悪ノリしまくりでがんばります(笑)
ある日、目が覚めるとそこはどこかの洞窟らしき空間の中だった。
そこはドーム状の広い空間で、その真ん中に俺はいて、いくつもの通路が見える。
陽は差してきていないけど洞窟全体が青白い光を放っていて、洞窟の中とは思えない程明るい。
「ここは一体どこだ? 俺はなんでここにいるんだ?」
昨日の事を思い出す。
確か、ノートパソコンでもうすぐ始まるFGOの情報を見つつ、タブレットを買おうかと悩んでいた。
で、急に眠気がきてそのまま意識が飛んで……
「ひょっとして俺死んだ? なんだ、俺死んだのかー」
やけにあっさりと納得できてしまった。
ちょっとは悲壮感とかそういうのあると思ったのだけど、思ったよりすんなり受け入れる事が出来てビックリだ。
「で、死んだのはいいんだけど、ここは一体どこだろ?」
改めて周りを見渡すと、アレ? 顔を動かそうとしたけど、うまくいかないぞ?
というか、身体の感覚おかしいぞ? 何このフワフワ浮いた感覚。
手足を動かそうとしても、手足の感覚がない。
洞窟の壁にガラスのようにキラキラ反射してる場所があった。
これで今の自分の姿確認確認……
「……ってなんだこりゃー!?」
手足、どころか身体全体がなくなっていた。
ガラスのような壁に写し出されていたのは、青白くユラユラうごめく炎のような塊、俗に言う人魂だった。
「まぁ、死んだのだからこうなるか。たまに見かけるし」
病院で沢山幽霊を見てきたので、今更人魂ごときじゃ驚きはしない。
けど、まさか自分が人魂になるとは思わなかった。
肉体がないのは不便だけど、不思議と不快感はない。
「で、俺これからどうなるんだろ? てかどうすればいいんだろ?」
三途の川を探せばいいのかな? 小町ちゃんがいてくれたらいいなー。で、映姫ちゃんに裁かれたいなー。
なーんて現実逃避しても仕方ない。
「……ここがあの世なら、どこかにいるのかな。俺の家族」
まぁ、いたとしても、俺と同じ人魂の姿じゃわからんかー
「というか、生前の姿してても、俺覚えてないやーアハハハハ………はぁ」
俺が幼い頃に、父さんと母さんは死んでいる。
頼れる親戚もなしで、俺に残ったのは膨大な遺産だけ。
その遺産も幼い頃から入退院を繰り返してきた、俺の治療費や入院費に大半は消えていっている。
他には、PCゲームを買ったりして遊ぶくらいしか娯楽はない。
考えないようにしてきたけど、俺の人生って……
「いや、もう死んだんだからそこは考えても仕方ない。人生前向きに行こう!」
――どんな苦行も笑って乗り越えれたら人生勝ち組だよ。
そう教えてくれた看護師さんがいたっけ。
「で、マジで俺これからどうすればいいんだ? とりあえず、動くか」
足がないので動きようがないと思ったけど、行きたい方向を浮かべたら自然に動き始めた。
最初は動きがぎこちなかったけど、すぐに慣れた。
今では洞窟の中をトンデモナイ速さで飛び回れるようになった。
「ィィ~~いやっほぅ~! たーのしー!」
洞窟内は迷路のように入り組んでいるけど、かえってそれが面白い。
時速何キロで飛んでいるかは分からないけど、壁や天井にぶつからないようにコントロールしながら飛ぶのは爽快だ。
これで肉体があったら顔に風が当たって気持ちいいのだろうけど、それでも自由に動けるのは最高だ。
「体が軽い…こんな幸せな気持ちで飛ぶなんて初めて(そりゃそうだ)…もう何も怖く 「やっと見つけたのだわ!」……え“っ?」
気持ちよく飛んでいたら、曲がり角から金髪の女の子が現れた。
慌てて止まろうとしたが、止まり方が分からない。
なので、そのまま……
――ドゴッ!
「「ウゲッ!?」」
俺は女の子の頭に大激突してしまった。
死んで肉体がないからなのか痛みはないが、とっさに女の子と同じうめき声が出た。
「いっ、たたたっ……一体、何なの。って、あなた! 大丈夫!?」
女の子は頭を抱えてうずくまっていたが、すぐに立ち上がり俺の心配をしてきた。
自分よりぶつかってきた相手を心配するなんて、やさしい子だ。
うーん、でもこの金髪美少女の姿も声も誰かに似てるような?
「魂は、傷ついていないわね。というか、あなたの魂すごく透き通っていて力強いわね。神代の人間でもなかなかいないわ。っと、そんな事はどうでもいいの。とにかくあなたはもうこれ以上傷つく必要はないのに。本当にごめんなさい」
女の子はまるで子供をあやすかのように、人魂の俺を優しく抱きしめて撫でてくれた。
この暖かさは、どこか懐かしさを感じる。
何というか安心して身を委ねられる。
あぁ、これが魂の浄化、成仏するって事なのか……
「さてと、色々と説明する事はあるのだけれど、あなたに関しては私の管轄じゃな……ってちょっと、何昇天しかかってるの!? ここ冥界なのにどこに行こうとしてるの!?」
「???」
彼女の言ってる意味が分からない。この人は何者?
「あぁっと、ごめんなさい! 自己紹介が先だったわね。私は、冥界の女主人、エレシュキガル。ここは冥界の奥地で、あなたは死後ここに迷い込んでしまったの」
冥界? 天国でも地獄でもなくて? 冥闘士でもいるのかな?
「ホントはもう少し説明してあげたいのだけれど。本来あなたはここに来るべき魂じゃありません。こんなの私も初めてだけど……まぁいいわ。今からあなたを本来行くべきはずだった場所へ送ります。後の事はそこにいる神様に聞いて」
えっ? 今何と? 神様ですと!?
というかもうお別れ? 早くない?
あ、今気づいたけど、エレシュキガルって遠坂凛に似てる!
髪が金髪だけど、声と姿が同じだ!
あぁ、もっと沢山会話したいよー!
「それじゃあ、さようなら。あなたの来世に祝福を、その終焉に安らぎを」
「ちょっと、待っ……」
待って、というより早く俺は光に包まれて、再度意識を失った。
「おきなさい」
ん? 声が、聞こえる?
「おきなさいおきなさいおきなさいおきなさいおきなさい 「って怖いわぁ! 何回繰り返してるんだよ!」 うひゃぁ~! ホントに起きたぁ!」
飛び起きてみるとそこはさっきまでいた洞窟ではなく、どこかの道場みたいな場所にいた。
で、さっきからうるさかった声の主は、剣道着姿の女性。
さっきのエレシュキガルと同じく、この女性にも見覚えがある。
というか、今度ははっきりとわかりやすい。
「藤村、大河?」
「タイガーって呼ぶなー! は、今回置いといて。よくぞ来た若人よ。ここは不幸な人生のまま死んじゃったあなたを転生させてベリーイージーな人生をまっとうしてもらう夢の救済コーナー、タイガー道場(仮)でぇーっす!」
さて、ツッコミ所が沢山ありすぎるのだが、どこからつっこもうか?
と、思ったら大河っぽい人はいきなり土下座をかましてきた
それはもう流れるような綺麗な土下座だった。
「その前に、すみませんでしたぁ! ホントはすんなりとここへ連れてくる予定だったのだけど、ついうっかり段取りすっとばしてあっちの世界の冥界に行かせちゃった、テヘッ☆」
藤村大河のテヘッはちょっとかわいかった。
「えっと、つまり、さっきまでいたのは本当の冥界だけど、本来俺は行くべきところじゃなかったって事?」
いまだに事態がまったくつかめていないが、なんとなくわかってきた。
何にせよ。俺は死んだのは確定みたいだ。
「おかげであの子との縁が予定より早く付いちゃったし。でも、転生したらリセットされるのか。そこもどうにかしようか……」
何かブツブツ呟いてるけど、何の事か分からない。
てか分からない事だらけで頭がパンクしそう。
「とにかく! 一度しか言わないからちゃんと覚えておくように。バックログで読み直しなんて出来ないわよ! あ、私の事はタイガー神って呼んでね♪」
「はぁ……」
そう言って大河、っぽいタイガー神は説明してくれた。
まず、タイガー神は文字通り神様で、それも様々な世界に干渉できるほどの最上位な神様だった。
なんで藤村大河の姿をしているかと言うと、タイガー神は見た目は自由に変えられるので、俺の深層心理から親しみやすいキャラを選んで、藤村大河の姿とタイガー道場を作り出したのだそうだ。
で、俺がここに来た理由は、幼くして家族を亡くし18年間をほぼ病院で過ごしながらも、明るく前向きに生きる俺の魂の強さを気に入って、特別に転生をさせてあげようという事らしい。
「はぁ、それはまたどうも……」
「むむっ、その気のない返事。さては信じていないわね!?」
「いえ、いきなりそういう事言われても色々実感が湧かなくて。で、転生ってどこへですか?」
「それはもう決まっているわ。君が行くのはFateの世界! と言っても、君が知るFateの世界とはちょーっと違うけどね」
「Fate!?」
Fateの世界へ行けると聞き、俺はすごく胸が昂った。
まぁ、今の俺は人魂だから胸ないけど。
過去の英雄たちが英霊となって召喚されて戦う魔術師の世界。
そこには色々な魔術があって、無限の可能性に満ちた世界!
でも、待てよ。運動神経どころか満足に運動した事ないヒョロガリな俺がFateの世界に行っても1日も持たない自信がある。
「そこはだいじょーぶ! 君の場合、生前が不幸の連続だったし、亡くなったのも早いし、魂も純粋で綺麗だし、特典は盛沢山用意しました!」
「ん~それって要はチート?」
実際に使った事ないからどういうものか分からないけど、チートにいいイメージはないな。
「チートと言えばチートだけど。あの世界、チートすぎるって事はないくらいシビアだからそこは気にしないでいいわよ」
おい、そんな危ない世界に転生させようってかい。
Fateなんて選択肢1つで即死するような危ない世界だけどさ。
「特典1つ目。転生先での君の身体能力は高くしてあるから、基本的に鍛えれば鍛えただけ強くなるわよ。死にたくなかったらどんどん身体鍛えてサーヴァントを撲殺できるくらいにはなってねー」
「ちょっ、さらりととんでもない事言ってくれますね!?」
サーヴァントって生身の人間じゃ絶対勝てないでしょ。
あの破壊の魔法使いミスブルーだってメディアには全く及ばないって言うし。
あ、キャスター強化された葛木先生はセイバーを倒したし、士郎もヘラクレスやエミヤやギルに勝ったけどアレは別物。
「もちろん、身体能力だけじゃ即タイガー道場行き! というわけで、2つ目! 君にはFateとはまた別世界の魔法の力を授けましょう! 具体的にはドラゴンクエスト6。君、好きでしょ?」
「そりゃ、FFよりドラクエ派で、DSで4、5、6はやりまくったけど」
基本的に検査以外はヒマだったからな。
ちなみに好きな順は546だったりする。
ロトシリーズもやったけど、7以降はやったことはない。
「でもー4や5だと魔法も技も全然少ないので、6って事にしました!」
「………」
「さっきから何を微妙な顔してるのかなー? うれしくないのかな? かな?」
おい、その声でそのセリフを言うな。お前は34だろ。
「話にまったくついていけないだけッス」
「あーまーそりゃそうだよねーいきなりこんな事言われてもうまく呑み込めないよねー。まー詳しい事は転生先で自然に分かるようになってるから安心して、チュートリアルは飛ばすの厳禁!」
チュートリアルって、ゲームじゃないんだから、いやゲームの世界に行くから合ってるのか。
「まー他にも色々チート特典つけたけど、どれもこれもうまく使えるかは君次第! 慢心して調子に乗ってるとすぐに人理焼却や漂白一直線だよ! あ、漂白はないない。ソロモンのペットならともかく、この世界じゃあんな余所者なんかに好きに弄らせてたまるかっての。多次元世界の神様なめるなー!」
チートだからって調子に乗ってるとすぐに死ぬくらい厳しい世界だってのは分かる。
だって、Fate世界で一般人のまま終われるとは思ってないし。
どうせなら魔術師の家系がいいな……一般常識がある家系、あるのかな?
あれ? 今何か気になる単語いくつか言わなかった?
「気を付けるよ、忠告ありがとう。ところで、人理焼却や白紙化って何?」
「おーっとここから先は君自身の目で確かめてくれたまえ! そろそろ新しい人生が君を待っている!」
タイガー神が手をかざすと、天井から光が差し込み、俺の身体は吸い込まれていった。
「それじゃ。色々大変だろうけど、笑顔を忘れず楽しく生きてねー」
「ちょっ、まだ聞きたいことが山ほど……」
そこで、俺の意識はまたもや落ちていった。
俺は訳が分からないまま転生させられることになった。
正直、不安しかない。
「さーって、君がどれだけ面白おかしく世界を、人理をかき乱してくれるか楽しみだよ。草薙健人君」
続く
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