ありふれてはいけない職業で“世界”超越   作:ユフたんマン

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AU30000超えましたァア!!更にお気に入りが1000件を超えました!!ありがとうございます!!これからもこの作品をよろしくお願いします!!!

すごく難産でした


第2ラウンド

俺とハジメは落ちる、落ちる。底は見えない。それは、もう底なんて無いんじゃあないかと思うほどだ。

 

俺とはかなり離れて落ちているハジメは、落下の恐怖で気絶してしまっている。かく言う俺は落ちる恐怖は感じるが、このように考えに耽る程の余裕がある。

やはり吸血鬼に心が引っ張られてしまったのだろうか。昨日のことといい、日本にいた頃と価値観がかなり変わってしまった。親しい仲の人間以外は食糧としか思えなくなってきている。

 

先程から視界の端で横穴が何度か通り抜けた。つまり助かる可能性もあるということだ。ハジメの方を見る。そして突如、ハジメの姿が消えた。 

否、崖の穴から溢れ出した鉄砲水でハジメが吹き飛ばされたのだ!

そのままハジメは横穴に運よく入り込み、ウォータースライダーのように滑り込んで行ったのだ。

 

「何ィィイイ!!?」

 

ハジメが滑り込んだのはかなりの深層!!レベル、ステータスの低いハジメでは殺される!!助けに行かねば…ッ!!

 

しかし宙にいるため何も出来ない。そのまま俺は落ちていく…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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あれからどれだけ経っただろう…一日?二日…?ずっと同じ景色を見ていて、既に時間感覚がおかしくなってしまった。終わりのないのが終わりとはよく言ったものだ。

この奈落、全く底が見えない。落ちても落ちても底は真っ暗。カーズ様みたいに考えるのを辞めようかと本気で考えるほどだ。

 

 

 

しかし突如底が見え、俺は地面に叩きつけられる。

 

「ウゲェエ!!?」

 

体は衝撃でグシャッと音を立て、風船のように破裂した。内臓が飛び出し、それも衝撃により破裂する。

これで終わりか…と思い、再生しながら周りを見るとどうやら違うようだ。

俺が今いるのは65階層と同じような橋の上だ。しかし65階層と違うのは、人工?で出来たものではなく、自然で出来たものだということだ。

崖から生えた大樹が大きな橋の代わりとなっているのだ。それも大きく、穴を半分程埋め尽くしている。

更に周りを見るとベヒモスが満身創痍でこちらを睨んで佇んでいる。

 

 

さて、ここからどう登るか……………………………………ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何でベヒモスがいんの?

 

 

 

 

 

 

 

 

「グゥガガァァァァアアアアッッ!!!」

 

 

雄叫びを挙げ、ベヒモスは頭部を赤熱化させ、突進してくる。俺は再生しきった体を動かしそれを回避する。

 

何でここにベヒモスが!!?あいつまだ生きてたのか!!?何つーータフネスだ!?化物か!!クソッ!!

 

ブーメランな悪態を吐きながらベヒモスと距離を置く。ベヒモスを観察すると、先程も述べた通り、落下のダメージを受け満身創痍だ。普通はこの高さなら潰れると思うが、この大樹、凄く柔らかい。俺が弾けたのは耐久性の違いだろう。

ベヒモスは驚異的な耐久性であの程度のダメージで済んだのだろう。本当に化物である。

そうこう考えている内に、ベヒモスはこちらに向き直り再度、頭部を赤熱化させ、突進する準備をしている。

 

「穏やかじゃあないな…!落ちたもの同士仲良くしようじゃあないか…!!」

 

ズボン代わりにしていたマントと、龍太郎から奪い取ったタンクトップの残骸を破り捨て、俺は構える。

 

「さぁ!!第2ラウンドを始めようかッ!!」

 

ベヒモスと俺は同時に駆け出した。

 

 

 

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ディオ・ブランドー 17歳 男 レベル:28

天職:吸血鬼

筋力:856

体力:295

耐性:168

敏捷:351

魔力:186

魔耐:128

技能:吸血・自動回復・不老不死・肉体操作・異常状態無効・痛覚軽減・豪力・豪運・五感強化・日光耐性・◼️◼️紋[◼️・◼️◼️◼️◼️]・魔力操作・言語理解

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その頃、ハイリヒ王国王宮内では…

 

召喚者達に与えられた部屋の一室で、雫は暗く沈んだ表情で未だに眠り続ける香織を見つめていた。

雫は親友を見つめながらディオとの出会いを思い出す。

 

 

 

 

あれは今から9年、いや…10年ほど前だったかしら…

あれは私が小学生の頃、光輝と一緒にいるのを気に喰わなかった少女達が私に嫌がらせややっかみを受けるようになった。

それを光輝に相談するも、事態を悪化させてしまい、光輝にバレないような陰湿な嫌がらせが多くなった。

そして複数人の少女達に、体育館裏に呼び出された。簡単にいえば脅迫された。今までのことを光輝に言えばどうなるかわかってんでしょうね?ということだ。

 

そしてそこにディオが現れた。彼は唐突に現れ、少女達を睨み、常人ならざるオーラを纏いながら悠然と佇んでいた。オーラにオノマトペを付けるなら、ゴゴゴゴかドドドドだろう。

 

睨まれていた少女達は萎縮し、その場から慌てて逃げていった。助けてくれた彼に礼を言おうとすると、既に彼はその場を去っていた。

そこから彼との付き合いが始まった。ディオがひと睨みするだけで、今までの嫌がらせは全てなくなった。

私を守ってくれる存在、そして彼の逞しい背中。そんな彼に私、八重樫雫は恋をした。

 

 

 

 

そこからディオは二回も私と違う人と付き合ったんだけどね…

 

 

雫は昔のことを思い出しながらも、香織の手を取る。

香織に早く目覚めて欲しいと思いながらも同時に眠ったままで良かったとも思っていた。

 

帰還を果たしハジメとディオの死亡が伝えられた時、王国側人間は誰もが唖然としたものの、それが無能のハジメと知ると安堵の吐息を漏らしたのだ。

ディオは多くの人間から悔やまれたが、ハジメは真逆の反応だったのだ。

 

そして雫は、初めて吸血された時に、ディオから見せられたステータスプレートを思い出す。

 

 

『雫…君にだけはこの技能を教えておこう…このことは私とメルド団長、そしてリリアーナ王女しか知らない。決して他言はしないでくれ…』

 

 

見せられたのは自動回復と不老不死という技能。どうやら昔にこの技能を持ったと思われる人物が封印されたという。

帰還した際にメルド団長からも、誰にも言うなと釘を刺された。

 

香織はあの日から一度も目を覚ましていない。医者の診断では精神ショックから心を守るため防衛措置として深い眠りについているとのことだ。故に、時が経てば自然と目を覚ますとも。

 

「どうかこれ以上、私の優しい親友を傷つけないでください」

 

その時、不意に握り締めた香織の手がピクッと動いた。

 

「!?香織!聞こえる!?香織!!」

 

雫が必死に呼びかけると、閉じられた目蓋が震え始めた。更に雫が呼びかけると、その声に反応してか、香織の手がギュッと雫の手を握り返す。

 

そして香織はゆっくりと目を覚ました。

 

「香織!」

 

「……雫ちゃん?」

 

香織は焦点の合わない瞳で周りを見渡す。やがて、意識が覚醒してきたのか雫に焦点を合わせ、名前を呼んだ。

 

「ええ、そうよ。私よ。香織、体はどう?違和感はない?」

 

「う、うん。平気だよ。ちょっと怠いけど…寝てたからだろうし…」

 

「そうね、もう五日も寝ていたのだもの…怠くもなるわ」

 

起き上がろうとする香織の補助をし、苦笑いしながら、どれくらい眠っていたのかを伝える雫。香織はそれに反応する。

 

「五日?そんなに…どうして…私、確か迷宮に行って…それで…」

 

徐々に焦点が合わなくなっていく目を見て、不味いと感じた雫だったが、時既に遅く、香織が記憶を取り戻した。

 

「それで……あ………………南雲くんとディオくんは?」

 

「ッ…それは…」

 

雫の苦しげな表情で悩む姿を見た香織は、自分の記憶にある悲劇が現実であったことを悟る。だが、そんな現実を受け入れられるほど香織はできていない。転移組で唯一受け入れられるとすれば、今はいないディオくらいのものだろう。

 

「…嘘だよ、ね。そうでしょう? 雫ちゃん。私が気絶した後、南雲くんは助かったんだよね?ディオくんが助け出してくれたんだよね?ね、ね?

ここお城の部屋だよね?ディオくんは自分の部屋で寝てるよね?南雲くんは…訓練かな?訓練所にいるよね? うん、私、ちょっと行ってくるね。南雲くんとディオくんにお礼言わなきゃ……だから離して?雫ちゃん」

 

現実逃避するように次から次へと言葉を紡ぎハジメとディオを探しに行こうとする香織。その腕を掴み離そうとしない雫。

 

雫は悲痛な表情を浮かべながら、覚悟を決め、香織を見つめる。

 

「香織…わかっているでしょう?…ここに彼らはいないわ…」

 

「やめて……」

 

「香織の覚えている通りよ」

 

「南雲くんは…ディオは…」

 

「いや、やめてよ……やめてったら!」

 

「彼らは死んだ……」

 

「ちがう!死んでなんかない!絶対、そんなことない!どうしてそんなこと言うの!いくら雫ちゃんでも許さないよ!!」

 

イヤイヤと泣きながら雫の拘束から逃れようと暴れる香織。それを絶対に離してやるものかとキツく抱きしめる。

何故ならまだ話は終わっていないからだ。

 

「彼らは死んだ……とされているわ…」

 

雫はディオに言われたことを思い出す。

 

 

『決して他言はしないでくれ。…だが、もし何かがあれば、香織にならば言ってもいい』

 

 

泣き喚く香織に囁くように雫はディオの技能について説明する。自動回復、不老不死という技能と、それを秘密にしていた理由を…。

 

「ディオは絶対に死なない。いや、死ねないの方がいいのかもね…だからあんなことじゃ彼は死なない。南雲くんのことも大丈夫よ…

絶対ディオは南雲くんを助けて連れ出してくれるわ…!!」

 

香織を落ち着かせるように軽く、優しく抱きしめる雫。それに徐々に落ち着きを取り戻した香織は雫に、ゆっくりと話しかける。

 

「雫ちゃんはディオくんのこと、本当に信じてるんだね…」

 

「そうよ…だってディオは私の大切な人だもの…」

 

香織は、雫の胸に埋めていた顔を、ゆっくりと離し、真っ赤になった目を拭いながら顔を上げ、微笑みながら、決然と宣言した。

 

「雫ちゃん、私、信じるよ。南雲くんとディオくんが生きて…、生きて帰ってくるって」

 

香織は両手で雫の両頬を包むと、微笑みながら話す。

 

「私、もっと強くなるよ。それで、あんな状況でも…今度は守れるくらい強くなって、自分の目で確かめる。南雲くんのこと…ディオくんのこと。……雫ちゃん

力を貸してください」

 

雫は香織の目を見つめ返す。香織の目には覚悟が宿っていた。狂気や現実逃避の色はない。そんな香織の目を見て雫は笑う。

 

「もちろんいいわよ。最後までとことん付き合うわ」

 

「雫ちゃん!!」

 

香織は再度、雫に抱きつき「ありがとう!」と何度も礼をいう。「礼なんて不要よ、親友でしょ?」と、どこまでも男前な雫。

 

その後、光輝と龍太郎が香織の様子を見にくると、抱き合っている二人を見て誤解したのは余談だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雫ちゃん、『ディオくんが大切な人だ』ってやっぱりそういうことなの?」

 

「な、何言ってるのよ香織!!?」

 

いつもは鈍感の癖に今回は鋭かったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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そして王宮の別室では……

 

「俺は悪くない…悪くないんだ…あいつらが悪いんだ…あの無能は白崎さんに気をかけられてるというのに何もしない屑。そしてあのディオ・ブランドーは八重樫さんとあんな関係になりやがった…!!」

 

薄暗い部屋で独り言を言っている男の周りには、檻に入った小さな動物や二十階層で出会ったコウモリのような魔物がいた。どれも生気がない瞳で、虚空を見つめている。

 

そして、男は、ディオの部屋での出来事を、声だけだが聞き、知っているのだ。少し誤解しているが…

 

「そしてあの無能はこの俺を指し退いて英雄気取り…!!俺と同じようにあいつに憎悪を抱いている奴がいて助かったぜ…一緒にあの吸血鬼を始末することが出来た…!!

皆は天之河を勇者、勇者と称え女性は熱視線を送る。俺の方がずっと上手く出来るのに…モブ扱いしやがって…!!」

 

男は怒りを吐き出しながらコウモリを撫でる。

 

「よくやったな、よくあの無能を落としてくれた。これで白崎さんも八重樫さんも俺を見てくれるだろう…!!俺がモブってことじゃないことを無能達に分からせてやる…!!」

 

男の目は暗く淀んでいた。

 

 

 




ステータスはファングウルフを吸血したことでパワーアップしました。
技能の剛力は豪力に進化しました。

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