いちげきひっさつ!   作:モコロシ

1 / 2
鬼滅の刃にどハマりして一番に思いついたのがこれでした。


其の壱 ぐっばい日常

まるで真冬の夜に暖かい家からいきなり外に放り出されたかのような寒さに、ぼんやりと意識が覚醒する。

 

うぅ……と、震えながら布団を探すが見当たらない。時期的には秋に入り始めの頃であり現代の日本ならば未だ残暑が続く季節である筈だ。寝ている間にエアコンでも入れてしまったのだろうか。実家暮らしならば気にも止めなかっただろうが、最近社会人となり一人暮らしを始めた私としては、こんなしょうもない事で電気代を増やす訳にはいかなかった。

 

早くエアコンを消さなければ……ぬぬぬ、なんだか妙に顔がチクチクするんだけど……。枕も掛け布団も蹴り捨ててしまったらしく、本当に外で寝ているような気分だ。直風が当たってエゲツないほど寒い。

 

リモコンを探そうと身体を起こしながら目を開ける……開ける……あれ、私ほんとうに目開けてる? 開けても閉じても景色に全く変化が生じない。

 

私は明かりがないと怖くて眠れないベイベーの為、周りが見えるくらいにはライトを点灯させて寝ているのだが……まさか、こちらも寝ている間に消してしまったのだろうか。エアコンが付いて、ライトが消えたので差し引きゼロってか。アホか、圧倒的にマイナスだわ。

 

完全に目が覚めた。流石に寒過ぎる。そしてようやく気付いたのだがここ、完全に外である。チクチクしてたのは当たり前の様に雑草であり、寒いのは刺すような、恐らく北風であろうものが直で当たってた為。外なので布団も枕もないのも当たり前で、リモコンも勿論当たり前に存在しない。始めの比喩表現は全く比喩表現になっていなかったようだ。やだ、私の感覚にぶすぎ……?

 

てかさむいさむいさむいしぬしぬしぬ!

 

失敗した! 何の対策も取る前に身体から熱が奪われてしまった。現在の不可解な現象を突き止めるのは後だ。とにかく暖かい所に避難しなければ。

 

しかし今は夜中でしかも曇っているらしく、明かりの“あ”の字も無いこの場所では移動すら困難だ。電灯も無いということは人っ気も無いドドドど田舎だということ。しかもどのような地形なのかも分からないので一歩一歩手探りで周囲を確認するしか方法がない。体もいつもより小さく感じる。寒さと恐怖で縮こまってしまったのだろうか。

 

恐る恐る歩みを進める。何も見えないというのは思う以上に恐ろしい事である。なにせ人間が外部から受け取る情報の八割が視覚と言われており、その一切を封じられているのだ。そして言った通り私は暗いのが苦手だ。こう見えて現在、悲鳴をあげるのも我慢してるし、持てる全ての勇気を出涸らしまで絞りながら足を動かしている。現在進行形で膝が大爆笑中だ。寒い筈なのに嫌な汗が止まらない。

 

しばらく歩いたが、特に障害物も見当たらない。強いて言うならば短い雑草が無制限に生え散らかしている様子から、どうやらここは何処かの原っぱの様な場所らしい。進んでいると傾斜が出て来始めたのでやっぱり山の中かもしれない。

 

段々と目が慣れてきた。ぼんやり周囲を確認出来るようになって分かったが、ここは山道だ。寒さと恐怖を必死に誤魔化しながら道沿いを歩いていると洞穴のような物を発見した。出来れば人が住んでる家を見つけたかったが、贅沢言ってられない。風を凌げるだけまだマシだ。

 

中に入り眼を凝らしながら辺りを確認してると、布らしきものを何枚か見つけた。他にここを使っている人がいるのか、もしくは捨てたか忘れたか。どれだろうと構わないが、ありがたく使わせてもらおう。

 

しばらく布を被り身体を温める。なかなか震えが治らない。むしろ強くなる一方だ。きっと少し余裕が出来た所為で現在の状況を把握し始めたからだ。身を縮こませて顔を膝に押し付ける。誰が見ているわけでも無いが、今の表情を他人に見せるのは気が引ける。

 

「ぐすっ、すんっ……どう、して……っ」

 

小さく呟いた筈が意外と響き、そんな事にも恐怖してしまう。必死に口を押さえて声が漏れない様にする。しかし寒さと恐怖による震えで手に隙間ができ、嗚咽する声が漏れてしまう。

 

ここは山道だ。もしかすると洞穴の奥の方に何か(・・)がいるかもしれない。幽霊とか妖怪とか、そんな超常現象的な事は全く信じていなかったが、今の私の状況が既に超常現象だ。何が出るか分かったものではない。仮に居なくても熊や猪などの動物には注意して置かなければならない。まぁ、自衛手段なんて何もないのだけれども。

 

ここはまだ入り口付近なので辛うじて視覚は機能しているが、奥の方はきっと何も見えない。正真正銘の闇の世界だ。蛍光灯やライターが如何に優れた文明の利器なのか思い知らされる。

 

あまりにも不可思議で理解不能な恐怖により視界がぼやける。泣いてなどいない。これはただの汗だ。手の甲で拭うがおさまる気配がない。私はこの後どうなってしまうのだろうか。知らない土地で1人放置され、食べ物も飲み物も存在しない。私にサバイバル知識なんて皆無だ。最悪雑草でも食べるし樹液も啜るが、毒なんてものがあったら一発で死ぬ自信がある。なんなら自信しかないまである。

 

そしてこの状況で初めて声を出して気が付いた事がある。何故か声が幼い。小学生くらいだろうか。しかし思い返してみると視界もいつもより相当低かったように感じる。手もよく見るといつもより小さい。子供特有のプニプニとした柔らかな手がそこには存在した。身体が縮こまっていただけかと思っていたが、物理的に小さくなってしまったようだ。

 

どうしてこの様な状況に陥ってしまったのか。考えても考えても理解に及ばない。夢というのも捨てられないが、その線は薄いと言わざるを得ない。この寒さと痛さ、そして恐怖は確実に現実だ。裸足なので霜焼けしそうな指先に加え足の裏も散々石や枝を踏んだせいで怪我をして痛い。夜明けが後どのくらいで来るのか分からないし、食べ物も暖房器具もない。絶望的な状況だ。私はこのまま死んでしまうのだろうか。

 

……だめだ、考えが悪い方ばかりに向いてしまう。私の悪い癖だ。気が滅入るといつも悲観的な事ばかり考えてしまう。気をしっかりと持て! お腹は減っていないし、布もあるから寒さもなんとかしのげる。夜が明けたら山を下って警察署を探せば良いだけだ。一人暮らしなので捜索隊も出ないだろうし、自分でこの状況を伝えるしかない。いきなり山に放置されたと言っても相手にされなさそうだが、まぁどうにかしよう。

 

 

「──あぁん? 良い匂いがすると思えば、美味そうな女の餓鬼がいるじゃねぇか」

 

 

人の声だ! 洞穴の奥の方から聞こえる。一人で非常に心細かった私は思わず安堵し、ばっと声が聞こえる様へと顔を向けた。

 

 

 

“死”を見た。

 

 

 

振り向いたその先には、嘲る笑みをたたえた人型のなにか(・・・・・・)が私を見下していた。

 

姿形は限りなく人に近い。しかし肌は全体的に紫色で、身体中に歪な長いツノが疎らに生えており、まるで御伽噺に出てくる“鬼”そのものであった。瞳に文字が書かれているようにも見えるが詳しくは分からなかった。

 

 

──逃げなければ!

 

 

考えるより先に身体が動く。殆ど無意識に近かった。脊髄反射というやつだろう。動物としての生存本能が働いたのだ。

 

逃げろ、逃げろ、逃げろ! 逃げなければ私は──死ぬ!

 

鬼なんてものがこの世に存在する筈がない。理性はそう言っているが、本能はただひたすらに逃げろと喚き叫んでいた。

 

 

あれは本物の鬼だ。

 

生物ならざる者だ。

 

 

──人を喰らう妖怪だ。

 

 

コスプレなんてそんなチャチなもんじゃあ断じてない。寒さや痛みなど二の次だ。こんなにも寒い夜なのに妙に身体が熱く感じる。

 

「はぁっ……は、ぁ……げほっ! ……っう、はぁ……っ」

 

脇腹が痛もうとも足の裏に小石や枝が刺さろうとも、足が棒になるまで走り続けた。小さくなったからか一歩一歩の幅が狭く、あまり距離は稼げなかったように思える。たったの数十分が数時間にも、果ては数日にも錯覚させられる。それ程必死に走ったのだ。

 

いつのまにか山の麓まで辿り着いていた。時刻は依然真夜中。朝日が昇る気配さえ感じない。

 

「はぁー、はぁー、すぅー……げほっげほっ」

 

私は息を整えながら周囲を見回す。どうやら無事に撒けたようだ。汗をかいた所為で走る前以上に体温が北風に奪われる。喉が渇いた。布も置いてきてしまったので拭う物も存在しない。しかし、もしもあそこで布に気を取られていたならば、恐らく私の命はあそこで終わっていただろう。そんな確信がある。

 

 

「──鬼ごっこは終わりかぁ?」

 

 

すぐ耳元で囁かれる。すぐさま距離を取ろうとするが腕をがっしりと掴まれてしまった。振り払うもビクともしない。

 

「安心しろ。すぐには殺さねぇよ。指一本、腕一本と四肢を捥ぎながらゆぅっくりと喰らってやるからなぁ。髪の毛一本も残さねぇぜぇ? 俺は行儀がいいんだ。ヒヒヒ、ふひははへひゃひゃ!!」

 

狂ったように嗤う。事実、狂っているのだろう。この鬼と思わしき存在も、目が覚めてから立て続けに発生する訳の分からない現状も。そして私はこれから、この鬼の宣言通りに無様に喰われながら死に絶えるのだ。

 

 

──ふざ、けるな……ッ!

 

 

なんだそれは! なんなんだこれは!! 私が一体何をした!? どうしてこんな目に遭わなければならないんだ!

 

納得いかない! 何もかも納得出来ない! 急に外に放り出された事も、小さくなった事も、寒く痛い思いをしなければならない事も! そして何より一番納得出来ないのは──

 

「……で……るかっ……!」

 

「あん? 何か言ったか?」

 

 

「死んでたまるかと、言ったんだ!!!」

 

 

そうだ! 何故私が死ななければならないのだ! しかもこんな訳の分からないトイレに吐き捨てられた痰カス以下のゴミに、だ。私はまだまだやりたい事がたくさんあるんだ! 洋服だって買いたいし友達とだってまだまだ遊び足りない。学校の後輩にも会いたいし旅行にも行きたいし見たいアニメや漫画も山程ある! こんな知らないところで、しかも誰にも知られずにひっそりと死んでやるものか!

 

──刹那、私の背後から溢れんばかりの光が満ち溢れた。その光は柔く暖かく、そして包み込むような輝きであった。まるで太陽(・・)のような……。

 

「な、なに……あ、暖か──」

 

鬼は光が当たった箇所から蜘蛛の巣を張るように身体中にヒビが入り、やがて為す術もなく灰と化した。そしてその灰は北風に連れ去られて行き、その場にはチリひとつとして残る事もなかった。

 

残ったのは呆然と立ち尽くす私ただ1人だけであった。




はい、波紋ではなく幽波紋の方なのでした!
主人公は絵が苦手という偏見でジョジョを見た事がないので代わりにここで紹介します。

スタンド名:サン

破壊力 - B
スピード - E
射程距離 - A
持続力 - A
精密動作性 - E
成長性 - E

タロットカード大アルカナ19番目のカード「太陽」の暗示を持つスタンド。本体はアラビア・ファッツ。 能力は原作見れば分かりやすいぞ!

尚、続くかどうかは未明。














〜そのころの無限城〜

無惨「ふむ、そういえば最近下弦の弐まで昇格させたあれはどうしているか。彼奴は最近の下弦にしては新進気鋭の有望な鬼であった。妓夫太郎や堕姫との交代も有り得るやもしれん。……少し様子を確認するか」

『キングストーンフラーーッシュ!!!!』

無惨「ぎゃあああああああ!! 目がァ! 目がァアアアアアアアアアア!!!!」
鳴女「き、鬼舞辻様!? いかがなさいましたか!?」
無惨「ぐおおおおお……! くっ、な、なんだったのだ今のは一体……」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。