第三次世界大戦が終結してから数年後…日本は国土の半分がコーラップスに汚染されELIDによる感染者が爆発的に増えていた。自衛隊と生き残った人々は西日本へと後退し態勢を整えた。他国では蝶事件で鉄血兵の脅威に晒されているが日本では鉄血による被害は皆無でELIDによる被害が深刻だった。現在は態勢を建て直した自衛隊が日本列島に潜むELIDを殲滅する為『滅菌作戦』を開始し生存圏を少しずつ拡大している。
そんな中、とある男が居た。その男は銃が主流と化している戦場でただ一人「刀」を振るい感染者達を次々と切り捨て道を切り開き仲間を鼓舞する存在だった。彼の活躍があってELIDにより被害は減少し国土も少しずつ取り戻しつつある。
これは刀を振るう男と戦術人形達のとの物語である。始まりは九州の山奥から始まる…
日本 九州 山奥
「今日も茶が美味いな…う~ん 平 和 」
木が生い茂り鳥がさえずる声が響く山奥の古い屋敷に住む若い男。彼は鬼怒聖真(きぬ せいま)変わった傭兵である。彼の得物はなんと刀で多くのELIDを斬り伏してきた猛者である。今日は何も予定が無く平和に緑茶を啜る。
「さて刀の手入れでもするか」
緑茶を飲み干し刀を携え作業場へと移動する。鞘から抜いて丁寧に手入れをする。実はこの刀は改修された高周波ブレードで元々無銘な名刀をベースに開発された刀剣である。丁寧に手入れをし打ち粉で叩いてると珍しく呼び鈴が鳴る。
「何だまたEILD討伐か?はいはーい今出まーす」
刀を鞘に納め玄関を出て門へ向かう。覗き窓を覗くと片眼鏡をかけた女性と一人の少女がいた。ただその少女には銃が握られていた。聖真は警戒し口調を強めた。
「…この国には銃刀法といものが有ってだな」
「知っているさ。私はヘリアントス。君を傷付けるつもりは無い」
「どうだか…俺は一応傭兵だけどEILDしか斬ってないから人様に恨みなんて買った覚えはない」
「そうかならビジネスの話ならどうだ?」
「いいぞ。入りな古い屋敷だけど…」
聖真は分かっていた。二人が自分に危害を加えない事を。彼は敵意を無いことを改めて聞き屋敷へと招き入れ居間に案内する。
「どうも緑茶と饅頭です。お口に合えば」
「気遣いに感謝するよ。鬼怒聖真」
一瞬だけ動きが止まり朗らかな笑みから真顔になる聖真。二人を睨む。
「…俺ってそんなに有名人?」
「少々噂で聞いた程度だがEILD相手に剣一本で戦うサムライがいるとな」
「そんな高貴な人間じゃないですよ。そんな柄じゃあないんで、んでそこの銃を持ってる物騒なお嬢さんは?」
「ああ彼女はM4A1…戦術人形だ。」
「初めまして、M4A1と言います」
「戦術人形…お宅ら何者?こんな山奥の屋敷に来るなんてただ事じゃないだろう?」
「そうだな…グリフィンアンドクルーガーを聞いた事はあるか」
「ああ海外で有名なPMCだろ?日本じゃ見かけないがそんな大企業の人が俺に何か用か?」
「実はクルーガー社長から直々に伝えたい事があってだな。それは」
「君が欲しいと」
「ここがグリフィンの本社か…」
聖真は日本を出ていた。二週間後に必要な荷物と刀を携えグリフィンの本社があるエリアに赴いていた。刀はケースに閉まっており道行く人々を避けつつグリフィンの本社へ向かう。正門前には見覚えのある少女が立っていた。
「聖真さんお待ちしてました。」
「おおM4か。二週間振りだな元気だったか?」
「はい!あ、あの聖真さん…あれを」
「あーはいはい黒糖饅頭ね。皆で食べてねえ~」
聖真はM4に饅頭を渡す。ヘリアンとの話の後、M4ももてなし饅頭を渡したら予想以上に気に入られて別れ際にお土産として頼まれたのだ。約束を守る為、聖真は出国前に買っていたのだ。
「ありがとうございます!聖真さんも試験頑張ってくださいね」
M4は聖真から饅頭を受け取り礼を言ってヘリの方へ向かって行った。そこには他の少女がいて聖真は戦術人形と理解する。何故ならM4と同じように銃を装備していてM4とよく似た武器なのでそう判断した。
再会に喜びつつも本社へ向かい入社試験に集中する事にした。
「さて入社試験ね…まあやるだけやりますか」
「まずは面接か…」
グリフィン本社に勤務する受付に案内され待合室へ案内された。そこには十数人の男女が椅子に座ったり鏡で身嗜みを整えていた。中には緊張している者や言葉を復唱している者もいた。また、余裕そうにリラックスしてる者もいた。
「(皆緊張してるな。というか俺の刀に注目してるな)」
そこにいる人間達が聖真の刀に視線を集中する。こんなご時世に刀を持つ酔狂な人間はいないからだ。そんな中、一人の男が近づく。白人の男性で珍しそうに刀を見ながら聖真に話掛ける。
「よおアンタはサムライか?」
「違う。ただ刀が得物の日本人だ。お前さんは?」
「ユーリだ。今日は就職試験を受けに来てな…」
「ほーん俺はスカウトされてここまで来たんだ」
「そうか。この試験ではグリフィンのどの部署に配属するか、という意味合いがあるらしい。因みに俺は補給班かな?前線で撃ち合う事に疲れてな…後方支援に回りたかったのさ。…そういえば名前聞いてないなアンタは?」
「鬼怒聖真だ。セーマと言えば分かりやすいか?」
「セーマか、分かった。セーマお前はどこに希望するんだ?」
「いやどこでも…元々はEILD討伐の傭兵でな…前線に配属されそうな気がする」
「そ、そうか。まさかそれで?」
「まあな、別に銃は使えるが刀の方が弾が節約できる」
「おう頑張れよ」
聖真の面接時間が迫りやがて彼の番になり面接する部屋へと足を運んだ。
部屋の前まで来た聖真。拳を握りゆっくりと丁寧に3回のノックをして返答を待つ。
「入りたまえ」
「失礼します」
聖真は部屋に入り一人の男を見つめる。壮年で厳つい大男で立派な髭が特徴的でその眼には強い意志と噓をつく事を許さない気迫を感じ取る聖真。座るように促されてから席に着くが刀を手から離す事は無かった。
「遠路はるばる日本からよく来てくれた…我々は君の力が欲しい」
「そうですか。まあフリーの傭兵は不安定なんでありがたいですけど…」
「何かね?」
「気付いてますね…クルーガーさん。それに…」
聖真は刀を抜いた。だが抜いた先はクルーガーではなく真後ろに居たある人物だった。
「おい人形。もっと気配を殺すんだな実戦だったら首が落ちていたぞ」
金髪の黒いコートを着こむ少女…もとい戦術人形が居た。聖真の刀は彼女の首数ミリまで迫り彼は静かに殺気が溢れていた。ただ、激情する事なく冷静に状況を分析し彼女が敵意が無い事を察し刀を鞘に納めた。
「お見事です。まさか見つかるとは」
「ウェルロッドもういいぞ下がりなさい」
「了解」
そう呼ばれた人形は天井のパネルを外して消えて行った。聖真はその光景を見てどこから来たのを認識する。
「随分な歓迎で…満足ですか?(あんなとこから来てたのか…)」
「勿論だ。それで君はどうするのかね?ここに来るかそれとも極東に帰るのかね?」
「いや、ここに居させてもらう。前から外国で暮らしてみたかったので」
「ふっ…さて君には部屋を用意してある。そして、部署だが…希望は?」
「指揮官とやらに興味がある。それが駄目なら暗殺でもやるが?」
「いや指揮官の席を用意しよう。ある程度の軍事知識を持っているし腕も立つ。明日から指揮官の講習を受けてくれ以上だ」
「どうも」
面接を終えた聖真は用意された部屋に向かった。そこにはユーリがおりお互いに顔を見合わせた。ユーリは聖真がグリフィンに就職した事に喜ぶ。
「いや~見知った奴がいると安心するよ。これから宜しくセーマ」
「ああこちらこそユーリ。そういえば希望は通ったのか?」
「ああ、兵站の方になったよ。やっと前線からおさらばさ」
「ふーん…そっか俺はこいつを手入れするから先に寝てくれ」
「…見学していい?」
「別に構わんが…」
翌日、指揮官としての講習を受け始めた聖真。刀を携える変わった日本人として見られていたが本人は気にしていない。成績も段々と上がり、実際に人形を指示する訓練が始まろうとしていた。とうとうその日がやって来てその人形と顔合わせになった。聖真が訓練場に向かうと二体の人形が待っていた。
「グーテンターク。初めましてG36です以後お見知りおきを」
「グーテンターク。妹のG36Cです今回は宜しくお願いしますね」
「鬼怒聖真だ。見習い指揮官だが今日は宜しく頼むよ」
「さてセーマ。今日はこの二体を実際に指揮する実戦訓練を行う。貴官は講習にて優秀な成績を出しているが私からも助言を入れる。期待している」
「了解です。ヘリアン代高官」
「(俺の指揮官として生活が始まろうとしているな…スカウトされて物の試しに指揮官をしてみたが面白い事になりそうだな)」
聖真の指揮官ライフが始まろうとしていた。だが、彼は気付いていない。これから巡るであろう仲間と敵、苦難が…この荒廃とした戦場に一人の剣士が舞い降りる日は近いかもしれない。
次回投稿するまで饅頭を頬張るM4を想像して待っててください。