魔法少女リリカルなのは異伝~X Destiny~ 作:カガヤ
翌日、再びアースラへとやってきたなのはとユーノ。
2人は、リンディやクロス達に一晩考えぬいた自分達の答えをはっきりと口にした。
「お願いします。私達にもお手伝いさせてください!」
「後悔はしませんね?」
「はい、それになのはの魔力は……「なら、これからよろしくね」……そちらにとって……えっ?」
ユーノは、なのはと自分が加わる利点を言おうとしたが、リンディがあっさりと認めた事に驚いた。
「あ、あのー? 本当にいいんですか?」
「2人の目を見れば覚悟が決まった事は分かります。なら、反対する理由はないわ。こっちも万年人手不足で困っていたので、むしろなのはさんが良ければこちらからお願いする所だわ」
クロノが何か言いたそうにしたが、ノアがそれを止めた。
「それでは、協力していただくにあたっていくつか約束して欲しい事があります。1つ、こちらの指示には絶対に従ってもらいます。2つ、絶対に無理はしない事、命を捨てるような事はしないでください。3つ、協力していただく間、2人はアースラで行動を共にしてもらいます。いいですね?」
「「はい!」」
「というわけで、良かったわね、クロス君?」
元気のいい返事に満足したリンディは、隣に立つクロスに周りにわざと聞こえる程の小声で話した。
「……どういう意味ですか?」
「これから先しばらくはなのはちゃんがアースラにいるんだもの、嬉しいでしょ?」
「心なしかマスター、嬉しそうですね? ミギャッ!?」
エイミィに続いてノアまでもが、ニヤニヤ顔をしている。
ただし、ノアはすぐにクロスが発した電撃にやられたが。
「では、なのはさんの家族の方に挨拶に行きましょうか。これからしばらく預かる事になるんですし。ね? クロス君?」
「だからなんでいちいち俺を見て言うんですか。そう言えばなのは、家族には魔法の事は?」
「あ、心配かけたくないから、ユーノ君の事も何も言ってません。やっぱり言った方がいいでしょうか?」
家族に心配をかけたくない。それは、家族思いのなのはにしてみれば当然の事で、子を持つリンディも親に心配をかけたくないと思うクロスとノアも理解できた。
「それはなのはさんが決める事だと思うわ。ただなのはさんがしたい事を私達は全力で補佐する。それが私達の責任よ」
リンディに言われ、俯き考え込んだなのはだったが、すぐに顔をあげた。
「やっぱり、お父さんやお母さん達にはまだ、内緒にしたいです」
「そう、ならそのつもりでお話ししますね、ですけどなのはさんいずれは……」
「はい、それも分かってます」
いずれは話さなければならない。
それは、今回だけではなく、これからの事も考えてという意味であり、あえて口にはしなかったがなのはには通じたようだ。
「すごいね、なのはちゃん。まだあんなに幼いのに」
「あぁ、彼女の決意が固いのは分かった」
なのはの少し大人びいた決意をエイミィとクロノが小声で話していたが、それを聞いて、ノアがある違和感に気付いた。
「なのはちゃんって何歳なの?」
「えっと、今年で9歳です」
「じゃあマスターと同い年だね」
「へぇクロスさんって私と、同い……年? ええぇぇ~~~!?」
ノアから自分がクロスと同い年と聞かされ、大声をあげ思わず椅子から立ち上がってしまった。
その様子にリンディやクロスは、やっぱりか。という表情を浮かべた。
「ほ、本当なんですか? クロスさんが9歳って」
「あぁ俺はこう見えて9歳だ。よく間違えられるけどな」
苦笑しつつ、クロスは答えた。クロス自身もノア同様になのはの自分への接し方に違和感を感じていたようだ。
なのはは、ノアやユーノに対しては普通に話しているが、クロスに対してはさん付けで、エイミィやリンディに対してと同じく年上の人と話す感覚で話していたのに気付いたからだ。
「というわけで俺に敬語はいらないから普通に話して構わない。これからよろしく、なのは。危険は多いと言ったけど、俺達がしっかりと2人を守るよ」
「うん……ありがとう。私の方こそよろしくね、クロスくん」
「あっ、あぁ、よろしく」
「? どうしたのクロスくん?」
「な、なんでもない」
「???」
笑顔で自分の手を握ったなのはを見て、クロスにしては珍しく狼狽していた。
それを見ていたノアとリンディがニヤニヤとしていたが、クロスに睨まれるとわざとらしく視線を逸らした。
「あれ? マスターには敬語でクロノ君にはって事は、もしかして」
ふとノアがある事に気付いた。クロスに対して敬語で話していたなのはだったが、その逆な人がいた事を……
「そう言えば、クロノ君は14歳ですよ♪」
「「へっ? ええええぇえぇぇぇぇ~~~~!!!?」」
クロノの年齢を聞いたなのはとユーノが大声を上げた。
なのははクロノには、敬語ではなく柔らかい口調で話していた。
クロスに対しては年上だと思い敬語で話していたが、クロノに対してはその逆、ならばクロノの年齢を自分と同じくらいと思っていたと言う事だ。
ユーノも同じくクロノの年齢を下に見ていたのは予想外だが。
「ちょっと待て! 僕の年齢を低く見ているのは薄々予想していたが、なんでクロスの時よりも驚いているんだ!? しかも2人揃って!」
「それはしょうがないですよ」
「そうだな、クロノだし」
「ノアとクロスは黙っていてくれ!」
クロノとクロスの年齢が実際よりも逆に見られるのは良くある事で、実際クロノはクロスの弟に間違えられた事もある。
その時、クロノは引き篭もりになりそうなほど落ち込んでいた。なのでこの事は禁句となっていた。
「あはははははは!」
「エイミィは笑わないでくれ!」
「……もっと牛乳を飲ませるべきだったかしら……それとも……」
「母さんは真剣に悩まないでくれぇ!」
幼馴染のエイミィには爆笑され、母親であるリンディは真剣に悩まれクロノのライフは0だった。
海鳴市 高町家
「というわけで、なのはさんにしばらく手伝ってもらう事になりましたので、こうしてご挨拶に伺いました」
「そうでしたか、ご丁寧にありがとうございます」
放心状態のクロノを置いて、リンディとクロスはなのはを連れて海鳴市へとやってきた。
最初、クロスは行かないと言っていたが、女性陣に説得されたのだ。
『同い年の子が一緒の方が説得力あるし、向こうも安心するんじゃないかしら?』
『私もお母さんやお父さんにクロスくんの事紹介したいな。本当はノアちゃんやクロノくん達もだけど』
『なのはの家族の人、みんな良い人だから大丈夫だよ』
『ほらほら、女の子からのお誘いは断ったら駄目って、お母さんに言われてるじゃないですか♪』
そして、今に至る。
「(なんかなのはやユーノと話してると、調子狂うんだよな)」
クロスは今まで同年代の子と接する機会がなかったせいで、なのはやユーノと話しているといつもと違う感覚になるようだ。
最も、それがリンディの狙いの1つでもあるわけだが。
「なのはから少し事情を聞きましたが、正直不安と言いますか心配だったのですけど、リンディさんやクロスくんのような人が側にいてくれるなら安心できます。どうか娘をお願いいたします」
「なのはさんに万が一の事がないよう、私がしっかりと守りますのでご安心ください」
なのはが前もってクロスの事を自分と同じ9歳だと言っていたが、それでも実際に会ってみるとかなり驚かれた。
「いやいや、すごいなクロス君は、なのはと同い年ですごく大人びいている」
「ひょっとして本当は俺と同い年くらいなんじゃないか?」
「それは言いすぎだよ恭ちゃん。でも、とても9歳には見えないよね、私もこんな弟欲しいなぁ」
「あ、あははは……どうも」
なのはの両親、士郎と桃子だけでなく兄の恭也、姉の美由希も交えての面会となったが、リンディもクロスもどうやら家族全員に好かれたようでなのはとフェレット状態のユーノは一安心した。
『すごいね。リンディ艦長もクロスもうまく誤魔化してなのはの家族に説明して納得してもらってるよ』
『嘘って言うのは少しの真実を混ぜて話した方が、信ぴょう性が増すんだよ。ま、この手の誤魔化し方ってのは管理局が管理外世界の住民に協力を仰ぐ時によく使う手だからな。俺もリンディ艦長や母さん達からよく教わってるし』
『あれ? クロスくんのお母さんも管理局の人なの?』
『あぁ、言ってなかったね。クロスの両親は管理局の人で、クロスと初めて会った遺跡事件の時にお母さんに会ってるよ』
『へぇ~どんな人なの?』
『……言っていい、クロス?』
『多分近いうちに会う事になるだろうから、今は黙っててくれユーノ』
『うん、そうするよ』
『えぇ~!? なんで秘密なの? クロスくん、ユーノくん?』
「(あの時の母さん達の親馬鹿っぷりは、ユーノだけでなく他のスクライアの人も茫然としてたからな……今度はあんな事にならないように、前もって釘さしとこ)」
両親、特に母親が子煩悩で親馬鹿全力全開なのを、なのはに知られるのが恥かしいクロスであった。
その後、せっかくなので昼食を一緒にと士郎達に誘われ、賑やかな昼食会となった。
「そう言えばクロス君って、年齢の割に体格すごくいいよね。何かやってるの?」
二の腕の筋肉や体格から、美由希や恭也はクロスに少し興味を持ったようだ。
「護身用にと、剣術と格闘術を少し教わってます」
「なるほど。なんだかすごく強そうだね。どう? 後でお姉さんと手合わせしてみる?」
「こらこら、何無茶言ってるんだよ美由希」
「そんな事言って恭ちゃんだって気になるんじゃない? クロス君の実力?」
「………」
見ると士郎も何やら意味ありげな視線をクロスに送っており、隣に座る桃子に小突かれていた。
恭也も美由希も2人共普通の学生だが、いざ目の前に強い剣士がいると身体が疼くのは父親譲りらしい。
「なのはの家族はとっても賑やかだな」
「あはは、いつもこうだよ。でも何だか今日は少し違う感じがするかな」
『僕もそう思うよ。いつもと比べて喜んでる気がするよ』
いつもよりも少し違う感じ。それは少ししか関わっていないユーノも感じているようだ。
2人の会話を聞いていた桃子はニコリと微笑み、意味深な視線をクロスに向けた。
「だって、今日はなのはが素敵な彼氏さんを連れてきたんですもの。それは嬉しいわよ。それもクロスくんのお母さん公認の仲だなんて」
「「んぐっ!?」」
それを聞きクロスとなのはが思いっきり喉を詰まらせてしまった。
「お、お母さん!? そんなんじゃないってば! まだクロスくんとは知りあったばかりなの!」
「ひとめぼれじゃないの?」
「お姉ちゃんまで!? お父さんもお兄ちゃんも何か言ってよ!」
むせ返ってせき込むクロス達に、水を渡す父と兄に救援を求むなのはだったが。
「思い出すなぁ、お母さんとの出会い、そして、義父さん達に挨拶に行った時の事を」
「俺もそのうちこんな気分を味わうんだろうな」
なぜか2人は感慨深そうに頷くだけだった。
勿論、士郎も桃子も冗談で言っている事なのはクロスとリンディには分かっていた。
「すみません。クロス君がなのはさんの彼氏さんはともかく、私はクロス君の母親じゃありませんよ? あ、でもそれもいいかも、クイントには悪いけど」
「いや、リンディさんまで何言ってるの!? 否定する所そこだけじゃないでしょ? ってか母さんと戦争になるから!」
クロスもクロスで、そのノリに乗りまくってとんでもない事を言いだすリンディに慌てていた。
彼女の場合、冗談半分どころかほぼ9割は本気である事が多いからだ。
「それにそんな事言ってたらクロノがまた凹むよ!」
「大丈夫よ、クロノにはエイミィがいるからそろそろ親離れしないとね」
「そういう問題じゃない!」
同時刻、アースラ内部にいる息子とその相方が盛大なクシャミをしたとかしないとか。
「ごめんね、クロス君。お父さんもお母さんも何だか今日は変な感じで」
「気にしてないから大丈夫だよ、なのは」
こういうのには両親たちで慣れてるから。とは言えないクロスであった。
「(でも、クロス君があんな表情するなんて、意外だったかな)」
出会った時からずっと、クロスの年齢に見合わぬ厳しい表情しか見ていなかったなのはだったが、昨日ユーノに話を聞き、そして今日家族に会わせた事で違った一面を見る事が出来た。
厳しい魔導師の世界、その事に身をもって気付かせてくれたクロス。
まさか自分と同い年とは思っていなかったが、父や兄達と楽しそうに話す彼を見て、本当に自分と変わらない子供らしい所もあるとなのはは思った。
それと同じ事を思っていたのは、なのはだけではなかった。
「(やっぱり連れてきて正解だったかしら?)」
「(母さんやゼストさん達以外にそんな表情で話すマスターを見るの、初めてですね。いい兆候です)」
士郎達と一緒にクロスやなのはを弄るリンディと、アースラからクロス達の様子をこっそりモニターしていたノアもクロスの些細な変化を喜んでいた。
続く
士郎と打つと村正しか頭に浮かばない今日この頃w