次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く   作:ウィングゼロ

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幕間『少年達の日常』

「…………ま、お…………さい」

「ん……」

 

微かに声が聞こえる。

朧気の意識が次第に覚醒していく。ゆっくりと瞼を開けて視界に入ったのは、水色の入った白銀のメイド。

 

「一夏様、もう朝ですよ」

「ん……ユーリ……」

「はい、お食事の用意も、出来ております。」

 

そういって微笑むユーリの顔見た後、俺……織斑一夏のこの世界での一日が始まる。

 

普段の服に着替えて食堂に辿り着くと、既に椅子に座って目の前に王宮料理が広げられている榛名と、それを用意しているユーリの姿が見える。

 

「おはよう、一夏くん」

「ああ、おはよう」

「一夏様、こちらのお席におかけになって下さいませ」

「えっと……ありがとう」

 

手を振って俺に挨拶してくる榛名に挨拶を返し、その横の席を後ろに移動させて座るように勧めてくるユーリに、そういった施しを受けたこともない俺は小恥ずかしくなりながらも、ユーリが引いてくれた席を座る。

 

そうして用意されている王宮料理を堪能している。一足先に食べ終えた榛名が、後ろに控えているユーリに声を掛ける。

 

「いつも思ってたけど、ユーリちゃんはいつご飯とか食べているの?」

「それは……一夏様達や皆様がお食事を終えた後、間を見て……とお答えするしか」

「そうなんだ、ユーリちゃんと一緒にご飯食べたいんだけどな」

「そ、そんな私には恐ろしいですよ」

 

アワアワと取り乱すユーリに、流石にちょっと罪悪感を覚えた榛名も、ごめんごめんとユーリに軽く謝る。

 

そんなほのぼのしたやり取りを見て俺も微笑みを浮かべ、ふと昔のことを思い出す。まるであの時の三人のような……

 

「……?一夏様?お食事が進んでいませんが……」

「え?ああ、ごめん」

 

食事の手が止まっていたことに不安な表情を浮かべるユーリに、誤解を生ませたことに軽く謝罪する。

だがその心中は口にはしない。だってもうあの時の三人には戻れないから……言ったら榛名も落ち込むから……

 

 

食事を終えた俺達は少し一服した後、訓練所にやってきた。

勿論、理由は自衛のために力を付けること。

この世界は地球とは違って、戦いというものが身近に存在する。

この世界に来て直ぐに、山賊に襲われたこともあるから、それは身にしみてわかっていた。ならばこそ自分で自分を……そして、榛名や永和姉を守れるくらいには強くならないといけなかった。

そして訓練の内容は、駐屯している騎士などとの手合わせが殆ど、たまに王宮にいる優花さん達とも手合わせすることがある。今日は騎士との手合わせだ。

 

「はぁっ!」

 

俊敏に動き、掛け声と共に振るわれた一振りで騎士の剣を弾き飛ばす。

騎士の人も始めは手加減をされていたけど、今となっては俺の方が上手で本気でかかってくる。

 

「流石は使徒様……お強いですな。これならば魔人族など恐れるに足りませんな」

「……どうも」

別に魔人族と戦うなんて、一言も言ってないんだけどな。

そう心の中でぼやきつつ、俺は腰に付けている鞘に、ハジメさんに作って貰ったタウル鉱石製の太刀の刀身を収める。

この世界には刀というものが存在せず、困っていたときにアリサさん達に相談したところ、錬成師のハジメさんがこの太刀を作ってくれた。

ハジメさん曰く、アーティファクトじゃない、ただ硬度が高い太刀とのこと。だが別に特殊な能力を秘めた武器より、少しでも使い勝手がある武器の方が良かったために、迷うことはなかった。

その使い勝手があの場所での賜物ということは、どうも釈然としないが……

始めは周りから奇怪な目で見られたけど、今はそんな視線もない。

でも同じ天職の雫さんは、太刀を見て羨ましそうに見てたっけ

因みに榛名は付加術士で、今は王宮魔導師に魔法を教えてもらっている。始めの頃は一緒だったけど、今は別々のことが多い。

 

「お疲れ様です。一夏様」

 

そう言って、いつの間にやってきていたユーリが、俺の前にやって来て、持っていたタオルを俺に受け渡しそれで汗をかいた体を拭う。

 

「見事な剣捌きでした。流石は一夏様です」

「え?見ていたのか?」

「はい、とても美しい剣捌きでした。」

 

率直に褒められて、少し恥ずかしい気持ちに顔を赤らめた。

 

そして訓練を終え、昼過ぎには王立図書館で、みんなとこの世界の知識を勉強する。

基本的な座学はもう頭の中に入っているため……昼からは自主的な行動になるのだが、この世界についてもっと知っておいた方が良いと考え、優花さん達と一緒に図書館の片隅で書物に目を通す。

 

「ねえ、これで何冊目だったけ?」

「えっと、今日で四冊目」

 

向かい側で書物を閉じて、読み上げた本の上に置く。優花さんは隣にいる友人の妙子さんに、読み上げた本は何冊かと訪ねると、少し戸惑いながらも四冊読み終えたことを告げる。

 

「その四冊とも、少し脚色は違うだけで、中身は殆ど変わらないんだけど……」

 

こういうのを読みたいんじゃないのにと、優花さんは落胆し、ため息を溢す。

戦争には参加しないけど、別の帰る方法を模索する。きっと方法があるんじゃないかと、図書館にある古い文献を頼りに、手に入れていた言語理解で、この世界の住人でも読めない字を読み解いていたが、結果はぜんぜんだった。

 

「……やっぱり、都合の悪い文献は捨てられているのかしら」

「え?」

「なんでもないわ。さてと次は……」

 

何かを呟いたみたいだけど、それに反応すると、優花さんは慌てて次の本を読み始める。

その後、日が落ちるまで読み漁り。結果は貧しいものだった。

王宮に戻り、浴場で体を洗った後、みんなで食堂で晩食を食べる。

 

「そっか、いっくん達も大変だったみたいだね」

「うん……でもきっと変えれる方法があるはずだから」

「そうだね……だけど根を詰めちゃダメだよ?」

 

詰めすぎて体調を崩したら大変だからと、永和姉に軽く注意されて俺は素直に頷く。

 

「でも、永和さんの方は大丈夫なんですか?……ほらリリィの補佐を……」

「そっちは別に大丈夫だよ。最初は凄い仕事量だから驚いちゃったけど、別に捌けない量じゃなかったから。でも王女殿下自身が無理をされているから……今日も軽く注意したし」

 

平気な顔で今やっている仕事を無理にしていないと断言してほっとする俺と榛名。

 

俺や榛名は訓練や座学と言った力や知識を身につけている中、天職がなかった永和姉は、こっちに来てからの当初はあまりよく見られていなかった。

召喚されたはずなのに、天職すら無いと周りは落胆し、あまりにも身勝手が過ぎるのではと俺や榛名は憤ったが、直ぐにそれは解消された。

 

永和姉の処遇を一部が決めようと話し合っていた中、それに待ったをかけたのが王女であるリリィ。

リリィは雫さんや香織さんといった友人から、少しだが地球のことを聞いていて、こっちの世界の平民などは貧困から文字を書けないという人間もいる中、地球は義務教育から最低限の知識を収めていると聞いていた。それに目を留めたリリィは、永和姉に自分の政務を手伝って貰うという待遇を与えた。

 

ステータスプレートのステータスに一応あった言語理解で言葉や文字がわかることから、言葉の点ではクリアしていたし、何より永和姉が物凄く優秀なのはよく知っていた。

リリィやその補佐をする人達から始めは教えられたりもしたらしいけど、今では今までの二、三倍の早さで仕事が終わっていくと、この前リリィが絶賛していた。

このことから永和姉の事務能力を遺憾なく発揮したことで、天職がないと落胆していた者達は目を丸くして、本当に天職ないの?と疑っていたのは今にも鮮明に覚えている。

 

 

それから、永和姉や榛名、他のみんなと他愛もない話をしつつ、晩食を終えて与えられている寝室に戻り、疲れていたからか直ぐにベッドに横になって眠りに落ちた。

 

 

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