魔法科高校の劣等生 零の物語   作:Touli

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お久しぶりです。Touliです。
3ヶ月とちょっとぶりですね。
高校卒業だったり、就職だったり、忙しかったので。(言い訳)
新型コロナウイルスの影響で卒業式も簡潔ものになったりしたんですがね。
みなさんも、コロナに感染しないように自宅で過ごしましょう!
ちなみに、私は「Amazon prime」登録しました。ありゃいいよ。
オススメです。


入学編 XII

「1010ms。エリカちゃん、一気に40も縮めたわよ!本当にもう一息!」

「よ、よーし!なんだが、やれる気になってきた!」

「1016ms。迷うな、レオ。的の位置は分かっているんだ。いちいち目で確認する必要はない」

「わ、分かったぜ。よし、次こそは!」

達也と美月が計測器をリセットしている傍らで、目を閉じる、腕を振り回す、それぞれの方法で精神を集中し、気合いを高めるエリカとレオの2人。

その時、背中から声がかかった。

「邪魔するぞー」

「陸久くん、深雪にあやな・・・・・・と、光井さんと北山さんだっけ?」

「エリカ、気を逸らすな。すまん、次で終わりだから、少し待ってくれ」

「お、そうか。悪かったな」

「よし、2人とも、これで決めるぞ」

声を張り上げたわけではない、が、有無を言わせぬ口調。

「応!」

「うん、これで決める!」

2人は気合いを漲らせて、CADのパネルへ向かった。

 

「ようやく終わった〜」

えりかの歓声が課題の終了を告げる金の音となった。

「ふぅ・・・・・・ダンケ、達也」

補足だが、魔法科高校のCAD端末は手をかざして掌紋を読み込ませれば、自動で出た結果が記録される。だから、課題をサボってもすぐにバレるわけだ。掌紋を読み取ってから、他の人にやらせることも出来ないよう、プログラムされている。

「2人とも、お疲れ様。お兄様、ご注文の通り揃えて参りましたが・・・・・・足りないのではないでしょうか?」

「いや、もうあまり時間もないし、このぐらいが適量だろう。深雪ご苦労様。陸久にあやなも助かった。光井さんに北山さんもありがとう。手伝わせて悪かったね」

既に顔を合わせれば言葉を交わす程度の間柄にはなっていたが、俺たちを挟んだ知り合いであって、達也にとってはまだ友達未満の2人だ。彼の口調がやや恐縮気味だったのも、無理はない。

「いえ、この程度のこと、なんでもないです!」

「大丈夫。私はこれでも力持ち」

予想外に力の入っている答えを返したほのか。

本気なのか冗談なのか判断に迷う答えを返した雫。

 

こりゃ、ほのかは達也に惚れてるなあ。たしか、光井は光のエレメンツだったの家系だったか。可哀想に。よりによって相手が達也とは。

ここでエレメンツとは何か説明しておこうと思う。

 

エレメンツとはこの国で最初に計画されたプロトタイプの魔法師

現代魔法の四系統八種の分類・体系化が確立する前

地 火 水 風 雷 光 などの属性分類に基づき、開発がアプローチされた。

しかし権力者は未知数な要素の多い魔法使いや魔女の反乱を迷信的に恐れ遺伝子レベルにおいて魔法の才能以外にあるものの付与を試みた。

ーそれは主への絶対服従。

性格が遺伝するか否かは今尚答えの出ていない課題だが

現にエレメンツの末裔には高確率で「依存癖」が観測されている

忠誠心とも言えるが彼らもまたそれを『遺伝子に刻まれた宿命』と考えている。

 

「深雪さん達のクラスでも同じような実習が行われているんですか?」

「多分、美月たちと変わらないと思うわ。ノロマな機械をあてがわれて、テスト以外では役に立ちそうもないつまらない練習をさせられているところ」

達也、あやな、陸久を除いた5人が、ギョッとした表情をを浮かべた。

淑女を絵に書いたような外見にそぐわない、遠慮のない毒舌に。

「あ、そうだ。ねぇねぇ、深雪と陸久くんも参考までに、どのくらいのタイムかやってみてくれない?」

「えっ、わたしが?」

自分を指差し、目を丸くする深雪に、エリカはわざとらしく、大きく、頷いた。

「いいんじゃないか」

苦笑いを浮かべながら頷く兄を見て、

「お兄様がそう仰るのでしたら」

「よし、やろうか」

機械の一番近くにいた美月が、2つの計測器をセットする。

深雪はピアノを弾くときの様に、パネルに指を置いた。

陸久はパネルに覆い被さるように手を置いた。

計測、開始。

余剰想子光が閃き、

美月の顔が強張る。

「・・・・・・深雪さん、320ms。陸久さん、316ms・・・・・・」

「えっ・・・・・・・?」

「何回聞いてもすごい数値よね・・・」

「2人の処理能力は、人間の速度の限界に迫っている」

ため息を漏らしたのは、ほのかと雫も同じ。

ただ、その兄、従姉だけが驚いていない。

「やはり、お兄様の調整したCADでないと、深雪は実力を出せません」

「う~ん。やっぱ、気持ち悪いな」

ここは深雪と同じくらいの結果と反応にしておけば自然だろう

「まあ、そういうな。そのうち学校側に掛け合って考えてもらうから」

 

 

『全校生徒の皆さん!』

ハウリング寸前の大音声が、スピーカーから飛び出した。

「きゃあ!」

「ビックリ・・・」

ほのかに比べると全然驚いていないように感じる雫だが

『ーー失礼しました。全校生徒の皆さん!僕達は学内の差別撤廃を目指す有志同盟です』

「・・・有志・・・ね・・・」

スピーカーから出た男子生徒の声を聞いて陸久はシニカルに呟いた。

『僕達は生徒会と部活連に対し、対等な立場における交渉を要求します』

「ねぇ、行かなくていいの?」

雫が聞く。

「委員長と会長から連絡来るだろう。」

『ブーブー』連絡が来た。噂をすればなんとかって。

「あやな、深雪、行くぞ」

「はい、陸久さん」

「うん。ほのかちゃん、雫ちゃん、また後でね」

 

 

「あ、お兄様」

「深雪?お前達も呼び出しか?」

「ああ、委員長から、放送室前まで行くようにと」

途中で達也と合流し、放送室へと向かう。

「これは、ブランシュの仕業でしょうか?」

「団体は特定できないが、その手の輩には違いないだろうね」

「人の弱いところにつけ込むなんて最低だね」

「おしゃべりはそこら辺にして、とりあえず急ごうか」

放送室前には、既に摩利と克人と鈴音、そして風紀委員と部活連の実行部隊が顔を揃えていた。

「遅いぞ」

「すみません」

ポーズだけの叱責にポーズだけの謝罪を返す達也。

「現在の状況は?」

話を戻すため俺は聞いた。

「マスターキーを持ったまま立てこもっている」

「明らかな犯罪行為じゃない」

あやなが言った。

「その通りです。だから私たちも、これ以上彼らを暴発させないように、慎重に対応するべきでしょう」

「こちらが慎重になったからっといって、それで向こうの聞き分けが良くなるかどうかは期待薄だな。多少強引でも、短時間の解決を図るべきだ」

 

どうやら、みんな方針が違うらしい

「十文字会頭はどうお考えなんですか」

達也の質問に意外感をたたえた視線が返ってきた。

しかし、会頭は答えた。

「俺は彼らの要求する交渉に応じてもいいと考えている。元より言いがかりに過ぎないのだ。しっかりと反論しておくことが、後顧の憂いを断つことになろう」

「ではこの場は、このまま待機しておくべき、とお考えですか?」

あやなが問う。

「それについては決断しかねている。不法行為を放置すべきではないが、学校施設を破壊してまで性急な解決を要するほどの犯罪性だとは思わない。学校側に警備管制システムから鍵を開けられないかどうか問い合わせてみたが、回答を拒否された」

一礼して引き下がった達也は内ポケットから携帯端末を取り出して、音声通話モードを立ち上げた。

コールは5回で繋がった。

「壬生先輩ですか?司波です。・・・それで今どちらに?」

ギョッとした視線が達也に集まる。

「はぁ、放送室にいるんですか。それは・・・お気の毒です」

直後、顔を顰めたのは、ボリュームコントローラーの制御が間に合わない大声で返された所為か。

「いえ、馬鹿にしてるわけではありません。先輩も、もう少し冷静に状況を・・・ええ、すみません。それで、本題に入りたいんですが」

周りにいる数人が聞き耳をたてる

「十文字会頭は、交渉に応じると仰っています。生徒会長の意向は未確認ですが・・・いえ、生徒会長も同様です」

鈴音のジェスチャーで達也はすぐに言い直した。

「ということで、交渉の場所やら日程やら形態やらについて打ち合わせしたいんですが。ええ、今すぐです。学校側の横槍が入らないうちに。・・・いえ、先輩の自由は保証します。我々は警察ではないんで、牢屋に閉じ込めるような権限はありませんよ・・・では」

達也は苦笑しながら、通話を切った。

「すぐに出てくるのか?」

「ああ、壬生先輩はそう仰っていた」

「どうして、達也くんが壬生の番号を知っているんだ?」

「待ち合わせの為にとプライベートナンバーを教えられていたのが

思わぬところで役に立ちましたね」

「手が早いな、君も・・・」

「誤解です」

「それはともかく、態勢を整えましょう」

「態勢?何を言ってるんだ?陸久くん」

「中のヤツらを拘束する態勢ですよ。鍵まで盗み出す連中ですし、CADは持ち込んでいるでしょうし、それ以外に武器を所持していてもおかしくありません」

「達也くんはさっき自由を保障するという趣旨のことを言っていた気がするのだが」

「達也は先程「『先輩の』自由は保証する」と言いました。よね?」

「それに俺は、風紀委員を代表して交渉しているとは一言も述べていませんよ」

摩利だけでなく、鈴音、克人までもが、呆気に取られてる中で

この場にいる2人の例外の内、1人が2人を軽く非難した。

「も〜、悪い人だね。2人は」

「今更だな、あやな」

「フフ、そうですね」

ただしそれは、楽しげな口調を伴っていた。

「でも、お兄様?壬生先輩のプライベートナンバーをわざわざ端末に保存されていらした件については、今更ではありませんから、後ほど詳しくお話を伺わせてくださいね?」

 

 

「どういうことなの、これ!」

案の定と言うべきか当然と言うべきか、達也は紗耶香に詰め寄られていた。

放送室を占拠していたのは、彼女を含めて5人。

予想通り、CADを所持していたが、それ以外の銃器、刃物は持っていなかった。達也と陸久から見れば、覚悟がまるでなっていないが、悪いことをしているという意識がないのだから、中途半端になってしまうのも当たり前かもしれない。

紗耶香以外の4人は風紀委員によって拘束されていたが、紗耶香はCADを没収されただけにとどまった。

摩利が達也の名誉に配慮した結果だった。

紗耶香の手は達也の胸元に伸びており、その手首を達也の手に掴まれている。

「あたしたちを騙したのね!」

「司波はお前を騙していない」

重く、力強い響きに、紗耶香の体がビクッと震えた。

「十文字会頭・・・」

「お前たちの言い分は聞こう。交渉にも応じる。だが、お前たちの要求を聴き入れる事と、お前たちの執った手段を認める事は、別の問題だ」

紗耶香の態度から攻撃性が消えた。

「それはそのとおりなんだけど、彼らをはなしてあげてもらえないかしら」

「七草?」

「真由美ちゃんどういうこと?」

「壬生さん1人では、交渉の段取りも打ち合わせもできないでしょう。当校の生徒である以上、逃げられるということも無いのだし」

真由美の言葉に、紗耶香は反射的に噛み付いた。

しかし真由美は、直接には紗耶香の言葉に反応しなかった。

「生活主任の先生と話し合ってきました。今回の件の措置は、生徒会に委ねるそうです」

遅れてきた事情と、彼らが現在置かれている立場について説明した真由美だった。

「壬生さん。これから貴方たちと生徒会の、交渉に関する打ち合わせをしたいのだけど、ついて来てもらえるかしら」

「ええ、構いません」

「十文字くん、お先に失礼するわね」

「承知した」

「摩利、ごめんなさい。何だか、手柄を横取りするみたいで気が引けるのだけど」

「気持ちの上では、そういう面も無きにしも非ずだが、実質面では手柄のメリットなど無いからな。気にするな」

「そうだったわね。じゃあ、達也くんたち4人は今日は帰ってもらっていいわ」

そう言って真由美は去っていった。

 

 

陸久、あやな宅

「ねぇゼロくん、どう思う?」

「ん?何が?」

「真由美ちゃんと、二科生の討論会。何も起きなければいいんだけど」

「ああ。ブランシュが関わってるんだ、なにか行動を起こしてきてもおかしくはない。その時になってみないと分からないけど《術師増幅(マギカ・ブースター)》を使うことを考えておいた方がいいかもしれないな」




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