次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く   作:ウィングゼロ

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9話

 

 

正人SIDE

 

俺達の戦闘が終わった後も順調に階層を降りていき、次は今回の終点である20階層。今はその上の19階層で一時的な休息を取っていた。

演習で張り詰めすぎるのは良くないためにメルド団長が労ってくれたのだろう。

 

「ほら、ハジメ、これ飲んどけよ」

「ありがとう」

 

俺達も準警戒態勢で休憩中、いくら労われても此処はダンジョン内なのは変わらないために警戒を解くつもりも無かった。

アリサとすずかも少し離れて二人して談話中……内容もいつもの女子らしい話では無く、先の戦闘での反省会といったものだった。

 

「そういえば、正人くん、どうしてあの時、矢を放った後相手に接近したの?普通は距離を取らないといけないのに……」

 

ハジメはどうやらメルド団長にも指摘された距離について気になっていたようだ。

 

「メルド団長にも言ったけどつい、反射的にだよ」

 

誤魔化してはいるが嘘でもない。

元々7年前の闇の書事件で染みついてしまった戦闘法で矢を射かけ追撃するように弓から双剣に変えて切り裂くという基本的な戦術。

しかしオリオンが無いためにその戦術は使うことはそれを思考が考える前に体が反応して先のような感じになってしまった。

オリオンが現状無い以上、矯正しないと駄目なのだが……中々難しそうだ。

 

「うーん、何か違う気がするけど……正人くんがそういうならそうなんだよね」

 

そう悩んだ顔で首を傾げるハジメ、以外に鋭いが確信までいっていないのでほっとしていると、再びあの気配を感じた

 

「っ!」

 

憎悪に満ちた視線……広間で感じた憎悪より更に研ぎ澄まされていて体が反射的にびくつくが今度は平常を装い気付いていないように振る舞う。

この憎悪がまた来るであろうと見越していただからこそどこに誰がいるのかは把握していた。

今度は逃さない。そう俺は憎悪が感じる方向と頭の中に叩き込んでいた全員の位置をすりあわせて憎悪をぶつけているのかは誰なのかを絞り込む。

 

「……なるほど大体絞り込めた」

「この嫌な視線が誰か分かったの?」

「ハジメ?まさかハジメにも向けてきてるのか?」

 

俺だけだと思っていたがまさかハジメにまで……

もう大凡は特定出来たために視線に気付いた素振りを見せて視線を消すと再びハジメと話し合うがアリサとすずかも2人で話し合っていた話を打ち切り、視線の正体か気になるのか目線を俺に向けていた。

 

「檜山達だ……感じた方向から大体は割り出した。ただ視線は一つだからその誰かまでは……」

 

檜山達の4人の中の誰かまでは絞り込めたがその中の誰かというのはわからない。

 

「またあの4人なのね……わかったわ、その4人をマークして警戒しておけば良いのね?」

「ああ、何もしてこなかったんならそれでいい……もし何かをしてくるんだったら……遠慮なんてしない」

 

そう断言し、アリサ達もそれに頷くとメルド団長から休憩の終了の号令の声が聞こえて俺達も緩んだ気を確り整えると迷宮の奥へと行軍を始める。

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ!気合入れろ!」

 

遂に今回の終点である20階層へと足を踏み入れ、メルド団長が号令により一層、気を引き締めさせようとするが、やはり何処か余裕といった表情が浮き彫りに見える。

 

「正人、少しこっちに来い」

 

そんなクラスメイトの状況を眺めているとメルド団長からの呼び出しでメルド団長の元に向かう。

 

「えっと、何かありましたか?」

「呼んだのは他でもない。此処からは今組んでいるパーティーで戦うのでは無く。他のパーティーのバックアップを頼みたい。」

「メルドさん!?そんなことをしなくても俺達は…」

「自惚れるな、これはあくまでも措置だ。正人には不味い状況にならない限り手は出させん…それで良いな、正人」

「…まあそれで問題なければ」

 

メルド団長の提案に一個人としての感情は押し殺し承諾する。

といっても次に組むパーティーのリーダーである天之河は全然いい顔をしていないのだが…かなり先が思いやられそうだ。

周りに見られないように溜め息を吐き、天之河パーティーのバックアップを任されたので香織の隣に立ってメルド団長の後ろ歩く。

道は狭く横列の布陣を縦長に変えなければならなかった。

そんな通路の途上、俺達は足を止め素早く戦闘態勢に入る。俺とメルド団長は魔物がいることに気付いているが他は止まったから、魔物がいることに気付いたようだ。

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

メルド団長の忠告が飛び、天之河達は辺りを警戒するとせり出ている壁が突如として変色して動き出す。

姿はさながらゴリラで擬態というカメレオンの特性を持つゴリラだ。

 

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

メルド団長からの忠告が飛ぶ、今回、前に出るのは天之河達、俺も香織達と同じく後衛の位置でいつでも迎撃できるように待機している。

 

前衛の3人、まず壁役の坂上がロックマウントの攻撃を捌き、天之河と雫が囲もうと動くが道幅は狭く上手く囲えない。

しかしロックマウントも同じ坂上がどっしり構えているために崩せないという状況。

見事に膠着状態ではあったがそれは直ぐに崩れた。

後退するロックマウントに詰め寄る天之河達しかし、ロックマウントの咆哮が天之河達を襲う。

あの咆哮は図書館の資料で読んだことがある

あれは威圧の咆哮…喰らった相手はしばらく動けなくなるだったか

しかも悪いことに前衛が全員行動不能に…これは手助けした方が良いかと思った矢先、ロックマウントは前衛を突破してくるわけでも無く。横にある岩を持ち上げてこちらに向けて全力投球。

天之河達の頭上を飛び越え飛来する岩石…横にいる香織達も準備している魔法で迎撃しようとしているが……多分気付いてないんだろうな……飛んできている岩は擬態しているロックマウントであることに

俺は魔力感知であれが擬態したロックマウントであることは見破っている。

生憎、危うい状況にならなければ手も口も出せないので俺は構えているだけ……

さあ、どうするのかと見物しているとついに飛んできている岩であるロックマウントが動き出した。

両手を大きく広げ、何故か目が血走り、鼻息も荒い……まるで三世ダイブのようにそれを見た香織達が放とうとしていた魔法を中断して怯えている。

それを見てこれは駄目だと溜め息を吐くと構えていた矢を放った。

勿論狙いはぶれずにロックマウントの眉間に直撃、ヘッドショットで一撃死だ。

ロックマウントの亡骸はそのまま地面へとダイブ、その後ぴくりとも動かない。

 

「…すいません、メルド団長…状況が状況だったので手出しました。」

「いや、良くやった正人…それとな…怖じ気づいて魔法中断してどうする」

 

一応、手を出したことをメルド団長に謝ると、逆に良い判断だったと誉められるが香織達は魔法を中断してしまったことを指摘されしゅんと落ち込んでいる。

 

「あう~正人くん助けてくれてありがとう」

「どういたしまして…でも本来俺が手を出してる時点でアウトだからな。次は気をつけろよ」

 

香織がお礼を述べると俺も素直に受け取り、その後俺が動いたことを指摘してメルド団長と同じく注意するとまたはいっと落ち込んだ様子の香織、さてこれならまた俺は傍観かな?っと目線を前衛に向けると…漸く動けるようになった天之河達の姿が捉える。

だが何故か天之河がキレている。

 

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

 

その言葉で大凡香織達が死の恐怖で怯えたと勘違いしているようだ。

その怒りに呼応するように天之河の聖剣が輝きだして俺は血の気が引くと同時にこの場にいる全員に咄嗟に指示を飛ばした。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ 天翔閃!」

「あっ、こら、馬鹿者!」

「全員!!離れろ!!天之河が大技ぶっ放すぞ!!衝撃による落石の可能性があるために頭上注意!!」

 

その咄嗟の全員に対する指示に動けたのは騎士団と俺のパーティーぐらいで他は訳がわかっていないような顔をしていていた。

天之河はメルド団長の静止も聞かずに上段から聖剣を大きく振りかぶって振り落とすと光の斬撃が見事にロックマウントを両断し奥の壁に激突。

その衝撃で迷宮自体が大きく揺れて天井からはパラパラと破片が振っているが…どうやら幸運にも落石にはならなかったようだ。

 

「あの…バカ…周りのこと気にせずに…!」

 

流石にこれは見過ごせない。仮にもリーダーならなおのことだ。

そんなことを思っているが当の本人は脅威が去ったこれで良いとこっち…正確には香織達に笑顔を向けているがその前にメルド団長の拳骨が下された。

 

「へぶぅ!?」

「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが!崩落でもしたらどうすんだ!」

 

流石の天之河も珍しく反省の色を見せており、自覚してくれたようだ。

そして香織達も天之河の元へ向かっていくのを俺も付いていき、するとメルド団長がこちらに顔を向けてくる。

 

「正人……光輝達の動きを見てどこが悪かったか…いって見ろ」

「え?良いんですか?」

 

その問にメルド団長は構わん、戦いの後の反省会のようなものだと言い切ると俺も今回は言いたかったのでお言葉に甘えて遠慮無くいわせて貰う。

 

「まず、天之河の大技の件は言わずも知れていることだが……2つほどダメ出しするところを言うと……1つは後衛が魔法を中断してしまったこと……もう一つはロックマウントの固有魔法を受けて前衛が全員一時的とはいえ行動不能に陥ったこと……この2点だな」

「それは……言い得て妙すぎて……反論できないわ」

「だ、だが…囲もうにも道が狭かったんだ!あれじゃあどうすることも……」

「天之河達がその気になれば瞬殺できていた……囲む意外性にも方法はいくらでもある。まず坂上が敵の攻撃を捌き敵の体制を崩す。その後坂上は後退して入れ替わるように雫と天之河が切り込めば倒せていた」

 

俺が言うダメ出しに雫はうっと指摘されている部分がよくわかるようでぐうの音も出ない表情。天之河は俺に言われるのが嫌なのか苦し紛れに反論するがそれをまっとう正論で論破して頭の中で組んだ戦術を口にすると天之河は最早言葉も出せなかった。

 

「それと後衛の件に関してはこれからもああいう後衛攻めもあり得ると仮定することだな……一々怖じ気づくと正直話にもならなくなってくるし」

「う~ごめんなさい」

 

後衛の問題に関しても一々怯えて魔法がキャンセルされては話にもならないために注意すると香織は図星だとわかっているために一層に落ち込む。

 

「そういえば正人…あなた投げられたロックマウントについてあんまり驚いてなかったけど…気付いていたの?」

「ああ、戦闘に入る前からな」

「なっ!?ならどうして教えてくれなかったんだ!?」

「天之河…俺からは口出しは出来なかったのわかってるよな………それにお前気配感知と魔力感知、両方持ってるのに気付かない方が可笑しいんだよ!もう少し目で見えるものだけじゃなく気配にも気をつかえ!」

 

雫が俺がロックマウントに眉一つ変えずに撃破したことに薄々気付いていたのではと指摘すると俺は正直に答える。

それに対してまた天之河がくいついてきたがこれも論破。

 

言いたいことは全て言ったために香織達が天之河を慰めているのを見ているとふと香織が天之河の攻撃で露出した壁に生えている鉱石に目を囚われる。

 

「……あれ、何かな?キラキラしてる……」

 

青く光る鉱石に香織は目を奪われているようで香織が指を指した方向…鉱石の方向に全員の視線が向くとメルド団長が興味深く、鉱石について説明する。

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

グランツ鉱石…メルド団長の話によるとどうやらイヤリングや指輪などの女子にプレゼントする装飾品などで人気のある宝石とのこと……

青白く光るグランツ鉱石に女子達はうっとりしていて香織も素敵っと口から零すとチラチラと俺の方を見て頬赤くしている。

俺にどうしろと?っと内心危険なトラップの可能性を考慮して取りには行かない俺だが……他の男に限ってはそうというわけではない。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

そういったのは檜山だ。

檜山はグランツ鉱石に向かって走りだし崩れた壁の瓦礫を登っていく。

勿論メルド団長はトラップの可能性があるために静止させたが檜山の奴は聞こえないふりをしてグランツ鉱石に目指す。

 

「団長! トラップです!」

「ッ!?」 

 

メルド団長と騎士団員の話に俺は青ざめた、咄嗟に檜山を止めようとしたがもう遅い、檜山はグランツ鉱石に手を当てるとトラップが作動。

魔法陣は部屋全体に広がり輝きが増しているのがわかる。

しかもこれは恐らく転移術式…俺達は何処かへ飛ばされるということだ。

勿論安全な場所とはほど遠い危険な場所に…

咄嗟にメルド団長は後退を指示するが時既に遅し…

俺達は光包まれ…転移トラップに巻き込まれた。

 

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