間かかったわよ!とうんざりとした表情で女性に文句を言うアリサに、女性もしてやったりと笑みを浮かべる。
「あの程度に負けていればその程度と鼻で笑う所でしたが……見所は一応あるようですわね」
「そりゃあどうも……で、あんた達は何者なわけ?下にいたあれも含めて、あんた達がこの世界とは別の世界から来たってことはなんとなく分かるんだけど」
「なんだと!?」
アリサの言い放った言葉に驚きの声を上げるメルド。
別世界。それはつまり、アリサ達や一夏達のようにこの世界に召喚されたということ……しかしそんな
目の前にいる彼女達は一体何者なのか、メルドは思考を巡らせていると、近くに居た光輝が待ってくれと言いながら女性に問いかける。
「……何か?」
「つまりは、君達も元の世界に帰れなくて困ってるってことですよね?だったら俺達と一緒に居れば良い!魔人族を倒せば返してくれるって……」
「はぁ…………なんとまあ……あの決闘を見たときから思ってはいましたが、熟々甘い男ですわね」
「え?は?」
「誰が、赤の他人の言う言葉を鵜呑みにすると思っているのですか?答えはNOですわ。そちらの騎士団長から同様の提案があったとしても、答えは変わりありませんが」
「ど、どうしてだ!?」
(そりゃあ、まあ……ねえ)
(信憑性ないもんね)
光輝は仲間になるように提案するも即答で一蹴されて狼狽える中、内心で一蹴した女性の気持ちに共感して苦い笑みを浮かべるアリサとすずか
「そもそも私たちは現在、そちらが敵対している魔人族と協力関係にあります……ですからあなた方と組するつもりは毛頭ありません」
「なん……だと!?」
魔人族と組しているという言葉に、メルドは目を大きく開けて真偽を疑う。
その言葉は本当なのか……仮に真実だとしても、人間族を根絶やしにしようとする魔人族が異世界から来た人間と組するなど、容易に想像が出来ない光景だった。
「他愛のない話もここまでに致しましょう。」
そういって、女性はアリサ達に向かって持っている剣と盾を構えると、それまで発していなかった殺気を発する。
「っ!」
「これ……は」
「殺気!」
女性の殺気に当てられ、仕掛けてくると踏んだアリサ達は、直ぐに動き出せるように武器を構える。
「待つんだ!落ち着いて話し合おう。戦い合うなんて間違っている!あなたたちは魔人族に騙され……」
「クラウ・ソラス」
「へ?ごふぅっ!?」
「光輝!!」
一触即発の雰囲気に光輝は自論で止めようとするが、それを遮るように銀髪の少女が動き、一言呟いた直後に少女の後ろに出現した、クラウ・ソラスと呼ばれた黒い謎の物体から繰り出されたパンチで顔面を殴り飛ばされ、後ろに吹き飛ばされる。
いきなりのことで悲鳴と戸惑いの声を上げる勇者パーティー。龍太郎が光輝の名前を呼ながら掛けよって、光輝の状態を確認する。
光輝はというと、パンチで顔面は腫れて少し脳震盪も起こしていた。
そんなプチパニックを引き起こしている勇者パーティーを他所に、引き起こした少女はというと、何一つ表情を変えず冷静に言葉にする。
「これ以上の口論は無意味と判断します。」
「その通りですわ。では黒兎にそちらは任せてもよろしいですわね?」
「特に問題はありません」
「ではお頼みしましたわ。それで……風帝の娘は……」
「…………一応フウも参加かな?」
そういって、手を背中に組みながらのんびりとした表情で勇者パーティーの前に出るフウ。
問題ないでしょうと、二人の実力を知っている女性は勇者パーティー達を二人に任せると、アリサ達に剣先を向け名乗りを上げる。
「ベルカ帝国にその人とありと言われる槍の聖女に仕える鉄騎隊……その筆頭隊士を務める神速のデュバリィ……どれほどの実力か……この剣で測らせて貰いますわよ!」
そう言いきった直後、地面を足で蹴って一気にアリサ達の距離を詰めると、剣をアリサに向けて振るった。