ちょっと難しいシーンだったので、「どう絡ませようかな〜」と考えておりました。
本音もどうぞよろしくお願いします。
ここは生徒会室の隣。なににも使われていない部屋。
あやなと真由美の2人がいた。
「久しぶりだね。真由美ちゃん」
「9年ぶりかしら、あやなさん」
「うん。そうだね。あの時はたのしかったな。いっぱい遊んだよね。」
「え、ええ、そうね。あやなさん、ひとつ聞いておきたいことがあるの。陸久くんは本当に記憶を失くしてるの?」
「うん。そうだよ。陸久くんは本当に記憶が失くなってるよ。私たちが初めて会った日のことも、それからのことも全部。」
「そう・・・ それで、他の魔法師を恨んだりは・・・」
「してないよ。」
「じゃあ、あやなさん、あなたは?」
「ううん。それはないよ。ゼロくん、言ったんだよ『記憶が失くなってもまた零から始めればいい』って。ゼロくんがそう言うなら私はそれでいい。」
「そう・・・。」
「これからよろしくお願いします。七草生徒会長!」
「ええ、よろしくね。あやなさん」
風紀委員室
「2人とも適当に掛けてくれ」
「委員長、ここ片付けてもいいですか?この状況は魔工師志望としては耐え難いものがあるんですよ」
「俺も手伝おう」
「あ、ああ、片付けるのは構わないが、魔工師志望?あれだけの対人スキルがあるのに?」
達也のセリフに、摩利は本気で首を傾げた。
「俺の才能じゃ、どう足掻いてもC級までのライセンスしかとれませんから」
国際ライセンスの区分はAからEの5段階。
選定基準は魔法式の構築・実行速度、規模、干渉力の3点。
つまり、学校の実技評価と同じ。と言うより、学校の実技評価基準が国際ライセンスの評価基準に沿って設定されているのである。
警察や軍のように特殊な基準を採用しているところもあるが、その場合も評価はあくまで『警官として』『軍人として』であり、魔法師としての評価ではない。
「・・・・・・それで、片付けても構いませんか?」
「あ、ああ、あたしも手伝おう。話は手を動かしながら聞いてくれ」
「じゃあ、やるか」
チラッと俺と達也が渡辺先輩の方に目をやる。
小さく、ため息。
摩利は諦めて手を止めた。
「すまん。こういうのはどうも苦手だ」
一見しっかり者に見えるが、整理整頓は出来ないのか。
この部屋の現状は彼女に最大の責任があるのだろう。
「そういえば、君をスカウトした理由はもうほとんど説明してしまったな。」
「未遂犯に対する罰則の適正化と、二科生に対するイメージ対策・・・でしたよね?整理整頓のためではないと記憶していますが、たしか」
「憶えていますが、イメージ対策の方はむしろ逆効果ではないかと。・・・中を見てもいいですか?」
本を並び終え、端末の整理に取り掛かる。作業中のデータを見てもいいかどうか訪ね、首を縦に振る摩利の了解を取ると端末の点検が始まる。2人でやるので単純に速さは2倍だ。
「どうしてそう思う?」
「自分たちは今まで口出しできなかったのに、同じ立場のはずの下級生にいきなり取り締まられることになれば、面白くないと感じるのが普通でしょう」
「だか同じ一年生は歓迎すると思うがね。クラスメイトに話くらいしたんじゃないのか?」
「一科生方には歓迎に倍する反感があるだろうな。けどその点は多分大丈夫だよ」
「なにか当てがあるのか?陸久くんは」
「ええ。達也の妹は深雪ですよ?達也を少しでも悪く言ったら、瞬間氷漬けですよ。『お兄様を侮辱する方はこの深雪が許しません』とかなんとか言って」
自分でも言い方が悪いとは思ってるが、間違いじゃないからな。
「そこまでするのか。恐ろしいな」
~生徒会室~
「クシュン」
「深雪さん、大丈夫ですか?」
「ええ。失礼しました。中条先輩」
「誰かが深雪さんのことを噂してるのかも知れませんね」
~再び風紀委員室~
「・・・・・・ここ、風紀委員会本部よね?」
階段を降りてきた真由美の、開口一番がこのセリフだった。
「いきなりご挨拶だな」
「だってどうしちゃったの?摩利。リンちゃんがいくら注意しても、あーちゃんがいくらお願いしても、全然片付けようとしなかったのに」
「事実に反する中傷には断固抗議するぞ、真由美!片付けようとしなかったんじゃない、片付かなかったんだ!」
やっぱりそうか、片付けができないんだなこの人・・・。
「女の子としては、そっちの方がどうかと思うんだけど」
同感です。片付けはできた方がいいですよ?女性なら尚更ね。
真由美が目を細めて斜に睨むと摩利は咄嗟に顔を背けた。
「別にいいけどね・・・・・・ああ、そういうこと」
並んで、固定端末のメンテナンスハッチを開いて中をのぞき込んでいる俺たち2人の姿を目に留めて、七草先輩は納得顔で頷いた。
「なるほど、早速役に立ってくれてるわけね」
「まあ、そういうことです」
ハッチを閉じ、振り向きながら達也が答えた。
「委員長、点検終わりましたよ」
「傷んでいそうな部品を交換しておきましたから、もう問題はないはずですよ」
「ご苦労だったな」
本当に苦労しました。
「達也くんと陸久くんが摩利を委員長って言ってるってことはスカウトに成功したのね」
「最初から俺に拒否権はなかったように思いますが・・・・・・」
深雪に言われたもんな。
「2人とも、おねーさんに対する対応がぞんざいじゃない?」
とりあえず俺たちには姉はいない。
自称「おねーちゃん」はいるが彼女は従姉である。
そんなことを考えていると、達也が
「会長、念の為にといいますか、確認して起きたいことがあるんですが」
「んっ、なあに?」
「会長と俺は、入学式の日が初対面ですよね?」
言外に、馴れ馴れしくないですか?と問うている。
すると、
「そうかぁ、そうなのかなぁ・・・ウフフフフ」
七草会長は笑顔で答えた。
「達也くんは、私ともっと前にあったことがあるんじゃないか、とおもっているのね?入学式の日、あれは、運命の再会だったと!」
「いえ、あの、会長?」
うわぁーテンション高いなあこの人。
「遠い過去に私たちは出会っていたかもしれない」
「いえ、あの、会長?」
凄い演技だなー(棒)
「遠い過去に私たちは出会っていたかもしれない。運命に引き裂かれた二人が、再び運命によって巡り会った、と?」
君の前前前世から僕は〜♪ってか?
「それが本当なら、先輩との出会いはFateではなく、Doomですね」
ノリノリだった真由美に対して、辛辣な達也の言葉。
「チッ」
「陸久くんは以前に会ったことない?私と」
「覚えている限りではありませんね。もしだったら、あやなに聞いてみてください。」
「そ、そう。そうね、分かったわ」
(やっぱり、あやなさんの言った通りなのね・・・)
「じゃ、じゃあ、お先にね」
そういって真由美は生徒会室へ引き返していった。
あとは、PCのスイッチを切って終了というところでタイミング良くか、悪くか、2人の男子生徒が入って来た。
「ハヨーッス」
「オハヨーございまス」
威勢のいい掛け声が部屋に響く。
「おっ、姐さん、いらしたんですかい」
「委員長、本日の巡回、終了しました。逮捕者、ありません!」
直立不動で2人の生徒が報告をした。
「ご苦労、そうだ。紹介しよう。新入りだ。1年E組司波達也。1年A組の零乃陸久だ。」
「へぇ・・・・・・零令の倅と紋無しですかい」
「辰巳先輩、その表現は、禁止用語に抵触する恐れがあります!この場合二科生と言うよりべきかと」
もう1人の男子生徒も、そう言いながら、ひやかすような、値踏みするような態度を注意しようとしない。
「お前たち、そんな単純な了見だと足下をすくわれるぞ?ここだけの話だが、さっき服部が足下をすくわれたばかりだ」
摩利の言葉に2人は急に真剣味を増した顔になった。
「そいつが、あの服部に勝ったってことですかい?」
「ああ、正式な試合でな」
「何と!入学以来負け知らずの服部が2人の新入生に敗れたと?」
「大きな声を出すな、沢木。ここだけの話と言っただろう」
まじまじと見つめられて居心地の悪いことこの上なかったが、印象は悪くないようだった。
「3-Cの辰巳鋼太郎だ。よろしな、腕の立つヤツは大歓迎だ」
「2-Dの沢木碧だ。君達を歓迎するよ。司波くん、零乃くん」
それぞれ握手を交わしながら言った。
今回、話進んでいませんね。九校戦ならアイディアたくさんあるんですけどね笑
ではまた次回。