ジードライブ!~進むぜ!未来!!~   作:キータ

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10話 ファーストライブ(4)

ついに本番当日を迎えた。

午後の授業は新入生歓迎会のため、全校生徒が講堂に集められている。

この状態でライブが出来ればいいのだが、残念なことにまだ正式な部として認められていない僕らは他の部活の紹介を見ている事しかできなかった。

 

さぁ新入生歓迎会も終わったし、最後の追い込みだ。

今日から体験入部も始まるから、どの部活も新入生の勧誘に必死だし負けていられない。

特に部員数ギリギリの所は1年生が来てくれないと廃部の危機らしい。

思うんだけどこの学校、生徒数に対して部活動の数が多くないか?

……何かこれ以上詮索してはいけない気がしたので、気を取り直して海未の特訓も兼ねた最後のチラシ配りを始めた。

特訓の甲斐があって海未も物怖じせずに配ることができるようになっていた。

見違えるような笑顔で次々に配っていく。これなら心配はもうなさそうだ。

だが、やらなくてはいけない事は宣伝だけではない。

講堂の照明や音響のセッティングもしなくてはならないのに、使用時間が決まっているからそれまでは準備ができないし、穂乃果たちも衣装に着替えなくてリハーサルをしなくてはならない。

初めての事ばかりで準備の手が足りず困っていると、

 

「おやおや、お困りかな朝倉マネージャー殿?」

 

クラスメイトのヒデコ、フミコ、ミカ――ヒフミトリオが来てくれた。

 

「手伝ってくれるの?」

「私たちも学校が無くなって欲しくないし」

「穂乃果たちにはうまくいって欲しいって思っているんだよ」

「でも自分たちの部活はいいのか?」

「同じクラスの子がね、『ウチの部活はいいから穂乃果たちの手伝いをしてあげて』って言ってくれたの」

 

ヒフミトリオが来てくれたおかげで、穂乃果たちも自分の支度に専念することができた。

講堂のセッティングも済み、後は客席を開放してお客さんが来てくれるのを待つのみになったところで、ヒデコとフミコが僕のところにやって来た。

 

「後は私達がやっておくから、マネージャーは穂乃果たちの所に行ってあげなよ」

「そうそう。緊張をほぐしてあげるのもマネージャーのお仕事だよ」

 

お言葉に甘えて僕は穂乃果たちが準備している控室に向かった。

 

コンコン

「入ってもいいか?」

「うん、大丈夫だよ」

 

入る前にノックして確認すると、中から穂乃果の返事が聞こえた。

控室に入るとステージ衣装に着替えた穂乃果とことりがいた。

おおー、これは……

 

「どうかな、似合ってる?」

 

ことりが衣装の感想を聞いてきた。

正直、予想以上に似合っていて言葉がうまく出てこなかった。

 

「おやおやー、りっ君もしかして私達がすっごく可愛くなってて照れてる?」

「そんな訳ないだろ!……そういえば海未は?」

 

穂乃果のからかいを口では否定してみたものの、図星を突かれた僕は慌てて話題を変えようと姿が見えない海未の事を聞いた。

 

「海未ちゃんなら……」

 

と穂乃果が部屋の隅にある更衣スペースを指さした。

 

「え!?着替え終わってないの?」

「ううん、着替えはもう終わっているの……」

 

大丈夫だというから入ったのに話が違うと慌てた僕に、ことりがそうではないと説明する。

では一体何だというのだろう?

 

「ほら海未ちゃん、いい加減出てきなよ」

「分かってます……」

 

穂乃果が促すと、中から衣装に着替えた海未が出てきた……のだが、

 

「ど、どうでしょうか?」

「何で下にジャージ履いているんだよ!?」

 

そう、海未はスカートの下にジャージのズボンを履いていたのだ。

本人も押し通せるとは思っていないだろうが、はっきり言って往生際が悪い。

そしてダサい。せっかくの衣装が台無しだ。

 

「もう!その往生際の悪さは何!?」

「いや、その、鏡を見たら急に……あっ!?やめてください穂乃果!引っ張らないで!!」

 

海未の煮え切らない態度にしびれを切らした穂乃果がジャージを脱がそうと実力行使にでた。

必死に抵抗しようとする海未だが、後ろめたさのせいか穂乃果の方が優勢だ。

 

「えーい!!」

 

穂乃果が遂に海未のジャージに手をかけ強引に下ろそうとした瞬間、僕の視界が暗転した。

何だ!?せっかくのサービスショットのチャンスが!?

 

「りっ君はダーメ!」

 

耳元からことりの声が聞こえた。

どうやらことりが僕の目を塞いだらしい。

その間にも海未の悲鳴と穂乃果の声が聞こえてくる。

こっそり見れないものかと足掻いてみたが、ことりの力が予想以上に強くそれは叶わなかった。

ややあって、とうとう観念したのか海未の声がおとなしくなった。

 

「ほらほら、海未ちゃん1番似合ってるよ」

「うん!海未ちゃん可愛いよ。ねぇりっ君?」

 

そう言うと、ことりは僕に目隠しをするのを止めて手を離した。

目の前には衣装姿の海未がいる。もちろん、ジャージは履いていない。

 

「ああ、似合ってる」

「うう……やっぱり恥ずかしいです」

 

僕が率直な感想を伝えると海未は顔を赤くしてスカートの裾を押さえている。

そんな海未の横に穂乃果とことり並び立った。

 

「こうやって3人で並んで立っちゃえば、恥ずかしくないでしょ?」

「3人一緒なら怖くないよね!」

「……はい!確かにこうやって3人で立てば!」

 

海未の顔に笑顔が戻った。

ここらで一つ景気づけをしておきたいところだ。

 

「よし!気合を入れるために円陣でも組むか?」

「えー!?それじゃまるで運動部みたいでアイドルっぽくないよー」

 

僕の提案に穂乃果が文句を言った。

海未とことりは何も言わなかったが、不評であることは顔を見れば分かる。

 

「じゃあ何がいいんだよ?」

「うーん……みんなで番号を言うのは?」

「うん、それいいかも」

「いいですね、それ」

 

穂乃果の提案にことりと海未が賛成した。

 

「よーし、早速やってみよう!……1!」

「2!」

「3!」

 

順番に言い終わると、3人とも緊張が解れたのか顔を見合わせて笑い始めた。

このまま良い雰囲気で本番を迎えられる。

そう思っていたところに突然、サイレンが鳴り響いた。

何が起こったのか分からず困惑する3人。

 

「付近に怪獣が現れました。この学校は第3級警戒地域にあたります。生徒は安全が確保されるまで部活動を一時中止し、待機をお願いします」

 

警戒指示が放送スピーカーから流れる。

第3級警戒地域――つまり怪獣の出現場所から離れているため直接的な被害は考えにくいが、いつでも避難できるように警戒しなくてはならないということだ。

だが部活動を一時中止するということは、このまま警報が解除されなかったらライブも中止になってしまう。

穂乃果たちもそれに気づいたようだ。

視線が僕に集まる。

 

「任せろ、開演時間までに片づけてくる。そうすればライブできるだろ!だから3人は安心して準備をしていてくれ。」

「お願い、りっ君」

「気を付けてね」

「信じていますよ」

 

ああ、ここまでの努力を絶対に無駄になんてさせるもんか!

僕は学校を飛び出して街に向かった。

 

 

 

街は逃げる人で溢れていた。

街を破壊する敵の姿は数日前に現れたダークロプスに似ていた。

 

「あれはダークロプスか?」

『いえ、あれはダークロプスゼロ。先日戦ったダークロプスの試作型です』

 

レムからライザーを通じて連絡が入る。

 

「試作型?ということはこの前のより弱い?」

『いえ、リミッターを設けていない分、前回の個体よりも強敵だと推測されます』

 

この前よりも強敵と聞いて戦慄が走った。

脳裏に浮かぶのは前回の戦い。

あの時、もしウルトラマンゼロが来てくれなかったらきっと負けていただろう。

もしかしたら死んでいたかもしれない……

その時の恐怖が蘇り、僕は変身するのを躊躇してしまった。

そこで立ちすくんでいると、近くに攻撃が着弾し爆発が起こった。

その傍で、あの少年が小さくうずくまっているのを見つけた。

 

「どうしたんだ少年!?」

「お兄さん!?僕、悪い奴をやっつけようとしたんだ。でもこっちにビームを撃ってきて、それで怖くなって……」

 

やはりダークロプスゼロはリトルスターを持つこの少年を狙ってきたのか?

先程の爆発もこの少年を狙った攻撃だったということか?

 

「やっぱり、僕みたいな意気地なしじゃヒーローになんてなれないのかな……」

「そんな事ない!ただ、なるにはちょっと早かっただけだ。だから今は逃げるんだ。大丈夫、君がヒーローになる日まで、ウルトラマンジードがみんなを護るから」

「ウルトラマンジードが!?この前負けちゃったのに?」

「来る。そして必ず勝つ!ヒーローは何度倒れても絶対に立ち上がるんだ!ドンシャインだってそうだったろ?」

「……うん!」

 

僕は自分にも言い聞かせるように少年を説得した。

そして少年が走り去るのを見送ると、改めてダークロプスゼロを見据える。

正直言って怖い。まだ体が震えている。

でもここで逃げたら街も、少年も、穂乃果たちの頑張りも護る事ができない!

それに少年に言ったじゃないか、必ず勝つって。

意を決した僕は<ウルトラマンジード プリミティブ>にフュージョンライズした。

 

ジードになった僕は姿勢を低くし、ダークロプスゼロに全力でタックルを仕掛けた。

だが簡単に受け止められ、無防備な背中を殴りつけられる。

背中の強打で怯んだ僕に追撃の膝蹴りが繰り出された。

まともにそれを喰らった僕は捕まえていた相手の体を放してしまった。

反撃でこちらもパンチ、キックを繰り出すが、ダークロプスゼロの身体もやはり鋼鉄のように固く、逆に攻撃する僕の方がダメージを受けててしまう。

 

(まずい、このままじゃこの前の二の舞だ)

 

何とか攻略法を見つけようとするが、前回の敗北のイメージが嫌でも重なってしまう。

その恐怖が僕の動きを鈍らせていた。

その隙をつきダークロプスゼロは目から強力光線――ダークロプスメイザーを発射。その直撃を受けた僕はあまりの痛みに意識が遠のき、地面に倒れ伏してしまった。

 

『陸、このままでは危険です。撤退を提案します』

 

薄れゆく意識の中、レムから撤退の指示が聞こえてきた。

 

(やっぱり僕では勝てないのか……必ず勝つって言ったのに……)

 

自分の無力さに失望し、意識がさらに遠のいていく……

 

「……ん……れジー……」

 

(何かが聞こえる。これは……?)

 

誰かの声が僕の意識を繋いだ。

 

「……って……ジード!」

 

(僕の名前……?)

 

何で僕の名前を呼ぶのか分からないが、その声に意識を集中させる。

 

「立ってジード!頑張れー!!」

 

(誰かが僕を応援してくれている!?)

 

一体誰が!? 声のする方を見ると、それはあの少年だった。

さっきまで恐怖に震えていたのに、勇気を振り絞って僕を応援してくれていたのだ。

……ならば僕も負けてなんていられない。同じヒーローを目指す者として!

 

意識を取り戻した僕は再び立ち上がった。

不思議だ。たった1人が応援してくれているだけで、こんなに力が湧いてくるなんて。

恐怖で冷え切った心に火が灯る。

勇気が炎の様に燃えあがる!

 

「いいぞジード!頑張れー!」

 

少年の想いに呼応するように、リトルスターが少年から離れてブランク状態だったウルトラカプセルに宿った。

起動したウルトラカプセルに描かれたのはウルトラセブン――ウルトラ念力を使いこなす真紅のファイターだ。

 

『セブンカプセルが起動しました。陸、カプセルの交換を』

『え?』

『セブンカプセルとレオカプセルで新たな力が生まれます』

『そういうことか!よし、ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!!』 

 

「融合!」デュワーッ!

 

「I GO!」イヤーッ!

 

「ヒア・ウィー・ゴー!」

 

<フージョンライズ>

 

「燃やすぜ! 勇気!! ジィィィィィィィィィィド!!」

 

<ウルトラセブン>
<ウルトラマンレオ>

<ウルトラマンジード ソリッドバーニング>

 

セブンとレオ、2つの力が1つになり新たな姿となって現出した。

<ソリッドバーニング>―――その名に違わぬ硬質なアーマーに身を包まれた身体の内では、熱く燃え盛る炎のようなエネルギーが全身を駆け巡っている。

変身完了と共に胸部のプロテクターが閉じられると、体内の余剰な熱を逃がすために全身の噴射口から排熱が行われた。

まるで自分がロボットになったような気分だけど、目には目を、ロボットにはロボットを!ってね。

 

ダークロプスゼロが新たな姿になった僕に何かを感じ取ったのか突っ込んできた。

それに合わせて僕もカウンターパンチを繰り出す。

肘のブースターを噴射させ攻撃力を増したパンチはダークロプスゼロを見事に捉え、その体を大きく吹き飛ばした。

プリミティブの時には引き出せなかったレオの力が、硬質のアーマーと各部位のブースターによって足りなかった身体能力が補われたことで、十全にその力を使いこなせている。おまけに殴った拳も、鎧を着ているみたいで全く痛くない。

 

(これならイケる!)

 

そのまま続けざまに攻撃を2撃、3撃と加えた後、相手を蹴り飛ばすと同時に背面のブースターを噴射し、その姿勢のまま後方に下がり距離を取る。

アーマーの分だけ体が重くなってはいるが、各部のブースターのおかげで機動力は下がるどころか寧ろ向上していた。

 

ダークロプスゼロが反撃に頭部のダークロプスゼロスラッガーを投げつけた。

僕も対抗して頭部に装着されたジードスラッガーを放つ。

セブンの力によってウルトラ念力を扱えるようになった僕は、ジードスラッガーを自在に操り、ダークロプスゼロスラッガーを容易く弾き飛ばした。

散々苦しめられたスラッガーを、同じスラッガーで制した僕は小さくガッツポーズをした。

だがダークロプスゼロにとって、スラッガー対決はただの陽動に過ぎなかった。

本命は胸部に搭載されたディメンジョンコア。それを展開し、必殺の一撃を放とうとしている。

それに気づいた僕は即座にジードスラッガーをウルトラ念力で引き戻すと、そのまま右腕に装着し、ブースターを全開にしてダークロプスゼロ目掛けて飛び込んだ。

ディメンジョンコアにエネルギーが集まっていく―――だが、こっちの方が早い!

 

『ブーストスラッガーパンチ!』

 

攻撃が放たれる寸前、右腕に装着されたジードスラッガーがディメンジョンコアをすれ違いざまに切り裂いた。

心臓部を深く損傷したダークロプスゼロは(痛みを感じるのか知らないが)悶え苦しんでいる。

 

『トドメだ!』

 

ジードスラッガーがウルトラ念力で頭部に戻っていく。それと同時に右腕のアーマーを展開し、エネルギーを右拳に集約させた。右拳がエメラルド色に光り輝く。僕はそれを正拳突きの如く相手目掛けて突き出すと、一気にエネルギーを解き放った!

 

『ストライクブースト!!』

 

放たれたエネルギーは72万度の灼熱の炎とエメラルドの光を収束させた光線となる。その一撃は流石のダークロプスゼロでも耐える事が出来ず、その身体は跡形もなく砕け散るのだった。

 

「やったー!!」

 

少年の歓声が聞こえた。

僕はそれに応えて少年に勝利のVサインを送った。

少年もそれに気づいてVサインで返事をする。

ヒーローを目指す者同士、目には見えない絆が確かにそこにあった。

 

 

 

 

 

街から飛び去った後、学校のそばで変身を解いた僕は講堂に急いだ。

時計を見ると開演時間の午後4時まであと少し。

走っていけば間に合いそうだ。

 

(何人ぐらい集まっているのだろう?満員にするには全校生徒が集まらないといけないから無理だろうけど、10~20人くらいは集まっていて欲しいな。そういえば、あの先輩達は本当に友達を連れて来てくれているんだろうか?男子ばかりでなく、女子も来てくれていればいいけど……)

 

などと考えながら講堂までの道を急いだ。

それがどんなに甘い考えだったのか知りもせずに。

 

 

講堂に着いた。時刻は午後4時ジャスト。

中に入ってみると既に幕は上がっており、3人はもう舞台に立っていた。

さて、観客は何人いるのか確認してみると

 

(なんだよこれ……)

 

空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席、空席・・・・・・

 

客席には誰もいなかった。

男子生徒も、女子生徒も、1年生も、2年生も、3年生も、誰も来てくれなかったっていうのか……?

呆然としていた僕にミカが近づいてきた。

 

「ごめん。頑張って呼びかけたんだけど、『怪獣騒ぎの後に素人アイドルなんて見る気になれない』って……」

 

きっとギリギリまで頑張ってくれていたんだろう。

その言葉と表情には悔しさと申し訳なさが滲み出ていた。

 

「穂乃果……」

 

何と声をかけていいのか、僕には分からなかった。

いや、分かり過ぎるのだ。

頑張っても誰にも理解されない悔しさを……

 

「そりゃそうだ。世の中そんなに甘くない」

 

だが穂乃果はそう言ってみせた。

ただの強がりにしか聞こえないかもしれない。

でも考えてほしい。

嘆くでも、怒るでもなくこの結果を受け入れる。

それがどれだけ辛く、そして凄いことか。

果たして何人に同じことができるだろう……

少なくとも僕にはできなかった。一度はウルトラマン辞めるなんて言っちゃったしね。

 

でも穂乃果が笑顔を取り繕って、必死に泣くのを堪えているのは遠目から見ても明らかだった。

重い沈黙が講堂を包みこむ。

だがそこに

 

「ハァ、ハァ……」

 

1人の女子生徒が飛び込んできた。

 

「君はあの時の!」

 

そう、海未の特訓の時にチラシを貰いに来た眼鏡をかけた1年生だ。

 

「あれ?ライブは?……あれ?」

 

開演時刻に間に合わないと思って走ってきたのだろう。

だが全力で走ってきたのに、肝心のライブが始まっていなくて何が何やらといった様子だ。

そんな彼女を見て穂乃果の目に輝きが戻った。

まるで暗闇の中で萎れた花に陽の光が差し込んだかように

 

「やろう!歌おう、全力で!だってその為に今日まで頑張ってきたんだから!」

「穂乃果ちゃん……海未ちゃん!」

「ええ!」

 

穂乃果の一言がことりと海未の気持ちを奮い立たせる。

そして3人は横並びにスタート地点に立った。

今、たった1人の観客の為に、μ’sのファーストライブが始まった。

 

~~START:DASH!!~~

 

3人はこれまでの全てをぶつけて懸命に歌い、踊った。

その姿を見て

 

「綺麗だ……」

 

自然とそんな言葉が口から零れた。

それは今までずっと練習を見てきた時には抱かなかった感想だった。

プロのアイドルいや、他のスクールアイドルと比べても拙い歌とダンスだろう。

でもそんな技術面の問題を吹き飛ばす何かがそこにはあった。

この瞬間、3人は間違いなく光り輝いていた。

この時だろうな、僕がマネージャーであると同時にμ’sのファンになったのは……

 

音楽が終わった。ライブも終わる。

ここまで色々あったが、終わってしまえばあっという間のファーストライブだった。

穂乃果たちの感想は……あの笑顔を見れば聞かなくても分かる。

やり切った3人に拍手が送られる。

 

見渡してみるといつの間にか数名の人が増えていた。

1人はボーイッシュな女の子。あの眼鏡の子と一緒に穂乃果たちへ拍手を送っている。友達だろうか?

それに西木野さん。穂乃果たちに拍手を送っていたが、僕に気が付くと「何か文句でも?」と言いたげな表情でこっちを見ている。たぶん照れ隠しだろうけど。

あとは何故か椅子の後ろに隠れて見ている女の子。グラサンにマスクで正直怪しい恰好だ……

それから入口には令人先生がいた。見回りにでも来たのかな?

そして、どこで見ていたのか知らないが、

 

「どうするつもり?」

 

いつの間にか来ていた生徒会長がステージの方に近づいてくると穂乃果に問いかけた

―――こんな結果で続ける意味があるのか?と

 

「続けます!」

 

それに対して穂乃果は即答した。

生徒会長からも、この結果からも目を背けずに

 

「私、もっとアイドルを続けたいと思っています。それはきっと海未ちゃんもことりちゃんも」

 

穂乃果の言葉に力強く頷いて答える海未とことり。

 

「こんな気持ち初めてなんです!やって良かったって本気で思えたんです!今はこの気持ちを信じたい」

 

講堂にいる全員が穂乃果の言葉に耳を傾けていた。

 

「いつか必ず、ここを満員にしてみせます。そして必ず学校を救ってみせます!……私もみんなのおかげで覚悟を決めました!」

「このまま誰にも見向きしてもらえないかもしれないのに?全部無駄に終わるかもしれないのに?」

「……そうかもしれません。でも―――

 

廃校の危機を救うなんて、一介の高校生には荷が重すぎる。

やっても無駄に終わるのかもしれない。

でもそれは、何もしなくてもいい理由になんてならない。

だって……

 

―――ジーッとしてても、ドーにもなりません!!!!」

 

こうしてμ’sのファーストライブは完敗という形で幕を閉じた。

でも落ち込んではいない。

たった1人でも応援をくれる人がいる。

それだけでこんなに力が湧いてくるということを僕も、そして穂乃果たちも知ったからだ。

だから絶対に諦めない。

敗北からのスタートが、いつかの勝利に繋がっていると信じて




~次回予告的な~
陸「僕を助けてくれたウルトラマンゼロ
  僕たちがファーストライブの準備を頑張っている間、
  ゼロは一体何をしていたんだろう?」

次回、「UTZ~ウルトラ・ティーチャー・ゼロ~」
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