早く原作に入りたい…
「ロンドンよ、私は帰ってきた―!」
ゼルっちの魔法でドラクエ6の世界に飛ばされて2年近く、ようやく元の世界に帰ってこれた。
「ま、でもおかげで呪文や特技はかなり覚えられたけどな」
戦士、魔法使い、武闘家…etc とドラクエ6世界で沢山の職業に転職して修行と冒険をしてきた。
勇者やドラゴン、はぐれメタルはなれなかった。
ゲームでは上級職を4つ極めれれば転職出来る勇者だったが、俺にはなれなかった。
それどころか俺が覚えれなかった特技も沢山ある。
あまいいき、とか、ほのおのいきとか息系とか人間やめるような特技ばかりだからいいか。
流石にぱふぱふとかぐんたいよびとか覚えてもしょうがない。
呪文もすべて覚えれたわけじゃなく、デイン系やベホマズンなどは無理だった。
まぁ、剣技や格闘技はほとんど覚えれたし、いっか。
「さってと、まずは父さん達に帰還報告しないとな。家にいるかな」
路銀はないので、歩いてロンドン郊外の家へと戻ってきた。
2年近くも離れていたのに、街中も家の周りも何もかも変わっていなかった。
「ふぅ~、なんで緊張するかな。ただいまーっと」
なんて言って入ろうかと少し考えたけど、結局普通に外出先から帰ってきた風にした。
家の中も相変わらず程々に広く、控えめな装飾品や調度品も変わってなかった。
が、家の中は静かだ。
「父さんや母さんはともかく、爺ちゃん達も留守かな」
とりあえず、自室に戻って休むとしよう。
「あー俺の部屋片づけもせず出ちゃったからなぁ。誰か掃除とかしてくれてるかな」
ベッドの下にエロ本、なんてそういうベタな隠しものはないからいいけど。
「ん? 何か、匂う? まぁ、いい匂いだからいっか」
と、ドアをあけた。
久々の帰宅で気が抜けていた俺は、自室とはいえ気配を探る注意を怠っていた。
この時部屋を用心してあけていれば悲劇は起きなかったというのに。
――ガチャ
「えっ?」「へっ?」
部屋のドアを開けると、そこには銀髪の美少女がほぼ全裸でいた。
かろうじて下着の下は履いてるけど、上は無防備……胸でかいな。
あ、さっきしたいい匂いがフワッて鼻につくな。
あれ? こんな展開今までも何度かあったような?
まぁ、それはともかく……
「きゃあぁーーー!? 俺の部屋で痴女が露出してるーーー!?」
「キャー……って普通女の私が悲鳴あげるんでしょう!? じゃなくって、健人!? もう戻ってきたの!?」
「あ、なんだガマちゃんか。ただいまー」
銀髪美少女はガマちゃんだった。
ん? もう戻ってきたっておかしくない?
「軽いっ! あんたねぇ、人の裸見ておいてその反応はどうなのよ」
「だってガマちゃんの裸は見慣れて…「ガマちゃん言うなー!」…ヘブッ!?」
久しぶりにガマちゃんの拳で空を飛んだ。
このやりとりも懐かしい。
あ、ガマちゃんの裸見慣れているっていうのは、同居していた時から今回みたいにラッキースケベが何度かあったって事だよ?
俺が風呂から上がったと同時に、入ろうとしていたガマちゃんとなぜか鉢合わせしちゃったりとか。
「で、ガマちゃ、マリーは俺の部屋で何してるのさ?」
「おじさまに頼まれたのよ。今日あなたが帰ってくるけど、おじさま達は大事な用があって出掛けなきゃいけないから、代わりにあなたを出迎えてくれって」
なんでも父さんだけではなく、母さんや兄さん、じいちゃんやばあちゃんなど草薙家総出で出掛けたらしい。
その時のみんなはマリーが感じた事がないほど異様に殺気だってたそうだ。
うちの家族総出って、どっかで真祖でも暴れてるのかな。
仕事で出遅れた姉さんはもう少ししたらこっちに来るらしい。
「なるほどね。でも、なんでまた着替えてたのさ」
「……ひみつ」
そこで頬を赤らめるな。可愛いだろ。
「と、ところで、こんなに長い間どこに修行にいってたのよ。連絡の1つもよこさないで」
「いやぁ~連絡取れる手段なかったもんで」
手紙しかなかったしね、あの世界。
その後電話とかある世界にも行ってたけど、こことつながるわけもないし。
「天藍おじいさまは遠い所で修行に行ってしばらくは戻ってこれないとは聞いていたけど、あなた一体どこで何してたの?」
「えっと、戦士や僧侶やパラディンになりながら、現地の勇者たちとモンスターや大魔王と戦ってきた」
ゼルリッチの第二魔法で異世界って行ったら気絶しそうだから黙っておこう。
「えっ? 何? もう一度言って?」
「だから、武闘家や踊り子になってドラゴンとか魔神とかを倒してきたの」
「…………おっけー詳しくは聞かない事にするわ」
流石に魔術師とはいえ、許容範囲を越える話だったか。
俺の言ってる事が嘘じゃないって分かっているからなおさらだろう。
今思ったけど、魔王とかドラゴンって異世界って言ってるようなものじゃね?
「で、そんな大冒険してきたのなら色々と覚えてきたんでしょう?」
ここでマリーの目が魔術師の目になった。
「あぁ、沢山呪文や技覚えたから後で見せるよ」
「はぁ~」
と言ったら、なぜか盛大にため息をつかれた。
「あ・ん・た・は! 聞いた私がいうのもなんだけど、すこしは自分の魔術を隠匿しようと思わないの!?」
「だって、マリーなら問題ないじゃん?」
「っ、だから、そういう所がダメなの! もう、修行でそういう所も直ると思ったのに」
そう言われてもなぁ。あの世界じゃみんな自分の特技を自慢してたぞ、チャロモとか。
「ただいまー」
その時、姉さんの声がした。
どうやら仕事から帰ってきたようだ。
「おかえり姉さん、それとただいま」
「あら。ただいま健人、それとおかえりなさい。また大きくなったわね。それに、かなり強くなったわね」
流石姉さん、一目で見抜いたか。
「姉さんもますます強く綺麗になったね」
「ふふっ、ありがと。マリーちゃんもいらっしゃい。ところで父さん達どこに行ったか知ってる?」
姉さんは仕事帰りに母さんから、家に戻って修行から帰ってくる健人をマリーと出迎えてと言われたらしい。
「俺は帰ってきたばかりだから分からない」
「私もおじさまからここで健人を待っていなさいとしか言われていないんです」
「そっかーそれでマリーちゃんさっきまでシャワーを浴びて私がプレゼントした香水で身を清めてたのね」
「あーそれでさっきいい匂いがしたのか」
「っ~~~!!?」
姉さんがそういった途端、マリーは全身真っ赤になりながら声にならない叫び声をあげた。
さっき裸を見られたのを思い出したんだな。
「健人、あなたそういう所は直ってないのね」
姉さんは呆れるように言ってきたが、そういう所って……ラッキースケベの事?
ドラクエ世界じゃそういう事なかったよ。
そういう役目はポッツがしてたし。
「まぁ、いいわ。それよりも」
ここで姉さんの目つきが変わった。
「私に連絡してきた時、母さんは怒っていた。それも、私の知る限り今までで一番怒っていたわ」
「えぇ、おじさまもすごく怒っていました。とても冷たくて、殺気すら感じるほどに。健人が帰ってくるって分かっているのにそっちを優先させた」
「兄さんだけでなく、おじいちゃんやおばあちゃんまで出払ったって事は相当だよ」
それは、厄介だ。
父さんも母さんも俺達に怒ることは当然あるけど、普段はあまり怒らないタイプだ。
俺達に関係なく父さんと母さんが揃って怒っている時は、魔術師絡みの厄介事があったという事。
「まぁ、考えても仕方ないわね。それよりもお茶しながら健人の修行の話聞かせて」
「それでいいんですか!?」
今までのシリアスモードをあっさりと放棄して話題を切り替えた姉さんに、マリーがすかさず突っ込んだ。
「心配いらないわよ。父さん達だけで大丈夫よ。それに必要なら私も健人も呼ぶはずだもの」
「いえ、私はおじさま達を怒らせた相手を心配しているのですけど……」
というわけで、姉さんが買ってきたケーキとマリーが淹れてくれた紅茶を楽しみながら俺は今までの冒険談と持ち帰ってきた道具について説明した。
俺が思うドラクエ6世界で手に入れた中で一番のお宝は「どうぐふくろ」だ。
ゲームでは様々な武防具や道具を1アイテム99個まで入れれる携帯版「王の財宝」ともいえるアイテム。
ドラクエ世界で何としても手に入れたかったのだけど、ポッツがもっている一つしかないようで見つからなかった。
大魔王を倒してパーティーが解散して別れる時、ポッツが餞別にとくれた。
旅の途中で手に入れたものは大体持ってきた。
最初は、道具屋で買って持って帰ろうとしたのだけど、ポッツ達が自分達にはもう必要ないからと言ってくれたんだよな。
とは言え、武器や防具は戦闘でボロボロになって使い物にならなくなってしまった。
エッチな下着をマリーに渡した時の反応は見たかったけど、あれはハッサンがこっそりと持って行ったしな。。
なので、今ふくろの中にあるのは俺自身が使っていた武器と防具以外ほほとんど道具ばかりだ。
でも、星降る腕輪とかはやてのリングとか魔術効果のあるアクセサリーも持ってきたので、お土産にはなるな。
「傷を治す薬草や名前の通りの毒消し草。うーん、どれも剋斗おじさんが作ったものの方が効率的よね」
色々品定めしながら姉さんは苦笑いを浮かべた。
確かに、世界最高の薬剤師として有名な剋斗おじさんが作る薬の方が治癒力が高い。
「で、健人が愛用していたはやぶさの剣、これはすごいわね。見た事もない材質で出来ていて軽い割にすごく頑丈ね」
姉さんも褒めるはやぶさの剣。
2回攻撃が可能になるというのも頷ける程軽く、実際他の剣よりも2倍速く攻撃出来た。
攻撃力は他の剣の方が上だけど、俺はこれが気に入ったので最後まで愛用した。
「でも、これも結構ガタが来てるわね。ひょっとしてトワロさんに鍛えなおしてもらうつもり?」
トワロさんとは、草薙家御用達の鍛冶屋だ。
表向きは包丁などの研ぎ師職人だけど、裏では魔術礼装絡みの武具職人でもある。
あの人に鍛えなおしてもらったらもっとすごい剣になるに違いない。
「うん。今まで一番手に馴染んだ武器だからね。これを俺の専用礼装にしたくて」
「それはトワロさんも喜ぶわ。健人に合う剣がうまく出来ないって気にしてたしね」
昔から色々な武器の手解きを受けて一番しっくりきたのが剣だけど、なかなか俺専用の剣までは見つからなかった。
トロワさん曰く、俺の魔術回路が異質なのも関係しているらしい。
ドラクエ6世界に行ってからは、はがねのつるぎなどいくつか使ったけど、トロワさんが作ってくれた剣よりは馴染んだ。
更に、はやぶさの剣を手にした時、全身に稲妻が走ったような衝撃があった。
まるで俺の為に生まれたかのように、手に馴染んだ。
恐らくだけど、この世界の剣じゃドラクエ呪文や特技と相性が悪いから馴染まなかったんだと今なら思う。
ちなみに俺がドラクエ世界で使っていた防具は、ドラゴンメイルだけだ。
防御力の高い盾や兜は沢山あったけど、どれも高速で移動しながら呪文や剣技を繰り出す俺の戦い方には邪魔になるものばかりだったからだ。
ドラゴンメイルは見た目はカッコ悪いけど、他の鎧よりは軽かったから着用していた。
けれども、これも戦闘でボロボロになってしまった。
なので、はやぶさの剣同様にこっちの世界で修繕をしてもらうつもりだ。
「さてと、それじゃあ健人……久々にやろっか♪」
「えっ? やるって何を?」
「何って模擬戦に決まってるでしょ。健人がどれだけ強くなったのか楽しみだもの」
あ、姉さんに変なスイッチ入っちゃったみたいだ。
草薙家の人間って基本的に無駄な殺生は好まない分。
模擬戦や決闘は大好きな人ばかりなんだよな。
「分かった。本当は父さん達にも見せたかったけど、一足先に2人に見せるよ」
「ちょっと健人、あなた帰ってきたばかりなのに疲れてるでしょ? 休んだ方がいいんじゃないの?」
「平気だよ。ちょっと休んだし腹ごしらえもしたしね」
「当然よ。そのために癒眞に作ってもらった特製ケーキだし」
やっぱり姉さん、そのためにこのケーキ、普通のケーキ屋じゃなくて従姉の魔術師兼ケーキ職人の癒眞さんに滋養強壮に効くケーキを用意してもらったんだな。
通りで力が湧いてくると思った。
「あ、でも健人にはマリーの紅茶だけで十分だったかしら?」
「なっ!?」
マリーはうちに同居する前に亡き母親から紅茶の淹れ方を教わっていた。
それは、魔術効果のある薬草を使ったわけでも錬金術を応用したわけでもない普通の紅茶の淹れ方。
でも、俺は初めて飲んだ時からすっかりお気に入りになり、普通の紅茶では物足りなくなってしまった。
「まぁね。昔からマリーの紅茶飲むと気持ちが落ち着いて癒されるよ」
「はぃ!? そ、そんなおだてても紅茶のおかわりしか出ないわよ!?」
褒められて恥ずかしくなったマリーが顔を真っ赤にしながらも俺と姉さんに紅茶のおかわりを注いでいった、その時だった。
――ブーッブー!
マリーのスマホから異音が鳴った。
これは通常の通信ではなく、魔術を用いた緊急通信であることを示すアラートだった。
「あらっ、誰からかしら。こちらオルガマリー……はい? ちょっと、落ち着きない。一体どうしたの?」
何やら通信先の相手は焦っているようで、マリーにもよく聞き取れないようだ。
「こっちは落ち着いてちゃんと聞いてるわよ。で、カルデアがどうしたの? えっ? 敵襲? うそっ……」
俺達には通話内容は聞こえてこないが、マリーが敵襲と言ったのは分かった。
途端に姉さんは魔術師の顔つきになり、俺も自然にはやぶさの剣に手が伸びた。
そして、マリーが次に発した言葉に、俺達は驚愕の表情を浮かべるのだった。
「カルデアが……壊滅した?」
続く
原作開始や藤丸の登場はもう少しかかります。
健人が覚えた呪文や特技は原作開始時に出す予定のプロフィールで明らかにします。