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今日から訓練が始まる。窓から月の光が差し込みうっすらと部屋全体が一望出来る。天蓋付きのベッドに机、その上にはいくつもの本が置かれている。内容は童話、伝記、魔物図鑑、神話だ。図書館から適当に持ち出し、この世界について一から調べていた。それらは殆どの書物にエヒト神が登場し、都合の良い話となっている。
俺は体を起こし、氷を口に放り込みガリガリと食べる。昨日の一件でまた禁酒せざるを得なかったため、氷の食感で我慢している。
するとトントンッと扉が二回ノックされる。入る許可を出すと扉が開かれ、一人の女が入ってきた。
雫だ。
「おはよう、いや…おそよう…?なんて言えばいいのかしら…」
知らん。けどさっき起きたばっかだからおはようでいいんじゃあないか?
「やぁ、雫。一体こんな時間になんのようだい?」
現在日本の時間で言えば12時ぐらいだ。こんな時間になんの用だろうか。
「何? 用が無かったら来ちゃダメなわけ?」
「いや、そんなことはないが…」
なんか雫の機嫌が悪いな…光輝がまたなんかやらかしたのか?少し間をおいて雫が話し出す。
「ディオ…貴方昨日リリアーナさんの血…飲んでたわよね…?」
やっぱり光……あれ…?ちょっと待て…今なんて言った?
「とぼけても無駄よ…!私、この目でしっかりと見てたから」
な、なァァんだってェェエエ!!?あれを見られていたのか!!?どこでだ!!
でもあれは、ねぇ…?こっちも誘われた訳だし…俺悪くないよね?多分。如何わしいことはしてないし。食事だしね。
「あれは両者同意でのものだ…それに私はこの世界に来てから吸血鬼になったんだ。血を飲まないと飢えてしまう… 何かね?君は私に血を吸うなと言うのかい?」
「いや…それはッ…」
フフフッ!!効いているぞッ!!これが最後の口撃だァッ!!
「それとも君が私に血を飲ませてくれるというのかい?」
フッ…決まった…!!これで雫は何も言えまい!!人間というものは得体の知れないモノを忌避する習性がある!例外もいるが大抵はそうだ!!例えるなら何も持っていない状況でジャングルにある洞窟に入るということと同じことォ!!これなら慎重かつ常識人の雫は…!!
「…えっ!!?あッ…!!うん…!!」
…え?いいの…?ちょっと待て!!本当にいいのか?
雫は頬を染めながらコクコクと頷いている。少しキャラが崩壊している気がする。さながらその姿は恋する乙女だ。多分…
俺も鈍感ではない(と思う)。ここまでされれば好意を持たれていることくらい気付く。しかしそこで疑問が湧く。何故彼女は俺に好意を持ったかだ。普通の女性ならまず容姿だろう。しかし彼女の隣にはいつもルックスだけはいい光輝がいたのだ。
だが今はどうでもいい。腹が減った。そして昨日の血の味を思い出す。あれほど美味な物を生まれて口にしたことはなかった。ずっと口にしていたいと思ったのも初めてだった。俺がディオになる前にもこんなにも美味な物はなかった。
「では…今から頂くとしよう…」
「えぇ…」
ディオの部屋に甘い声が響き渡った。
「因みにノックは3回だ。2回はトイレの時のノックだぞ。」
「ええッ!!?」
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あれから二週間が経った。夜中に訓練を続け、ステータスもかなり上昇した。
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ディオ・ブランドー 17歳 男 レベル:7
天職:吸血鬼
筋力:400
体力:232
耐性:101
敏捷:115
魔力:134
魔耐:75
技能:吸血・自動回復・不老不死・肉体操作・異常状態無効・痛覚軽減・剛力・豪運・五感強化・日光耐性・◼️◼️紋[◼️・◼️◼️◼️◼️]・言語理解
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これが、夜中に合間合間に訓練した俺の成果だ。雫に光輝のステータスを聞いたが、レベル10で、ステータスはオール200という。
俺のステータスの伸びがなかなかに凄い。筋力が400だ。これだけはメルド団長を既に超えている。
この理由は一つある。それは吸血だ。最近は吸血の研究をしている。
まずは口。雫やリリアーナにしたのがこれだ。これは血を味わうことに特化している。対象に痛みではなく快楽を与えながら、自分は血の味を味わうことが出来る。吸血するスピードは遅い。
そして手。これは相手の肌に手を喰い込ませ、血を一気に吸血することが出来る。快感は無く、血を失くなっていく喪失感だけがあるらしい。口と大きく違うのは、味わうことが出来ないということだ。手からの吸血は、ただただ栄養だけを摂取するだけで、言い換えれば栄養剤を直接血管に送っているような感じだ。吸血するスピードは速い。
そして味についてだが、男よりも女の方が美味だった。メイドさん達にも少し協力してもらったところ、大抵の女性の血は美味だった。
そして男は、ハジメやメルド団長に手伝ってもらった。一言で言えば不味い。ありあわせの具材と調味料を混ぜて、数日間混ぜ続け、発酵するまで置いておいたスープのようだ。口にしたこと無いが。血を飲んだ瞬間、顔を歪めてしまった。
しかし味は不味いが、その分、魔力の回復量等が女性に比べて大きかった。
そして、口と手が共通しているのは、吸血することで、ステータスを上昇するというところだ。雫の血を初めて食した時に、プレートを確認すると、ステータスが少し上昇していた。しかし、メイドのような戦闘力においてでの格下では上昇しなかった。メルド団長の時はマジでビビった。
これが研究と実験の成果だ。
そして、俺は魔法の適性がなかった。つまりは魔法を使うのに時間を要するということだ。
かなり面倒くさい。正しい魔法陣を展開し、長ったるい詠唱をした後に、魔法が使えるという訳だ。適性があれば詠唱とイメージだけで実行出来るらしい。まぁ俺ってばディオ様だし?魔法なんて外道よ外道。別に悔しいなんて思ってなんかいないからね!
最近、檜山達のハジメに対するイジメが激しくなったと雫から聞いた。昨日なんて魔法を使ってリンチにしていたらしい。こいつはめちゃ許せんよなぁ?
もしまた俺の目の前でイジメが行われたら俺はあいつらにお仕置きする所存だ。
そして今日、朝になれば実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行くそうだ。そのため、俺の逆転生活をみんなと合わせるため、今日は徹夜だ。
ん?徹夜…?徹昼か?徹朝か?まあいいか。
オルクス大迷宮とは全百層からなると言われている七大迷宮の一つと言われており、深層へ行けば行く程、強力な魔物が出現するという。
そしてその魔物から出る魔石を目的に冒険者等が集まるという。魔石とは興味が無いためあまり知らないが、魔法陣を作成する際に使用する物だとか…
今日はオルクス大迷宮への長旅になるため、訓練はせず、大図書館で本を読むことにした俺は、ベッドで恍惚に浸るリリアーナに布団を掛け、部屋を後にした。