人形と共に戦場を駆ける剣士の指揮官   作:根王

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お待たせしました。別の作品やリアルで遅れました。今回からは三人称に戻します。


裁きの刃と新たな刃

 とあるビルから男たちが大急ぎで荷物をまとめ車に乗り込んでいる。彼らは違法薬物と武器の密売でV01でも大規模な組織である。しかし、聖真によって地区の浄化が始まり既に大半の組織が壊滅している。ここ三日間だけで5つの組織が壊滅した。逃げた者たちも多い…彼らもその中に含まれる

 

「いそげ連中が来る前に…!」

 

 ボスが部下に指示を出し車に乗り込む、部下がエンジンを掛けようとした時車の上に何が乗り鈍い銀色の物が部下のキーを回そうとしている腕を貫通していた。車体の上には刀で車を串刺しにしている男

 

「ぎゃぁぁああっ!?」

 

 それが引き抜かれ血しぶきが飛び散り車に乗っている人間を真っ赤に染める。序でにフロントガラスも血で塗りつぶされている。

 

「畜生!やってやる!」

 

 部下の一人が外に出て反撃しようとした瞬間、乾いた音が響き渡り部下の脳が吹き飛んだ。次に音が聞こえた瞬間には運転席の部下の胸を撃ち抜かれた。

 

「嘘だろ…この俺が、こんな所で!」

 

 ボスは堪らず車を置いて走っていた。部下が殺され既に一人…何がなんでも逃げようと走るが…

 

「待ちな」

 

「ぐっ!?貴様…!」 

 

 既に先回りされており逃げ場を失う男。すかさず拳銃を抜いて引き金を引こうとした瞬間。右腕の感覚がなくなった。そして、ドチャと鈍い音が聞こえた時右腕の肘から血が吹き出した。

 

「ぐぁあああっ!?」

 

 右腕を押さえ付けようとした時に胸を貫かれそのまま意識を失い二度と目を覚ますことはなかった。

 

 刀身は月の光によって血で赤く美しく輝いていた。

 

 

 

「お疲れさんセーマ。これで粗方片付いた」

 

「よし治安部隊は突入だ。こいつらの物資を有り難く頂戴しようぜ」

 

「やってること泥棒だぞ?」

 

「何、元々はこっちの物だったんだ取り返してもよかろう」

 

「まーそうだな」

 

 聖真は刀を拭き取り鞘に納める。治安部隊のG36たちが突入を開始し制圧完了。大量の物資を奪取し基地の資源もかなり潤い本社に連絡する。基地では武装した人間がユーリの指導の元、訓練が始まっている。彼らは難民でこのV01に流れ着いたのだ。しかし、治安が不安定な為ユーリが使える人材を見つけ治安部隊を結成する。まずは実働部隊と警察組織に別れ育成している。元軍人や傭兵、警察官などを積極的に受け入れ治安維持に貢献している。

 

「どうだ治安部隊は」

 

「悪くはない。午後から初仕事で主に人形と見回りだ…装甲車や奪った改造車を使ってな。武器もだ」

 

「そうか…さて俺は16Labに呼ばれた。ちょっと行ってくるぜ」

 

「あいよ、任せておけ…あぁウォッカ飲みたい」

 

 ユーリの愚痴を流しつつヘリに乗り込んで16Labへと向かった 。それを見送ったユーリは思う。

 

「(あの高周波ブレードどんだけ切れ味が良いんだ?MG5からは鉄血のガードを盾ごと突き刺したと聞いてるし化けもんか?今回だって車を貫通させたし…)」

 

 聖真の持つ刀は異常だ。とんでもない切れ味で何度も敵を斬り殺している。高周波ブレードは正規軍でも採用されてるがあそこまでの使い手はまずいない。彼の強さを改めて知ったユーリだった。

 

 

 

 

 

 一方で聖真は16Labに到着していた。降りるとM4と一緒にいた人形がいて眼帯を着けている人形に出会う。

 

「あんたが鬼怒聖真か?妹のM4が世話になってる。AR小隊のM16A1だ」

 

「そうだ君が彼女のお姉さんか。よろしく…そんでなんで俺が呼ばれたんだ?」

 

「私らの産みの親…ペルシカがあんたに用があるそうだ」

 

「早く終わらねえかな…まだ書類仕事あんだけど」

 

「それはペルシカ次第だな」

 

「まじ?」

 

 未だに終わっていない書類仕事。それを大層気にする当たり指揮官としての仕事が少しずつ芽生えてるかもしれない。案内され彼女の研究室に入ると聖真は絶句した。

 

「なんだこの部屋!?ごみ捨て場か!?」

 

 物が散らかってるレベルじゃねぇーぞ!おい!と付け加える。奇跡かまたは必然かモーゼの海のようになんか部品が拓け道が出来ているではないか。その道を辿るとマッグカップ片手にキーボードを打つ猫耳が生えたようでダウナー系女性がそこにいた

 

「やぁ君が鬼怒聖真かい?M4から色々聞いてるよ」

 

「どうも鬼怒です。あんたがペルシカ博士だな宜しく。そんでなんの用件で?」

 

「実は君の基地に着任…いや預けたい人形が居てね。銃撃戦から近接戦までこなせる人形なんだ」

 

「ほぇー」

 

「まあ君の戦闘データを元に作製したんだけどね」

 

「ふーん…ん?今なんと?」

 

「君の戦闘データを参考にしたのさ…随分と凄いね」

 

「いや待ってそれ何処で?いつ何処で俺の戦闘データ取ったの?」

 

「最初の鉄血の戦闘から街の浄化…今までのことなら知ってるさ」

 

 それ以上聞かないと思った聖真は差し出されたコーヒーを飲むが

 

「(まっずぅ!なんだこれは!?泥水だろうが!)」

 

 表情を変えずそれを飲み干す聖真…しかも表情を変えずに。日頃からG36が入れてくれるコーヒーや紅茶、緑茶を飲んでいる彼にとってはG36に改めて感謝とペルシカのコーヒーは飲んではいけないと察したのだった。

 

「さて本題に戻ろう。その20式を君の所で預かってくれないだろうか?近接戦闘では戦術人形を凌駕する君に任させたいんだ…頼めるかな?」

 

「戦力が欲しい頃合い…喜んで彼女を引き取りましょう」

 

「ありがとう感謝するよ。明日に着くだろうからさ。M16?彼を見送って」

 

「わかった。こっちだ」

 

 マグカップを置いて何かを思い出したペルシカは聖真を呼び止めある装備を渡した。それは…

 

「これは何だ、人形に付ける…外骨格?」

 

「そう、それは君の脚力を底上げする装備…いくら身体能力が高くても限界はある。だから、それを使いたまえ」

 

「どうもありがたく使わせて頂きますよ」  

 

「…意外だね。君のような人間はあまりこういった科学的な部分を否定しそうなんだが…」

 

「ヘリアン女史から聞いてると思うが俺の家は山の古い日本風の屋敷だ、けど普通に電子レンジやテレビもある。別に便利な物頼ってもいいんじゃ?」

 

「面白いね本当に君は…また会えるのを楽しみにしているよ」

 

「そうですね…じゃあ」

 

 外骨格を積めた箱を担ぎヘリに乗って飛び去った。暫くして基地に到着し指揮官として仕事を再開する聖真…隣には仕事の補佐としてG36が、輸送部隊と治安部隊の指揮を執るユーリがいてそれぞれの報告を受けることに

 

「大分、この地区も安全になった。今、難民を受け入れて色々と仕事をして貰っている。それとローザという元イギリス軍の軍医が病院を開きたいから色々と物資を調達して欲しいと頼まれた。それらは俺たちで何とかするから書類にサインしてくれないか?」

 

「ご主人様、基地の備蓄も潤いました。人形を建造か装備の補充を致しませんか?また、鉄血の活動もやや活発になっております。偵察をした方が良いかと」

 

「そうだな。資料を目を通しておくさ。G36部隊の編制を見直す。治安維持は一旦停止、今後は鉄血の掃討を重視する。あと戦術人形が一人ここに来る」

 

 指示を出し基地を運営する聖真。まだ新人指揮官だが戦闘慣れしており戦術を人形と共にいくつか編み出している。書類を片付けては契約書片手に工廠へ向かう、そこでは人形を新たなに製造する為の機材、人材が配置されスタッフは日夜開発に取り組んでいる。今回はライフル人形狙いで資材を投入し装備の製造を開始して鉄血との戦いに備える。

 

 夕飯前…製造完了の報告を受けてG36と共に工廠へ向かう。製造時間から待望のライフルである為期待が高まる一同。G36を連れ工廠に訪れる、手術台の上に眠るのはワインレッドの髪でスーツに身を包む可憐な少女。やがて瞼を開け分身であるライフルを手に取り聖真の顔を見る。目に何かのコードが流れ彼を指揮官と認識した彼女の第一声は

 

「私の名前はワルサーWA2000。指揮官、私の足を引っ張ったら、承t」

 

「少しお時間を頂くことはできますか?ワルサー?」ギロ

 

「ひっ…あのその」

 

「ありゃありゃ36落ち着いて、ワルサーか?まあこれから宜しく、俺は鬼怒聖真だ」

 

 G36にメンチ…ではなく睨まれたワルサーはビビりながらも聖真と握手する。丁度夕飯の時間帯なので一緒に食事することになった。

 

「あ、あの指揮官…それは?」

 

「ん?あぁ珍しいだろう?俺の得物さ」

 

「刀?」

 

「名前の無い無銘の刀…でもこいつのお陰で今の俺がいるのさ。名前がなかったクソガキの俺を拾ってくれた師匠の贈り物さ」

 

 当時のことを懐かしむ聖真。孤児院から拾われ修業を重ね対等に渡り合えるまで強くなった青春時代。今も手紙

のやり取りは続けているが、ワルサーの歓迎会も兼ねた夕食は終わり静かな夜になる。執務室で明日来る人形の試料を纏める最中、ノックが聞こえる。

 

「いいぞ」

 

「失礼いたします。ご主人様そろそろ終業時刻でございます」

 

「そうか…もうこんな時間か」

 

 執務室から出て寝室へ向かう。本社とは違う広い一人部屋だ、家具はそれなり置いていて私物もそこそこ饅頭は至る所に隠している。

 

「36」

 

「はいなんでしょう?」

 

「そのー毎日起こしにくるの…面倒だろ?部屋は広いからベット追加するか?」

 

「!?あ、いえ、ご主人様が構わないのでしたら是非!」

 

「ああいいぞ」

 

 本人はG36に負担を掛けさせないつもりで言ったつもりだが、彼女は別の意味で捉えたようだ。

 

 

 

 

 

 翌日…業務をこなし昼時になった頃に新しい人形が着任した。

 

「初めまして!20式小銃です!」

 

「お、元気がいいな」

 

「よろしくお願いいたします。お父様!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

「ご主人様…?」

 

「指揮官…?」

 

「セーマ…?」

 

 G36は聖真の眼前に迫り、リーは目を点にし、ユーリは口をパクパクしていた。

 

 

 

 

「ペルシカァァァアアアアアアアアアアアッ!?」

 

 抗議の電話を入れたのは言うまでもない

 

 

 




 次回は街の発展と案山子さんが登場。

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