魔法科高校の劣等生 零の物語   作:Touli

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入学編 XVI

「《パンツァー》!!」

「レオ、ご苦労さん」

「何の。チョロイぜ」

「陸久くんのおかげだからね。あんたの素の実力じゃないから」

これからなのにへばってもらっちゃ困るので《術師増幅(マギカ・ブースター)》を使っている。

「うるせえ、分かってるよ。ありがとな、陸久。」

「ああ。それとエリカ、あくまで対象者の潜在的能力を底上げする魔法だから、全然可能性はあるよ」

いきなり、時速100キロ超で悪路を走行中の大型車全体を、衝突のタイミングで硬化するというハイレベルな魔法を今の実力で要求されて出来ないのは仕方がない。しかし、将来的にできるようになる可能性はぜんぜん否定できない。

「司波、お前が考えた作戦だ。お前が指示を出せ」

克人に委ねられた権限と責任に、達也は尻込みせずに頷いた。

「レオ、お前はここで退路の確保。エリカ、レオのアシストと、逃げ出そうとするヤツの始末」

「・・・捕まえなくていいの?」

「余計なリスクを負う必要は無い。安全確実に、始末しろ。会頭は桐原先輩と左手を迂回して裏口へ回ってください。俺と深雪、陸久とあやなは、このまま踏み込みます」

「分かった」

「まあいいさ。逃げ出すネズミは残らず斬り捨ててやるぜ」

「気をつけてな」

「無茶しちゃダメよ」

居残りを指示されたのに、レオも、エリカも、不平不満を言わないなんていい奴らだな。

「頼んだ!」

 

 

 

「ようこそ、はじめまして、司波達也くん!」

「お前がブランシュのリーダーか?」

「おお、これは失敬。仰せのとおり、僕がブランシュのリーダー、司一だ。」

「司一。国立魔法科大学付属第一高校3年E組卒業。二科生ながらにその優秀さがみられたが、大学進学後中退。その後ブランシュに干渉。リーダーを務め、現在に至る」

「光栄だね。そこまで僕のことを知っていてくれているとは。零令陸久くん」

「どーも」

情報を調べたのは俺じゃないけどね。

『カチャ』達也が銃口を向ける。

「大人しく投降しろ」

「司波達也、零令陸久、お前たちは仲間になるべきだ。二科生と差別され、一科生であるのに仲間はずれ(イリーガルナンバー)として、迫害されている君たちはぁ!!!」

メガネを投げ捨てて、前髪をかき上げて正面から目を合わせる。

「司波達也、零令陸久、我が同志となるがいい」

「意識干渉型魔法、邪眼(イビルアイ)と、称してはいるが、その正体は催眠効果を持つパターンの光信号を、人の知覚速度の限界を超えた間隔で明滅させ、指向性を持たせて相手の網膜に投射する光波振動系魔法。」

「洗脳技術から派生した、催眠術だな。映像機でも出来るやつ。確かこれ、新ソビエトが成立する前にベラルーシが開発した手品だった気がする」

達也の言葉で攻めにさらに追い打ちをかける。

「壬生先輩の記憶も、これですり替えたのか?」

「お兄様、では・・・?」

「紗耶香ちゃんの記憶違いは、不自然なほど激しかった。断られた時は動揺しているだろうから、あんな極端な思い込みに囚われたんだね」

「だが、普通は時間の経過と共に、冷静になっていくものだ」

「・・・この下種ども」

深雪の端正な唇から迸った、怒気。その熱が氷を溶かしたのか。

「・・・貴様、なぜ・・・」

喘ぐように、司一が呻く。その顔には、初めのような恐怖の笑みはない。

あるのは、ただの恐怖といったところだろうか。

「つまらんヤツだな」

達也はもはや、侮蔑を隠そうとしなかった

「眼鏡をはずす右手に注意を引きつけ、CADを操作する左手から目をそらす、そんな小細工が俺に通用すると思ったか」

「種が分かっているマジックのほどつまらないものはないな」

「バカな・・・そんな真似が・・・貴様、一体・・・」

「ところで、二人称は君、じゃなかったのか?大物ぶっていた化けの皮が剥がれているぞ」

「う、撃て、撃てぇ!」

威厳を取り繕う余裕はなかった。

恐怖という感情に駆られて、司一は射殺を命じた。

だが、

「な、何だこれはっ?何が起こったんだ?」

弾丸は一発も発射されなかった。

パニックがフロアを満たした。

床にはバラバラに分解された、拳銃、サブマシンガン、アサルトライフルの(たぐい)のものが散乱している。

男たちが引き金を引こうとした瞬間、彼らの武器は、部品に戻っていた。

パニックの中、それを鎮めようともせずに、司一が逃げ出した。

「達也、追え」

「分かった」

達也は何もせず、司一が逃げて行った通路へたどりついた。

そのまま彼を通していれば、残されたブランシュのメンバーは、捕まるだけで済んだはずだ。

だが、メンバーの1人が、ナイフを手に達也の背に襲い掛かった。

「愚か者」

「ほどほどにな」

「はい、お兄様」

 

「お前たちは、運が悪い」

だが、命じ、裁く、権威と共にあるその言葉遣いに、いささかの違和感もなかった。

男たちの顔が、恐慌と、絶望に染まる。

「わたしはお兄様ほど、慈悲深くはない」

白い霧は、首の下まで這い上がった。

「祈るがいい。せめて、命があることを」

男たちの頭頂まで達した冷気が、一気に、厳しさを増した。

《ニブルヘイム》

声なき断末魔の絶叫が、霧の中に満ちた。

 

「深雪やりすぎだ」

「申し訳ありません」

 

ドンドンドン!ドアをノックする音が響く。

「おい、おい、どうした!」

「どけ!」

ドアを破って、ブランシュの残党が乗り込んできた。人数は6人か。

「お、お前たち、何をしている?!」

「まだいたんだ。今度は私が・・・」

「いや、あやないいよ。俺がやる。」

「ゼロくん?わかった」

あやなを手で制す。

「餓鬼がかっこつけやがって!」

 

「非魔法師のキャストジャミングなど効かん」

どこかで聞いたようなセリフだが。

「ここは、寒いだろう?温めてやるよ。」

《ムスペルスヘイム》

 

「「「「「「ぎゃあああああ」」」」」」

「喜んでくれてなによりだよ」

「ゼロくんも少しやりすぎじゃない?」

「うん。八つ当たりだ」

 




入学編はあと1話で終わる予定です。
その後は九校戦に入ります。
よろしくお願いします。

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