車で進むこと数時間、遂に【ハルツィナ樹海】と平原の境界に到着した。
これまでの道中にシアが私達のこれまでの話を聞き泣いたり、私達と旅に出たいなどと色々あったが無事についた。
「それではハジメ殿、DIO殿、ユエ殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。御三方を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。
それと、行き先はは森の深部、大樹の下で宜しいですな?」
「ああ、聞いた限りじゃあ、そこが本当の迷宮と関係してそうだからな」
カムが私達に対して樹海での注意と行き先の確認をする。大樹とは簡単に言えば迷宮への入り口だ(多分)。私達はこの樹海全体が大迷宮だと思っていたが、よくよく考えるとそんな魔境では亜人が住めるはずもない。
「では、出来る限り気配は消してもらえますかな。大樹は神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアゲルベンや他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々はお尋ね者なので見つかると厄介です。」
「ああ、承知している。」
ハジメは“気配遮断”を使い、気配を完全に消す。続いてユエも奈落で培った方法で気配を薄くした。
対する私は…
「ッ!?これはまた…ハジメ殿、出来ればユエ殿くらいにしてもらえますかな?」
「ん?……こんなもんか?」
「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては我々でも見失いかねませんからな。いや、全く、流石ですな!」
元々、兎人族は全体的にスペックは低いが、聴覚に関しては私と同レベルという規格外だ。そのため、索敵や気配を断つ隠密行動に優れている。
そんな兎人族の索敵能力でも見失いかねない程に気配を殺したハジメにカムは苦笑いだ。
「では、DIO殿も…気配を薄めてもらっても…「出来ん…」はい…?今…何と…?」
「出来ないと言っているのだッ!!」
そう、私の最も苦手なこと…それは隠密行動だ。DIO様の溢れ出る存在感が原因だと思う。かくれんぼを子供の時にすれば即見つかり…街中の人混みにいても、遠目でも私と認識出来ると聞いたことがある。
奈落でもそうだった。必死に気配を断とうとしても、すぐに魔物供に気付かれてしまう。チクショウメーッ!!これじゃあ恥ずかしい本も買えやしねぇーッ!!
「で、では…どうしましょうか…DIO殿の気配は並大抵のモノではありませんからな…このまま樹海に入ればすぐに他の集落の者に気付かれてしまいます…」
「じゃあDIOはここに残れ」
なん…だと?私を置いて行くのか…?やめて!!寂しくて寂死しちゃう!!
「では何かあればすぐに迎えを出しますので…DIO殿はここで待機ということで構いませんかな?」
「ああ、それでいい。じゃあ案内を頼む。」
「はい、任されました。行きましょうか」
「ちょっ…と〜…」
ハジメ達は本当に私を置いて樹海に入っていった…あぁぁぁんまりだぁぁあああ!!
憂さ晴らしに近くにいる魔物でも狩ろうと思ったが、最近本を読んでいないことを思い出し、宝物庫から本を取り出し車の中で読書に勤しんだ。
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ハジメ達と別れてから1日が経った。流石に遅すぎる。ハジメ達に何かあったのか?いや、兎人族達なら兎も角、ハジメとユエならば地上の相手で苦戦もしない筈だ。となれば…フィアゲルベンで何かあったのか…?
すると、樹海から一人の兎人族が現れたのを見て、車から降りてそちらへ向かう。
「遅かったな…何かあったのか?」
「いや…あの…その〜…」
なんだコイツ。隠し事は無駄だぞ。私は無駄が嫌いなんだ。
「…怒らないでくださいね?えっと…ハジメ殿から『すまんすまん、忘れてたわ』…ヒィッ!?」
…………イラッときた…一発殴る。
というかこの世界に来て多分一番イラッときた…
「…さっさと案内しろ」
「は、はいィィィィイ!!?」
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「ハジメぇぇえッ!!」
「DIOッ!? グハァッ!!?」
私はハジメを殴り飛ばす。義手でガードしやがったが俺には関係ねぇ!その上から強烈な一撃を喰らわしてやったぜ!
「「「「「「ハジメ(さん)(殿)ッ!!?」」」」」」
ハジメは木をへし折りながらも後ろへと飛ばされ、民家らしき建物の壁を破壊して止まる。
「この私を待たせておいて…『すまんすまん、忘れてたわ』で済むかこの間抜けッ!!」
「残念、偽物だ。」
しかし振り返るとそこにはいつの間にか回り込んだハジメが私に銃口を向け…
ドパンッ!!
俺の服が弾けた。
※※※※
「で、何か私に言うことは無いのか?」
「すみませんでした…」
服は衣服自動修復装置により、ゆっくりと再生していき、今は半裸状態だ。ハジメには謝らせ、罰として名前の前に† 赤眼の破壊者 †と付けるよう兎人族に言う。
それは何かと聞かれたので、ハジメの二つ名と答えておいた。
すると「おお!!赤眼の破壊者ハジメ殿!!」「赤眼の破壊者!!バンザーイ!!」と都合よく騒いでくれた。
精神的にボロボロなハジメに話を聞くと、どうやら亜人の族長達とお話をして奴隷ということで兎人族を保護し、不可侵条約的なものを結んだらしい。私的には兎人族以外の血も飲んでみたかったが…
そして今は兎人族の戦闘訓練を行なっているそうだ。しかし優しすぎる性分の為、魔物を殺す度にいちいち泣き、三文芝居を繰り広げるらしい。
それにキレたハジメが地獄のブートキャンプを開始したという。
ところで…私は何をすればいいのだろうか…ユエはユエでシアをつきっきりで鍛えているらしい。
では…本でも読んでおくか…
ついでに日光下での私のスペックも確かめておかねば…
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少し時は遡り、ハイリヒ王国、王女リリアーナの寝室では…
リリアーナは枕に顔を埋め、奈落へと落ちたという想い人を思い枕を濡らす。
「ディオ様…」
リリアーナはDIOから不死身、不老不死という技能を教えてもらってはいるが、やはり不安に駆り立てられる。
リリアーナは不死身、不老不死を無敵だとは思わない。
体が再生する?じゃあ塵一つ残さず魔法で消されたらどうなる?魔物に喰われたらどうなる?
不死身?封印されたらどうする?それに生命を終わらせることだけが死ではない。精神、心を殺すことも出来る。
詳しくはリリアーナにはわからない。わからなくてもここまでの不安な要素が出てくるのだ。
しかしどれだけ泣いても、悲しんでも…DIOが戻ってくるはずもない。
『リリアーナ』
『リリアーナ!』
『…リリィ』
頭の中にDIOの声が響き渡る。
今、リリアーナに出来る事はない。それはあくまでDIOを助けることは…だ。
彼が戻って来た時に何か出来るように、リリアーナは不安になる気持ちを押し除け、彼…DIOが無事に帰還し、また自分と話せることを願い、リリアーナは今彼のために出来ることをする。
そう、固く決意した。
「ディオ様…このリリアーナ…貴方様が無事に帰ってくださいますよう願っております。…エヒト様、どうか彼をお導きください…」