魔法科高校の劣等生 零の物語   作:Touli

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超久しぶりの投稿です。
誤字脱字等あったらまた教えてください。(弱気)




九校戦編
九校戦編 Ⅰ


魔法科高校の定期試験は魔法科高校の定期試験は魔法理論の記述式テストと魔法の実技テストにより行われる。

一方、語学や数学、化学、社会学等の一般教科は、普段の提出課題によって、評価される。魔法師を育成する為の高等教育機関なのだから、魔法以外で競わせるのは余計なことだ、と考えられているのだ。

 

そして、成績優秀者は学内ネットで氏名を公表される。

理論・実技を合算した総合点による上位者は

 

1位 零令陸久 

2位 司波深雪

3位 零宮あやな

4位 光井ほのか

5位 北山雫

 

 

 

だが、理論のみの点数になると、大番狂わせが起こった。

 

1位 司波達也 零令陸久

2位 司波深雪

3位 零宮あやな

4位 吉田幹比古

5位 光井ほのか

6位 北山雫

 

17位 柴田美月

20位 千葉エリカ

32位 西城レオンハルト

となった。

普通なら、実技ができなければ理論も十分理解できない。感覚的に分からなければ理論的にも理解することが難しい概念が存在するからだ。

それなのに、二科生が2人もトップ5に。

これだけでも前代未聞だが、更には達也と陸久の場合、平均点で2位以下と10点以上引き離したダントツの1位だったのだ。

それもそうだろう、2人はこの時代を代表する魔工師『トーラス・シルバー』なのだから。

このことについては、おいおい説明していこう。

 

場所は1年A組

 

「なんで?なんでだよ?!」

「ったく、どんなズルをしたんだよ?」

「実技の感覚が分からないのに理論ができるはずがない。しかも4位も二科生なんて」

 

 

達也たち二科生が上位に入ったことを嘆いている、一科生。

そこに雫の鶴の一声。

「成績が良かった相手を貶めて何か得るものがある?授業の機会に恵まれない二科生が、自分より結果が良かったことには貶すより自分の努力の足りなさを、恥じるべきだよ。私も含めてね」

騒いでいた生徒たちは雫の言葉に何も返せなかった。

 

 

 

 

 

試験が終了してから、陸久と達也は毎日、放課後を風紀委員会本部で過ごしていた。

夏休みが終わればすぐ、生徒会長選挙。

新しい会長が決まれば、新たに選任された風紀委員の互選により新しい風気委員長も決まる。

伝統的に、といっても悪しき伝統だが、風気委員の引継ぎまともに行われた試しはない。ほとんど整理されていない活動記録と共に丸投げ、大体がこのパターン。

それでも摩利は1年の頃から委員として活動していたので、引継ぎなしでもそれほど困らなかった。

しかし、彼女が次期委員長にと目をつけている2年生は風紀委員経験がないので、できるだけ困らないような引継ぎをしてやりたいと摩利は考えていた。

その為の資料作りを、2人に丸投げして。

「なんだか自分たちがお人好しみたいですね」

「・・・・・・」

達也の言葉には同感だが

「今回は君たちのお人好しな人格に感謝だな」

「しかし、随分前もって準備するんですね」

「九校戦の準備が本格化すれば、資料作りの時間なんて取れなくなくなるからな。メンバーが固まったら出場競技の練習も始まるし、道具の手配、情報の収集と分析、作戦立案、やることは山積みだ」

「九校戦はいつから開催されるんでしたっけ?」

「8月3日から12日までの10日間だ」

「結構長丁場ですね」

「んっ?観戦に行ったことがないのか?」

「ええ、夏休みは毎年野暮用で忙しかったですから」

「陸久くんは?」

「俺が観に行けるわけないでしょう」

「っ!すまない。それもそうか」

「いいえ、気にしないでください。俺には関係ないでしょうし」

そうどうせ運動会みたいなものだろう。観戦してればいい。

「関係ない?何を言っているんだ?陸久くんも出場するんだぞ」

「へ?どういうことです?」

「入試同率首席、試験の結果も1位。出さないわけにはいかないだろう。勝ちに行くんだ。ルールを要約したパンフレットがあるんだが、見るかい?」

「ありがとうございます」

そう言って、受け取ったパンフレットに目を通す。

「今年も順調にいけば当校が優勝なのだがな。」

摩利は困った顔でそういった。

「何か、不安材料が?」

「まあな。選手の能力面に不安はない。新人戦の順位も加算されるとはいえ、大きく転けなければ、本戦のポイントで勝てるだろう。不安要素があるとすれば、エンジニアの方か」

「エンジニア?CADの調整要員のことですか?」

「ああ。九校戦の公式用語では、技術スタッフと言うんだがね。今の3年生は選手の層に比べてエンジニアの人材が乏しい。真由美や十文字はCADの調整も得意だから不自由はないだろうが・・・」

どうやら摩利は調整が苦手らしい。

 

 

夜。あやなをバイクの後ろに乗せ走り出す。行き先は九重寺。今日は達也と深雪が行くらしいから、紹介してもらおうということだ。

「九重八雲、どんな人だろうね」

「達也によると、深雪に手を出そうとする変態だそうだ」

「え、お姉ちゃんも手を出されちゃうのかな。出されちゃったらどうする?ねぇ、ゼロくん?」

「ああ、今日は多分ない。今日は『ミラージ・バット』の練習をするらしいから」

「へえ、そうなんだ」

「もうすぐ着くよ」

 

九重寺

 

「さっきぶり、達也」

「ああ、来たのか。陸久、あやな」

「深雪ちゃん、さっそくやってるんだ」

「ああ、『アイスピラーズ・ブレイク』は強引にやっても勝てるだろうが、「ミラージ・バット」は「空中に浮かぶ立体映像の光球をバトンで叩き割る」というアクションが必要になる競技だ。楽観視していいものではない」

「それもそうだね」

「っ!!!」

急に後ろから何者かからの攻撃。

降ろされた手刀を左手で払い、相手のみぞおちに拳を当てる。

「いいね。合格だ。僕はこの九重寺住職、九重八雲だ」

「初めまして、『今果心』九重八雲殿。零令陸久です」

「零宮あやなです。お会いできて光栄です」

2人が挨拶をすると、どうやら歓迎してくれたようだ。

「『イリーガルナンバーゼロ』君たちはとても興味深いね」

「恐縮ですが、お弟子さんにストーカーさせるのは、いただけませんね?」

「なんのことだい?」

「最近、背後をつけさせていたでしょう?今もほら」

「おや、遥クン」

その気配に、八雲が気安く声を掛けた。

その名にはここにいる全員覚えがあった。

暗闇から、ゆらゆら揺れる明かりの中へ歩み出てきた、深雪やあやなよりも少し大人びたシルエットのその人物は、魔法科大学付属第一高校カウンセラー、小野遥。

深雪と同じような暗色のツナギを着ている為か、胸や腰の辺りが随分強調しているように感じるが。

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。特に達也くん。彼女は僕の教え子だ。」

「司波くんのように親しく教えていただいたわけではありませんけど」

彼女の声色は闇に溶け込む今の不穏な恰好に似合わぬ、軽くお道化たものだった。

「それで彼女は何者なんですか?」

「君ならもうわかっているんじゃないかい?」

「大体の推測なら、陸久は?」

「ああ、軍関係者ではないのなら、公安(警察省公安庁)か、内情(内閣府情報管理局)だろう。それ以外だと外国のスパイになるから。なぜ一高にいるのかは分からないが」

「うん。2人とも見事な推測だねえ。けれど」

遥が続いた。

「私が公安のスパイというのは事実だけど、カウンセラーは偽装じゃないわよ。時間的な前後関係でいえば、カウンセラー資格を目指していた私に今の上司が接触してきて第一高校に配属になったあと秘密捜査官になった、という順番。先生の教えを受けたのは2年前から1年間のことだから、達也くんの方が兄弟子になるわね」

「それにしては、見事な隠形ですが」

「小野先生はBS魔法師ですよね」

達也の疑問に対してあやなが答えた。

「そっか、零令くんと零宮さんは視れるのよね。」

「不快にさせたのなら、謝ります」

陸久は頭を下げようとしたが、遥はそれを止めた。

「ううん、やめて頂戴。確かにその肩書はあまり好きじゃないんだけどね」

 

 

 

 

 

 

 

魔法科大学付属高校では夏の九校戦は秋の論文コンペティションに並ぶ一大イベントだ。

だが、そのイベントにあたり、いくつかの問題が挙がる。

「一番の問題はエンジニアよね・・・」

真由美がぼやく。

「まだ、数が揃わないのか?」

摩利の問いかけに、真由美は力なく頷いた。

「ウチは魔法師の志望者が多いから、どうしても実技方面に優秀な人材が偏っちゃってて・・・今年の3年生は、特にそう。魔法工学関係の人材不足は危機的状況よ。2年生はあーちゃんとか、五十里くんとか、それなりに人材がいるんだけど、まだまだ頭数が足りないわ・・・」

「五十里か・・・・・・あいつも専門は幾何学の方で、どちらかといえば純理論畑だ。調整はあまり得意じゃなかったよな」

「現状はそんなこと言ってられないってかんじなの」

生徒会長と風紀委員長である2人が揃ってため息をついているという光景事態の深刻さを物語っていた。

「私と十文字くんがカバーするっていっても限度があるしなぁ・・・・・・」

「お前たちは主力選手じゃないか。他人のCADの面倒をみていて、自分の試合が疎かになるようでは笑えんぞ」

「・・・・・・せめて摩利が自分のCADくらい自分で調整できるようになってくれれば楽なんだけど」

「いや、本当に深刻な問題だな」

そういって真由美の眼差しから摩利は顔を背けた。

「ねぇ、リンちゃん。やっぱり、エンジニアやってくれない?」

九校戦前の修羅場で、昼休みも生徒会室に釘付けの鈴音にアプローチが飛んだ。が

「無理です。私の技能では、中条さんたちの足を引っ張ることになりますから」

すげなく謝罪された。

深雪と達也はアイコンタクトして達也は腰を浮かせ・・・

「あの、だったら司波くんがいいんじゃないですか?」

「ほぇ?」

真由美が奇妙な声で応答した。

「深雪さんのCADは司波くんが調整しているそうです。一度見せてもらいましたが、一流メーカーのクラフトマンにも勝るとも劣らない仕上がりでした」

真由美が勢いよ良く身体を起こした。最初の気の抜けた返事が嘘のように、真由美の顔に生気が戻った。

「そうか、私としたことがうっかりしてた」

そこに同調する摩利。

「CADエンジニアに一年生が加わるのは過去に例がないのでは?」

「何でも最初は初めてよ」

「前例は覆すためにある」

「進捗的なお二人はそうお考えかもしれませんが、俺は色々と悪目立ちしていますし、嫌がる選手もいるんじゃないですか?」

そういって逃げようとする達也だったが

「達也くんはもう過去の例を色々覆してるよね?」

あやな経由追い打ち。

「私は九校戦でもお兄様にCADを調整していただきたいのですが」

思いがけない深雪の裏切り?により達也の運命は決まった。はずだった。

「それでしたら、条件があります」

「条件?なんだいってみろ」

「陸久もエンジニアとして使ってください」

「そんなのむr・・・」

「陸久の技術力は自分と変わりません。むしろ、思い掛けない発想により驚かされることばかりです」

おい、嘘をつけ。人を巻き込みやって。

「いいんじゃないか」

「ええ、ただでさえ絶対数が少ないんだもの。頼りがいがあるわ」

はぁ、この2人には敵わないとさっき分かったからな。言い訳するだけ時間の無駄だ。

「分かりました。ですが、それでしたら俺の出場種目を『アイスピラーズ・ブレイク』のみにしてください」

「え、どうして?」

「九校戦は生徒の代表だぞ?」

「まぁ、理由はいくつかありますが、一番の理由は名前が名前だからってことですね。出るからには優勝を狙いますが、異端者が何度も出るのは好ましくないでしょう」

 

 

昼食を終えた後、深雪とあやなの2人は山積みになっていたデスクワークに取り掛かっていた。

 

達也は、ショルダーホルスターから銀色のCADを抜き出して、カートリッジのドライブや起動式切り替えのスイッチの他、物理的に可動部分のチェックを始めた。

「あ、今日はCADを持って来ているんですね」

それを目敏く見つけて近寄ってきたのは、さっきまで課題に唸っていたはずのあずさだ。

達也が何となく視線を鈴音の方へ向ける。

達也の声無き声を正確に理解した鈴音は、器用に、眉毛だけで肩をすくめるのと同じ感情表現をして見せた。つまり、今のあずさは手をつけられない状態ということだ。

「ええ、ホルスターを新調したんで馴染ませようと思いまして」

「えっ、見せてもらってもいいですか?」

勢いに負け、達也はCADをホルスターごと渡した。

「うわーっ、シルバーモデルの純正品だぁ。いいなぁ、このカット。抜き打ちしやすい絶妙な曲線、高い技術力に溺れないユーザビリティへの配慮。ああ、憧れのシルバー様・・・」

嬉々して受けとったあずさは、今にも頬ずりそうな勢いだ。

「中条先輩、シルバーモデル、よろしければお譲りしましょうか?」

ここで助け船を出してやると

「本当ですか?」

そのままの勢いでこちらにやってきた。

「えー!ホントですか?」

本当に好きなんだな。

「ええ。家にいくつかあったはずなので、持ってきますね」

「はいっ!ありがとうございます」

「達也もモニターかなんか回してあげたらどうだ?」

「そうだな、今度手に入れたら差し上げます」

「司波くんまで、ありがとうございます」

「ねえ、あーちゃん、それくらいにしたら?2人とも困っているわよ?」

真由美が白熱したあずさをなだめにかかった。

あずさは落ち着きを取り戻し、急に真面目な顔になって、

「じゃあ、もしかして司波くんは、トーラス・シルバーがどんな人かも知っていたりしませんか?」

などと質問してきた。

だが、これは達也にとって答えにくい質問である。

「・・・いえ、詳しいことは何も」

壁際でビーブ音が鳴った。

深雪が使っているワークステーションの、不正操作のアラームだ。

誰にでもミスはあるが、深雪がミスをするのは珍しい。

「深雪さんがミスをするなんて珍しいですね」

「たまたまでしょう」

もちろんたまたまではないのだが

「いくら正体を隠してるといっても、同じ研究所の人たちは知ってるはずですよね?それとも全部1人でやっているのでしょうか?」

「中条先輩はトーラス・シルバーの正体が気になるんですか?」

「気になりますよ。むしろ司波くん、気にならないんですか?トーラス・シルバーですよ?ループ・キャストを世界で初めて実現し、特化型CADの起動式展開速度を20パーセントも向上させ、スイッチの誤認識率を3パーセントから1パーセント未満へ低下させた、トーラス・シルバーですよ?しかも、そのノウハウを惜しげもなく公開し、独占利潤よりも魔法界全体の進捗を優先させた、あのトーラス・シルバーですよ?魔工師を目指す者なら、わずか1年の間に特化型CADのソフトウェアを10年は進捗させたといわれているあの天才技術者がどんな人なのか。興味が湧かないはずはないと思いますけど」

不覚にもたじろいでいる達也の横で腹を抱えて笑いを堪えている陸久。

あとでお灸を据えてやろうと考えながら達也はこう言った。

「認識不足でした。それほど高い評価だったとは」

「ねっ、ねっ、司波くんは、トーラス・シルバーって、どんな人だと思いますか?」

純粋な好奇の瞳。

「そうですね・・・・・・意外と、俺たちと同じ日本人の青少年かもしませんね」

「日本人ですか?」

「ええ、彼は日本企業のFLT専属ですから」

「零乃くんは、どう思いますか?」

「え?ああ、はい。トーラス・シルバーは達也の言う通り日本人だと思います。今の時代、他国の技術力をあげてやろうなんて物好きいませんから。」

「なるほど」

あずさは首を大きく縦に振った。

「年齢は分かりませんが、仮に俺たちと変わらない歳でもおかしくはないと思います。三校にも『カーディナル・ジョージ』がいますし、国大付属校に通ってたりしてるんじゃないですか?もしかしたら、会えるかもしれないですね」

目の前に2人いるんだが

「そ、そうですね。憧れのシルバー様に会いたいです!!」

いや、だからいるって

「ねぇ、あーちゃん」

椅子を反転させて、あやなが話しかける。

「だから、あやなさん。あーちゃんはやめてください。なんですか?」

「お昼休みのうちに課題を終わらせるんじゃなかった?」

「あっ、あぁ~」

泣き出しそうな顔で助けを求めるあずさ。

どうやら、彼女はかなり煮詰まっているらしい。

「すみません・・・実は、『加重系魔法の技術的三大難問』に関するレポートなんです・・・・・・」

シュンとした顔で告げたあずさの元へ、真由美、鈴音、摩利、達也、陸久の視線が集中した。

「な、なんですか?」

「ほほう・・・」摩利は興味津々の目付きであずさを、正確には彼女の手元にあるタブレットを見詰めた。

「毎回上位5名から落ちたことのない中条が随分と悩んでいるから何かと思えば」

「毎年必ず1回は出題される定番のテーマじゃない。あーちゃん、今回の設問は?」

この手の設問はバリエーションも既に出尽くしているくらい豊富にある。校内の課題だけではなく、魔法大学の受験過去問集にも収録されている程にポピュラーなテーマだ。

「課題の内容は『三大難問』の解決を妨げている理由についてです。他の2つは分かったんですけど、汎用的飛行魔法が何故実現できないのか、上手く説明できなくて・・・」

それを聞いて、なるほど、と頷いたのは鈴音だった。

「つまり、中条さんは、これまで示されてきた解答に納得がいかないということですね」

「そうなんです!重力に逆らって自分の身体を浮遊させる魔法は、4系統8種の現代魔法が確率された初期から実用化されていますよね」

「そうね。落下による死傷は最も身近なリスクの一つだから」

相槌を打った真由美へ、あずさの視線が移動する。

「加速・加重系統を得意とする魔法師は、1回の魔法で数十メートルをジャンプすふことができますし、世界には100メートルを超える高飛び記録を樹立した魔法師もいます。飛び降りる方はもっと凄くて、2000メートルの高度から、素潜りならぬ素飛び降りを成功させた魔法師もいます」

「それなのに何故、飛行魔法・・・・・・空を自由に飛べる魔法が実現できないのか、でしょ?」

「正確には、誰にでも使えるように定式化された飛行魔法が、何故実現できないのか、ですね。古式魔法の術者の中には、小数ですが、飛行魔法を使いこなしている人たちもいますので」

真由美のセリフに鈴音が補足を加える。

その言葉に対して、あずさは首を横に振った。

「でもそれは、BS魔法師の固有スキルに近いものです。共有できなければ、技術とは言えません。理論的には、加速・加重系統で重力の影響をキャンセルして、空を飛ぶことは可能です。実際に跳んだり浮いたりする魔法は技術として定式化しています。なのに何故、飛ぶことはできないのか・・・・・・」

「その設問に対する答えは、少し高度なら参考書なら載ってるんじゃない?」

何が納得できないの?と真由美があずさに、目で訊ねる。

「魔法式には終了条件が必ず記述され、終了条件が満たされるまで事象改変は効力を持ち続ける。魔法による事象改変が作用中の物体に対して、その魔法とは異なる事象改変を引き起こそうとすれば、作用中の魔法を上回る事象干渉力が必要になる。魔法による飛行中に、加速したり減速したり昇ったりする為には、その都度、新しい魔法を作動中の魔法に重ね掛けしなければ鳴らず、必要になる事象干渉力はその度に増大していく。1人の魔法師に可能な事象干渉力の強度調節はせいぜい10段階程度であり、10回の飛行状態変更で魔法の重ね掛けは限界に達する。・・・・・・これが一般に言われている、飛行魔法を実用化出来ない理由ですよね?」

あずさの長い説明に真由美は間髪入れずに答えた。

「なんだ。あーちゃん、理解してるんじゃない。論点もよく整理されているし。なにをそんなの悩んでいたの?」

「これって結局魔法が作用中の物に魔法をかけようとするのが問題なんですよね?だったら移動中の魔法をキャンセルしてから新しい魔法を発動させればいいと思うんですけど」

あずさが自信なさげに言う。

「でも、その程度だったらすでに誰かが試しているはずよね?自己的に領域干渉を展開するみたいなものなんだし」

それを聞いて鈴音がカチャカチャと調べると

「一昨年イギリスで会長の仰ったようなコンセプトの実験が行われていますが・・・結果は失敗です」

「理由は何ですか?」

「ここには書いていませんね」

「うーん・・・。達也くんはどう思う?」

真由美が後ろを振り返り達也に聞く。

「そのその実験は基本的な考え方が間違っています。魔法式は魔法式に作用できません。それは、領域干渉で。あっても同じです。魔法式を直接消し去る術式でない限り、対抗魔法であってもその例外ではありません」

さらっと答える達也に呆然と皆が見つめる。

「つまり、余分な魔法をかけてしまっているということ?」

「ええ、実験を錯覚してしまっていたのでしょう」

「補足すると、仮にそれが成功したとしてもそれは飛行魔法とは言えません」

達也の補足程度に口を出させてもらう。

「え、どうして?」

真由美が驚きながら聞く。

「飛行魔法と定義するには、一つの魔法式でなければなりません。『領域干渉と対抗魔法を交互にやる。』というのでは定式化できません。わかりやすい例で言うと会長、《ドライ・ブリザード》お得意でしたよね?」

「ええ」

「《ドライ・ブリザード》という魔法は、『空気中の二酸化炭素を集め、ドライアイスを作り、凍結過程で余った熱エネルギーを運動エネルギーに変換し、ドライアイスを高速で射出する。』という魔法です。大まかに段階分けすると収束・発散・移動の3つになります。この3つの要素をまとめたものが《ドライ・ブリザード》です。なので、この方法は飛行魔法の定義は出来ないということですね」

「うーん」

あずさはがっかりしながら、まだ悩んでいた。

「でも、考え方は良いと思いますよ?」

「ありがとうございます。でも、課題どうしましょう?」

慌てるあずさ

「参考書丸パクリすればいいんじゃないか?」

「渡辺委員長、他人事だからと勝手なこと言ってはいけませんよ」

「そうよ、摩利。大体あなたも図書館でっ・・・」

そういった瞬間に摩利は真由美の口を押えた。

「おっと真由美そこから先は言うなよ」

まあ、俺とあやなは言わなくても、強く思い出せば視えるんだが。これはエリカのお兄さんだっけ?

 

ごちそうさまでした。

 

「それじゃあ、以前自分が今まで行われた実験内容を踏まえてまとめたものがあるのでよかったら、差し上げますよ」

「そ、それはだめですよ」

「どこかに出す予定はないですから、安心してください。ご自分で手直してくださいね」

「あ、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最初の方は3000文字とかだったのに、9069文字ですってw
また、時間はかかるかもしれませんが、やめたわけではないので応援してくれると嬉しいです。
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