次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く   作:ウィングゼロ

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6話

 

 

「メルド団長、正人です。」

「うむ、入れ」

 

そういって王宮の一室…将や宰相など、上層部に与えられる執務室に俺はやって来た。

扉の前で声を掛け、中にいるメルド団長の許しを得た後、入室すると中は一見整理されているように見えるが、所々から紙の山が隠れ見えていることから慌てて片づけたのだろう。

 

「あの、やっぱりもう少し遅かった方が良かったですか?」

「いや、呼び出したのは俺だ。そこに腰をかけてくれ」

 

そう言われて執務室に設置されていた椅子に腰掛けメルド団長が紅茶に似た何かをカップに注ぎ俺の前に置くと俺はいただきますと言って紅茶もどきを口にする。

紅茶にしては味が薄い。水に少し何か混じったという方がしっくりくる。紅茶もどきを一口含んだ後、カップを置き、俺は話を切り出した。

 

「それで、どういった件で呼び出されたんですか?」

 

そうメルド団長に訪ねると執務机に肘を乗せ、エヴァの例のあれのような姿勢で目を閉じる。

何故こうなったか、訓練も問題なく終わり、夕日が沈み夕食を食堂で食べた後、帰りの廊下にてメルド団長に呼び出された。

俺と一対一で話がしたいとのことで、少し警戒はしたが、メルド団長に限ってそういったことは無いだろうと少なからずの信用を信じてやってきたのだ。

 

「正人、お前…光輝達のことをどう見ている?」

「天之河達?」

 

メルド団長から出てきた言葉は天之河達のことだった。

それなら、毎日訓練を付けているメルド団長も分かっていることだろうと思ったが…メルド団長は続きを言い始める。

 

「そうだ、俺の目線からしてではなく。学友である正人から見ての視線だ。俺より、しっかりと見ているのではないか?」

「……あくまでも自分の偏見がありますが…良いですか?」

 

そんな言葉にメルド団長は構わんと迷うことなく言い切り、俺はその迷いのない言葉に応えるように思っていることを言った。

 

「まず、全体的に言わせてもらいます。舐めきってます戦いを」

「ほう?それはなぜだ?」

「まず、前提的に俺達のいた世界は基本そういった戦いとかは無縁の世界です。加えて、突然与えられた力に気持ちが浮き足立っている。」

「なるほどな、確かにそういった感じは見受けられるな」

 

メルド団長も思い当たる節がいくつもあるのか腕を組み頷く。

だがそれだけでならまだ良い…

頭の中にはあの日、転移させられた日を思い浮かべる。

 

「それ以上に殆どの全員が天之河の思想に依存している。きっと予測外なことが起きれば…たちまち勇者一行は瓦解します。」

「言い切るのだな…」

「はい、一見、天之河が起点に結束しているように見えますが全然結束も出来ていません。あくまで天之河に付いていけば何とかなるだろうと甘く考えている。依存と信頼は…全然違いますしね」

 

今の天之河達を偽りなく答え、顔を顰めるメルド団長。分かるのは分かるが如何したものかと考えているのだろう。

 

「言われると頭が痛くなるな…正人は誰を信頼している?当然何人かはいるのだろう?」

「そうですね…まずアリサとすずか、この2人は元々力がなんたるかを自覚していますし俺の考えにも賛同してくれているので信頼出来ます。次に香織とハジメ、少し戦うことに自覚は無いでしょうが、香織は幼なじみでよく知っていますし、ハジメに関しては力を驕ってはいないので問題ないでしょう…後は…雫と畑山先生かな?」

 

勿論、メルド団長もですと付け加える。

言わないとふて腐れるというわけでも忘れてきたわけでもない。

大体、信頼していなければこんな話もしないだろう。

そんなわけで俺の数少ない信頼できる人物を口にするとメルド団長はそうかっと、信頼されていることからも嬉しいのか頰がつい上がっているのがわかる。

 

「それで、以前から話していた件ですが」

「ああ、帰るための方法を探す旅に出る件だな…それに関しては前に行ったとおり、それが光輝達のためにもなる。しかしだ」

 

話題を変えて俺達が旅に出る話を切り出す。

メルド団長には話していたために驚きもせずにその話を受けて他のクラスメイト達の帰還にも繋がることから、引き留める感じはないがそれに付け加えるように言葉を続けた。

 

「あくまでそれは、お前達が確りと自衛できればの話だ。自衛も出来ずにみすみす死に行かせる訳にはいかん」

 

泰然とした姿勢で腕を組み直すメルド団長。勿論、その言った言葉は理解できるため俺は頷く。

自分の身は自分で守れ、それはこの世界で旅をして生きていくには絶対的な条件だ。

それは旅に出るということを発案した当初から課せられていた課題でアリサもすずかもそれで熱心に訓練に取り込んでいた。

 

「そのためにも2日後のオルクスでの演習で改めて最終確認をするということですか…問題は無いはずです。それとメルド団長にもう一つ頼みがありまして…」

「む?お前から頼みとは珍しいな。どう言ったものだ?」

 

 

 

「ハジメです。ハジメを旅に同行させたいと思っています。」

「坊主をか?」

「はい、今のハジメに必要なのは訓練や勉学ではなく。この世界を旅し見て聞いて実感することこそが最良だと思います。メルド団長も今のハジメの境遇はご存じでしょう?」

 

メルド団長もその言葉に確かにっと頷く。

どうにかしたいがどう接すれば良いか分からないしハジメだけに時間を割ける訳にもいかない。

メルド団長もどうすべきか悩みの種だったのは間違いは無い。

 

「確かにな…坊主も仲間達からもあまり良く思われていないようだし、その中で仲の良い正人に頼むのが1番かもしれん。ただまあ、一人増えるのだから評価の方は…」

「厳しくする…でしょ?分かってますよ」

 

メンバーが一人増えるのだ要求される難易度も上がるというもの。

それはわかりきっていた話なのでそれほど悩むことも無い。未だに解消できていない…というよりほぼ不可能な厄介ごとが一つだけあった。

 

「だけど、クラスの連中はいい顔をしないでしょうね」

 

そうクラスメイト達だ。

一部を除いて俺は周りからとても良い印象を持たれてはいない

故に極一部しか俺が旅に出ることを知らせておらず。きっと知れば天之河が反発するだろう。

 

「………正人をあまり良く思っていないのは知っている。それにこのまま野放しにするわけにもいかんしな…」

 

ふむっと悩んでいるメルド団長、出来れば団結して欲しいということもあり、何か良い案がないか頭を悩ましているが、あの天之河に有効な手なんて無さそうな気がする。

 

「……ならば、こういうのはどうだ?」

 

なにやら思いついたのか、メルド団長は俺に向かって思い付いた方法を説明する。説明した内容は可能性としては捨てがたくあまりにも強行しすぎな方法だった。

 

………

……

 

翌日…

 

夜も明け、日差しが王都に差し込む中、王宮前ではオルクス大迷宮前にあるホルアドという町に向かう馬車や騎士団、そして俺達が集まっていた。

 

出発の準備は騎士団が準備しているので俺達は待つだけ、少し離れたところで観察していると殆どのクラスメイトはまるで遠足に行くかのようにはしゃいでいるのがわかり。それは危機感のなさと自分達が優れた力を持っているという慢心からの余裕だろう。

 

「本当に大丈夫かよ…」

 

ふと脳裏に昨日もメルド団長とのやり取りを思い出し、少し頭が痛くなる中、アリサとすずかがやってくる。

2人は他と違い気を張っていて、覚束ない様子で俺は少しだけ助言を出した。

 

「アリサもすずかも気を張りすぎだ。今からだとオルクスに辿り着く前に倒れちまうぞ」

「え、ええそうね…ありがとう正人」

「そうだね…正人くんに話しかけられて少し落ち着いたかな?」

 

少しの助言で緊張をほぐれた2人に感謝されどういたしましてと返事をした後、王宮からハジメがやってくる。

少し寝坊したのか慌てた様子だ。

 

「おはよう、ハジメ。よく眠れたみたいだな」

「あはは、おかげさまで…正人くんは大丈夫?メルド団長に呼び出されていたけど、もしかして僕の件で?」

 

僕のせいで揉めたの?っと心配するハジメに首を横に振り否定し、それに続くように言葉を喋った。

 

「ハジメの件は簡単に纏まったよ。まあ、問題はその後だったんだが…」

 

またそれを頭の中で思い出すと頭が痛くなった。

本当に流石にそれはないだろうと…言いたいというか既に言ったがその後のメルド団長の言葉を思い出す

(「正人、俺はお前がみんなを導く司令塔になると思っている。他とは違い冷静に感情に囚われずに物事を見極め、それの最善の手を打つ。お前達を纏める光輝に導く正人…お前達が一致団結したとき、真価を発揮するのかもしれん」)

っと言って、俺は何も言えなかったがあの天之河がもう少し思考的にまともならその手も合ったかもしれない。

 

「……正人くん?」

 

そんなことを思いだしているとはつゆ知らず。ハジメは首を傾げて心配する表情で俺を見ている。

 

「いや、大丈夫だ………そろそろ出発の準備も整いそうだな、整列するぞ。後、もうすぐ俺が何に頭悩ましてるかも直ぐ分かる。」

 

辺りを見て馬車の積み込みも終わりかけているのを見てメルド団長もそろそろかという雰囲気を出しているのを見て俺達もクラスメイト達の元へと向かう。その行く前に俺が悩んでいる疑問について直ぐに分かると言い残して歩き始め、後ろにいる3人は何のことか分からずに俺の後を付いてくるのであった。

 

そしてメルド団長の前で整列する俺達、ハジメやアリサ達は後ろ側だが俺だけ天之河達と同じく最前列でクラスメイトから奇怪な目で見られているがこれには訳がある

 

「よし!全員集まったな!これから先日行ったとおり、オルクス大迷宮への遠征演習を行う。初めてということで緊張していることもあるだろう。今回の演習は20階層までとする。俺達騎士団も同行するが、訓練通り出し切ればお前達なら問題ないだろう。」

 

此処でオルクス大迷宮について説明しておこう。

この世界には七大迷宮という大規模なダンジョンが存在する。いつ誰が造ったのから定かではなく。神代の時代の産物と言う者も少なくはない。

オルクス大迷宮もその一つで地下へと続く百階層の大迷宮で過去最高でも65層までしか到達できず。最下層までは辿り着いた者は誰もいない。

 

他にも大迷宮は存在するようだが文献が古すぎて場所は定かではないようだ。

明確に分かっているのは先のオルクス大迷宮に西のグリューエン大砂漠にあるグリューエン大火山、東の亜人族の国の樹海、ハルツェナ樹海もそれに含まれている。

後は明確ではないが南北を隔てる大峡谷であるライセンや魔人族領内のシュネー雪原の氷結洞窟などが候補として当てられている。

オルクス大迷宮は階層を降りて行くに連れて魔物の脅威も強くなっていく。今回の二十層までというのもハジメのことを考えてのメルド団長の配慮だ。

 

「しかし、ダンジョンは何がおきるかは分からん。下手をすれば我々もお前達に指示を出せなくなるかもしれん。正人」

「……はい」

 

メルド団長がもしもの事を話す中、クラスメイトも不安で顔を強ばせる中遂に俺の名前を呼び。少し躊躇ったが返事をしてメルド団長の横に立った。

いきなりメルド団長の下へ呼ばれたことに全員から不思議そうな目で見られる。

 

「我々が有事の際に備え、昨晩話し合った結果、正人にお前達を指揮する臨時の指揮官として任命した。」

「なっ!?」

 

メルド団長の言葉に響めく天之河達、騎士団も何故という動揺が見え、まだ話してなかったのかと頭を痛くしたが、天之河が案の定前に出て来た。

 

「メルドさん!どういうことですか!?どうして八坂が俺達に指示を出すことになるんですか!?」

「これは総合的に判断しての俺の見立てだ。八坂は指揮官としての才能に恵まれている。俺は正人を指揮官として育てるのが最良であると見込んだのだ。」

「ですが八坂は俺達とは違い不真面目に訓練を怠っています!そんな男に俺達を任せるというですか!?」

 

案の定、俺について噛み付いてくる天之河、メルド団長も予想していて冷静に対処するが天之河は俺が訓練にあまり心身に打ち込んでいないことを指摘してきて、任せられないと断言する。

そんな天之河を見て、俺もそろそろ話を切り出す。

 

「天之河、俺だってメルド団長に頼まれて、不本意だが臨時の指揮官を任された。それにあくまで今回限りだろう。この演習が終われば…俺やアリサ達は王国から出ていくつもりだ」

「ど、どういうことだ…」

「俺達は戦争なんて反対だし、かといって手を拱いてる訳にもいかない。だから神頼みじゃない別の方法を模索するためにトータスを旅をする。アリサとすずかも付いてくると言っているしハジメに関しても俺が誘った」

「嘘だ!そんなこと言ってアリサ達を無理矢理…」

「強制したつもりはない。アリサ達は自分で付いてくると言ったんだ。…それに国を離れるのに天之河の承諾がいるのか?」

 

そう突きつけると天之河は押し黙るしかなかった。

他のクラスメイト達も殆ど、不満なだと、何であいつがといわんばかりの視線を俺に向けてくる中、ふと香織に目がとまる。

明らかに動揺している目だ。大方、俺が国を飛び出すとは思っていなかったのだろう。

 

「それに、あくまで臨時だ。そういった状況に陥らなければ、俺だってお前達を指揮することもない。俺もそんなことにならないように祈りたいしな」

「よし!それでは全員馬車に乗り込め!乗り込み次第、出発する!」

 

俺の言葉を終えると状況を見計らったメルド団長が乗車の指示を出し俺は視線を無視しながら真っ先にしていされている馬車へと乗り込んでいく。

全員乗り込むと走りだす馬車、遂に俺達は王都の外へ…ホルアドへと向かうのであった。

 

 

 

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