魔法少女リリカルなのは異伝~X Destiny~   作:カガヤ

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お待たせしました!
まだ無印編です・・・


第21話 「絶体絶命」

暖かい光に包まれてる感覚の中、プレシアは静かに目を開けた。

 

「かあ、さん……」

 

そこには今にも泣きそうな顔で母親を見つめるフェイトと、そんなフェイトに寄りそうにいるなのは。

 

「……」

 

そして、睨みつけながらも、自分に回復魔法をかけているクロスの姿があった。

プレシアがぼんやりとした眼で周りを見渡すと、クロスよりにも鋭い目つきで睨んでいるクイントがいた。

少し離れた所にいるノアがゼスト達と装置を見ながら何かを話していた。

 

「やっと起きたわねプレシア。メガーヌ、後お願いね」

「えぇ、分かったわ。クロス、後は私がやるわ」

 

クイントに呼ばれたメガーヌは、プレシアを診察すると手に持った小さなケースの中から注射器を取り出した。

 

「待って。何をするの?」

「心配しないで、これはあなたの病気への特効薬。後でちゃんと治療するけど、今はこれで持つはずよ」

「私の、病気の事を?」

「以前やり合った時、俺に付着したお前の血液を診てもらったんだ。で、お前が不治の病に冒されてると知って、薬を作った」

 

クロスとプレシアが直接闘った時、彼女は吐血した。

その時クロスに付着した血を、管理局本局で解析した結果、プレシアは不治の病に冒されていると知った。

 

「それにしても、よく薬があったわね。私も長年探していたと言うのに」

 

それを聞き、クイントとメガーヌは意味深に顔を見合わせクロスへと振り向いたが、クロスは素知らぬ顔をしているだけだ。

 

「エヴォリューダーはウイルスや毒に対する抗体を即座に作り出すのは知っているだろ。本局では秘密裏にそれを利用してあらゆる病に対応する特効薬の開発を行っていたんだよ」

「これはその試作品。と言っても実験を繰り返して安全性は保証出来たから、問題はないはずよ」

 

話しながらメガーヌは、プレシアの腕に注射をした。

 

「そんなものをどうして、私に?」

「言っておくけど、それはお前の為じゃない。フェイトの為だ。フェイトはお前を、母親を必要としていた。その為にどんな事でもする覚悟があった。だから、お前を助ける…それだけだ」

 

フェイトはクロスの言葉に驚き、涙を浮かべた。

それを見てアルフもしょうがないと言う風に息をはいた。

 

「……母さんを助けてくれて……ありがとう、クロス」

「私からも礼を言うよ」

「礼はいい。俺がそうしたいから、しただけだ」

「うん、それでもありがとう」

 

クロスに礼を言うフェイトの笑顔を見て、プレシアは先程まで見ていた夢のような映像を思い出していた。

 

「……さっきは私に一体何をしたの?」

 

プレシアが覚えているのはクロス達と戦い、クロスに殴られて光に包まれ意識が無くなり、妙な夢を見た事だ。

 

「お前は俺の魔法にかかってたんだ。トランスメモリー、自分や他者の記憶をコピーしたり相手に埋め込んだりする魔法だ」

 

そう言われ、プレシアには何が起きたのか大体理解出来た。

 

「お前にかけられたフェイトの傀儡魔法を解こうとした時、一緒にフェイトの記憶をコピーしておいたんだ。で、それをお前に叩きこんだ。フェイトはあんな事されてもまだお前を母親と慕っていた。でもお前は聞く耳を持たなかった。だから直接見せたんだよ、お前の心にな。お前を思いっきりぶん殴ったのはそのついでだ」

「私の……記憶」

 

フェイトはその意味を理解して、羞恥心から顔が赤くなった。

 

「悪いな、フェイト。最初はただフェイトの精神を起こすだけのつもりだったんだけど……」

「う、ううん。私は大丈夫だよ。母さんを説得、するためだったんだよね?」

「あぁ、あれが一番効果的だと思ったんだ」

 

クロスはすぐに謝ったが、フェイトはまだ頬を赤くしながらも納得したようだ。

 

「……でも、ちょっと痛そうだよ?」

 

プレシアの赤く腫れた頬を見て、なのはは心配そうな顔を浮かべた。

 

「傷跡残らない程度には手加減したんだ。これくらい自業自得だろ」

「ク、クロス。確かに思いっきりやりなさいとは言ったけど」

「全く、クロスらしいわね」

 

殴り足りないくらいだと言わんばかりのクロスに苦笑するクイントとメガーヌ。

 

「……そうね。その子の言う通りだわ」

 

自嘲気味に笑うプレシアを見て一同は驚き、中でもフェイトはハッと口をあけ目を丸くした。

プレシアはそんなフェイトの頭に手を乗せ、ゆっくりと撫でた。

立ちあがり娘の頭を撫でる。そんな母親としては当たり前の動作が自然すぎて、クロス達は全員面を食らった顔をした。

 

「フェイト……」

「かあ……さん?」

「……今までごめんなさい」

「っ!?」

 

娘の名前を呼んでから謝るまでしばらく間があったが、その間誰も何も言えなかった。

なのはとフェイト、アルフにユーノはさっき以上に驚いて、固まっていて……

 

「伏せろ!」

 

クロスが叫んだと同時に、プレシアの首を狙い刃がどこからともなく現れ、同時になのは達の周りも同じく刃が襲い掛かった。

咄嗟にフェイトにプレシアが覆いかぶさった。

 

「……えっ?」

 

が、次の瞬間に、様々な閃光が奔り全ての刃は砕かれていた。

 

「やはり来たか」

 

ゼストの槍とクイントの拳がなのはに迫っていたアスクを打ち砕き、ティーダとメガーヌの放った魔力弾が周囲に展開していた残りのアスクを撃ち抜いていた。

 

「お前が潜んでいるのは分かっていた」

 

そして、咄嗟にフェイトを庇うように抱きしめたプレシアに振り下ろされたシャロの左腕のブレードは、ノアとユニゾンしたクロスによって砕かれていた。

 

「……なぜ、気付いた?」

「知らなかったか? エヴォリューダーは殺意や敵意に敏感なんだよ」

 

実は少し前からシャロとアスクが姿を隠し周囲にいる事にクロスは気付いていて、ゼスト達に報告していた。

時同じくして、庭園の動力炉で停止作業中だったリンディ達の元へも襲撃があったが、これもクロノが瞬時に撃退している。

 

「プレシアの口封じに来たのだろうけど、そうはさせない」

「口封じ? そんな事の為に私がそこの死に損ないに用があるわけじゃないでしょう?」

 

シャロの言葉に一番怒りを示したのがクロスなら、驚いたのはプレシアだ。

自分を死に損ないと言った内容もだが、その声色も話し方もプレシアが知るものではなく全く別人にすら思った程だった。

 

「死に損なったのだから、私がちゃんと殺してあげるわ。それが彼女の相応しい結末、だからこれがマスターへの最後の奉仕」

「てめぇ、そんな事、させるかぁ! 雷天剣!」

 

シャロは残ったもう片方のブレードを展開し、再度プレシアに振り下ろそうとしたが、クロスの雷を纏った剣がシャロの右ブレードを真っ二つに折り、頭を覆うバイザーをも破壊した。

 

「ぐぁっ!? う、うぐっ……よ、よくも!」

「その目は……」

 

バイザーの下から出てきたのは、皮膚がなくひどい傷跡がついた機械の目だった。

 

「きゃっ!」

「ひっ!?」

 

なのはとフェイトが悲鳴をあげるほど、シャロの両目は酷く人間離れしていた。

 

「ぐぅ~エヴォリューダァー!」

 

シャロは折れたブレードで殴り掛かったが、クロスは身を捻ってかわした。

 

「……ふっ」

 

しかし、シャロの狙いはそこにあった。

かわされたブレードはそのまま勢いよく発射され、ジュエルシードの制御装置に突き刺さった。

 

「しまっ……!」

 

クロスはシャロの狙いに気付いたが、もう遅かった。

シャロはブレードが刺さったのを確認すると、ニヤリと笑みを浮かべどこかへと逃げ去ってしまった。

 

「シャロ! くそっ、今はそれどころじゃないか! ノア!」

「は、はい!」

 

制御装置は火花を散らしながら小さな爆発を引き起こし、庭園全体が激しく揺れ始めた。

すぐにクロスとノア、メガーヌが装置にかけより、何とか停止させようとした。

 

「これは、制御装置の暴走。いえ、それだけじゃないわ。このままじゃ庭園が崩壊、いえ、それ以上の事が起きる!」

 

プレシアの言う通り、庭園は外壁が崩れ落ちて次元空間が丸見えになっていくばかりではなく、次元震も起こり始めていた。

それにともない、庭園周辺の次元空間に黒い空間が出来始めていた。

その時、リンディとアースラから通信が入った。

 

『こちらリンディ。駆動炉は完全に停止させたわ。でも、この揺れは一体何!?』

『こちらアースラ。これまでにない規模の魔力反応と次元震を確認! 庭園周辺に巨大な虚数空間が複数発生しています。それに地球にも影響が出始めています!』

「やられた。シャロによってジュエルシードの制御装置が破壊されて、暴走を起こしている。すぐに庭園内の全員をアースラに戻すんだ、エイミィ!」

 

ゼストの指示を受け、エイミィは庭園内の局員達に指示を飛ばす。

リンディもクロノ達に撤収を命じた。

 

『私もすぐにそちらに向かうわ!』

 

リンディは駆動炉を停止させたように結界魔法で停止させようとした。

が、それはプレシアに止められた。

 

「無駄よ。結界魔法では止まらない。暴走の規模が違うわ。あと少しで装置が爆発を起こし大規模な次元震が起こる。アースラだけじゃない地球やその周囲の次元世界にも被害が出てしまうわ……」

『そんなっ、後数分しかないなんて!』

 

エイミィの叫びは全員の心境そのものだった。

アースラも地球も、周辺の次元世界にすらも被害が及ぶ程の大次元震が後数分で起こる。

装置が爆発する事自体がダメなので、当然破壊する事も出来ない。

 

「くそっ、一体どうすればいいんだい!?」

 

アルフの問いに誰も応えられない。

 

「これを止める方法は……きゃっ!?」

「危ない!」

 

ノアとメガーヌは装置を止めようと必死だったが、暴走によって溢れた魔力が膨張しバリアのような形になった。

危うくノアとメガーヌが吹き飛ばされるところだったが、間一髪でユーノとアルフが救いだした。

 

「あ、ありがとうユーノ君」

「助かったわアルフ」

「どういたしまして、でもこれじゃ……」

「装置に近付く事すら、できやしないじゃないか!」

 

ゼストやクイント、ティーダも何か方法はないかと考えているが、何も浮かばない。

 

「……なのは達は今すぐここを逃げろ。アースラなら何とか持ちこたえれるはずだ」

「そうだな。少なくともここよりはマシだな。エイミィ!」

『ダメです、次元震が激しすぎて転送不可能! それに正直……この規模ではアースラでも防御も回避も、不可能です』

 

クロスとゼストが脱出の手筈を整えようとしたが、エイミィの計算ではアースラも落ちる可能性が高く、回避も不可能と出た。

 

「ラファール……」

<せめて次元震がもう少し収まれば、転送も可能になりますが……>

 

それだけ大規模な次元震が起きる。どこにも逃げ場はなかった。

 

「こ、このままじゃみんな死んじゃうの!?」

「……私のせいね。ごめんね、フェイト……最後まで私のせいで」

「謝らないで母さん。きっと、まだ何か手はあるはずだよ!」

 

(そうだ。せっかくフェイトとプレシアが親子の絆を取り戻したのに、このままバッドエンドにさせてたまるか!)

 

絶対にみんなで生還する。改めてそう決意したクロスがふと目にしたのは、庭園の外に広がる虚数空間だ。

 

「虚数空間、膨大な魔力による暴走……これだ、これしかない!」

「どうしたのクロス? 何かいい案でも浮かんだの?」

 

クロスはある賭けに出た。まずは剣で装置と庭園をつなぐケーブルを次々に断絶していった。

 

「何をしているんだ、クロス!?」

「この制御装置をあの虚数空間に突き落とす。そうすれば、魔力が霧散して爆発を防げるかもしれない!」

 

虚数空間、それはありとあらゆ魔法を無力化して、一度中に入れば脱出は絶対不可能となる。

まさにブラックホールと呼べる空間だ。

次元震の影響で庭園周辺には数多くの虚数空間が生み出されている。

ちょうど、この裏庭の崩れた外壁のすぐ向こうにも一つ大きな虚数空間が出来ていた。

 

「でもそこまでどうやって運ぶの!? 近づく事も出来ないのよ?」

「俺が、仙気で撃ちだすよ。魔力だと逆に爆発の危険性があるから。ノア、付き合ってくれるか?」

「勿論です。やりましょうマスター!」

 

それを聞き、クイント達はクロスとノアが何をしようとしているのか理解し、すぐに止めた。

 

「ダメよ2人共! ただでさえ疲弊しているあなた達がアレを使えば、死ぬかもしれないわよ!」

「そうよ! やるなら私が白天王でやるわ!」

「それこそダメだよ、メガーヌさん。こんなところに白天王は呼べないし。この中で一番瞬間魔力放出量高いの俺だ。それに、これは仙気でやらないと多分爆発する」

 

必死に止めるクイントとメガーヌ。

ゼストとティーダも止めようとしたが、それしか方法がないと思い、ぐっと堪えた。

何をしようとしているのか分からないなのはとフェイトだったが、クイント達のただならぬ気迫に2人は涙を浮かべながらすでにノアとユニゾンしたクロスにかけよった。

 

「クロス君、ノアちゃん、死んじゃうってどう言う事!?」

「そんな無茶しちゃダメ!」

 

そんな2人にクロスは優しく微笑み、涙を拭ってゆっくりと頭を撫でた。

 

「大丈夫。俺は、俺達は何があっても絶対に死なない、死んじゃいけないんだ」

『マスターの言う通りです。私もマスターも絶対に死にませんし、誰も死なせません!』

 

もうクイントもメガーヌも止めようとはしなかった。

2人にも分かっていた。ここはクロスとノアが無茶をしなければ、全員死ぬと。

 

「クロス、ノア……死んだらダメよ」

「『……はい!』」

 

クイントは我が子を抱きしめ、クロスとノアは力強く母親に応えた。

 

「ゼスト隊長達は下がっていて下さい。エイミィさん、転送の準備をしてください。恐らく装置が虚数空間に飛び込めば、転送が使えるようになるはずです!」

『わ、分かったわ……2人共、がんばって!』

 

エイミィにも何が起きるのか分からなかったが、クロスが力強く言う事を疑う余地はない。

クロスと装置から距離を取ったなのは達が見守る中、クロスは両手を広げ仙気を解放した。

 

「いくぞっ! はああぁ~~!!!」

『ああぁぁ~~~!!!』

 

クロスとノア、2人の仙気がクロスの体中から噴き出し、両手に集束されていった。

右手には赤い仙気、左手には青い仙気が渦巻ていた。

 

「クイントさん、2人は何をしようとしてるんです?」

「クロスとノアはね、最強魔法であるブレイカーを使おうとしているの。でも、それはなのはちゃんが使うブレイカーとは少し違うの」

「私のブレイカーとは違うブレイカー?」

 

なのはが使ったスターライトブレイカー。

確かにクロスがしようとしている魔法とは少し違って見える。

なのはは空気中に霧散した自身の魔力、それにフェイトの魔力を集束させていた。

しかし、クロスの両手に集まっているのは自身の身体から噴き出ている仙気のみだ。

 

「クロスとノアの使う仙気は、普通の魔力と違って空気中に霧散する事がないの。だから、ブレイカーはあくまで自身の仙気を使うしかない。2人の全仙気を両手に集め、さらにその2つを1つに合わせた集束砲、それがクロスの切り札」

 

クロスの全身から噴き出た仙気が全て両手に流れこみ、巨大な2つの仙気の塊が出来ていた。

クロスは両手を合わせ、2つの仙気を1つに纏めようとしている。

しかし、それは纏めると言うより、無理やり混ぜ込むようにも見える。

 

「ただし、弱点があるわ。1つ、通常のブレイカーよりも準備時間がかかる事。1つ、2人の仙気を全て使ってしまう事。1つ、肉体的負担が高い事。今の2人じゃ……耐えられないかもしれないわ」

「そんなっ!? 止めなきゃ!」

 

クロスへ駆け出そうとするなのはとフェイトをゼストとティーダが止めた。

 

「大丈夫だ。クロスはお前達に死なないと約束しただろう? クロスは約束を絶対に守る子だ」

「それに、クロスは絶対に止めないよ。みんなの命がかかってるんだ。それに、はっきり言ってこれ以外の方法はない……クロスとノアに無理させるのはとても悔しいけどね」

 

見るとティーダの両手は血がにじみ出るほど強く握られている。

ゼストやクイント、メガーヌも拳を握ったり、唇をかみしめている。

クロスとノアに無理をさせているのは百も承知。

しかし、それ以外に手がない事も分かっている。

だからこそ、クイント達は悔しいのだ。

 

「はあぁ~!! い、くぞぉ~!ハイブリット~……」

 

赤と青の仙気が1つに交わり、紫色の渦を巻いている。

『シャイン……』

 

渦は形を変え狙うべき標的、爆発寸前のジュエルシード制御装置へと向かい。

 

「『ブレイカーーーー!』」

 

今、放たれた。

 

 

続く

 




あと2話くらいで無印編終わらせて、あの姉妹出したい!
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