次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く 作:ウィングゼロ
アリサSIDE
どうすれば……!
目の前で斬り合っている格上の剣士に、私達は為す術もなかった。
こちらの攻撃は全て捌かれたうえで、的確に攻撃を当ててきて、体中が痛い。
それを見かねて、香織が回復魔法で傷を癒やしてくれるけど、その時の痛みは身にしみているから、体が震えて思うように動かない。
「虚勢を張るのも止めた方が良いですわよ。所詮はこの世界に来る前までは、戦いのたも知らぬ民間人……切り裂かれた痛みなど体験もしたこともない以上、体の方が正直に震えていますわよ」
「…………」
この人の言うとおりだ。
完全に思っていることを見透かされ、ここまでなのかと挫けそうになる中、後ろから香織の声が聞こえる。
「確かに……あなたの言っていることは間違ってないと思います。戦うのは怖いし、傷ついて痛いのも……いや……だけど、私達は選んだの!戦うって!そして取り戻すって!」
香織の言葉に自然と震えが止まって、体の内から力が溢れてくる。
そうよ、こんなところで躓いてちゃ、正人を助けるなんて夢のまた夢じゃない。
挫けかけていた意思を再び立て直した中、それを見た剣士は少し笑みを浮かべて剣を構え直す。
「いいでしょう。その威勢に対してどれほど私に立ち向かえるか……見せて貰いますわ!」
「言われなくても!」
そう叫んだ直後、後方から香織のホーリーランスが飛来して、剣士とその周辺に降り注ぐ。
これを何一つ表情を変えずに剣と盾で弾いていく。
さっきのすずかの氷雨と同じ、いとも簡単に弾かれている。だけどそれはこっちも承知のはず。
「氷界!!」
すずかの氷界で剣士の足元が凍てつき始め、止めていた足が徐々に氷に凍てつかれていく。
「くっ!小細工か!しかしこの程度で……「錬成!!」っ!?」
いくら足を凍らせたところでこの人は止まらない。力尽くで拘束を解こうとするが、それを遮るように私の横で南雲が叫んだ。
錬成を使うと剣士の足元の地面が盛り上がり、剣士の足を固定する。
本来なら、錬成は地面に手を付け、目の前の地形を変えるぐらいの能力だったが、南雲は新たに遠隔錬成という技能を覚えた。
その名の通り、離れていても錬成することが出来るというもの。
これにより危険を冒すことなく、剣士の足の拘束を強化することが出来た。
「バニングスさん!」
南雲が私の名前を叫び、その意図を読んだ私は直ぐさま剣士に向けて駆け出す。
動けない今しかない。みんなからチャンスを託された私は両腕に力を込めて大剣を剣士に振るい、動けない剣士を捉えることができた。
「うおおりゃああぁぁっ!!」
「ぐっ!っ!!」
剣士も盾で防ぐが、これまでのようにいなすことは出来ずにぶつかり合い、そのまま力が勝った私の一振りで、剣士は拘束から抜けるほどに勢いよく吹き飛ぶ。
空中に身を乗り出した剣士だが、流石というか……空中で受け身を取って、綺麗に着地していることからまだ余力があるのがわかる。
「中々の連携ですわ。私に一撃与えたこと、褒めてあげます。ではここからは少し本気で……「そこまでです。神速の」っ!!?」
更に本気で戦おうと、剣士は先程とは段違いの覇気をぶつけてくるとともに、足に力を入れた着後、第三者の声で留まる。
声からしてフウっていう子や黒兎っていう子でもない。全く聞き覚えのない第三者の声に戸惑う中、その声の主は上層へ続く道から現れた。
全身を黒いフードコートを纏い、右手には機械仕掛けの槍……なのは達と同じデバイスらしきものを持っている。
体格からして私達より年下……だけど、その子から発せられる覇気は、あの剣士と同等レベルで感じられる。
というか、それを差し引いても、今の劣勢にまた一人追加されただけでも辛すぎる。
「ああ、安心してください。別に戦いに来たわけではないので」
「っ!?」
そんな私の思考を読んだのか、あの子は何も言っていないのにも関わらず、私の心中を言い当てる。
動揺する私を他所にあの子は全体を見渡した後、この空間に聞こえる位の声音で発した。
「神速の、黒兎、フウ……撤退しますよ」
「なっ!?ここで撤退するのですか!?もう少しは……」
「少し本気になって、手の内を見せるつもりで?」
「うっ……!」
「実力を測る位ならこれで充分でしょう……あなたの剣技を明かすほどではありませんよ」
「む~っ!!わかりました!ここはあなたの言葉に従います」
「了解。これより交戦を停止し撤退します」
「うん、わかった」
不満げにあの子の指示を飲んだ剣士は、私達を警戒しつつ、あの子の元へ歩いていく。
他のフウという子や黒兎も、一言言った後、同様に近付いているのはわかる。
「さて……こちらの三人がお世話になったみたいで……ではこれにて」
そういってお辞儀した後、あの子の足元に魔法陣が展開される。陣の大きさは、他の三人も入るほどに大きく拡大する。
「転移ですか?この世界では転移は不安定ではありませんでしたか?」
「ちゃんとマーカーは設置してきているので、問題ありませんよ」
剣士とあの子が軽いやり取りをする中、私達はそんな四人の周りを囲う。
「逃がすと思っているのか?」
「まあ、それが普通でしょうね……」
満身創痍ながらも絶対に逃がさないと気迫に満ちたメルドさんが問いかける中、黒フードの子は当然かと言わんばかりにメルドさんの言葉に頷くと、左手の指をならす。
その瞬間、上層に続く道から幾つもの光線がこちらに飛んでくる。
「な、なんだ!?」
「アリサちゃん、まさか……!」
「そのまさかでしょうね!」
突然の攻撃で取り乱すメルドさん。すずかも心当たりがあるのか私に問いかけてくると、私は直ぐに頷いた。
通路から攻撃してきたのは、丸みのある長方形の、この世界では全く持って見られない鋼鉄のフレームを纏い、浮遊している機械仕掛けの無人兵器。
それが計八機ほど現れると、一定の距離で立ち止まり、中央部分に設置されているカメラから光線を放ち始める。
いきなり、この世界にはない機械が現れたことに、メルドさんより機械を知っている光輝達の動揺が激しい中、この下の階層でこれと全く同じものが待ち構えていたことから動揺しない私達は、光線を避けつつ剣士達の方を警戒する。
「それでは我々はこれで」
「あ、少し待って」
「……どうかしたのですか?フウ?」
「……そこの剣士さんに」
「わ、私?」
転移しようとした直前、フウに呼び止められて発動を少し待つと、フウは雫に向けて話しかける。
「フウはフロウリア・フォン・アウスレーゼ……剣士さんは?」
「は?え?……八重樫雫……だけど……」
「ん、雫……覚えた。それじゃ、雫、次は本気で戦う」
そうフウは言いきったあと、止めていた転移を発動させて、四人はこの場からいなくなった。ここに残っているのは、突然のことで混乱している私達と、敵の無人機だけになった。