次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く   作:ウィングゼロ

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8話

 

 

翌日…香織と久しぶりに話し合った夜から一夜が明け、俺達はオルクス大迷宮前のホルアドの大広間にやってきていた。

辺りは出店があっちこっち立ち並び商売競争でしのぎを削っているのがわかる。

そんな中、俺達はメルド団長が現在オルクス大迷宮に入るための受け付けを済ませている最中なために広間で待機していた。

 

辺りで点々と集まり談話しているクラスメイトを見るととてもこれから実戦をする顔つきではない。

ふと、天之河パーティーが集まる場所にいる香織と目が合い軽く手を振ると、香織も天之河にバレないようにこちらに微笑みかけて軽く手を振る。

ちょっとしたやり取りだが地球にいた時と同じようなやり取りが出来て頰が吊り上がるが俺の周りにいたアリサ達にそれは気付かれる。

 

「正人…なに、にやけてるのよ」

「アリサ!?た、ただ未知への探求に心が躍ってるだけで…」

「でも正人くん、香織ちゃんを見てたよね?」

「正人くん、誤魔化しても無駄だと思うよ」

 

アリサがニヤついた顔つきで俺がニヤついていることを問いただし肘で俺の脇をつつく中、俺は咄嗟に誤魔化したがすずかに俺が向いていた目線から香織を見ていたことを当てられ、ハジメですらそれは分かっていたようで、乾いた笑みと共に無駄だと告げる。

 

「でも良かったわ。あんたと香織がまた少しでも昔みたいに戻れて」

「やっぱり、正人くんと香織ちゃんはこうでないとね」

 

にやけてきたアリサも本当に安堵した表情で俺と香織の関係が少しでも修復しているを喜び、すずかも俺と香織の関係を心配していたのだろう。アリサと同じことを言う。

 

「アリサ……すずか……済まなかったな…天之河の一件はまだ片づけてないが……安心してくれて構わない」

 

俺と香織の件で心配させていたことを謝罪し、問題ないと伝える。

そんな中、俺に向けてドロドロした黒い感情を感じ、直ぐに臨戦態勢を取る。

この感じは7年前にも感じたことのある殺気だがここまで醜悪なものは浴びたこともなかった。

俺が直ぐさま臨戦態勢を取ったことでその視線は無くなってしまったために正確な方向までは分からない。

一体誰が……大体の絞り込みでクラスメイトの中にいるということはわかるが理由が分からない。

警戒はして損はないだろう

 

「正人?どうしたの?」

「……殺気だ…誰なのかは判らないが…どうやら恨みを買ったみたい」

「はあ?……どこのどいつよ全く……まあ襲われててもあんたなら大抵大丈夫だと思うわよ?」

「一応俺だけだと思うが…周りが狙われるってこともあり得るからアリサ達もそのことを頭の隅にでも置いておいてくれ」

一応の警告にアリサ達は真剣な表情で頷き。そのしばらくして直ぐに俺達はオルクス大迷宮への受付を終えたメルド団長が戻ってきて直ぐさま俺達はオルクス大迷宮へと入っていった。

 

香織SIDE

 

オルクス大迷宮の中はホルアドの街とは雰囲気が一変していた。

賑やかだった人の歓声は何一つ無く。あるのは薄暗く壁に埋まっている石から発せられる続く通路と異様な気配。それが私達をいつもの日常から隔離された空間なのだと実感させるには充分だった。

メルド団長を先頭に私達は付いていき、しばらくして広間へと出る。

それから先に動いたのは正人くんだった。広間に来てから直ぐに正人くんの表情が険しくなり持っている弓を強く持って、背中の矢筒から矢を取り出して構えている。

すると直ぐに広間の隙間から灰色の毛玉みたいなものが至るところから出てくる。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

早速私達の出番だ。

光輝くんと龍太郎くん、雫ちゃんが前に立ち、自分達の武器を構え、私と鈴ちゃん、恵里ちゃんの3人は後衛だから魔法の詠唱を始める。

ラットマンが雫ちゃん達の間合いに入ると雫ちゃん達は迎撃を始める。

3人とも練習通りで後衛の私達に敵を寄せ付けずにいると私達の詠唱も完了する。

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ……螺炎」」」

 

私達が唱えた、火属性の魔法、螺炎は螺旋状に渦巻く炎がラットマンを吸い上がるように巻き込んで焼き尽くす。ラットマンの断末魔も聞こえ、炎が治まると吸い上げられたラットマンの姿は塵一つも無くなっていた。

辺りを見渡しても敵は居ないみたい…あれで全部だったということだろう

 

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

取りあえず、私達は交替かな?魔物を倒したことにちゃんと強くなれていることを実感しつつ頰上げている。

 

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

肩を竦めたメルド団長からやり過ぎの言葉をもらい少し顔を赤くする私達、後衛……

それから他のクラスメイトと交替しつつ私達は階層を降りていった。そして次は正人くん達のパーティー

前衛にアリサちゃんが身長と同じ程の大剣を構え、中衛に正人くんと南雲くん、後衛にすずかちゃんという4人パーティー

アリサちゃんとすずかちゃんはよく訓練で凄いのは知ってるけど、南雲くんは天職が戦闘向けじゃないし、正人くんに至っては訓練をしているところをあまり見たことはない。

周りは正人くんと南雲くんを蔑んでいるし、私も心配…

だけど正人くんはクラスのために色々と考えてくれているから大丈夫!

 

そしてその時は来た。

現れた魔物大型犬の魔物で見るからに十体以上は居るように見える。

 

「正人、大丈夫か?流石に魔物の数も多いし俺達も…」

「ご心配なく…問題なしです。アリサ…相手は犬だが…大丈夫か?」

「私が犬好きだからって舐めないで!それぐらい割り切ってるわよ!!」

「そうか…」

 

敵を目の前にしても軽い口を叩く正人くんとアリサちゃん、そんなやり取りを少し気が抜けているのでは無いかとメルド団長も肩を竦めて注意しようとした直後、正人くんの声質が変わった。

 

「アリサ!前方にいる魔物を四体ほど抑えてくれ!すずかは初級の氷魔法でアリサの援護!俺とハジメは抑えきれない魔物の処理だ!敵魔物は強靱な牙を持っている!噛み付かれたら一溜まりも無いので注意!」

「「了解!!」」

「りょ、了解!」

 

先程まで軽く話していた正人くんが一変して凜々しく見え、鋭い眼光と共に矢継ぎ早にアリサちゃん達に指示を出しアリサちゃんとすずかちゃんは二つ返事で了承し南雲くんは少し狼狽えながらも返事をする。

そして周りのみんなはというといきなり雰囲気が変わった正人くんの覇気っていうのかな?そんな迫力にやられて唖然としている。

しかもそれは魔物も同じで正人くんに対して物凄く警戒しているように思える。

 

そしてまず前衛のアリサちゃんが大きな大剣を一振りで2体の魔物を切り裂く。

でもアリサちゃんしかいない前衛はやっぱりそれほど多数は抑えきれない。そのためノーマークの魔物がアリサちゃんに襲いかかる。

だけどアリサちゃんに魔物の牙は届くことはなかった。

 

「氷の矢よ敵を穿て! 氷矢!」

 

そう詠唱するのは後衛のすずかちゃん、耳に付けているイヤリング型のアーティファクトで氷の魔法は強化されていることで氷の矢は魔物を凄い勢いで貫いていく。

 

「すずか、助かったわ!」

「アリサちゃんは目の前に集中して!フォローは私がやるから!」

 

信頼しきっている会話にアリサちゃんとすずかちゃんは更に奮起だけれど前衛を抜けて正人くんと南雲くんの方にも敵はやってくる。

 

「き、来た!」

「ハジメ、あの孤立している一体相手が出来るか?やり方は自由だ……出来るか?俺は固まってる3体をやる」

「う、うん!」

 

接近する魔物に怖じ気づく南雲くんだが正人くんはいたって冷静、そんな南雲くんに少し距離のある魔物一体を任せるというと並列して正人くんに向かってきている魔物に向けて弓を構え矢を引いて放った。

放たれた矢は正人くんの持つ弓のアーティファクトの力で風が纏っていて凄い勢いで魔物の眉間に直撃し一体を倒す。

驚くのは此処からだ。

正人くんは矢を放った直後、迫る魔物に向けて駆け出していた。

正人くんの天職は弓使い…つまり距離を置いての戦闘が主なのにわざわざ距離を詰めようとする行いにメルド団長を含め、顔を強ばらせる。

 

「っ!」

 

正人くんと魔物がお互い間合いに入り、狼二体が地面を蹴って正人くんに噛み付こうとする直前正人くんが地面を蹴って飛び込み魔物の真上に飛び越えていく。だがそれだけでは終わらない。

 

「っ!」

 

真上を飛び込んでいる間に矢を持ち弓を構えている正人くんは敵の背面を狙いほぼゼロ距離射撃でまた一体倒す。

残り一体となった狼も背中を飛び越えて背後へと回られたことにUターンしようと足を止めたがそれ以上に正人くんの反撃の方が早かった。

二体目を倒した後飛び込む形の姿勢を空中で一回転して立て直し上手く地面に着地、飛び込みの勢いで着地してもブーツが火花を散らすほどの摩擦を起こしながら滑るがその間にも最後の一体を狙おうと矢を取り出してすぐさまに照準を合わせて射撃

魔物が足を止めた時には既に矢は魔物の目の前、避けることなど出来ずに三体目も正人くんの前に倒された。

これだけのことが僅か数十秒という出来事…

昔から正人くんの家の物置にある弓を使って遊んでいたのは知っているから正人くんが弓の扱いについてはこの中で右に出る人はいないことは知っている。でもここまでとは思えず私は言葉を出せずに絶句した。

ただ一つ言えること……正人くんの実力は私達より既に格段上にいるということだ。

 

そんな正人くんにみんな釘付けになっているが、狙われていたのはもう一人いる。

 

「錬成!」

 

南雲くんだ。正人くんはあの時一体だけ南雲くんに任せていた。

目前に迫ってきている魔物に南雲くんは錬成で目の前に落とし穴を作り出すと避けきれなかった魔物は落とし穴に落ちていき、動きを封じると持っている剣で確実に仕留める。

他とは違い地味だけど錬成師ならではな戦い方に、メルド団長や騎士団のみんなは感心していた。

そして魔物は南雲くんが倒した一体が最後でもう周りには魔物の姿は無い。

 

「状況終了……お疲れ」

「何とかなったわね」

 

周囲を警戒し敵が居ないことを見計らうと漸く警戒を解いた正人くんはアリサちゃん達を労うとアリサちゃん達も警戒を解いて一息を付いた。

 

「よし!良くやったぞ、お前達…だが、正人……何故弓を使うお前がわざわざ距離を詰めたのだ?」

「え?ああ……つい体が反応を……」

「司令塔なのだから無闇に近づくな……よし!先に進むぞ」

 

メルド団長に体が反応して距離を詰めたと供述する正人くんに少しお叱りを受け、気を取り直してまた私達は先へと進んでいく……これならきっと大丈夫だと私はそう思った。

 

 

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