魔法少女リリカルなのは異伝~X Destiny~   作:カガヤ

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お待たせしました!
段々とシリアスが薄まってくる・・・


第5話 「決断の夜」

その後、食堂で紅茶とお菓子と少しの軽食を食べ、なのはとユーノは海鳴市の家に戻ってきた。

 

「ふぁ~……疲れたぁ」

「お疲れ、なのは。今日は色々あったからね」

「うん……」

 

自室のベットに横たわりながら、なのはは今日あった出来事を思い浮かべた。

 

「魔導師の世界、か」

 

なのはは、今までそんな事考えた事もなかった。ユーノに出会い、魔法少女になって、怪物と戦ってフェイトにも出会って……危ない目には沢山あってきた。

でも、命の危険を感じた事はないし、考えた事もなかった。

それをクロスは教えてくれた。

 

「ごめんなのは。僕が軽はずみすぎた。なのはは魔法とか全く知らないのに、覚悟もリスクも何も言わずに巻き込んじゃったんだ。クロスが怒ったのも無理はないよ」

 

ユーノは模擬戦以来、なのはに気付かれないように内心ひどく落ち込んでいた。

自分は昔から魔法が当たり前にある世界にいて、遺跡調査で危ない目にも合った事がある。

だからだろうか、なのはを巻き込んだ事を心のどこかで楽観視していたのかもしれない。

きっとなのはと自分なら危険な事も乗り越えられる。命の危険はない。

それはフェイトとの出会いで多少は歪んだが、それがクロスに説教をされ、模擬戦を見た事で完全に吹き飛んでしまった。

魔導師の才能がこの先どんな未来をなのはに見せるのか、それは本当になのはにとって良い事なのだろうか。

 

「ううん、大丈夫だよユーノくん。これは私が決めた事だもん、ユーノくんのせいじゃないよ」

 

うなだれるユーノになのはは、笑って答える。

 

「ねぇ、ユーノくん。私、このままジュエルシード集め終わらせたくない、続けたい! それにフェイトちゃんとまだちゃんと話出来ていない、だから……」

「なのは、本当にそれでいいの? 管理局の手伝いをするって事はきっとこれまで以上に危険な目に合うよ?」

「それでも、今までの事忘れて誰かに全部任せちゃうのは嫌なんだ。私が自分で決めた事だから最後まで見届けたいの」

「なのはは強いね。分かった、僕も同じ事考えてたから、後でリンディさん達に話すよ」

「うん! これからもよろしくね、ユーノくん」

「こちらこそ、よろしくなのは」

 

管理局に今後の事をどういうか決めた2人は、レイジングハートが記録していた今日のクロスとの模擬戦の映像を見た。

 

「うわっ、本当に私手も足も出てなかったね。クロスさん、一歩も動かずに全部魔法はじいてるよ」

 

そこに映っていたのは。クロスが片手で剣を振いなのはの魔法を斬り落とし、弾き飛ばしている姿が映っている。

しかし、戦っている間はなのはには気付けなかったが、いざこうして第三者の視点で映像を見るとクロスの顔に汗が浮かび、息が上がっているのが分かった。

やがてなのはが力尽き、地面に降り立つとクロスは汗もかかず、息が上がった様子もなく何もなかったかのように近づき、剣を向け模擬戦は終了し映像もそこで終わっている。

この後なのはとユーノは休憩をして戻ってきたが、その時にはリンディとクロノにしか会っていない。

クロスとノアはやる事があるからと言われたが……

 

「クロスは疲れて休んだんだと思う。ノアはその付き添いでね」

「どうして、クロスさんはそこまでしてくれたんだろう」

「多分本人に聞いても答えてくれないかもしれない」

「ユーノくんはクロスさんと会った事あるんだよね?」

「うん、僕がジュエルシード発掘の前の作業をしている時にね。クロス達はちょうど発掘現場の遺跡付近に逃走中の手配犯を追ってきたんだよ」

 

それはなのはとユーノが出会う半年近く前の話。

当時とある管理世界の遺跡で、調査をしていたユーノ達スクライア一族の前に突如数人の管理局員が現れた。

彼らは手配中の凶悪犯がこの遺跡付近に潜伏している、という情報を得てやってきた。

この区域は危険なのですぐに避難を、と呼び掛けたがちょうどその時、ユーノと数人の者たちが遺跡の奥深くで調査をしてた。

ユーノ達に警告しようにも、遺跡は特殊な妨害電波のようなものが出ており通信が遮断されていた。

幸い、各々の居場所はわかっていたので、クロスと管理局員がそれぞれ手分けしてユーノ達を迎えに行く事になった。

そして、合流し遺跡を出ようとしたところで潜んでいた犯人に襲撃を受け、クロスとノアとユーノが遺跡の奥深くに飛ばされ、様々なトラップをくぐりぬけた先に眠っていたレインジグハートを発見した。

その後、追ってきた凶悪犯をクロスとノアが捕まえ、無事に脱出する事が出来たと言うわけだ。

 

「へぇ、レイジングハートって遺跡で発見されたんだ」

<はい、クロス様とノア様のおかげでロストロギアとしてではなく登録デバイスとして、ユーノ様のデバイスとなりました>

「出会った頃から色々無茶する人だったよ、ホント。でも僕じゃなのはのようにレイジングハートをうまく使いこなせなくて」

「そうだったんだ。すごんだねレイジングハート」

<ありがとうございます。マスター>

 

その夜、ユーノとレイジングハートは今まで以上に、魔法や管理局の事について様々な話をなのはに聞かせた。

 

 

 

時同じく、こちらはアースラの艦長室。

そこにはクロス、ノア、リンディの3人が巨大な通信モニターに映る男女と話をしていた。

モニターの向こうでどこかの会議室に座っている4人は、時空管理局地上本部に所属する通称ゼスト隊のメンバー。

 

『はーい♪ クロス、ノア。久しぶり、元気そうね、たまには連絡よこしなさいよ? お父さん寂しがってたわよ』

「母さんも元気そうで良かったよ。本当なら今頃はそっちに戻っているはずだったんだ。父さんにも後で連絡するよ」

「ごめんなさいねクイント。この件が片付いたら2人には休みをたっぷりと与えるつもりよ」

『気にしないでリンディ。こっちに戻ってきたらその分うーんと甘えさせるから♪』

 

モニターに映る薄い藍紫色の髪を後ろで纏めている女性の名は、クイント・ナカジマ。

クロスとノアの母親であり、ゼスト隊の前衛担当で近接格闘技シューティングアーツの使い手でもある。

 

『ああ言ってるけど、さっきまでクイントの方が物凄く寂しがってたのよ?』

「あーマスターも寂しがってましたから、もちろん私もですけど」

「『ちょっ、(ノア/メガーヌ)何を言ってる(んだよ/のよ)!?』」

『流石親子、ね』

 

そう言って笑う藤紫色の髪をした女性は、メガーヌ・アルビーノ。ゼスト隊の後衛・支援担当を務める召喚魔導師だ。

 

『ホント、姐さんはクロスとノアの事になると、周りに目がいかなくなるというか、子煩悩全開ですね』

『うふふ、ありがとう、ティーダ♪』

『いてっ、叩く事ないでしょ姐さん!? 2人共、定期的に短い間隔、出来れば毎日姐さんに連絡取れるようにしてくれ、主に俺が八つ当たりを受けるから』

「分かりました、ティーダさん」

 

クイントに背中を叩かれむせている薄オレンジの短髪青年は、ティーダ・ランスター。

ゼスト隊の後衛・射撃担当で、地上管理局内での射撃の腕は1、2を争うと言われている。

 

『お前達、その辺で良いだろう。そろそろ本題に入ろうか。クロス、ノア……報告してくれるか?』

「わかりました、師匠、報告します」

 

それまでの空気を一変させる重い声をあげたのは、ゼスト・グランガイツ。

ゼスト隊の隊長で、地上本部での指折りの空戦魔導師で、メガーヌの恋人でもある。

クロスが師匠と呼んでいるが、それはゼストがクロスに剣技を教えた師匠だからである。

最も、クロスとノアに色々教えたのはゼストだけではない。

母クイントからは武器や魔法が使えない時の為にと、シューティングアーツを習い。

ティーダからは射撃技術を、メガーヌからは魔法制御などを習っている。

加えて、ゼスト隊とリンディはクロスとノアにとって大恩人であり、数少ない心の底から信頼している人達でもある。

だから普段は少し周りをよせつけない空気を纏っているクロスが、彼らの前では表情を和らげている。

実は、リンディにもゼストたちと同じくらい心を許しているが、クロノやアースラスタッフが近くに居るから少し険しい態度をとってはいる。

 

「先程データを送りましたが、今日出会った魔導師、フェイト・テスタロッサは……間違いなく人造魔導師です」

『『『……』』』

 

クロスの言葉に、場の空気はさらに重くなった。

 

「テスタロッサという姓から恐らく、背後にいるのはプレシア・テスタロッサ。前に【博士】が残してくれたデータにあったプロジェクトFの産物。フェイトは、誰かのクローンです」

『それは、間違いないのねクロス?』

 

クイントの問いに首を縦に振る。その表情はまるで最悪の結果を知った時のように暗い。

 

「いつかこうなるのは分かってましたから。彼女、フェイトを初めて見た時に感じた違和感。そして、彼女と直接対面してはっきりと確信したんです。恐らくこれが 【エヴォリューダー】 の共感覚。人造魔導師に対して発動される探知能力……」

 

クロスの声は段々と呟くように細く小さくなっていった。小刻みに震える肩をリンディが優しく抱きとめ頭を撫でる。

その様子を見るノアやクイント達の表情も辛そうだ。

 

「もう、いいわ。十分よ」

『無理しないでクロス、あなたが悔む事じゃないわ』

「ありがとうリンディさん、母さん。悔むのは、もう止めたって決めたから。だから大丈夫……」

「そんな顔色で大丈夫だなんて説得力なさすぎです、マスター!」

 

ノアの言う通り、クロスの顔は土気色でとても大丈夫そうには見えない。

それでもクロスはノアに礼をいいつつ、会議を続けて欲しいと言った。

 

『お前がそう言うならば、続けよう。事がロストロギアだけではなく、人造魔導師すら関わって来るなら俺達もそちらに合流しよう』

『そうですね。レジアス少将とオーリス一尉は現在会議中ですが、おおよその報告はあげています。おそらく数日中には』

「それまで私達でなんとかしてみるから大丈夫よ。可愛い助っ人候補もいるわけだし」

 

リンディがモニターを操作すると、なのはとユーノのデータが現れた。

 

『あの時の少年がまさか地球に来るとはね。渡航申請は問題ないんでしょ?』

「えぇ、デバイス申請にも何も不備はなし。最もレイジングハートのマスターが変わっちゃったけど」

『高町なのはちゃん。9歳か、ユーノくんともクロスやノアと同い年じゃない』

 

自分の子と同い年と言う事で、クイントは嬉しそうな声をあげていて、ティーダもいじわるそうな笑みを浮かべている。

 

『で、どうだったんだクロス?』

「……何がですか?」

『高町なのはちゃんだよ。結構素直そうな良い子じゃないか』

「言い方がものすっごくオヤジ臭いですよ、ティーダさん。別にどうっていう事はないですよ、魔力値だけならAAAレベルで、精密な魔力制御の素質もあって、砲撃も可能。収束技術ももっているかも。管理局からすれば喉から手を出してでも強奪して、洗脳教育を受けさせたいでしょうね」

 

トゲ丸出しの言い方に、リンディとノアは苦笑いを浮かべ、あながち的外れな事を言っているわけでもないと、分かっているゼスト達は溜息をついた。

 

『耳が痛い話ではあるが、そうならないようには』

「当然、色々考えていますよ、ゼスト隊長」

 

もちろんとばかりに言うリンディに少し安心したのか、クロスの険しい表情も元に戻っている。

 

『彼女達の意思次第だけど、どう転んでも安全になるようにしないとね』

「はい。せっかくマスターが悪人役までやったんですから、結果は失敗しましたけど」

「………」

 

メガーヌの言葉にノアがクロスの方を見ながら若干イジワルっぽく言うと、クロスはバツが悪そうに顔を背けた。

怖がらせるつもりが実際は全く怖がっていない所か、クロスを逆に驚かせた事がクイント達は興味が湧いていた。

 

『何にせよ、俺達がそちらに合流できるように手配は進める。それと、プレシア・テスタロッサについての資料はこちらでも捜索中だ』

「えぇ、フェイト・テスタロッサのオリジナルについての情報ね。プレシアは姿を消す前に色々情報を削除しているから少し手間取っているのよ」

 

プレシアが事件に関わっていると知り、すぐにエイミィが情報を集めたが、管理局のデータベースからプレシアに関連する情報が削除されていたのだ。

プレシア本人がしたことか、それとも別の誰かがやったのかは分からないが、アースラではこれ以上の情報収集には限界があった。

 

「それとあの黒い鎧達も事もお願いします」

『今までとは違うタイプの傀儡兵ね。えぇ、それもこっちで類似する兵器がないか探してみるわ』

 

クロスやクロノを襲った謎の傀儡兵、人間のような外見をする傀儡兵は多くいるが、まるで人間のような動きをする傀儡兵は少ない。

わざわざ人間のような姿をさせるより、より機械的で圧倒的な火力や機動性を持たせる方が良いからだ。

ほぼ完全な人型なのにあの黒い傀儡兵の戦闘力はかなり高い。人間としての生物的な動きがあったからだ。

 

『では、この辺で終わりとしよう。クロス、無理はするなよ? アレを使ったのだろう?』

『そうよ。見た所なんともなさそうだけど、アレを使うのは本当に最終手段よ?』

「ははっ、やっぱり師匠や母さんにはバレたか。大丈夫です、使ったのはほんの一瞬だけですから」

「タイミング的にアレを使わなきゃ間に合わなかったですし」

 

ゼストやクイントの言うアレ。それはクロスが9歳という若さで高ランクの捜査官で居られる理由の1つだ。

そして、会議が終わった所でふと、クイントが何かを思い出し慌てたようにクロスに尋ねた。

 

『あーそうだ。大事な事聞き忘れてたわクロス!』

「な、何、母さん?」

 

クイントの真剣な表情に何か重大な事かと少し身構えたクロス達だったが。

 

『クロス……なのはちゃんの抱き心地どうだったの?』

 

と、次の言葉にクロスはゴンッ、と強く頭をテーブルにぶつけ、リンディは飲んでいたお茶を盛大に吹いた。

モニターの向こうではゼストとティーダもずっこけており、メガーヌは忘れていた、と言わんばかりにポンと手を叩いている。

 

「な、なな何を言うんだよ母さん!」

『えー、だって、クロス模擬戦でなのはちゃんを抱きしめたんでしょ? 親としては女の子に興味を持ち始めた息子の成長は気になるのよ。それとも私で抱き慣れたかしら?』

「嘘だ! 絶対面白がってるでしょ! っていうかそんな下心あるわけないでしょ! あと問題発言禁止!」

「そうよ、クイント。そんな興味があるならクロスはとっくに私を襲ってるわよ」

「ちょっとまてーい! あなたがそれ言うとシャレにならんでしょリンディ艦長!」

『うーん、クロス。そんなに溜まってたなら今度会った時私が思いっきり抱きしめてあげるから、我慢してね』

「メガーヌさん!? 隣に彼氏さんいるのに何を言ってるの!? 師匠も止めて! そんなこの世の終わりみたいな顔して崩れ落ちないで!」

 

モニターの向こうとこちらで逆セクハラのサンドイッチをくらい、盛大に声を張り上げるクロス。

普段のクロスを知るクロノやエイミィが見たら、恐らく卒倒するかもしれない。

 

「ちっちっちっ、分かっていませんね2人共。あれはまだ第一段階、これから抱きしめ方が徐々にヒートアップして最後には……」

「『『『キャー!』』』」

「お前は黙ってろノア! もう、ティーダさん! 母さんとメガーヌさん止めてください!」

『諦めろ、クロス。こうなった姐さん達は俺じゃ手に負えない。俺に出来るのは隊長が暴れださないうちに隔離する事さ、じゃあな、健闘を祈る』

 

敬礼をしてティーダは、白くなったゼストを背負いモニターから姿を消した。

 

「は、薄情者―!?」

『さぁ、クロス。今度会った時は一番に私に抱きついてくるわよね?』

『母親なんていつでも抱きつけるでしょ、私よね?』

「今度なんて悠長な事言ってるうちに……えい♪」

「私もぎゅー♪」

『『あああぁぁぁぁーーーーー!?』』

 

左からリンディが、右にはノアが抱きつくと、クイントとメガーヌが悲鳴をあげながらモニターを必死にくぐりぬけようともがいていた。

 

「誰か助けてくれ……」

 

クロスの一番の弱点、それは母親を筆頭にした恩人達だったりする。

 

 

続く

 




クロスの素は実はこんな感じです。
クロノやなのは達の前では堅く寄せ付けない態度なのには理由があります。

ゼスト隊にティーダが加入していたり、無印からゼスト隊が関わってきたり原作からかなり離れてきています。
結末は原作同様になるのかどうか……
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