「
その言葉をトリガーに、金色のオーラがDIOを包むように纏い、半透明の逞しい体つきをした人型の像が背後に現れる。
その姿は三角形のマスクを被ったような顔、背中にはタンクのような物体が付いてあり、手の甲には時計のようなマークがある。
肌は白く、纏っている装備は全て、DIOの髪色のように黄金色だ。
そしてDIOは一言、この像、スタンドの能力を発動させる言葉を声に出す。
「“時よ止まれ”!」
その瞬間、世界から音が消えた。何も聞こえない、誰も動かない、それがDIOのスタンドの能力。“時間停止”
光をも止め、背景は灰色になる。決して何者も干渉されることのない絶対的領域。
そして…
「止まった時の中は一人…このDIOだけだ…!」
DIOは目の前にいる黒頭に自身の拳を叩き込み、飛散させる。それは弾けると同時に再度止まる。
1秒経過…
黒頭を始末したDIOはハジメの元へ瞬時に移動し、ハジメを光線の射線から離す。もう少し時間を止めるのが遅ければハジメはこの光線に全身巻き込まれていただろう。顔に掠るだけで済んだのは幸運だった。片目は蒸発してしまったが…
2秒経過…
「“そして時は動き出す”」
その瞬間、世界に色彩が戻り、時は再び刻み始める。
光線は先程までハジメがいた場所を呑み込み、後ろの柱や壁を貫き、ハジメのシュラーゲンにも負けない程の威力を見せる。
だが無意味だ。
黒頭は突如飛散し、何が起こったのか分からぬまま意識を掻き消される。
銀頭は、ハジメが仕留め切れなかったのと、黒頭が何が起きたかわからない内に破壊されたことを理解し、怒りの咆哮を上げる。
口に光を圧縮され、放とうとしたその瞬間、再度DIOが時間を止める。
「ザ・ワールド…!」
またしても時が止まり、DIOだけの世界が展開される。
DIOはヒュドラの背中が見える上空へ浮遊し、腕を組みながらザ・ワールドをヒュドラへ向かわせる。
[無駄ァ!!]
ザ・ワールドが吠え、ヒュドラの背中に拳を突き出す。その一撃でヒュドラは凹み、鮮血を撒き散らす。
まだまだ終わらない。まだ始まったばかりだ。
更に反対の腕を振りかぶり突き出す。重く、速く、ザ・ワールドは連続で拳を突き出す。
[無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァアァアァァアアッ!!]
2秒経過…
「そして時は動き出す!!」
グゥルアァァァアアア!!?
時が動き出したと同時に大きな爆音、ヒュドラの悲鳴が空間に響き渡る。ヒュドラの肉体はドンドンと爆音を鳴らしながら潰れていき、数秒後にはヒュドラと思われる肉塊しか、その場に残っていなかった。
「これが“世界を支配する”能力、ザ・ワールドだ…!」
ザ・ワールドはDIOの体に戻るように消え去り、それと同時にDIOはそのまま地面に落下し、意識を手放した。
「ディオ!!?」
突如起きた怪奇現象に困惑しながらも、ハジメは神水を飲みながらDIOの元に駆け寄る。
容態を確認し、気絶していることがわかり、ハジメは安堵する。
そしてユエの方を見ると、思わずハジメは硬直してしまった。
ユエが…ユエが瀕死の状態だったからだ。硬直が解けた瞬間に、ユエの元へ駆け寄り血をを飲ませる。
ハジメの血を飲むこと数十秒、ユエの荒くなっていた呼吸も落ち着き、普段と同じように話せるようになるまでに回復した。そしてハジメが尋ねる。
「何でユエが倒れてんだ!?」
ユエはその質問に、DIOに視線を向けながら答える。
「…ディオに、血を吸われた…」
その言葉を聞いた瞬間、ハジメの頭の中は真っ白になった。
前に言っていたDIO達の言葉を思い出したからである。
『吸血鬼同士で吸血すれば、どちらも死ぬ』…と。
DIOは不老不死のため死なない。しかしユエはどうだ。彼女は不老であり再生もするが不死ではない。下手をすれば死んでいたかもしれないのだ。
自分の好意を抱いてる相手を親友があと一歩のところまで追い詰めたのだ。
「ディ…ディオが…ユエ…を、…」
そんなハジメの心を読んだようにユエは付け加える。
「でもディオを責めないであげて…彼もハジメを助けるために必死だった…。それに吸血する際に『すまないユエッ!!』って言ってたし…」
「そ、うか…」
ユエが死んでいたかもしれないし、しなければ自分が死んでいたかもしれない。複雑な心境でDIOを見ながらハジメは呟く。
「起きたら礼を言わねーとな… 今までありがとう…ディオって…」
一瞬、奈落に落ちる前のハジメの表情に戻った。ほんの一瞬だった…のにユエはしっかりとその優しげなハジメの表情を目に焼き付けていた。
ハジメはまだ本調子ではないユエを背負い、DIOの両足を掴み、引き摺る形で奥の、ひとりでに開いた扉へと向かっていった。
流石のハジメも裸の男を背負いたくはなかった。例え親友でも…
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俺が目を覚ますと知らない場所だった。白いベッドに寝かされ、薄いシートを掛けられている。
そういえばヒュドラはどうなったんだ?俺が生きて…いや、俺死なないな…俺がこうしてベッドに寝てるってことはハジメがどうにかしてくれたのか?
え〜と…始めから思い出してみよう…
ヒュドラの部屋へ転移された。黒頭を除く全ての頭を撃破した…そこで銀頭が突如出て来て……ハジメに光線を…撃って…咄嗟に……
ユエの血を……吸って……そこから……
思い出せない……俺は一体何をしてたんだ…?そこから何を…
部屋を見渡すと、等身大の縦鏡があり、その前に立つと自分の身体の変化に気づく。本来、吸血鬼は鏡に写らないようだが、どうやらジョジョの吸血鬼は問題ないようだ。
俺……DIO様になってるだとーーーッ!!?
え!!?何故!!?いつこんな変化を!!?じゃ、じゃああれも出せるのか!!?
「ザ・ワールドッ!!」
……………出て来たっちゃ出て来たけど…何で下半身が無いんですかねぇ…しかもシルエットだし。ゲームの邪悪の化身DIOの奴っぽい。
時を止められんのか?
「時よ止まれィ!!」
瞬間、全ては灰色になり、光も、音も、風も止まる。
だが一瞬で元に戻ってしまった。どうやらまだザ・ワールドは0.5秒程しか止められないようである。まぁ無くとも十分チートだろう。あの化け物並みのハジメのステータスと同じくらいだからな。
本人は俺の方が絶対高いと言うがわからん。
取り敢えずスタンドの力を試してみるか…試せる場所は…
ひとまず外に出ようとドアを開けた瞬間、ハジメと目があった。そっとドアを閉めた。
「おいおいおい!?何閉めてんだよ!!」
「いや、私に白髪、赤目、眼帯、義手のような厨二要素満載の知り合いはいないのでね…。いや、一人いたな…厨二病の…もしかしてハジメくんかい?」
少しの静寂…するとカチャッという音が聞こえ、ハッ!となった頃にはドパンッドパンッ!とドア越しに撃たれ俺の腕が千切れ飛ぶ。
「ウゲェ!!?待て待て待てッ!!!私は目覚めたばかりだぞ!!そんな私に!!」
「うるせぇぇええ!!」
俺とハジメの追いかけっこは30分程続いた。
追いかけっこが終わるとヒュドラとの戦いの後を教えてもらった。ついでに記憶が抜け落ちたところも。
どうやらヒュドラは俺が殺したらしい。瞬間移動を使いハジメを助けたと思ったら宙から落ちて来て、ヒュドラもいつの間にか肉塊に変わっていたという。
訳がわからないよ。
まぁ、そこで俺がザ・ワールドで時止めをしたのだろう。瞬間移動とか俺出来んし。それしかありえん。
ヒュドラを倒した俺はすぐに気絶したそうだ。ハジメは俺を引き摺りながら奥の扉の中に入ると、そこは反逆者の住処だった。らしい。
そして俺をベッドに寝かせてから、ハジメは神水を、ユエは血を飲みまくり、回復するのに徹していたそうだ。
どうやらヒュドラの光線には毒が含まれていたらしく、かなり危ない状態だったとか。
その後はこの住処を探索してたらしい。
ついでに俺は一週間も寝ていたとか…寝過ぎだろ俺…一体どうした?
「そうだったのか…で?その厨二病満載のその腕はどうした?」
「厨二病言うな!!…これはオスカーが作っていた義手を俺が改造したもんだ。最近付けたばかりだからな、まだ馴染んでねえ」
ほ〜ん…まあハジメが手を加えたのなら強力な武器になるのだろう。そりゃよかった。
「あとディオについて来て欲しい部屋がある。いいか?」
「違うぞハジメ」
「は?」
「Dに、I、そしてO。私はディオではない。DIOだッ!!」
「いや、変わってないだろ…」
変わって無くても文面じゃあ意味があるんだよ!スタンドも出せるようにもなったしな!
「ハァ…じゃあDIO、ついて来て欲しい部屋がある。いいか?いいな?」
なんだその溜息は!!やれやれ、仕方ないなぁ◯び太くんはって言ってる青ダヌキのような態度とりやがって!!
まぁいいか。
「いいだろう」
「じゃあ行くぞ」
俺は、立ち上がり部屋を出るハジメの後について行った。
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ハジメの後を追い、たどり着いたのは、中央に大きな魔法陣が刻まれた部屋だった。その奥には豪華な椅子に骸骨が座っている。
ハジメに魔法陣の上に乗れと言われ、言われるがままに乗ってみると、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げた。
やがて光が収まり、目を開けると、そこには黒衣の青年が立っていた。
そこから長い長い話が始まった。内容からしてエヒト神は人類、全ての種族の敵だということがわかった。マジでサイコな神だ。人間を玩具としか思ってねぇ。しかもそれを人類は崇めている。最悪だな…まぁ俺やハジメ、ユエには関係ないが。
そう考えていると、このオルクス大迷宮の創造者オスカーの長い話が終わり、穏やかに微笑む。
「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。
ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。
…君に力を授ける。どのように使うのも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには使わないで欲しい。
話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを…」
そう話を締めくくり、オスカーの姿はスッと消えた。すると脳裏に何かが侵入してくるような不快感を一瞬感じたが、すぐに治った。
「神代魔法を無事手に入れたようだな。
さて、これからディ…DIOはどうする?俺とユエは故郷の日本へ帰るために他の大迷宮を回って、他の神代魔法を習得するつもりだ。」
う〜ん…これから…か。それは…
〜〜〜〜〜
『「“天国”へ行く」』
「は?天国?」
『「あぁ、私は精神が天国にたどり着くことが出来ると本当の幸福がそこにある…と考えていてね… ハジメ、君は幸福というものはどういうものだと思う?」』
その質問にハジメは少し悩み、答える。
「それは全部個人の匙加減じゃないか?道で金を拾った、幸せな家庭で育った、運命の出会いをしたとか…」
『「それも幸福だろう…だが、本当の幸福ではない。本当の幸福とは、無敵の肉体や大金を持つことや、人の頂点に立つ事では得られないということはわかっている。しかし“天国”にはそれがある。
真の勝利者とは“天国”を見た者の事だ……どんな犠牲を払ってでも私はそこへ行く」』
突如雰囲気が変わったDIOに圧倒されながら頷くハジメ。そして尋ねる。
「じゃ、じゃあDIOは俺達と一緒に来ないのか?」
『「いや、私も同行する。“天国”へと向かうには条件があるからな…」』
「条件?」
『「あぁ、特別にハジメにだけ“天国”へと到達する方法を教えてやろう。
必要なものは私のスタンドである
必要なものは信頼できる友である
必要なものは極罪を犯した36名以上の魂である
必要なものは14の言葉である
必要なものは勇気である
朽ちていく私のスタンドは、36の罪人の魂を集めて吸収
そこから新しいものを生み出すであろう
最後に必要なものは場所である
北緯28度24分、西経80度36分へ行き…次の“新月”の時を待て…
それが“天国の時”であろう…
これが“天国へと辿り着く”唯一の方法だ」』
「そ、そうか…じゃあDIOは俺達と共に来るってことだな?」
DIOの話している内容を半分も理解出来ていないハジメは話題を逸らすように尋ねる。
「そうなるな」
その瞬間、DIOからの威圧感、圧迫感が消え去り、通常のDIOに戻っていた。
(というかさっきからスタンドって何だ?)
〜〜〜〜〜
俺は天国に行かなくてはならない… 理由はわからない…これが俺の進むべき道だ…
突然だけど帝国勢と光輝達の絡みのシーンいるかなぁ…展開殆ど変わらないし…
後、人型のスタンドのラッシュってどっちが叫んでるのだろか…