魔法少女リリカルなのは異伝~X Destiny~ 作:カガヤ
プレシア戦、決着です。
海鳴市 近郊
ここでは、ゼストとメガーヌがシャロとアスク軍団を相手に奮闘していた。
だが、十数体いたアスクもメガーヌが呼びだした究極召喚獣・白天王によって残り数体にまで数を減らしていた。
「リバースアンカー!」
アスク達の足元に現れた魔法陣から、メガーヌが碇の形をしたバインドを召喚し拘束する。
白天王がそれに向け、胸のクリスタルから魔力砲を放ち残りのアスク全てがこれで倒された。
「ちっ!」
「俺を前にして、よそ見をするな!」
それを横目で見たシャロの一瞬の隙を付き、ゼストの槍が左腕に付いたブレードを砕いた。
「まだ、やるか?」
「もうアスクは残っていないでしょ?」
シャロの前には槍を構えたゼスト、後ろには白天王を戻したメガーヌが両腕を突き出している。
「(予想外でした。まさか2人だけでもこの戦闘力とは、向こうも気になりますし……) いえ、もうここに留まる理由はありません」
「逃がさない!」
シャロが逃げようとしているのに気付いたメガーヌがバインドをかけたが、一瞬遅くシャロは消えてしまった。
「隊長、申し訳ありません。逃してしまいました」
「今のは前にも使われた高速転送魔法だ。通常の転送よりも発動が早い。クロスやノアのジャンプ並だ。逃してしまっても仕方ない。恐らくプレシアの所に向かったのだろう……っ!?」
「これは!?」
その時、ゼストとのメガーヌが何かを感じ取った。
他の局員達は何も感じず、2人の様子に首をかしげた。
「隊長、いよいよクロスが……」
不安げな表情を浮かべるメガーヌだったが、ゼストは笑みを浮かべていた。
「あぁ、だがクイントやティーダだけじゃなくリンディ提督も一緒に行った。それに今のクロスなら大丈夫だろう。俺達も急ぐぞ!」
「了解!」
結界を張っていた局員達と共に、時の庭園へ跳ぼうとしたゼストとメガーヌだったがそこへアースラから通信が入った。
『ゼスト隊長。一度アースラに戻って下さい、フェイマスさんよりお届け物があります』
「ダウナーから? よしっ、一先ずアースラに戻る」
少し眉をひそめたが、少し笑みを浮かべてゼストはメガーヌ達とアースラに戻った。
時の庭園 裏庭
「サンダーレイン!」
電撃の雨がクロスの周囲に降り注ぐ。
しかし、それよりも速くクロスは動いていた。
「っ!?」
「炎天剣・爆火!」
姿が消えたかと思えば、クロスはプレシアのすぐ後ろに跳んでいた。
プレシアが後ろを振り向きながら杖を振りかざすのと、クロスが炎の剣を振うのは同時だ。
2つの武器がぶつかりあった瞬間、大爆発を起こした。
激しい爆炎の中から、クロスとプレシアは無傷で弾き飛ばされる。
だがクロスが飛ばされた先には、プレシアが放っていた魔力弾が機雷のように空中に浮かんでいた。
「吹き飛びなさい」
「食らうかよ、風天剣・回嵐!」
プレシアが起爆させるより早くクロスが風を纏った剣を振い、竜巻を起こして機雷を全て吹き飛ばした。
「次はこっちの番だ。炎天剣・炎焼!」
刀身が長く伸びた炎の剣がプレシアに向けて振われた。
1撃目と2撃目は避けられたが、クロスは次々と斬撃をプレシアに放った。
更に一撃毎に剣速が上がり、プレシアは回避が難しくなった。
ならばとプレシアが杖を振うと、その軌跡に合わせるように電撃が奔り剣の炎を相殺した。
「ふん、その姿になっても砲撃や射撃は出来ないようね!」
クロスの弱点である遠距離魔法が使えない事にプレシアは気付いていた。
それは仙気を解放した今でも変わらない。
だが、クロスはニヤリと笑みを浮かべてプレシアを見上げた。
「そうだな。でもな……」
そう言ってクロスが消え、次の瞬間にはジャンプでプレシアの背後に跳んでいた。
しかし、プレシアにはお見通しで杖から伸びた雷の鞭を後ろに振るい、クロスを捕らえようとした。
「今ならこんな事も出来る!」
「なにっ!?」
クロスが突き出した両手から激しい炎が放たれた。
魔力変換素質『炎熱』を使い、炎と化した仙気をそのまま放出したのだ。
それは雷の鞭をかき消して、プレシアの全身を包みこむほど巨大な炎だった。
「ちっ!」
プレシアの不意をつき優位になったはずのクロスだったが、舌打ちをしながらすぐに炎を止めその場から離れた。
するとついさっきまでクロスがいた場所を何本もの鞭が打ちつけた。
「全く、熱いじゃない」
炎の中からは無傷どころか、塵一つ付いていないプレシアが現れた。
「……あの炎で無傷、か」
それを見たクロスは予想していたかのように冷静だ。
『やはりあの防御障壁を突破しないと……』
今のプレシアは、ジュエルシードの力を制御装置で自分の魔力に変換させて、病の進行を止めていた。
それだけではなく、ジュエルシードの力をバリアとしても利用していた。
「今の俺じゃ仙気でもアレを突破するのは厳しいな。剣で切り裂けるけどすぐに元に戻る、まだ一押しする力が足りない」
プレシアの防御壁を破る方法はある。だが、それをすればクロスに後がなくなる。
クロスがやらなければならない。いや、やると決めた事をする為には、その方法は絶対に使えない。
「さっきは邪魔が入ったけど、今度はそうはいかないわ。さぁ、今度こそ終わりよ」
プレシアが杖をかざすと広間を埋め尽くすほどの魔力弾が現れた。
魔力弾をクロスを囲むようにして展開して、勝ち誇った顔で見下ろしながらプレシアは冷たく告げた。
「潰れなさい」
その一声で、クロスの周りに浮かんでいた魔力弾が一斉に放たれた。
「ふぅ、鏡面剣!」
クロスは目をつぶり、深く息を吸うと目を瞑ったまま銀色に煌めく剣を振るった。
「はあぁ!!」
仙気を纏った鏡面剣は、プレシアの魔力弾すらも弾き飛ばした。
ある時は弾き返した弾で相殺。またある時は身体を少しそらし、弾をかわしている。
地面に降りているので前後と上空180度全て警戒しながら百発近い魔力弾を次々とかわし、撃ち返していく。
「視覚を断つ事で、全身の感覚を上昇させ魔力を探りながら冷静に対処していってるわね。でも……」
魔力弾の残りが半分ほどになった所で、少しずつだがクロスの動きが鈍くなってきた。
『マスター、まずいです』
「あぁ、分かってる! くそっ!」
仙気を解放したクロスの最大の弱点、それは持続時間の短さだ。
今のクロスは自身の仙気を垂れ流しているだけ。つまりタンクの蛇口を全開にしている。
どんなに巨大なタンクでも、蛇口を全開にしていればいずれは尽きる。
その蛇口の制御を、ユニゾン状態の今のクロスでさえ完全には制御できていないのだ。
対するプレシアはジュエルシードから無限とも言える魔力の供給がある。
最大出力ではクロスが上でも、総量はプレシアが圧倒的に上。
つまり、時がたてばたつほどクロスが不利になる。
段々とかわす事が出来なくなり、クロスの身体を魔力弾が掠るようになった。
「ぐっ、なめるなぁ!!」
クロスの目がカッと見開き、全身から仙気を一気に放出させ魔力弾を全て吹き飛ばした。
その時の爆発は大きく、離れた場所にいるリンディやクイント達にも震動が届くほどだった。
「これは、クロスか?」
「そのようね。急ぐわよ、クロノ。もう少しで着くはず」
リンディ達は行く手を阻む傀儡兵を蹴散らしながら、ようやく駆動炉へとたどり着いた。
「(これが、クロスの力。確かに隠さなければいけないほどの強大な力だ)」
クロノにはリンディが簡単にではあるが、クロスとノアの事は話してある。
それでも最初、あまり納得はしていないようだったが、今クロスの本当の力を知りようやく納得した。
ゼスト隊とリンディがあれだけ危惧して、保護する必要のある力、エヴォリューダー、そして仙気。
全ての力を解放した今のクロスにクロノは勝てる気がしなかった。
しかし、クロスはその力をもってしてもプレシアを止めるには至っていない。
その事実が、庭園の大広間で戦っているクイントとティーダを焦らせた。
すでに十数体の傀儡兵を片付けたが、それでも数はまだ多くクロスの援護に行けない。
「どうしますか、姐さん。今の爆発、クロスが勝ったとは思えない。嫌な予感がするんですけど」
「最悪ね。今のクロスで無理なら、私達でも無理よ。でも、まだそうと決まったわけじゃないわ」
プレシアの強さの秘密。それは集めたジュエルシードから無限に魔力を供給している事。
仙気を全開放したクロスとどちらが強いか、先程プレシアを見た限りではほぼ互角だった。
しかし魔力が無限と有限、長期戦になればどうなるかは考えるまでもない。
「なのはちゃん、フェイトちゃん、よく聞いて。残った傀儡兵は私とティーダ、ユーノ君、アルフちゃんで仕留めるわ。あなた達2人はクロスの援護に向かって」
「えっ、姐さん!? なのはちゃん達じゃ……」
「分かりました!」
「お願いします!」
危険すぎるとティーダは言おうとしたが、それよりも早くなのはとフェイトが答えた。
ティーダは驚いたが、クイントはニコリと微笑んだ。
「クロスの事、お願いね」
「「はい!」」
言うが早いか、なのはとフェイトはクロスが向かった玉座後ろの通路へと急いで向かって行った。
「姐さん、いいんですか?」
「大丈夫ですよ。ティーダさん、なのははクロスの事を信じていますから」
「そうだよ。今のフェイトはプレシアだけじゃない。クロスやなのは達の為にも戦う決意固めたんだ。そうなったフェイトは強いよ?」
ティーダの問いに答えたのは、意外にもユーノとアルフだった。
「そう言う事よ、ティーダ。今のクロスには私達よりあの子達が必要だと私は思うわ。さ、私達は私達の仕事を片付けるよ!」
「「「はい!」」」
通路を守るように陣取った4人の元に、最初よりは減ったがそれでもまだ多くの傀儡兵が攻撃をしかけてきた。
「はぁ……はぁ……」
「大分息が上がってきてるわね」
プレシアの言う通り、クロスは剣を支えにやっと立っているような状況で、かなり息切れもしている。
体中から噴き上がる仙気も勢いを無くし、今にも消えそうな程だ。
それでも、クロスの眼光に衰えは見えない。
「はぁ、はぁ、プレシアの防御を崩す方法は何か……っ! い、いやダメだ」
『? どうしたんですか、マスター?』
一瞬ある考えがクロスの頭に浮かんだが、それを打ち払うかのように頭を振って否定した。
「何でもない。それよりも……「クロスくん!」 なのは、フェイト!?」
一か八かの賭けに出ようかとした所で、なのはとフェイトが飛んできた。
2人共クロスを守るかのように前に立ちはだかり、デバイスをプレシアに向けた。
「なんで2人共ここに来たんだ!?」
なのはとフェイトに驚いたクロスは、仙気の解放を止めた。
今の状態では暴走してしまうかもしれないからだ。
「そうよ、クロスより弱いあなた達が来ても、足手まといね」
「っ、2人共逃げろ!」
プレシアはなのはとフェイトを笑い、2人に向けて次々と雷を放って行った。
クロスがかけよろうとしたが、それより速く2人は動いていた。
「確かに私達はクロス君より弱いよ、だけど」
2人は手を重ねてシールドを重ねがけして防いだ。
「何っ、防いだ?」
「だからってクロスだけに戦わせたりはしない!」
雷撃を凌いだ2人は、すぐにその場から飛びあがりプレシアを挟むように立った。
「ディバインバスター!」
「サンダーレイジ!」
2つの魔力砲がプレシアに迫ったが、球体のバリアに防がれてしまった。
「やはりこの程度、かわすまでもないわね」
「だったらこうだ! 氷天剣!」
プレシアの頭上に跳んだクロスが、氷の力を纏った剣を突き降ろした。
しかし、それすらもプレシアのバリアを突破出来ない。
プレシアが手をかざし電撃を放とうとしたが、それよりも速くクロスは離脱した。
「ちっ、やっぱ仙気でなければダメか!」
今の攻撃は仙気ではなく魔力での攻撃だった。
消耗が激しいのもあったが、なのはとフェイトがいる以上暴走する危険はおかせない。
「で、2人の攻撃じゃプレシアには届きもしないけど、これでもまだ一緒に戦う気か?」
「そんなの関係ないよ。私達はクロス君とノアちゃんを助けたいからここに来たの!」
「そうだよ。それに私はフェイト・テスタロッサであの人は、プレシア・テスタロッサ。私の母さんだもの。クロスにだけ任せておくわけにはいかない。お願い、私達にも一緒に戦わせて」
『マスター、私達だけじゃ無理です。2人の力も借りましょう』
ノアもなのは達に力を借りようと言い、それを聞いたクロスは深く溜息をはいた。
2人は戦う覚悟を決めた。ならば、自分も2人と共に戦う覚悟を決めろ、と。
『分かった。2人共、力を貸してくれ。と言っても今のプレシアにはあのバリアがある。アレを打ち破るには相当な魔力が籠った攻撃でなければダメだ』
クロスは念話でなのはとフェイトに状況を伝えた。
『相当な魔力が籠った。あっ、だったら、スターライトブレイカーなら。あれなら!』
『確かにブレイカーなら可能かもしれないけど、大丈夫なのか?』
少し考え込んだなのはが発した言葉、スターライトブレイカー。
それはなのはの最強の切り札であり、最後の切り札でもある。
自身の魔力と周囲の魔力を一か所に集束させて放つブレイカーは、身体への負担も大きい。
また集束中は術者は見動きが取れなくなり、1対1では使用が難しい。
以上の事からまだ幼いなのはへの影響は計り知れない。
なのでクロスとノアは、なのはが1人戦う時にはブレイカーを使う事を禁じていた。
それでも先のフェイトとの戦いでは最悪使わなければいけない事も考え、なのはに許可していた。
『大丈夫。フェイトちゃんを助ける時には使ってないから』
『だったら。いや、でもなのははここへ来たばかり、なのはの魔力は周囲には拡散が不十分』
『クロス君が戦っていたならその力も集束させれば……』
以前、訓練中になのはが一度ブレイカーを使用した時は、なのは自身の魔力だけではなく相手をしていたノアの魔力をも集束させて使用した。
『俺はずっと仙気を使っていた。仙気は魔力と違って周囲に拡散しない。使った分は全て消耗される。だから、ここにはプレシアの魔力しか……そうか! やれる、なのはのブレイカーならプレシアのバリアを破れる!』
『マスター、プレシアの魔力もブレイカーに使えば、同質の魔力でバリアが中和されます!』
プレシアが纏っているバリアは、ただのバリアやシールドとは質が違う。
普通の魔力では無効化される恐れがある。
だが、同じ質のプレシアの魔力を使ったブレイカーなら、効果はあるはず。
『よし、それで行こう。ノア、なのはの補佐をするんだ。それなら負担も最小限に抑えられる』
『えっ、でも、それじゃあクロス君が!』
『大丈夫だ、なのは。フェイト、俺がプレシアに仕掛けて時間を稼ぐから援護を頼む』
『分かった。でも、大丈夫なの? ユニゾンなしだと長時間戦うのは危険だってなのはから聞いたけど』
道中でなのはからクロスの事を少し聞いていたフェイトも、なのはと同じく不安そうな顔を向けた。
それはノアも同じようで、ユニゾンを解きつつクロスの方を心配そうに見つめた。
しかし、クロスは笑みを浮かべて答えた。
『心配ない。さっきまでは負けられないってのが強かったけど……』
『マスター……』
そう言ってクロスはこちらを見下ろすプレシアに向き直った。
今のクロスの表情はずっと一緒にいたノアでさえ、今まで見た事がない程活き活きとしていた。
『なのは、フェイト。2人がいる今は、負ける気がしない!』
『クロス君……うん、うん! 一緒にやろう。みんなで!』
『行こう、クロス、なのは。母さんを止める為に!』
それはクロスが今まで味わった事のない感覚だった。
ゼスト隊と一緒にいても、クロノと任務に当たっていても、こんな気持ちになった事はない。
なのはとフェイトがこんな自分と一緒に戦いたいと言ってくれた。
それだけで、クロスの心は穏やかになり、そして、とてつもなく昂ぶってもいた。
「あら、作戦会議は終わったのかしら?」
プレシアは、クロス達が念話をしていたのには気付いていたが内容までは知らない。
それでもプレシアは余裕の表情を崩さない。
「あぁ、意外だな。待っててくれるなんて」
「あなたたちの最後の会話だもの。それくらいの時間は待ってあげるわ」
「最後じゃない!」
クロスはプレシアへ言葉を返そうとしたが、先にフェイトが答えた。
「フェイト?」
「最後なんかじゃない。私はもっとクロスやなのは達と色々話をしたい。母さんとだってもっと話がしたい。だから……最後になんてさせない!」
「フェイトちゃん!」
「あぁ、そうだな。最後になるのは、お前の独り善がりの野望の方だ!」
クロスが掛け声と共に飛び上がり、同時にノアがユニゾンを解除してなのはの方へ飛び、フェイトがバルディッシュを構えた。
<フォトンランサー>
「ファイア!」
十数個の魔力弾が前を跳ぶクロスを援護するかのように、一斉にプレシアに放たれた。
それを見たプレシアの目が一瞬だけ見開いたが、すぐに手をかざし全て防いだ。
その隙にクロスは間合いを詰め、プレシアの前へと来ていた。
「断魔剣!」
白く輝く剣がプレシアのバリアと激突する。
ノアとのユニゾンを解除した今、クロスは仙気を使えない。
魔力のみでの剣撃では、プレシアには届かない……はずだった。
――ピシッ
「っ!?」
プレシアの耳に入った小さな音。
それはバリアにほんの小さな亀裂が入った音だった。
バリア自体は先程までの仙気を解放したクロスとの戦闘で、何度か切り裂かれたがすぐに元に戻った。
今回も小さな傷などすぐに消えた。
しかし、今のクロスは仙気ではなく魔法を使った攻撃しか出来ない。
なのに、キズを付けた。
「くっ! 調子に……」
プレシアがクロスへ向けて杖を構え、電撃を放とうとしたその時。
「はあぁ~!!」
そこへフェイトが、プレシアの横へと現れサイズフォームへと変形したバルディッシュを振り降ろした。
「何っ!?」
プレシアは、フェイトの攻撃がよほど意外だったのか、思わず後ろに下がり回避した。
「まだまだ、これからだぁ!」
「てやぁ!」
ここぞとばかりに、クロスとフェイトは続け様に斬撃を繰り出した。
2人の気迫にプレシアは反撃する余裕がなくなり、バリアで防御を固めるのがやっとだ。
「(なぜ、なぜあのフェイトが何のためらいもなく私に攻撃できるの? それにクロスも、仙気を使っていないのに、ユニゾンを解いているのにさっきよりも攻撃が鋭い?)」
いつも自分の顔色をうかがっておどおどしていたフェイトが、自分へとなんの迷いもなく攻撃してきた事。
ノアとユニゾンして仙気を解放した時以上の攻撃を繰り出してくるクロス。
その2人が絶妙なコンビネーションで自分を追い込んでいる。
一体なぜ?
プレシアには分からなかった。そして、強い決意をした2人の瞳に、恐怖さえ感じていた。
『マスター、フェイトちゃん、準備出来ました!』
『2人とも離れて!』
なのははプレシアから離れた場所で、周囲の魔力をノアの補助の元で集めていたが、それがようやく終わった。
その念話を受けて、クロスはフェイトに目配せした。
「っ……バルディッシュ!」
<フォトンランサー・ファランクスシフト>
フェイトはさっきから周囲にいくつものスフィアを展開し、クロスの合図を待ってそれを一斉に放った。
「撃ち、くだけぇ!!」
フェイトの掛け声と共に、クロスはプレシアの側から離れた。
クロスに気を取られていたプレシアがフェイトの魔法に気付いた時には、目の前が金色の魔力弾で埋め尽くされていた。
「ぐっ、くうぅ!」
杖を構え、バリア維持に全力を注ぐ。
いかにこの魔法でもバリアは破れないが、それでも今のプレシアにはそこまで気付く余裕がなかった。
次々と魔力弾がバリアを直撃する。それでも、バリアは傷一つ付かない。
煙だけがプレシアの視界を遮るだけだ。
「ふふっ、あはは、あははははっ! そうよ、無駄よ! 無駄なのよ! あなた達じゃ私は……っ!?」
あれだけの連続射撃でもバリアを突破出来ない事で、少し冷静になり余裕が戻ってきたプレシア。
しかし、煙が晴れ視界が元に戻った時、そこに見えた光景に目を見開いた。
<スターライト・ブレイカー>
そこには巨大な桜色の魔力球を作りだしたなのはの姿があった。
「これがクロス君とノアちゃんに教わって、レイジングハートと考えた知恵と戦術、最後の切り札!」
「まさか……集束砲撃? あ、あんな子供に……」
プレシアは電撃を放とうとしたが、それより早くなのはは天高く掲げたレイジングハートを、巨大魔力球へと振り下ろした。
「受けてみて、これが私の、私達の全力全開! スターライト・ブレイカァー!!」
それはもはや砲撃と呼ぶのも生ぬるかった。
巨大な桜色の輝きは、そのまま光の柱となってプレシアを直撃した。
「ぁぐっ、あああぁぁ~!!」
プレシアは残った魔力全てをバリアに注いだ。
でも防げたのはほんの1、2秒だけだった。
すぐにバリアにいくつものヒビが入り、ガラスのように砕け散った。
後は光の奔流にのみこまれていくだけ。
その中で、プレシアは確かに見た。
「いい加減に眼を、さましやがれぇ!!」
赤く輝く右手を自分に向けてくるクロスの姿を。
そして、桜色の光の中で、赤色の拳がプレシアの顔面を捉えた。
続く
無印編も終盤、あと少しでおわりです。
それからやっとあの姉妹を出せます!