魔法少女リリカルなのは異伝~X Destiny~   作:カガヤ

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第17話 「なのはとフェイト」

――わたしは、いったい、だれなの?

 

私は、母さんの手助けがしたかった。

もっと小さい時は、私は何も出来なくてただ母さんに迷惑ばかりかけて、困らせてばかりいた。

だから、母さんの使い魔で助手だったリニスに魔法を教えてもらって少しでも手助け出来るようになって、嬉しかった。

これで母さんを助ける事が出来る。また昔みたいに笑ってくれると、そう思っていた。

けれども、あの日。母さんが言った言葉は……違った。

 

その日、私は美味しいと評判のケーキを買って、母さんに食べてもらおうとした。

けれども、普段いる広間にはいなくて椅子の後ろのドアが少し空いているのが見えた。

 

「ここにいるのかな?」

「フェイト、プレシアは忙しいんだよ。後でまた来ればいいじゃないか」

「でも、これ早く食べないと美味しくなくなるって店の人が言っていたし、この先にいるならケーキを置くだけでも、食べてほしいし」

 

このドアは母さんが絶対に入ってはいけないと言われていたけど、そこに母さんがいるかもしれないと入って行った。

それが、間違いだった。

 

「シリンダー? 中にはアスクが入っているだけ……って、フェイトあれ!」

 

その部屋は沢山の大きなシリンダーが並べられていて、その中にはアスクが入っていた。

最初は、アスクが作られている部屋だと思った。けど、それだけじゃなかった。

部屋の奥には更に大きなシリンダーがあって、その中には私より少しだけ幼いような金髪の女の子が浮かんでいて、その子は私に良く似ていた。

 

「こ、れは……私?」

 

何でだろう。この子を私は知っている気がした。でも、この子を見た途端金縛りに合ったように動けなくなった。

怖い。震えが止まらない。

 

「フェイト、大丈夫かい? 顔が真っ青じゃないか!?」

「あらあら、この部屋に入ってきたらダメと言ったでしょ?」

「っ!? プレシア!」

 

シリンダーの裏から母さんが出てきたけど、その視線はポットの中の女の子に向けられいた。

 

「母さん、この子は一体……?」

「あぁ、紹介するわね。私の()()()()アリシア・テスタロッサよ」

 

母さんは少女、アリシアの入ったポットを愛おしそうに撫でながら、優しい笑顔でそう言った。

その顔は私が今まで見た事もない笑顔だった。

 

「えっ? か、かあさ……ん?」

「プレシア、あんた今なんて言ったんだ!?」

 

私もアルフも母さんが何を言っているのか理解できなかった。いや、理解したくなかった。

 

「言った通りよ? この子が私の本当の娘と言ったの。あぁ、あなたはこの子のクローン、と言うのを先に言えば良かったわね。あなたはこの子を元に作られた、記憶転写型人造魔導師計画【プロジェクトF.A.T.E】で作られたのがあなた。でも、実際はただの失敗作、ただのお人形さん。けど、それも今日で終わり」

 

プロジェクト、F。

その名前は確か前にあの人が私を、えっ? 私がクローン? 私が人形? 私は……母さんの娘じゃないの?

 

「っ!? フェイト!?」

「えっ?」

 

アルフの声にハッと顔を上げると、母さんに私に杖を向けて魔法を発動させる直前だった。

 

「もう用済みよ。最後に良い事教えてあげる。あなたを作ってから私はずっと、声も、笑顔も何もかも……大嫌いだったのよ」

「フェイト!」

 

あまりに突然の出来事に私は見動き一つ出来なかった。

母さんは私が……大嫌い。

それから目の前が真っ暗になって、母さんの雷撃をアルフが庇ってくれるのが見えて、私は意識を失った。

 

 

それから、私はずっと暗い闇の中にいた。

 

――わたしは、だれ。

 

母さんの娘でないなら、私は一体誰なのか、私は何のために生きているのか……

 

――もう、どうでもいい……このままきえてしまえばいい……

 

「フェイト!」

 

――だれ?

 

「俺はクロス、君を迎えに来た!」

 

クロ、ス? あぁ、そうだ。あの時私を助けてくれた人。でも、どうして、どうして私を助けに来たの? 私は人形。私は出来そこない。私は……

 

「違う! フェイトは出来そこないでも人形でもない!」

 

違う、の? それじゃあ……私は、何?

 

「俺はフェイトがプロジェクトFで生み出された、アリシアのクローンだと最初から知っていた。けど、だからどうした!?」

 

えっ?

 

「俺はフェイトが、アリシアのクローンだから助けたんじゃない! なのはだって、そうだ。フェイトはフェイトだから。フェイト・テスタロッサと言う人間と友達になりたいから、だからずっと話しかけたんだ!」

 

なのは? だれ、だっけ。あぁ、いつも会う度に私がヒドイ事をしてきたのに、私に手を伸ばして話しかけてくれた子だっけ。

 

「今もなのははずっとフェイトを心配して、フェイトを待ってる! フェイトの名前を読んでいる!」

 

――フェイトちゃん!

 

どうして? 私、ちゃんと教えてくれた名前を覚えてなかったのに。それなのに、あの子は私をずっと名前で呼んでくれた……

 

「決まってる。なのはも俺も、フェイトと友達になりたいからだ!」

 

私と、ともだち……に?

 

「それだけじゃない。アルフもフェイトを待っている。フェイトはどうだ? こんな所で消えるつもりか!?」

 

アルフ……良かった。無事だったんだ。でも私はもう……

 

「本当に良いのか? このまま消えて、プレシアに、母親に何も言わずに消えるつもりか!?」

 

母さん、でも私は母さんに……

 

「プレシアがどうかじゃない。フェイトがどうしたいかだ!」

 

私が、母さんに……私は、母さんの……

 

「教えてくれ。フェイトは本当はどうしたいんだ?」

 

私は……私は、母さんに……ぁっ!?

 

「んっ、フェイト!? こ、これは……まさか!?」

 

なに、これ……黒い何かが、私を、包んで行く!?

 

「フェイト! 気をしっかりもて! くそっ、プレシアの奴!」

 

声が段々遠くなっていく。そして、私は……深い闇に消えた。

 

 

 

クロス君と離され、私は元いた広間から外へとフェイトちゃんに押し出されました。

そこは空が不気味な色をした、どこかの庭園みたいな場所でした。

クロス君がここは時の庭園と呼ばれる、次元空間に浮かぶ巨大な島みたいなものと教えてくれたけど、初めて見る異様な空に改めて実感出来ました。

そんな空を私とフェイトちゃんは飛びまわりながら、戦闘を始めました。

 

「フェイトちゃん!」

 

私はフェイトちゃんの射撃を交わしながら、何十度目か分からないけど再度フェイトちゃんの名前を呼びました。

けれども、フェイトちゃんからの返答は……

 

<フォトンランサー>

「……ファイア」

 

攻撃でした。

 

『今のフェイトとバルディッシュは普通じゃない。呼びかけるだけじゃだめだ。戦って、正気に戻すんだ!』

「でも」

 

クロス君がいる場所からかなり離れちゃったけど、まだ念話は通じるみたいです。

本当はクロス君にすぐに謝らないといけないのに私もクロス君もそれどころじゃなく、今はフェイトちゃんを正気に戻す事に集中する事にしました。

 

『例え、傷付いても俺が必ず治す! ノアや母さん達ももうすぐ来る。だから、なのはは今できる事を……いや、やりたい事をするんだ!』

 

クロス君はフェイトちゃんを元に戻す為には、どんな事でもするつもりのようでした。

けれども、今はプレシア・テスタロッサ、フェイトちゃんのお母さんの相手で手一杯で私がやるしかありません。

 

「私が、出来る事やりたい事……フェイトちゃんを、助ける! 行くよ、レイジングハート!」

<待っていました>

 

意を決して、私を追ってくるフェイトちゃんに向き直りました。

 

<ディバインシューター>

「シュート!」

 

7個の魔力弾を精製し、フェイトちゃんを囲むような軌道で放つ。

 

<サイズフォーム>

 

でも、フェイトちゃんは避けるそぶりも見せずにバルディッシュを一振りしただけで全部切り裂いてしまいました。

 

「クロス君の言う通り、いつもより強くなってる」

 

フェイトちゃんにかかっている洗脳魔法、それのせいで今のフェイトちゃんは普段より強くなっています。

 

「でも、逃げてばかりじゃダメだよね!」

<その通りです>

 

私は不規則な機動で飛びつつ、シューターを打ち続けました。

フェイトちゃんはそれをモノともせずに更に速度をあげて、ついに私の懐にまで飛び込んできました。

 

「今っ!」

 

レイジングハートに魔力をこめて、フェイトちゃんの一撃を受け止めました。

クロス君との特訓で教わった、フェイトちゃんみたいな高機動型魔導師への対処法。

一撃を避けられないのなら、防御する事に集中。

かつ、相手が素早く動くなら、それを止めてしまう事。

 

「っ!?」

<カウンターバインド成功です>

 

バルディッシュを受け止めていたレイジングハートから光が溢れて、フェイトちゃんの全身にいくつもの縄が巻かれました。

相手が速いなら止めればいい、避けきれないなら受け止めればいい。

クロス君が教えてくれた戦法の1つ。

でも、これは一つ間違えれば相手の攻撃を思いっきりうけちゃう事になるから、やる時は場面と相手の力量を見てから実行する事、そうクロス君は教えてくれました。

 

「フェイトちゃんとは、もう何回もぶつかってきてるもん。動きも攻撃パターンも覚えたよ!」

 

実際には、フェイトちゃんの動きを真似て模擬戦をしてくれたクロス君のおかげです。

 

「本当にクロス君には色々助けてもらってたんだよね」

 

そんなクロス君を私は傷つけてしまいました。

激しい後悔と罪悪感が胸にこみ上げてきます。

けれども、それは後! 今はフェイトちゃんを助けるのが先!

 

「この魔力散布量じゃアレは使えない。だけど、こっちで十分!」

 

バインドを振りほどこうとするフェイトちゃんに、至近距離でレイジングハートを構えます。

 

<カノンモード>

「ごめん、フェイトちゃん。今助けるからね……ディバイン」

 

レイジングハートに魔力が溜まった瞬間、フェイトちゃんがバインドを解きました。

だけど、私の方が速い!

 

「バスター!!」

「……ぁっ」

 

フェイトちゃんを桜色の砲撃が包みこんで行きます。

確かに今のフェイトちゃんはとても強かったけど、操られたフェイトちゃんよりもお母さんのために頑張っていたフェイトちゃんはもっと強かった!

 

 

――フェイトちゃん!

 

また私を呼ぶ声が聞こえる……これは誰!?

 

――フェイトちゃん!

 

必死に私を呼ぶ暖かい声。この声を私は知っている。

 

――フェイトちゃん!

 

今まで私をずっと呼んでくれた子。確か……名前は。

 

「なの……は」

「フェイトちゃん、気が付いたんだね!」

 

目を開けて、最初に見えたのは泣きそうな顔をして私を見るなのはの顔。

 

「……なのは?」

「っ!? い、今私の名前を、フェイトちゃん……良かった。本当に、良かった……うぅっ、んぐっ……うわぁあぁ~~ん!」

 

私がもう一度名前をと呼ぶとなのはは泣きだして、私に抱きついてきた。

暖かい。アルフ以外の誰かに抱きしめられるのは久々だと思う。

気が付くと私はなのはを抱きしめ返していた。

嬉しい。こんなにも私の事を思ってくれる人がいるのが嬉しかった。

 

「……ありがとう、なのは」

 

 

続く




次回はクロスvsプレシアです
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