魔法少女リリカルなのは異伝~X Destiny~   作:カガヤ

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おまたせしました!更新です!


第8話 「対峙」

なのはとユーノの協力の元、ジュエルシード探索を始めて数日がたった。

クロス達は順調にジュエルシードを回収して行った。

その間、フェイトやアルフの妨害はなく、痕跡をたどる事すら出来ずにいた。

フェイトとアルフもただ何もしないでいたわけではない。

ジュエルシードの探索は引き続き行ってはいるが、相手は大々的な探索設備を使用しているのに対し、彼女達は探査魔法で地道に探しているだけだ。

なので、彼女達が見つけてもすでにクロス達が向かっており、鉢合わせを避ける為に手を出せずにいた。

彼らが見つけたのも横取りしようと隙を窺ったが、最初の戦闘とジュエルシードの魔力で暴走した動植物を簡単に沈める姿を見て、力の差を見せつけられ手を出すどころか、姿をさらす事すら危険だと分かった。

 

「ねぇ、もう諦めようよ。管理局がこうも出張ってたらあたしらじゃどうこう出来ないよ」

「ダメだよ。母さんと約束したもの。必ずジュエルシードを持って帰るって」

「プレシアの言う事なんかもう聞かなくていいんだよ! フェイトをそんなになるまで痛めつけるなんて母親のする事じゃないよ!」

 

今フェイトとアルフはとあるマンションにいる。そこでアルフがフェイトの怪我を手当てしている所だ。

と言っても、この怪我はジュエルシード探索で付いたものではない。

彼女の母であるプレシアの折檻によって付いたものだ。

フェイトがジュエルシードをなかなか集められない事に腹をたて、彼女を鞭で叩く。しかも、これが初めての事ではない。

アルフは何度もフェイトが苦しい目に合っているのを知りながらも、手を出せずにいる事にもどかしさを感じていた。

 

「そんなことないよ、私が母さんとの約束を守れなかっただけだから。アルフは心配しないで……私は母さんの願いを叶えてあげたいんだ」

「フェイト……」

「だからお願い、アルフ。力を貸して」

 

傷だらけになりながらも、その瞳はただプレシアの為にと強い決意に満ちていた。

そんな目で見つめられては、アルフはそれ以上何も言えなくなってしまった。

 

「はぁ~、全くフェイトは……しょうがない、こうなったらとことん付き合うよ」

「ありがとう、アルフ。早速行こう。もう目星はついているから」

「はいよ♪」

 

 

 

一方アースラでも日夜、残りのジュエルシードの探索が続けられていた。

 

「う~ん、見つからないねぇ」

「残りのジュエルシードは7個、なんとしてもフェイト・テスタロッサ達より先に見つけたい。もっともクロスやなのははあの子を見つけたいという方が強いみたいだけど」

 

ジュエルシード探索中もクロスやなのはは周囲を探索し、フェイトの気配を探したが一向に姿を見せない。

その事に少し焦りに近いものをクロスは感じているように見えた。

 

「ねぇ、なのはちゃんには言わなくていいのかな。フェイトちゃんの事」

「艦長やクロスが強く止めている以上、言わない方がいいだろう。僕もその方針は賛成だ。幼い彼女には辛すぎる現実だ、知らない方がいい事もある」

「くすっ、クロノ君だって十分に幼いと思うよ? だってなのはちゃんと同い年に見えるんだし♪」

「その話はもう忘れてくれ!!!」

 

なのはやユーノに同い年に見られた事は、クロノの一生の黒歴史となっていた。

 

 

「フェイトちゃん、一体どうしたんだろうね」

「なかなか姿を現しませんね」

「広範囲で探索してるけど、一向に痕跡見つけられない。そう簡単にはいかないのは分かってたけどな」

「2人共かなりのやり手だからね。向こうが動かない限り見つけるのは難しいかもしれないよ」

 

なのはとノア、クロス、ユーノ4人は今日の訓練を終え、ロビーでお菓子を食べていた。

クロスは、訓練を終えてすぐに去るつもりだったが、なのはにたまには一緒にと言われ、断り切れず今に至る。

そして、なのはをけしかけた仕掛け人はノアだ。

途中から見学していたユーノも加えて、4人で賑やかなお茶会となった。

 

「それにしてもなのはちゃんはすごいですね。わずか数日で随分と魔法が上達しましたよ」

「うん、僕と出会ってからまだ少ししか経ってないのに本当にすごいよ」

「それはクロス君やノアちゃん、ユーノ君のおかげだよ。私はみんなに言われた事やってるだけだもん」

「俺は何もしてない。なのはの素質がいいのと、ユーノが基本をしっかり教えていたからだろ」

 

なのはの訓練はクロス達の予想以上にうまくいっていた。

元々素質があり適性が高いおかげでもあったが、それでもなのははクロスやノアの教えた事をすぐに覚えて実戦していった。

 

「僕だってそんなに教えていたわけじゃないよ。クロスは教導官とか教官の素質があるのかもね」

 

その言葉にクロスは軽く喉を詰まらせ、せき込んだ。

慌ててなのはが渡した紅茶を飲みほしてユーノを睨む。

 

「俺が教官に? まぁ昨日、リンディ艦長にも言われたよ。執務官よりそっちを目指したらいいとね。でも俺には……誰かに教える事なんて無理だ」

 

それきりクロスは少しだけ何かを考え込むように黙り込んだ。

すると、なのはがクロスの方に身を乗り出すように言った。

 

「そんな事ないよ、クロス君は先生に向いてるよ! ユーノ君もノアちゃんもだけど、クロス君が毎日私の悪い所とかいい所きちんと話してくれるから、どうすればいいか分かるようになったんだもん」

「俺はなのはを絶対守ると士郎さん達に約束した、だから色々教えたんだ、ただそれだけだ」

「えへへ、ありがとう、クロス君」

 

素っ気なく言ったクロスだったが、その表情は不意をつかれたような顔をしているにノアは気付き、暖かい笑みを浮かべた。

 

――ビーッ!ビーッ!

 

その時、アラームがアースラ内に盛大に鳴り響いた。

 

「警報? ジュエルシードが見つかった……だけじゃないみたいですね」

「行くぞ!」

 

即座に反応したのはクロスとノア。

緊急アナウンスが流れる前にブリッジへと飛び出した。

続けてなのはとユーノも急いでその後に続いた。

 

 

「エマージェンシー! 捜査海域にて大型の魔力反応感知!」

「何て無茶をしてるのあの子達は!」

 

ブリッジでクロノやリンディ達が見つめるモニターには、巨大な7つの雷を纏った竜巻に翻弄されるフェイトとアルフの姿が映し出されていた。

 

「見つけるの遅くなってごめん。モニター出来た時にはもうこうなってたよ」

「ジュエルシードが沈んでいるであろう海域に大規模な魔法を放って、強引に発動させたんだろう」

「なんて事を、あんな無茶をして無事ですむわけないわ!」

 

そこへクロスやなのは達がやってきた。

 

「クロス、状況は分かるな?」

「あぁ、恐らくフェイトはかなりの大規模魔法を発動させたはず。あのジュエルシードの反応や彼女の消耗さを見れば分かる」

 

実際フェイトはかなりの疲弊をしているようだ。

フェイトは、竜巻に向けて魔力刃での斬撃を放ったが、出力不足のようで簡単に弾き飛ばされてしまった。

アルフもフェイトの援護に向かおうとしているが、迫りくる竜巻を避けるのが精一杯でどんどん分断されていた。

 

「フェイトちゃん! あの私、急いで現場に……」

「その必要はない」

 

現場に向かおうとしたなのはをクロノが止めた。

 

「このままだと直にあの子は自滅する。あれだけ消耗しているんだ、すぐに魔力切れで動けなくなる。その時にこちらが確実に捕獲出来るように手筈を整える」

 

そう言っている間にもフェイトとアルフは竜巻が発する電撃に捕えられ、身動きが取れなくなっていた。

 

『あっ、ああぁぁぁ~!!』

『フェ……イト……』

 

「管理局は常に最善を考えなきゃいけないんだ。残酷に見えても、これが現実だ」

 

突きつけられたクロノの言葉に、なのはは何も言えなかった。

クロノの言いたい事も、少しは理解できる。

クロスやリンディも黙ってモニターを見つめている。

ただ、ユーノだけは意を決した表情を浮かべていた。

 

『なのは、行って』

『えっ? ユーノ君?』

『転送ゲートは僕が開く、だからなのはは……『ちょっと待て2人共』 えっ?』

 

突然、2人の念話にクロスが割り込んできた。

 

「俺が行く。艦長、俺が行って事態を鎮めます」

「クロス、何を言っているんだ? 君だって分かっているだろ? 最善なのは今手を出すよりも……」

「それはお前の最善だろ?」

「管理局は常に最悪の状況を想定して、最善の策を……」

「管理局は関係ない。フェイトもアルフも助けて保護し、ジュエルシードを鎮めて回収する。それが俺の最善だ。邪魔すれば……お前だろうと容赦しない」

 

クロスは剣こそ出してはいないが、クロノを睨みつけはっきりとした口調でそう告げた。

例え、反逆と受け取られようとも、彼はフェイトとアルフを助けに行く。そう宣言した。

ノアも同じ意見のようで厳しい表情のまま、クロスの隣でクロノを睨んでいる。

 

「クロス君?」

 

いつもと少し違ったクロスの口調に、なのはもユーノも驚いたが、クロノやエイミィも同じように驚いている。

ただ1人、リンディだけは少しだけ溜息をつき、やれやれと言った表情を浮かべた。

 

「確かに、このまま事態を静観すれば、あの2人を確実に捕獲出来るでしょう。ですが、ジュエルシードの暴走による重大事故を防ぐ事も、目の前で重傷人を出すのを防ぐ事も、重要な使命です。ですから、クロス捜査官? なのはさんとユーノ君を連れて早急に事態の収拾をはかって下さい」

「かあさ……リンディ艦長!」

「「了解!」」

 

クロノの抗議に耳も貸さず、リンディは現場への転送ゲート操作を命じた、だが。

 

「ダメです! 現場周辺の異常な魔力の干渉により、転送ゲート開けません!」

「何っ?」

 

それはクロノにとっては予想外だった。

アースラ程の高性能な艦艇の転送ゲートが開けないほどの魔力干渉、それは次元震レベルに近い程の異常だからだ。

それでもリンディは困惑の表情を浮かべずに、クロスの方を見た。

 

「クロス捜査官。聞いた通り、転送ゲートは開けません。非常事態です。次元跳躍を使用し即座に向かって下さい」

「了解!」

「(次元跳躍? 次元転送じゃなくて?)」

 

聞き慣れない言葉にクロノは首を傾げた。

次元と次元を瞬間的に移動する魔法ならば、使い手は多い。

それでも個人だけで使用するのと、艦船など設備が使用するのでは精度が段違いだ。

高精度の結界や、今回のように異常な魔力干渉が起きている場では個人の転送魔法が使用できない事が多い。

 

「2人共すぐに向こうに飛ぶ、準備を」

「クロス君、ありがとう!」

「アレを使うんだね、クロス」

 

礼を言うなのはと、クロスがやろうとしている事を察したユーノがクロスの元へとかけよった。。

 

「『次元跳躍(ジャンプ)!』」

 

クロスとノアがその魔法名を告げた瞬間、クロス達の姿はアースラから消えた。

 

 

 

海鳴市近郊海域

 

時間は少し遡り、フェイトとアルフは7つの巨大竜巻に苦戦を強いられていた。

 

「フェイト、大丈夫かい?」

「はぁ……はぁ、だ、大丈夫だよ」

 

言葉と裏腹にフェイトからは大粒の汗がしきりなしに零れ落ちている。

それを見ずともフェイトの疲弊具合はアルフにはすぐに分かった。

使い魔のアルフはフェイトへの負担を考え、戦闘力があがる人間形態ではなく狼形態になっている。

 

「やっと見つけたジュエルシード、必ず……母さんの元へ……」

 

相棒のバルディッシュを持つ手に力を籠め、フェイトは竜巻へと斬りかかる。

だが、魔力が切れかけてきたのか、大鎌サイズフォームの魔力刃がうまく維持できない。

やむをえず、物理攻撃主体のアックスフォームに変えるが威力不足の斬撃で逆に弾き飛ばされてしまった。

 

「フェイト!」

 

すかさずアルフが人間形態になり、抱きとめるがそこへ竜巻が2人を取り囲み電撃が襲いかかってきた。

 

「うわあぁぁ~~!!?」

 

防御フィールドを張るが、魔力切れ寸前の状態で展開しても防御しきれるものではなかった。

 

「フェ、フェイト……」

 

アルフも同じく身動きが取れず、隣で苦しむフェイトに手を伸ばすがその距離が遠い。

 

「かあ……さ、ん」

 

意識を失いかけたフェイトの眼に突然、赤い光が差し込み……

 

「魔断剣!」

 

白銀に煌めく刃が、2人に纏わりついていた電撃を切り裂いた。

拘束を解かれた体は力なく、海面へと落ちて行ったがすぐに誰かに抱きかかえられ、その場を離れた。

 

「だ、だれ……?」

 

もうダメかと思っていた所を助けられ、薄れた意識でフェイトは自分を抱きかかえた人物の顔を見た。

 

「大丈夫か?」

「フェイトちゃん!」

 

そこにいたのは、以前会った時よりも柔らかい表情を浮かべた少年、クロスだった。

 

「クロ……ス?」

「あぁ、クロスロード・ナカジマだ。久しぶりだな」

 

しっかりと名前を呼び返された事にクロスは安心した笑顔を見せた。

以前に会った時は厳しく、悲しそうな表情しか見ていなかったフェイトは、クロスのその笑顔が少し意外に想えた。

そして、隣に同じく自分を安堵の笑みを浮かべる見つめるなのはへと目を向けた。

 

「あ、なたは達……どうして、ここに?」

「そんなの、2人を助けに来たに決まってるだろ?」

「うんうん」

 

何当たり前の事を? とでも言う表情で答えるクロスとなのはにポカンとするフェイト。

横にはアルフがユーノとノアの魔法で体を癒されているのが見えた。

そして、自分も体が温かい光に包まれている事に気付いた。

 

「動くなよ。今傷の治療と、魔力を回復させている」

 

なぜか一瞬だけクロスの表情が歪んだような気がしたが、フェイトは本来すぐに突き飛ばすか警戒しなければいけないのに自分を包む光にしばし身を委ねた。

 

「ラファール、ミラノール。解析は済んだか?」

<はい、完了しました>

<モニターします>

 

フェイト達の回復をしている間、クロスとノアのデバイス達は眼下で生き物のように暴れ狂う竜巻の解析を行っていた。

 

「なんだか、大きくなってる?」

「気付いたか、なのは。そうだ、あれはドンドン成長しているようだ。このまま行けば、どうなるかは……説明不要だろ?」

 

ゴクリと唾を飲む音がした。

空間モニターに映し出された解析結果では、7つの竜巻は互いに干渉し合う事で魔力を増幅させ、暴走を引き起こしている事が分かった。

つまり、無限に成長を続けている事になる。

あの竜巻はもはや自然現象というよりは、魔導生物に近いものになっているようだ。

 

「もう、飛べるなフェイト? 悪いけど、俺達だけじゃあれ対処できそうにないんだ。協力してくれないか?」

 

フェイトとアルフの治療を終え、拘束するわけでもなくクロスは2人に協力をお願いした。

 

「お前、一体なんのつもりだ? 私達を捕まえに来たんだろ?」

 

最初こそ警戒はしたが、フェイトと自分を本心から救助した事はアルフにも分かった。

それでも、更に回復させても捕まえるそぶりすらみせないクロスとノアに別の意味で警戒心が湧いた。

 

「それは目的としては3番目だな。第1の目的は2人の救助、第2にアレの鎮圧だ。大丈夫、手はある。俺とノア、アルフとユーノでアレの動きを止め、なのはとフェイトで一斉に封印を。ジュエルシードについてはその後話をするって事で。それまでこっちは2人には手を出さない」

「それを信じろってのかい?」

「そうだ。2人の力を貸してほしい」

「2人の協力が必要なんだよ!」

 

警戒心むき出しのアルフと戸惑いを見せているフェイトに、クロスとノアははっきりと言った。

 

「お願い、フェイトちゃん!」

「これ以上は本当に危険なんだ」

 

なのはとユーノも真剣な表情で2人にお願いをし、フェイトとアルフは互いに困惑の表情を浮かべ顔を合わせた。

 

「もう、時間がない。行くぞ!」

 

今までよりも更に激しいうねりを見せ始めた竜巻を見て、ノアとユニゾンしたクロスとなのは、ユーノは再び巨大竜巻へと向かった。

後に残されたアルフはどうすべきか迷い、フェイトへと顔を向ける。

 

「フェイト……」

「アルフ、やろう」

「っ! うん!」

 

クロス達に続けてフェイトとアルフも飛んだ。

 

「アレをただの暴走で起きた自然現象と思うな! ユーノ、アルフ!」

「「チェーンバインド!」」

 

2人がかりのバインドで動きを抑えようとしたが、それぞれのバインドは簡単に解かれてしまう。

 

「各々で全てを縛ろうとするな! 2人で3つ抑えてくれればいい! 後の4つは俺がやる!」

 

竜巻の間を縦横無尽に飛び回るクロスに、7本の竜巻が迫る。

 

「「チェーンバインドォ!」」

 

今度はさっきよりも魔力を高めたバインドで、そのうちの3本を縛る事ができた。

残りの4本がクロスを襲う。

 

「危ない!」

「クロス君!」

 

上空で封印の為の魔力をチャージしているフェイトとなのはの声に、クロスは剣を高く掲げる事で答えた。

 

「氷天剣!」

 

青白く輝きだした剣を竜巻に向けて振るう。

その刀身が竜巻に触れた箇所から、凍りつき始めた。

それでも全体を凍らせるには至らなかったが、動きは鈍った。

竜巻はクロスの周りを包囲するように迫ったが、クロスは上空へと飛び上がり、自分へと群がってきた4本の竜巻の中心へと直滑降した。

 

「氷天剣・回凍!」

 

高速で回転しながらの氷天剣は1つに融合しかけていた4つの竜巻を切り刻み氷漬けにして、1つの氷柱へと変貌させた。

続けて、ユーノ達が縛り上げている残り3つへと向かった。そちらもバインドで縛り上げられながらも1つに融合仕掛けていた。

 

「ユーノ、アルフ! 下がってろ!」

 

ユーノ達がその言葉に急いでその場を離脱したのを確認し、1つの巨大な竜巻へと変貌しかけているその根元へ向けて剣を突き落とした。

 

「氷天剣・氷牙!」

 

竜巻は、剣が突き刺さった箇所から凍り始め、あっという間に巨大な氷の塊が出来た。

 

「今だ!」

 

クロスが上空へ待機しているなのはとフェイトに声をかけると、2人は無言で頷きそれぞれのデバイスを向けた。

 

「ディバイン……バスター!」

「サンダー……レイジ!」

 

桃色と金色の光が、一斉に放たれた。2つの光は1つの巨大な砲撃となり、ジュエルシードの氷塊に当たった。

 

――ドドッ、ドドドドッ

 

爆発が起こり、もくもくと煙が立ち込める中に淡く輝く7つの光、ジュエルシードが見えた。

 

「すごい。7つ共完全に封印しちゃった」

「2人がかりとは言え、あれほどの砲撃を撃てる魔導師はなかなかいないわ」

 

アースラで事の次第を見守っていたリンディ達も感嘆の声をあげた。

魔導師には得意分野がある。それは射撃型、砲撃型、近接型など様々だ。

例えばクロスは近接型で、近距離はいいが、射撃や砲撃は出来ない。

逆にクロノは射撃型で近接戦や、砲撃が苦手だ。

なのはやフェイトのような高出力砲撃を可能とする魔導師は管理局でも少ない。

 

「だからってこんな無茶をして、これからあの2人をどうする気なんだクロスは」

 

ジュエルシードは封印した。これで全てのジュエルシードが封印された。

後はそれをどうするかだ。

 

「フェイト、アルフ。協力感謝するよ。多分俺達だけじゃ対処しきれなかった」

 

やれない事はないが……と、クロスは心の中で呟いた。

 

「それで、これからどうするって言うんだい? このまま逮捕、なんて事になったら……あんたがどれだけ強くてもフェイトは必ず守るよ」

 

さっきよりはマシだが、それでもアルフは警戒を解かない。

しかし、クロスもノアも違う所を見ていた。

アルフでもジュエルシードでもない、なのはとフェイトを見ていた。

それに気付いたアルフやユーノも黙って視線をずらした。

フェイトとなのははさっきからジュエルシードを挟んで、黙ってお互いを見つめ合っている。

 

「フェイトちゃん、やっと会えたね。あのね、私フェイトちゃんに会ったら伝えたい事いっぱいあったんだ」

「………」

 

そこでなのははゆっくりと、笑顔でフェイトに手を差し伸べた。

 

「友達に、なりたいんだ」

「えっ?」

 

それはなのはがフェイトに伝えたい想い、クロスが魔導師の厳しい世界を見せつけてもなお折れる事のなかった、なのはの想い。

フェイトもアルフも、笑顔でそれを伝えるなのはに驚きの表情を浮かべた。

 

「そういう事だ。なのはは、別に難しい事を要求しているわけじゃない」

「私達もフェイトちゃんやアルフちゃんと友達になりにきましたぁ」

「はあぁ~!?」

 

クロスとノアも2人に近付き、ノアがフェイトへと手を伸ばす。

対して、さっきよりも更に驚いた声をあげる、アルフ。

一般人であるなのはだけでなく、管理局員であるクロスやノアもなのはと同じ事を考えていた事に驚いたからだ。

フェイトに至っては言葉も出ないようで、困惑しながら自分に差し出された手をじっと見つめている。

 

「フェイト、俺は救いたいんだ。君も、プレシア・テスタロッサも」

「かあ……さんも?」

「そうだよ。フェイトちゃんがなんでそこまでするのかも、プレシア・テスタロッサの目的も……全部知って助けたいんだよ」

「フェイトちゃん……」

 

なのはとユーノには、フェイトの母親で今回の一件の黒幕であるプレシア・テスタロッサについても少しだけ話した。

ジュエルシードを求める理由は分からないけど、彼女が過去に深い傷を負った事も、だからフェイトは母親の為に一生懸命なのだろうと言う事も。

なのははそれを聞いて、フェイトと友達になりたい。力になりたいという想いを更に強めたのだ。

 

「ぁ……わ、たしは……」

 

必至の呼びかけに無意識に答えるかのように、フェイトの手がゆっくりとあがって行き……

 

――ブーッ、ブッー!!

 

ラファールとミラノールから警告音が鳴り響いた。

 

「なんだ!?」

<警告、次元干渉確認。この空域とアースラに向けて高圧縮魔力急速接近中!>

<後3秒です!>

 

「この威力は……まずい!? ノア!」

「はい!」

<<仙気解放!>>

 

クロスはフェイトに、ノアはなのはを守るように立ち、両手を上空へと突き出した。

すると、2人の体からそれぞれ赤い魔力と青い魔力が噴出しだした。

そして、ユニゾンしているわけでもないのに2人の髪と瞳の色が変わった。

と、同時にさっきのなのはとフェイトの砲撃よりも更に巨大で、紫色の雷がクロス達を襲った。

 

「防御シールド出力最大!」

 

一方のアースラでも巨大な砲撃が感知されたが、あと3秒と言う短時間ではロクな対処は出来ない。

リンディが急いで指示を出すが、それより早く、アースラを大規模な落雷が襲った。

 

ユーノやアルフも異変に気付き、クロス達へと向かったが、同時に落雷が起こり2人共吹き飛ばされてしまった。

 

「フェイト!」

「なのは! クロス! ノア!」

 

落雷よる大波や水しぶきが収まると、そこにはほとんど無傷のクロスとノア、それになのはとフェイトの姿が見えた。

 

「ノアちゃん、大丈夫!?」

「無事ですか、なのはちゃん?」

「うん! ノアちゃんのおかげだよ。ありがとう」

「そう、ですか……良かったです」

 

バリアジャケットが少し焦げてはいるがノアはしっかりとなのはに笑いかけた、息も少しあがっているが大丈夫そうだ。

 

「はぁ……はぁ……」

「だ、大丈夫? なんで、私を庇ったの?」

「言ったろ、君を救いに来たって……ぐっ」

 

クロスの方はノア以上にジャケットがボロボロになり、煙をあげている両腕をだらりと下げ、息も絶え絶えだが、心配するフェイトに笑顔で答え、後ろへと振り向いた。

 

「今の狙いは……俺でも、なのはでもない。フェイトを狙ったな、プレシア・テスタロッサァ!!」

「えっ?」

 

そこには7つのジュエルシードを自分の杖に回収しおえた、プレシア・テスタロッサが不敵な笑みを浮かべ佇んでいた。

 

「かあ、さん?」

「やっと会えたわね。プロジェクトAの生き残り、エヴォリューダー?」

 

 

続く

 




新しいなのはプロジェクトってなんだろう。
PS4でゲーム化しないかなぁ。
恋愛要素ありのアクションアドベンチャーになったら……迷わずティアナとギンガとスバルを嫁にする!マテ

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