ありふれてはいけない職業で“世界”超越   作:ユフたんマン

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スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う

魔法陣の光に視界を満たされた。何も見えないが空気が変わったのは実感した。奈落の澱んだ空気とは明らかに異なる。

しかし何故か日光に晒された時の疲労感、怠惰感が襲ってこない。しかし夜のように力は湧き上がらない。

 

つまりはだ…

 

 

 

 

洞窟じゃねーか!!

 

「なんでやねん」

 

ハジメも隣でツッコミ少し落ち込んでいる。

そんなハジメを慰めるようにユエは自分の推測を話す。

 

「秘密の通路…隠すのが普通…」

 

そりゃそうだなと思いつつも俺達は道なりを進んでいった。途中にトラップや封印された扉などが多々あったが、全てハジメの持つオルクスの指輪に反応し、勝手に解除されていった。何事もなくてよかったでござる。

 

更に進むと、遂に光を見つけた。それと同時に体の具合が悪くなる。間違いない。あれは日光だ…!

 

ハジメとユエはニッと笑みを浮かべ駆け出した。当然具合の悪い俺は置いていかれる。

 

待ってッ!!行かないでッ!!

 

仕方なく『宝物庫』から議員が乗っていたような自動車のクレスタの形をしたモノを取り出し、それに乗車する。

色は赤色、フロントガラスや窓は、俺が生成魔法で作り出した“日断石”という魔石がコーティングされていることで、外の日光が遮断されており中は快適。しかも耐久も高く、突如フロントガラスを割りに来るやからがいても、一切傷つかない作りになっている。

ハジメの錬成で作ってもらった逸品だ。

 

既に姿が見えなくなったハジメ達を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ハジメ達を追い、車を走らせ迷宮の外へ出ると、既にハジメ達は魔物達に囲まれていた。手助けする必要もないが、なんとなくハジメ達の隣を走り抜け、魔物達を轢き殺していく。

 

ガァァァアアア!!と断末魔を上げながら屍と化していく魔物を見ながら少し口角を吊り上げる。

今の俺には、子供が蟻で遊ぶように、蟻を魔物に置き換え、子供が虫を玩具とするように俺は魔物が玩具にしか見えない。相変わらず不味そうな血を撒き散らしながら息絶えていく。こういうのを見ると突如来る“発作”が抑えられている気がするのだ。

 

ハジメも隣でドンナーを撃ち、魔物の頭部を次々と破壊していく。それはまさに戦いと呼べるものではなく、蹂躙と言う方が正しい。俺にとっては遊戯だったが。

辺り一面が魔物の屍で埋め尽くされるのに3分もかからなかった。

 

俺達は手応えのなさを実感しつつも、俺は再度周りを見渡す。

高さ一キロはある断崖絶壁に挟まれている。名前はたしか【ライセン大峡谷】だったな…断崖の下では魔法が殆ど使えないというクソ仕様。お陰でザ・ワールドも出すのが辛い。いつもの十倍は魔力が持っていかれる。

 

ライセン大峡谷は基本的に東西に伸びた断崖だ。そのため脇道などが殆どなく、道なりに行けば迷うことなく目的地に到着出来る。

最初の目的地は獣人族が住んでいる樹海だ。因みに反対方向に進めば、砂漠地帯だそうで、そこを抜けるならある程度支度してからということになった。

 

 

ハジメは俺と同じように“宝物庫”から魔力駆動二輪、所謂バイクを取り出し、それに颯爽と跨り、後ろにユエが横乗りしてハジメの腰にしがみついた。

一緒に乗らないのは俺があの二人の関係を邪魔しないためである。というか目の前でイチャイチャされたらたまったもんじゃあない。爆ぜろ。

 

 

そんなこんなで俺達はこのライセン大峡谷の何処かにある迷宮の入り口を探しながら軽快に車とバイクを走らせていく。

その間もハジメはバイクを走らせながら魔物を撃ち殺していく。俺?俺は見学だよ。スタンド出すのしんどいし。

 

 

 

暫く車を走らせていると、それほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。まあまあの威圧だ。奈落の魔物共には劣るが、ここらの奴らの中ではかなりのものだ。

突き出した崖を周りこむと、その向こう側に大型の魔物が現れた。

頭が二つという異形で、ティラノザウルスのような姿をしている。

だが真に注目すべきは双頭ティラノザウルスではなく、その足元をピョンピョンと飛び回るウサミミを生やした少女だ。

 

俺とハジメは車とバイクを止め、そのウサギを見つめる。ハジメはウサミミの少女が何故こんな場所にいるのか疑問に思っていたが彼のことだ。彼女は所詮赤の他人、助けるだけ無駄、と考えているだろう。

 

 

だが俺は違う。俺は再度、魔物から逃げ惑う彼女を凝視する。健康そうな体つきをしておりとても美味しそうだ。

 

食べたい…飲みたい…彼女の血が……!

 

俺には抑え切れなかった。奈落に落ちる前ならこうはならなかっただろう。なにせ魔物の血は吐き気を催すほど不味い。ハジメの血は魔物の血よりはマシだが正直言ってマズい。魔物を喰っているのもあるだろう。美味い美味いと血を飲んでいるユエに頭大丈夫か?と聞きたいレベルで…だ。

 

 

それがどうだ。彼女の血は絶品だろう!甘美であろう!不味いモノばかり食べていた奴が、突如美味いモノを目の前に置かれたらどうする!?どうなる!?

 

 

 

食べるしかないよなぁ!!?

 

 

 

「ザ・ワールドッ!!!」

 

[無駄ァッ!!]

 

こちらに気づき泣きながら助けを請う彼女の頭上にザ・ワールドが現れ、ティラノザウルスの胸を魔石ごと殴り消し飛ばす。慈悲はない。

ザ・ワールドは一仕事を終え、満足そうな顔をしながら消えた。

 

一瞬にして屍と化したティラノザウルスは地響きを立てながら倒れる。その衝撃でウサミミ少女は吹き飛ぶ。狙いすましたかのように俺の車の方へ。

 

「きゃぁああああー!た、助けてくださ〜い!」

 

俺は体が重くなり、体調が悪くなるのを無視し、ボロボロになったウサミミ少女を優しく包み込むようにキャッチし、そのまま流れるように首筋に歯を立てた。

 

 

 

 

 

 

 

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ウサミミ少女は赤い何かの方へ、魔物が倒れた衝撃で吹き飛ばされる。彼女は確信していた。こちらを見る白髪の男性と金髪の少女、そして彼女を受け止めるために外へ出てきた男性が、彼女を、家族達を助けてくれると……!

 

 

 

 

優しく腕に包み込まれた少女は、自分のことを助けてくれた男性の顔を見た。心臓の鼓動が跳ね上がった。

絶世の美青年。そんな男性が微笑みながら自分を至近距離で、夢にまで見たお姫様抱っこで見つめているのだ。顔に熱が篭る。

 

「あ、ありがとうございま、ヒャッ///!?」

 

お礼の言葉をなんとか絞り出すと、それを言い終わる前に突如彼は顔を近づけてきた。変な声が出たのは仕方ないだろう。

 

顔が近づくにつれて彼女は目を瞑り唇を少し前に出し、目の前の男性の唇がくるのを待つ。彼女だって女だ。ウサギは一年中発情期とかいうが今は関係ない。

 

期待して待った…次の瞬間、生物としての本能が突如、警鐘を鳴らす。心臓が更に速く動く。汗が噴き出す。

 

彼女は先程まで…この心臓の高鳴りは…きっと恋だと思っていた…初恋だと思っていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違った…この高鳴り…それは恐怖だった。

 

 

 

 

 

 

 

「キャァァァアアアアアア!!!」

 

峡谷に少女の声が響き渡った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おい、大丈夫か!」

 

ウサミミ少女の頬をペシペシ叩く。恥ずかしいことに少し暴走してしまったようだ。ん?血の味?あぁ美味かったとも。久しぶりの御馳走だった。ハジメ達に止められなければ彼女の血を残さず全て飲んでいただろう。

 

「出会ったばかりの女に…流石にそれはドン引きだぞ…」

 

「久しぶりの御馳走だぞ?美味い血だ。しょうがないじゃあないか」

 

「…わかる」

 

「ユエさん!?」

 

ハジメには少々引かれたが、やはりユエは話がわかる。流石は吸血鬼の女王だ。味覚はわかりたくないがな。

というより何故彼女は絶叫してたんだ?快感が走る筈なんだが…喘ぎ声を上げるならいざ知らず…

 

「うぅ…私は一体……そ、そうでした!!私は…ってヒィッ!!?」

 

目覚めてすぐに涙目になり怯え、俺から距離を取るようにハジメの背後に隠れる。泣きそう…いや、俺が悪かったな。

 

「汚い顔近づけるな、汚れるだろうが」

 

「酷い!?」

 

ハジメはウサミミ少女を蹴飛ばし俺の前に出させる。確かに涙や鼻水で顔はぐちゃぐちゃだが容姿に体型は完璧といっても過言ではない少女を汚いといい蹴飛ばすのはどうかと思う。

 

彼女はそこで今思い出したかのように後ろで倒れているティラノザウルスに目を向ける。

 

「し、死んでます…あのダイヘドアが…」

 

ウサミミ少女は驚愕も表に目を見開いている。どうやらあのティラノザウルスはダイヘドアというらしい。

驚愕に硬直している彼女の肩にチョンチョンと叩くと、またもや怯え俺から距離を取る。

 

「おいおい、そんなに怖がらなくてもいいじゃあないか…何も恐れることはないんだよ…友達になろう」

 

子供に言い聞かせるように優しく言ってみた。これでダメなら諦めるしかない。

 

「そりゃいきなり血を吸われたら誰でも怖がるだろ。普通」

 

そこ!うるさい!  

 

少女は覚悟を決めたように大きな声で叫ぶ。

 

「さ、先程は助けて頂きありがとうございました!私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです!取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

なかなかに図太い内容の自己紹介だな…

隣でハジメは深い溜息をついている。

 

「あぁ…シア…だよな?取り敢えず事情を説明してもらってもいいかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《少女説明中…》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の家族を助けてください」

 

シアという少女の話を要約するとこうだ。

 

シア達、ハウリアと名乗る兎人族達は【ハルツィナ樹海】にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。戦闘力は低く、長所といえば聴覚と隠密行動に優れているということだけらしく、亜人達の中では格下に見られる傾向が強いらしい。

性格は総じて争いを嫌い、一つの集落全体をを家族として扱う仲間同士の絆が深い種族だ。

 

そんな兎人族の一つ、ハウリア族に、ある日異常な女の子が生まれた。基本髪色は濃紺なのだが、その子の髪は青みがかった白髪だったのだ。

しかも、亜人族にはないはずの魔力まで有しており、直接魔力を操るすべと、とある固有魔法まで使えたのだ。

 

そんなこんなで亜人族の国【フェアベルゲン】にバレれば確実に処刑される。家族愛が非常に強い一族の兎人族達は見捨てず、女の子を隠し、16年の間ひっそりと育ててきた。

が、先日彼女の存在がバレてしまった。その為、フェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出たのだ。

 

しかしその道中に帝国に見つかり、このライセン大迷宮に逃げ込んできたそうだ。

 

しかし撤退するだろうとふんだ兎人族達だったが、予想に反し一向に撤退せず、出入り口を陣取り、兎人族達が魔物に襲われ出てくるのを待っていたのだ。

 

 

「…気がつけば、60人はいた家族も、今は40人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」

 

最初の少し残念な感じとは打って変わって、恐怖による体の震えも止まり、悲痛な表情で懇願するシア。

そんはシアにハジメは特に表情を変えることなく答えた。

 

「だが断る」

 

ハジメの言葉が静寂もたらした。何を言われたのかわからない、といった表情のシアはポカンと口を開けた間抜けな姿でハジメをマジマジと見つめた。

少ししてから硬直が終わり、物凄い勢いで抗議の声を張り上げた。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと!何故です!今の流れはどう考えても『なんて可哀想なんだ!安心しろ!!俺が何とかしてやる!』とか言って爽やかに微笑むところですよ!貴方もそう思いますよね!?」

 

おおう、俺にいきなり話を振ってくるんじゃあない。というか俺達結構大事なことスルーしてたな…

 

「それはどうでもいい。「酷い!?」そんなことよりも…貴様…これが見えるのか…?」

 

俺は抗議しようとするシアの目の前にザ・ワールドを出す。

 

「ヒィァアア!?」

 

シアは突如現れたザ・ワールドに驚き腰を抜かす。どうやら見えているようだ。

 

「やはり見えているな…間違いない。こいつは魔力操作の技能を持っている」

 

『スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う』…この世界でのスタンドは魔力操作を持っている者にしか見えない。そして限られた人間だけはこの技能を持っている…間違いない…私達は…“運命”に引き寄せられている!!

 

 

 

 

「ハジメ…君は“引力”を信じるかい?」

 

 




遅れたのはポケモンが悪いんや…許してくだせぇ…

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