ありふれてはいけない職業で“世界”超越   作:ユフたんマン

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かなり遅くなりましたが投稿です。次話はもっと早く投稿出来るように頑張ります。




さて、特訓を始めてから10日が経った。私もこの期間で、日光下でのスペックを把握することが出来た。簡単に結果を言うなら、全力の三分の二くらいの力しか出せない。また、自動回復と吸血の技能の性能が格段と落ちている。まぁ日光下で活動出来るのなら許容範囲だ。致し方なし。

 

そして旅の仲間にシアが加わった。ユエとの条件付きの戦いで遂に勝てたらしい。私も何度かシアの特訓に付き合ってやったが、彼女のスペックはかなり高い。それでもユエに勝てるとは思っていなかったが…

シアがハジメのことを好きだ!とカミングアウトしていた。あれぇ?最初にシアを助けたのは私だよな?じゃあなんで彼女は俺に惚れずにハジメに惚れたんだ?

 

 

 

 

《そのまま流れるように首筋に歯を立てた(スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う から抜粋)》…これか…だって私は吸血鬼だし…仕方ないよな。うん。

 

 

 

話が少し脱線したが戻そう。その後、ハジメ式ブートキャンプで変わり果てたハウリア族一行に案内され、大樹の元へと辿り着いたが空振りに終わった。どうやら七大迷宮の内四つを攻略し、尚且つ再生に関する神代魔法を会得しなければこの大迷宮は攻略出来ないらしい。これは推測だが、大樹が枯れている時点で今は攻略などできないだろう。完全な無駄足だった…といいたいところだったが、道中に熊人族なる亜人が襲いかかって来てくれたお陰で、この国に大きな借りを与えることに成功した。これは後に役立つだろう。

 

 

 

 

 

 

そして現在、カム達と別れ、次の目的地はライセン大峡谷ということで取り敢えず近隣の街でその準備をするというので、街へ向けて車とバイクを走らせている。街で食材やら調味料とかが欲しいらしい。…魔物の肉でよくないか?

 

「嫌に決まってるだろ!誰が好き好んで魔物なんか食うか!DIOもどんな味か知ってるだろ!?」

 

「まぁ不味いが無味の食材よりはマシだな。味のないパンやパスタなんぞ食えたもんじゃあない。」

 

「…お前に聞いた俺が馬鹿だった」

 

 

解せぬ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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そんなこんなでやって来た【ブルッグの町】。まずこの町に来てから行ったのは素材の換金だ。今後の為にも金を用意しておくらしい。私も俺TUEEEEEEのテンプレで有名になりたかったら、オルクス大迷宮の低層にいる魔物の素材を渡しているところだが、私達の目的にメリットはほぼ無いに等しいので、取り敢えず樹海の魔物の素材を換金してもらう。それでも十分希少で驚かせてしまったが…

まあ私の分は嗜好品や娯楽でつかうお小遣い程度のものだがな。

 

そしてギルドのおばちゃんに貰った地図を頼りに“マサカの宿”という宿屋にチェックインする。部屋割りで揉めていたが、何とか1人で2人部屋を占領することに成功した。ユエとシアはハジメの部屋にぶち込んでおいた。ユエは嫌そうな顔をしていたが我慢してもらおう。俺も美味い血が飲みたいんだ。

 

その後、取り敢えずもう一度ギルドに寄り、ギルドの中に置いてあった本やパンフレット、そして依頼書などを目に通していく。王宮の図書館でかなりの本を読んでいたが、冒険者の本は余り見ていなかったために興味を惹かれた。

その後もずっと本を読んでいると1人の冒険者らしき少女に声をかけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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私は最近冒険者になったばかりの未熟者だ。町の外壁の近くにいる雑魚と呼ばれる魔物にも苦戦する腕前、といっていい。

先人に憧れ、この冒険者になったはいいものの、雑魚と呼ばれるほどに弱い魔物にズタボロにされた時なんかすごく惨めな気分になった。

 

ある日、ギルドで少しでも魔物と戦えるようにと、“魔物の生態”と書かれた本を食い入るように見ていると、ひと目見ただけで心奪われるような美貌を持つ男性がギルドにある本やパンフレットを大量に持ちながら、私の隣に立ち話しかけてきた。

 

「すまないが相席させてもらってもいいかい?」

 

突如話しかけられて少し混乱したが、すぐに落ち着きを取り戻し周囲の席を見回す。今日はこのギルドにいる人数が多く、殆どの席は埋まっている。空いている席は私の目の前の席と奥にいる男性の前の席ぐらいだろう。

 

「は、はい!全然大丈夫でしゅよ!!」

 

緊張して噛んでしまった。恥ずかしい…多分顔は羞恥で真っ赤になっているだろう。そんな私を見た彼はフフッと笑い、名前を教えてくれた。

DIO・ブランドー、という名前だそうだ。DIOと呼んでくれ、と微笑まれ、顔は再度紅くなる。自分も軽く自己紹介し、彼が本を読み出したと同時に私も本に目を向ける。

名残惜しいけど…DIOさんも本を読むためにこの相席を頼んだのだ。私情だけで邪魔するのはいけないだろうと思いつつも、先程の集中力も切れ、チラチラと彼の顔を見てしまう。生まれて16年、これほどに顔が整った男性にあったのは初めてだった。同い年の子にもかっこいいな、と思う人はいたけれどこれほどの美貌を持つ男性に会うのは初めてだ。だからチラチラと見てしまうのは仕方ないことなのだ。

そしてチラリともう一度見ると、視界には本をパラパラとめくり、すぐに本を取り替える彼の姿が…

 

 

え?

 

 

本当に彼は本を読んでいるのか!?読むの早すぎないか!?様々な疑問が頭の中で飛び交うが、彼の真剣な顔を見るに、本気でこの驚異的なスピードで理解しているのだろう。

そして次に身につけている装備を見る。何故か緑色のハート型のサークレットを付けているが、それは問題ではない。

私は“鑑定”という物質の状態や素材を見抜く技能を持っている。しかしその眼を持ってしても彼の着ている装備は鑑定出来ない。恐らくは今の私の力量では鑑定出来ないのだろう。しかし、何度かこの町の実力者を鑑定したことは多々あったが、鑑定出来なかった装備は初めてだった。

彼は恐らく相当な実力者なのだろう。

 

「あの…すみません」

 

「なんだい?」

 

「その…あの…相当な実力者とお見受けします…実は私…駆け出しでして…よければ…!少しでもいいので戦い方を指南してもらえないでしょうか…!」

 

言ってしまった。しかし私もこうするしか強くなる方法はない。言ってしまえば冒険者というのは商売業なのだ。自分より実力が少し低い程度なら、すぐにパーティに加えてもらえるが、格下が相手となると話が違ってくる。それに何故かこの町の実力者は感覚派が多いのだ。とてもじゃないが、人に教えることに向いていない。

彼は相当な実力者だ。しかし名を聞いたこともないし、このような美貌を持っていればすぐに有名になっているだろう。なら他の町から訪れたということだろう。町の外の情報は幾らか入ってくるが、彼のような冒険者は聞いたことがない。ならばもっと遠方から来たのだろう。

では自分の知らない、力が弱くても戦える技を持っているだろう。

 

自分の現状を変えるためにも、彼に恥も承知で頼み込む。

 

「私も冒険者としては駆け出しなのだが…まぁそれでいいならいいだろう」

 

やった!とつい頬が緩む。駆け出し、とは言っても恐らく戦いに関してはずっと経験していたのだろう。彼の筋骨隆々な身体がそう思わせる。そして彼はしかし条件がある、と付け加える。

 

「私は常に娯楽に飢えている。そこでだ。私が戦い方を指南する見返りとして君のこれまでの冒険を聞かせてもらいたい。どんな些細なことでも構わないし、冒険以外のことでもいい」

 

本当にそれだけでいいのだろうか。私自身、全然強くないし、親が商人だった為、小さい頃は商法を叩き込まれていたことしか覚えていない。私は彼を満足させることは出来るのだろうか…

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった!!?

 

私は今、彼…DIOさんが宿泊している宿の一室のベッドに座っている。

あの後、静かな場所で話がしたいと言われ、ホイホイと宿について来てしまった。DIOさんは私の隣に座り、顔を覗き込んでくる。

 

「さぁ、君の話を聞かせてもらおうか」

 

彼は舌舐めずりし、僅かに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「DIO…様ァ…もっと…吸って…くださいィ…!」

 

目の前には恍惚に染まった表情をしたギルドで出会った少女がいる。名前は忘れた。食糧にいちいち呼び名があっても誰も覚えないだろう。例えば養豚場の豚にトントンと名付けていたとする。そして出荷されたトントンの名は消費者の人間達に知られるか?否である。あっても誰も興味はない。今私の前にいるのは“人間”という食糧であり、個体名なんぞ覚える価値もない。

しかしこの娘からはいい情報が聞き出せた。この町から馬車で数日かかる程度の距離の山に『悪魔』と呼ばれる男が暮らしているという噂があるらしい。それが非常に気になる。目撃者はゼロ、今まで調査に出て帰ってきた者もゼロ。確実にその山には何かがいる。私はその山から重力を感じ取っているのだ。

ハジメ達から一度抜けてその山に行くのもいいかもしれない。  

 

しかし、やはり処女の血は美味い。雫やリリィ、シアもそうだったが、処女の娘の血というのは旨味が凝縮されており、喉越しも良く飽きも来ない。処女でなくとも美味いには美味いがやはり私には処女の血が好ましい。処女厨のユニコーンとかもこんな気持ちだったのだろうか…

 

そこでドアがノックされ、ハジメが部屋に入ってきた。

 

「DIO、そろそろ風呂の時間……だ………」

 

ハジメは部屋に入ると同時に固まる。何故だ?まぁ風呂か…風呂はオルクス大迷宮の、反逆者の住処以来だな…

 

「わた…私のォ……血を…血を…」

 

「おや、もう血を吸えば死に至るというのに…まだ吸われたいのかい?」

 

「は、はぃい…!DIO様のォ…ためならばァ…身も…心も…命も…捧げますゥ…!」

 

「そうか…。そういう訳でハジメ、少し遅れる」

 

「あ、ああ…わかった…」

 

少女の首筋に歯を刺し、そこから快楽と共に血を…生命力を吸い上げる。

 

「あああああああっ………!」

 

口から漏れ出る甘い声は徐々に小さくなっていき…

 

 

 

 

「ふぅ…御馳走様…」

 

少女は息絶えた。ミイラとなった死体は、私から出る吸血鬼エキスで屍生人に変え、夕陽に晒して処理する。完全犯罪成功だ。

 

「さて…行こうか、ハジメ」

 

「………………」

 

 

何も答えずに部屋を出るハジメに続き、風呂場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ハジメが見たモノはまさに衝撃的だった。DIOの部屋に入ると、ベッドの上に2人、男女が寝転んでいたのだ。一瞬、そういう行為をしていたのかと脳裏に過るが、DIOは1枚も服を脱いでいないのだ。そしてもう1人の少女に眼を向けると、そこには全裸で首筋から血を流す姿が…

 

そこでハジメは理解する。今、DIOは食事をしていたのだと。

 

「わた…私のォ…血を…血を…!」

 

少女はDIOに懇願する。既に顔は蒼白く、生気を感じさせないほどまでに衰弱しきっている。それでも彼女は懇願する。恐らくDIOの吸血の際に得られる快楽に嵌ってしまい、抜け出せないのだろう。

 

(まるで麻薬だな……)

 

「は、はぃい…!DIO様のォ…ためならばァ…身も…心も…命も捧げますゥ…!」

 

既に彼女はDIOに魅了されてしまっている。そして一番タチの悪いのが、消して彼は自分から吸血させようとしていないことだ。DIOは相手を魅了し虜にし、自分から血を吸って欲しいと懇願するように誘導している。ハジメもDIOが町で人に襲い掛かり、血を吸っていれば止めに入っていたが、彼に吸血を求めるのは彼女自身だ。それをハジメは無視することは出来ない。

 

そう考えている間に少女はミイラとなり、峡谷であった兵士と同じように少女を眷属として蘇らせ、夕陽に浴びさせることで消滅させることによって死体を処理していた。

 

「さて…行こうか、ハジメ」

 

彼の言葉に何も返すことが出来なかった。

 

 

 

 

 


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