ありふれてはいけない職業で“世界”超越   作:ユフたんマン

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忠誠、そして試練

朝、私は車に乗車し、ハジメ達に別れを告げる。

 

「ひとまずここでお別れだ。また何処かで落ち合おう。」

 

「ああ、俺達は【ライセン大峡谷】に向かう。早く用事とやらが終わったら来いよ。」

 

「ああ…ではな」

 

窓を閉め、アクセルを踏む。

 

 

 

 

 

 

何故私がハジメ達と別れたのか…それはここ、ブルッグの町で噂になっていたことに興味が唆られたからだ。

ここから数日で着く山岳地帯の何処かの山に悪魔が住むと…

 

 

 

 

 

 

 

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車を走らせ約2日、休み無しで走らせ続け、遂に目的地に到着した。見える範囲は全て緑。ジブ◯とかで出てきそうな大自然だ。

そこで私は悪魔とやらを探す。すぐに見つかるだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

探し始めて一時間。すぐに見つかった。やはり私たちは運命と言う名の重力に引き寄せられ合っているのだろう。そんな悪魔の容姿は、私にも劣らない体つきをした長髪の男だった。しかし悪魔と呼ばれていたが、魔族ではなく、彼らと変わらない人族だ。

 

さて…見た感じだがかなりの実力者だろう。私やハジメ、ユエにシアには届かないだろうが、そこらの兵や冒険者にはまず負けないだろう。

うん、彼が欲しい。別に私がホモとかそんなんじゃあない。彼は磨けばかなり伸びるだろう。それに私に忠誠を誓う部下が欲しかったところだ。

どう説得しようか…まぁ取り敢えず…

 

「私の名はDIO・ブランドー。どうだね一つ、このDIOに永遠に仕えないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「私の名はDIO・ブランドー。どうだね一つ、このDIOに永遠に仕えないか?」

 

男は困惑していた。今まで彼は自分の縄張りに侵入した者や、自身を討伐せんと訪れた冒険者を屠ってきていたが、目の前に立つDIOと名乗る人間には会ったことがなかったのだ。

そして彼は現在、DIOに恐怖していた。この山は弱肉強食の世界。その頂点に立つ山の主以上に圧倒的なオーラを放っているのだ。彼の住処はここより何キロも離れている。しかしそこからでも分かる程の威圧感を放っているのだ。山の弱者はすぐに住処に身を隠し、強者であっても怯え身を隠す。

しかし彼にはその威圧感に惹かれる何かがあった。そう何かを感じ取り、向かった先にはDIOがいたのだ。

 

そして今、彼は驚愕する。

 

(ッ!?私は何故跪いているのだ!?)

 

体が無意識の内にDIOに屈服してしまっている。DIOに…人間としての本能が悲鳴を上げる。しかし動けない。

 

だが…それでいい。いや、それがいい。

 

彼はこれまでに何度も疑問に思っていた。何のために生まれ、何をするために生きているのか。それを今、ようやく理解出来た。

 

 

 

 

 

私はこの御方に仕える為に…尽くす為に生きているのだと…

 

 

 

「ハッ!!貴方様のような御方に仕えられる等…まさに光栄の極み…!!私の身体、命!全てを貴方に捧げましょう!」

 

 

故に彼はDIOの配下となる。DIOに頭を下げ、忠誠を誓う。

 

 

「…そうか、では君の名を聞いておこう。」

 

「我が名はヴァニラ・アイス、何なりと御命令を…!」

 

「……そうか、やはりこれも運命…か…」

 

少し驚いた顔をしながら何やら呟くDIO。そして何かを閃いたとばかりに顔を上げ、ヴァニラに提案する。

 

「ヴァニラ…君の力を知っておきたい。よって今からこのDIOとの模擬戦だ。なに、遠慮することはない。本気でやってもらって構わん。」

 

その言葉にヴァニラは狼狽える。今、直前に忠誠を誓ったばかりだというのにいきなり矛を向けるなど彼に出来るはずもなかった。

そんなヴァニラの心情を理解したのか、DIOは顔を強張らせ、一喝する。

 

「…貴様は私の命令を聞けぬというのか?このDIOが許可をしているのだ。貴様の忠誠心とやらはその程度のものだったのか?」

 

「そんなことはッ!!しかし……」

 

「まぁいい。これは決定事項だ。弱い者、奪われるだけの者はいらん。フンッ!」

 

咄嗟にヴァニラは顔を傾ける。するとそこにDIOの目から放たれた光線のような液体がヴァニラの頬を掠める。

 

「これはテスト…いや、試練だ。私という恐怖に打ち勝てという試練だ。」

 

その瞬間、ただでさえ凄まじい威圧感がさらに増す。

 

「“覚悟”を決めろ、ヴァニラ。このDIOに一撃でも入れられれば同行を許可しよう。どうだね?」

 

 

「………はい。このヴァニラ、全力を持ってこの試練、乗り越えて見せましょう!」

 

少し間が空いた返答だったが、DIOは満足そうに頷く。

 

「こい」

 

「ハッ!!」

 

ヴァニラはDIOに向かい駆け出す。山で鍛えた剛腕で大振りのストレートを繰り出すが、軽く受け止められる。

 

「その程度か?」

 

「くッ!!ガハッ!?」

 

ヴァニラの腹に鈍痛が襲う。完全なる意識外からの攻撃にヴァニラは顔を歪める。ヴァニラはDIOをしっかりと視認していた。攻撃が来るであろう腕、下半身、そして目…しかしそれでも見えなかった。それ即ち、ヴァニラが視認出来ない程の速さでヴァニラにダメージを与えたのだ。

それを極当然のように繰り出して来るDIOに改めて戦慄する。

 

「ハァアッ!!」

 

その後もヴァニラは連続でラッシュを続けるが、全て受け止められ、弾かれ、躱される。山に住んでいる魔物達なら既に息絶えている攻撃だろうが、DIOには届かない。力任せに放たれる一撃は全て水の流れるような動きで流される。

 

一度距離を取る為に後ろへ下がるが、その隙を見逃すほどDIOも甘くない。

 

「気化冷凍法ッ!!」

 

ヴァニラの両腕をスッと触り、その触れられた部分から体の熱が奪われ始め、両腕が凍り使い物にならなくなってしまった。

 

「これで終わりか?…ほぉ、まだ何かあるようだな…貴様の力!!このDIOに見せてみるがいいッ!!」

 

「うおぉぉおぉおぉおぉおおおッッ!!!!」

 

ヴァニラは雄叫びを上げながらDIOに向かって飛び上がる。そしてそのまま飛び蹴りを放つ。DIOはそれを余裕の笑みを浮かべ受け止めようとするが…

 

「(かかったッ!!)ハァッ!!!」

 

ヴァニラはおもむろに開脚し、DIOの腕を弾き飛ばす。そして無防備なDIOへ向けて…

 

「力を貸せッ!!【悪霊】よッ!!」

 

瞬間、ヴァニラの体がブレ、二本の角と大きな口をもつ人型の異形が姿を現し、それはDIOに襲いかかる。

これこそヴァニラ・アイスの真骨頂。これまでに家族、強者を屠ってきた必殺の“技能”!能力は使わないが、腕が使えないヴァニラにとってこれ以上にない攻撃方法だ。

 

「ほう…隠し玉はそれか…だが…」

 

 

 

【ザ・ワールド】

 

 

 

「惜しかったな…私も使えるのだよ。君が悪霊という存在をな」  

[無駄ァッ!!]

 

ザ・ワールドの拳はヴァニラの悪霊の顎を捉え打ち上げる。

 

「ぐぉおおッ!!?」

 

悪霊の受けたダメージがフィードバックされ、宙に浮くヴァニラ。そのヴァニラの着ている服のポケットから小さな玉が落ちる。

 

 

 

ボンッ!!

 

 

 

爆発音が鳴り響き、玉から白い煙が溢れ出し視界を白く染め上げる。

 

「煙玉か…?」

 

 

 

ガオンッ!!

 

 

 

奇妙な音が背後で鳴った音で全てを察したDIOは驚愕する。

 

「何ィイ!?」

 

「はァァアアッ!!!」

 

煙に紛れ地面をくり抜き、背後に回り込んだヴァニラは渾身の一撃を叩き込む。

 

「時よ止まれいッ!!」

 

周囲の色彩は灰色に染め上げられ、ヴァニラの拳が目の前で止まる。時間が止まったのだ。

 

 

「はぁ…使うつもりはなかったのだがな…つい使ってしまった……フフフッ…やるじゃあないか…合格だ、ヴァニラ・アイス。まさか同じスタンドまで使うとは…これもまた、運命ということか…奇妙なものだな、まったく。

 

そして時は動き出す」

 

世界は色彩を取り戻し、時が動き出す。

 

「ァアアッ!!…なッ!!?」

 

自分の目の前にいたDIOが突如姿を消したことに驚きの声を上げるヴァニラの肩に後ろから手を置き、彼に告げる。

 

 

 

「合格だ、ヴァニラ。今はゆっくりと休め」

 

「あり…がとうございました…」

 

グラリと巨体を揺らし倒れ込むヴァニラを支えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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無事に部下を手に入れた私はヴァニラが回復するのを待ち、彼の住処へと案内させ、旅支度をさせる。

 

「DIO様、お聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか」

 

粗方旅の支度を終えたヴァニラが私にそう聞いてきた。まぁ何が聞きたいかはわかる。彼はスタンドのことを悪霊と呼んでいた。簡単に言えばスタプラが発現したばかりの承太郎と同じレベルの知識なのだろう。

 

「なんだね?」

 

「悪霊のことについてお聞きしたいのですが…」

 

やはり…か、、、どう説明すればいいのだろうか…

 

「いいだろう。君が呼んでいる悪霊…その総称は【幽波紋】、それを扱う者を【幽波紋使い】と呼ばれている。まぁこの世界では私と君以外にいるかはわからないがね。そのスタンドの正体は自身の精神力が具現化したものと言っていい。幽波紋使いの中には性格、生き様、心情に合った特殊能力が使えるからな。

私が知る中では平穏に生きたい男が邪魔者を爆弾にし、消し去るといった能力を持つ者がいる。

さて、そして本来スタンドは通常の人間には見えず、スタンド使い同士でしか見えない。例外も存在するが…この世界では技能に【魔力操作】を持っている者には見えるらしい。」

 

私の側に金色の装甲を身に付けたザ・ワールドが現れる。

 

「私のスタンドの名はザ・ワールド。タロットの世界のカードを暗示している。ヴァニラのスタンドには名を付けていないのか?」

 

「……付けておりません。私の人生はこの悪霊…いえ、スタンドに全て潰された身です。そのようなこと…一度も考えたことがありませんでした」

 

難しい顔をしながら理解しようと頑張るヴァニラは、少し間を置いて答えた。しかし内容がブラックすぎるが…

 

「フム…その話はまた後で聞くとしよう。時間はまだまだあるからな。しかし呼び名がなければ不便だろう。故に私が名付けてやろう。ヴァニラのスタンドの名は【クリーム】」

 

 「なな…DIO様が……ッ!!この私のような者の力に名付けをして貰えるとはァアッッ!!クリームッ!!クリームッ!!!素晴らしいッ!!素晴らしい名でございますッ!!クリームッ!!!この名の響きッ!!このヴァニラの心にッ!!脳にッ!!染み渡りますゥゥウウッッ!!!」

 

狂喜乱舞するヴァニラ。やだ怖い。勝手に名付けたがここまで喜ばれたならよかった。ハジメがいたら頭大丈夫か?ネーミングセンスの欠片もねーな、と馬鹿にされそうだが、彼のスタンドにはやはりこの名だろう。

 

「ところでヴァニラ。あの刀はなんだ?」

 

それはヴァニラの住処の小屋の壁に立て掛けられている日本刀のような形をした刀。それは妙なほどに力を感じる。

 

「ハッ!あれは我が一族に受け継がれてきた刀でございます。なんでも技能を無効果して斬れるとか…」

 

切り替え早いな…しかしそんな刀が…どれ、私にも効果があるのか…興味が湧いてきたな…

 

ヴァニラから差し出された刀を受け取り、鞘から刀身を引き抜く。刀身は紅く、血を求めているかのような色彩を放っており、窓から入る日光で反射し、人目見ただけで心が奪われるように錯覚するほどまでに美しい刀だ。素人目からしてもこれほどの逸品だ。鍛治士がこれを見たらどんな反応をするのだろうか…

 

そのまま、指にその刀で傷を軽く付ける。普段なら一瞬で治る筈の傷が一向に治らない。これは…本物だ!!まさに…私を殺せる…唯一の武器…!!

 

「その程度の刀で宜しければ献上させていただきます。残念ながらその刀は無銘ですが…それに私には剣の才はありません。宝の持ち腐れ…というやつでしょう。さきほどの戦いからして、DIO様は刀をお使いにならなさそうでしたが、そうであればご友人への贈り物としてでもご自由にお使いください。」

 

……この刀を私に寄越すとは…それ程に私に忠誠を誓ってあるということか…しかし原作のヴァニラのように忠誠心が強過ぎて負けた、というのは勘弁してほしいな…しかし銘がないのか…なんという銘がいいだろうか…

 

「礼を言うぞヴァニラ。いい拾い物をしたものだ。さて、そろそろ向かうぞ。ライセン大峡谷へ!」

 

「ハッ!!このヴァニラ!DIO様の矛となり、盾となりましょうッ!!」

 

私達は車に乗り込み、ハジメ達の待つライセン大峡谷へと向かった。

 

 

 

 

 




活動報告で刀の銘を募集します!その中から作者が気に入った物を採用するといった形でいこうと思います。ネーミングセンスがマジでないですからね、私…

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