Fate/GTS~ぐだぐだ・たまに・シリアス~   作:カガヤ

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お待たせしましたー!
修行編といいつつ、実際は……


第2話「第一印象って大事」

俺が元いた世界で死んで、Fateの世界へと無事転生できた。

赤ん坊からやり直しというのは正直、きつかった。

ちゃんと生前と同じく18歳としての意識も記憶も人格も残っているのに、身体だけが赤ん坊なせいでロクに身動きできず言葉もうまく話せない。

ほぼ1日中ベッドで生活し、何をするにしても親の手を借りている。

まぁ、それだけなら生前何度も味わっていた事だからいい。

それに、辛い事以上に楽しい事も多かった。

転生先ではちゃんと両親がいて、兄も姉も祖父母も他にも叔父や叔母、沢山の家族がいた。

みんな優しくて過保護なくらいだった。

生前、幼くして家族を亡くして天涯孤独だった。

それから色々な人に優しくしてもらったけど、みんな赤の他人だ。

俺と同じく入院している子へのお見舞いに来る家族との団欒を見るたびに、家族の優しさって言うものは普段俺が感じるものとはまた別の物だって事を嫌でも味わってきた。

今では毎日のようにたくさんの家族から与えられる。

それが嬉しくて、よく泣いた。

叔父さんからはよく泣く子だと笑われ、母さんからはそれだけ元気な子な証拠よと抱きしめられた。

俺はなるべく嬉しくても哀しくしても泣かないようにした。

代わりに沢山笑うようにした。そうすれば家族もまた喜ぶから。

 

赤ん坊って何歳から立てるようになるのか分からないけど、俺はすぐにでも立って歩けるようになりたかったので何度も試行錯誤した。

けど、うまく立てなかった。

タイガー神は最高の身体能力を与えたはずなのにおかしいなと思ったが、よく思い出せば鍛えれば鍛えるだけ強くなると言っていたので最初からはあまり高くないのだろう。

それからしばらくはほぼ一日中部屋のあちこちへハイハイをして赤ん坊なりに身体を鍛えようとした。

その度に母さん達にベッドに戻されたりしたけど……

その成果が出たようで、生まれてから1年も立たずにやっと立てるようになった。

これも修行の成果だ! って当時は喜んだけど、赤ん坊ってそれくらいで立てるのは普通らしいね。ちょっとショック。

で、それからはやりすぎと思うくらいでないと意味はないと俺は思いつく限りの修行を行った。

と言っても、立てたばかりの赤ん坊に出来る事は限らている。

危なそうなことをすればすぐ母さんやばあちゃんに止められるので、目立たないように室内で腹筋運動とかそういう事から始めた。

が、それも全然出来ず、傍から見たらただ赤ちゃんが手足バタバタさせてるだけにしか見えなかった……

 

そして、5歳になろうかという時。俺はようやく転生先の家族の裏の顔を、そのチートっぷりを知ることになった。

忘れかけていたけど、ここはFateの世界。転生先は魔術師の家系だ。

その中でも、俺が生まれてた草薙家と言うのは、名門中の名門でしかもとんでもない家系だった。

まず家族構成から、草薙家現当主である父・天藍(てんらん)、母・ラス、次期当主となるのが決まっている10歳年上の兄・昂祁(こうき)、5歳年上の姉・麗衣(れい)、先代当主の祖父・皇伽(おうか)、祖母・キトラの以上が、一緒に住んでいる家族。

草薙家は、魔術協会の一角である時計塔に古くから在籍する名門であり、重鎮。

更に魔術世界だけではなく表の世界にも顔が聞き、政界や経済界へも進出している人もいるのだそうだ。

なのに、じいちゃんに草薙家の事を聞かされるまで全く実感が湧かなかったのは、あまりにも家が一般家庭的すぎたせいだ。

住んでいる家は、イギリスの小さな町の郊外に建てられていて広いけどテレビで見るようなイギリスっぽい豪邸ではなく、日本にありそうな普通の造りをしている。と言うか、衛宮士郎が住む武家屋敷っぽい

周りも日本風な家が多く、イギリスと言うか外国らしさはあまりない。

メイドはいるけど、草薙家の血筋の人だからただの親戚にしか思わない。

父さん達の身なりも、貴族服ではなく普通の一般人のようなカジュアルな服装。

勿論、パーティーや政界要人などに会いに行く時は正装していたけどね。

そんな俺でも、草薙家がチートだと分かる事を聞いた。

それは、草薙家の祖先が「」へと到達した事があると言うのだ。

 

「」 つまり根源への到達は全魔術師にとっての悲願であり、先祖がそれを成し遂げた草薙家は尊敬と畏怖の対象なのだそうだ。

なぜこんな事を5歳で知れたのかと言えば、タイガー神からの特典の1つである【ドラクエ呪文】のせいだ。

5歳の誕生日パーティの日、母さんが誕生日ケーキに火を点けようとした時、なんとなくメラで出来たら一瞬なのになーと思い。

 

「……メラ」

 

と呟いたら、見事に俺の両手から小さな火の球が出てケーキのロウソクに火が付いた。

ついでに、剋斗叔(こくと)父さんの頭に火が点いてしまったが、周りはそれどころではなかった。、

 

「健人、今の魔術はなんだ?」

 

あんなに驚き、真剣なまなざしをする父さんは初めて見た。

自分でも出来ると思わなかったが、言われてみれば魔術世界の仕組みとか歴史は教わり始めたけど、肝心の魔術については魔法との違い程度にしか教わっていなかったなーそりゃいきなり魔術使ったら驚くよねー。

で、俺はなんとなく頭に浮かんだと言ったら、強く抱きしめられた。

 

「お前もついにか! 俺は嬉しいぞ!」

 

周りを見れば、みんな歓喜の声を上げていた。

普通そこは驚くのではないかな?

てか、剋斗おじさんの頭がいまだに燃えてる事に誰か気付いて消火しようよと思った。

それから、誕生日パーティーがみんながハイテンションのまま終わって、親戚のお姉さん達に色々身体をしらべられて、俺は父さんやおじいちゃんから草薙家の秘密について聞かされた。

 

「実はな、健人。草薙家に生まれる者には独特の特異能力を持つ者が多いのだ」

 

父さん曰く、草薙家は先祖が根源にたどり着いた影響か、それまでの魔術とは全く違う魔術基盤、もしくは人並外れた才能を持って生まれる者が多いらしい。

じいちゃんの場合、1度見た魔術ならばどんな魔術でも解析してしまう能力の持ち主で、魔術殺しと呼ばれて引退した今でも他の魔術師に恐れられている。

他にも魔術の才能がない草薙家の者でも、特異能力を持って生まれる人がいる。

例えば剋斗おじさんは魔術の事は知っていても、才能がないので表の世界で薬剤師として生きている。

剋斗おじさんは薬草にとても詳しく、どんな薬草もすぐに効力を解析し、他の薬草や鉱物、人工的な薬物を加える事でどんな効力を生み出すのかもすぐに割り出す事が出来るそうだ。

だから俺がメラで燃やしてしまった髪も育毛剤を作って元に戻ったそうだ。

色々なところに需要がありそうな能力だ。

 

「お前がさっき見せたメラという呪文だが、儂にもうまく解析できんかった。火の球を生み出す効果は分かっていても、お前の魔術回路からどうやって生み出しているのか過程がわからんのじゃよ」

 

おじいちゃんでも解析できないってなんかすごく大袈裟になってきた気がする。

 

「さらに言うとだな。お前には魔術回路がないと思っていたのだ」

 

魔術回路は、あるかないかによって魔術師になれるかなれないか決まる。母さんや剋斗おじさんはもっていない。

これは例外はあれど、生まれてから出来たり増えるものでもない。

だから生まれてから魔術回路がない俺は魔術師としては才能がなく、だから必要最低限の事しか教えていなかったという。

 

「しかし、それは誤りだった。改めてお前の身体を丹念に調べたところ、魔術回路はないが魔力は持っている事が分かったのだ。今はまだ微量だが、潜在的には計り知れないほどのな」

 

なんか色々難しい単語も他に言われたけど、要するに俺には魔力回路がないのに魔力がある。

しかも、その魔力は通常の魔術師の魔力とは異なっていて、草薙家でも例をみない珍しさという事だ。

うーん、これはドラクエ呪文を使うのに必要な魔力は、ドラクエ世界での魔力と同じ性質じゃなきゃダメだから俺の身体がドラクエ世界よりになってる、って事かな?

しかも、潜在的って事はレベルがあがればMPもあがる的な奴か。

 

「健人よ、明日からは魔術訓練を始めるぞ。本来ならば武術訓練だけをさせる予定だったのだがな」

「はいっ!」

 

草薙家は魔術師の家系には珍しく皆が魔術だけに頼らず格闘と武器を使う武闘派が多い。

父さんは剣と弓、おじいちゃんは槍と投擲物、姉さんはナイフと鞭や縄と言った具合にそれぞれ得意な武器がある。

兄さんは例外的で、剣でも槍でもなんでも武器として使い、その技術は歴代草薙家でもトップクラスと言われている。

現に今も15の若さで執行部の助っ人として死徒狩りや外道魔術師狩りに行っている。

俺もそのうち駆り出されるんだろうなぁ。

そんなこんなで翌日から武術の訓練を受け始めた。

と言っても、最初から武器持たされて実戦形式、だなんてことはせず体力作りから始まった。

腕立て伏せやランニングなどを、重りをつけながら行った。

ちょっと地味だけど、漫画っぽくて楽しかった。

それと一応、魔術講義も受けたのだけど、こっちはさーっぱりだった。

座学よりも身体動かしてる方が気持ちいい。

ま、知識だけは増えたからいいけど。

 

月日は流れ、7歳になり武器を使った訓練が始まった。

剣に槍、弓にナイフに双剣、色々武器の使い方を一通り教わったけど、気に入ったのが剣だった。

両刃よりも日本刀のような片刃のような剣が使ってみて、一番手に馴染んだ。

飛天御剣流とかできればいいなーとちょっと真似してみたのは内緒だ。

 

で、ある日ふと思ったのだけど、俺……友達いねぇ。

草薙家の血筋は他の魔術師から狙われやすいから、幼少期は外を出歩く時は常に誰かがそばに付いてる。

旅行や買い物に出かける時も家族以外と出る時は付き人さんがいた。

更に俺は学校へは通っていない。

勉強は家庭教師がいて、一般常識や数学やら世界史からテーブルマナーに至るまで学校で習う事は全て教わった。

ちなみに、その家庭教師も付き人も草薙家に連なる血筋の人だ。

学校に行ってないし、外も自由に出歩けないので、当然友達も出来るはずもない。

その分家族はみんな厳しくも優しかったし、親戚のお姉ちゃんやお兄ちゃんはよく遊んでくれたから寂しくはなかった。

本音を言えば、学校に通って友達を作って外で遊んだりしてみたかった。

でも、そんな自分の状況を俺は自然と受け入れていた。

多分、それが魔術師の家系に生まれたって事で、魔術師の世界に染まって行ったって事なんだろう。

 

そんな毎日が劇的に変わったのが、10歳の誕生日だった。

いつものように親戚が集まって、いつものようにパーティーという名の宴会が始まってどんちゃん騒ぎ。

こういう所もここがイギリス郊外で、うちが由緒正しい貴族だって実感が湧かない理由の1つなんだよな。

そして、そんな宴会もいい感じになってきた頃、うちに珍しく客が2人もやってきた。

1人は、ちょっと珍しい白と銀色の中間くらいの髪色をした父さんと同い年くらいの男性。

もう1人は、俺と同い年くらいの髪が長い女の子。

女の子は、緊張しているようで男性の服の裾を強く握りしめて、難しい顔をしている。

 

「やぁ、久しぶりだね天覧。今日は君の息子の誕生日パーティにご招待ありがとう」

「なあにお前がここへ来れる口実をわざわざ作ってやっただけだ。まぁ、今日は楽しんでいけマリスビリー」

「そうさせてもらうよ。おっと、君が健人君だね。初めまして、私はマリスビリー・アニムスフィア。そして、この子は私の娘、オルガマリー・アニムスフィア。よろしくね」

 

人当たりのよさそうな笑みを浮かべてマリスビリーは俺の頭を撫でた。

親戚以外の人に撫でられるのは始めてだったから少し嬉しかった。

 

「ほら、オルガマリー。君も挨拶しなさい」

「は、はじめ、まして。オルガマリー、です」

 

ガチガチになり、顔を赤くしながらもなんとか挨拶をしたオル、オルデカを少し可愛いと思った俺はロリコンではないと思う。

だって今の俺10歳だし、この子と同い年だし!

 

「ところで宴会好きは相変わらずだね天覧。外までお酒の匂いがしたよ」

「むっ、それはいかんな。健人、この子と庭にでも行って遊んできなさい」

「はーい、行こう!」

「オルガマリー、くれぐれも物を壊さないようにね」

「はい、お父様! って、私そんな事しません!」

 

正直、酒臭いこの空間から早く抜け出したかったんだよな。

でも、一応主役の俺が抜け出すわけにもいかないから何か理由を探していた所だ。

この子がずっと難しい顔してたの、緊張してただけじゃなくて酒の匂いが嫌だったんじゃないかな。

だってなんかほっとしてるし。

と言うか、何か不穏な事さらりと言ってなかったこの人?

 

こうして俺とオルデカは外へと出た。

うちの庭は広く日本庭園になっていて、池やちょっとした迷路もあり遊び場としては最適だ。

とは言え、俺は一体オルデカと何して遊べばいいんだろう……

生前も転生してからも、同い年の子と外で遊ぶって事したことないから分からない。

兄さんや姉さんとやっているような事でもいいのかな。

こういう時は相手に聞いてみよう。

 

「ねぇ、オルデカ。何がしたい?」

「ふえっ!? そ、そうね……って、今私の事なんて言ったのかしら?」

「えっ? オルデカだよ?」

 

まさかこの幼さで自分の名前が分からないって、不憫だな。

 

「ちっがーう! 誰がオルデカよ! 私の名前は、オルガマリー・アニムスフィア! ほら、言ってみなさい」

 

あ、名前違ったのね。

どうりでなんで海パンとマスク被った変態な勇者の父親と同じ名前なのか不思議だったんだよな。

 

「パイプオルガン・アンパンマン、なんか言いづらい名前だな」

 

アンパンマンってこっちの世界でもやってるんだよな。

 

「なによそれ、全然違うじゃない! オ・ル・ガ・マ・リー・ア・ニ・ム・ス・フィ・ア!」

「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」

「……お望みならばそうしてあげましょうか?」

「今のは流石にわざとです、ゴメンナサイ」

 

目からハイライトが消えてこわいです。

 

「おるがまりーあにむすふぃあ、ちょっと言いにくいかも」

 

特にアニムスフィア。

 

「うっ、し、仕方ないわね。特別に、あなたは特別に、お父様の親友の息子だからと・く・べ・つ・に! す、好きに読んでいいわよ」

 

大事な事なので3度言いましたー。

それはともかく、好きに呼んでいいって言われた。

これは、あだ名を付けろって事かな。

あだ名かぁ、なんか友達っぽくてイイネ!

 

「うーん、えっと……なんて呼ぼうかな」

「………ジィー」

 

なんかものすごく期待されてるようなんですけど。

これは、短くて分かりやすいあだ名を付けなきゃ……プレッシャーががが。

オルガマリーから付けるなら、オルガ?

 

――キボウノハナー

 

ん? なんか今頭に変な言葉浮かんだぞ?

とにかくこれはダメだな、何となくだけど。

じゃ、マリーか。確かに女の子らしいけど、安直すぎる。

なら、他に短くて語呂もいい感じになりそうなのは……あった!

 

「うん、決めた! 今度から君の事、『ガマちゃん』って呼ぶね!」

「あら、短くていい響き、素敵ね♪ って私はカエルかー!!!」

「ブフッーーー!?」

 

その日、俺は初めて友達が出来ました。

そして、初めて、空を飛びました。

 

ガマちゃん、ナイスツッコミ。

 

 

続く

 




いやぁ、こんなに出来上がったのに全部書き直したの初めての経験でした……
なんとか自分で読んでて違和感がない風になりました。
まぁ、それでも自分で読んでってレベルですけど……
草薙家、色々とチートです。健人本人よりもチートです。
あまり本編には登場しない予定ですが、影響力はすさまじいです。

魔術協会や魔術関連もろもろに間違いあっても暖かい目で見てください(トオイメ

あと、今回の話で、オルガマリーの立ち位置が確定しました(笑)

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