ジードライブ!~進むぜ!未来!!~   作:キータ

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前回からかなり空いてしまい申し訳ありません。ギャラクシーファイト2が面白すぎて某プロのようにジャスジャスして塵になってました(オイ!!)


21話 ”ほけん”の仕事(2)

陸君たちを乗せてモコを連れ去った黒車を追跡し、私たちは街から離れた工場地帯に来ていた。

途中、車を見失いそうになったが陸君の直感が何度も大当たりし、どうにか追跡することができている。まるでどこかに優秀なナビゲーターが付いていて、黒車の行き先を案内してくれているかのようだ。

 

「それにしても、何でモコは誘拐されちゃったのかにゃ?」

「モコはすごく珍しい生き物でね。最近地きゅ…じゃなくてこの辺りに密輸されたのが逃げちゃったんだ。それで私たち保健所が保護しに来たってわけ」

 

後部座席に座る凛ちゃんからの質問に、真実をちょっと織り交ぜつつ答えた。

でもみんなが本当に聞きたかったのは、どうやら次の質問の答えだったようだ。

 

「じゃあやっぱり、モコを助けても結局学校には居られないの……?」

「……うん、残念だけどそうなるね」

 

真剣に聞いてくるこの子らに対して、曖昧に答えてしまうのは失礼だと思った私は事実をきちんと伝えた。

それを聞いた直後のみんなの沈黙は心苦しかったが、すぐにそれどころではなくなった。

なんとあの黒車を見失ってしまったのだ。

あり得ない!?

私は心の中で叫んだ。なぜならこの道は一本道の上、交通量も少なく見通しが良いのに見失うはずがない。

しかしいくら目を凝らしても、黒車を発見することはできなかった。

まさかテレポートでも使ったというのか?

 

「ボソボソッ(分かった、ありがとうレム)。地味井さん、あの黒車はその先の廃工場に隠れているみたいです」

「陸君は何でそんな事まで分かっちゃうの!?」

 

正直ただの高校生の言う事に従うのはプロとしてどうかと思ったが、ここまで陸君の直感(?)は全て当たっていたのは事実。

ダメ元で廃工場の敷地に侵入すると、陸君の言った通り本当にあの黒い車が停まっていた。

急いで中を確かめたが、やはり誰も乗ってはいなかった。

状況から考えるに、あの廃工場の中が怪しそうだ。

私は廃工場を調査するため車から降りようとした。すると案の定、彼らも一緒に行きたいと言い出した。

気持ちは分かるが、こればかりはプロとして聞き入れるわけにはいかない。

 

「君たちはこの車の中で待っているんだ。絶対に出るんじゃないよ」

「でもモコがあの中にいるんでしょ!?」

「モコちゃんは必ず助ける。それも私の仕事だから。だから絶対にここで大人しくしているんだよ、いいね!」

 

陸君たちによ~く言い聞かせ、しぶしぶ納得した彼らを車内に残して私は廃工場に入って行った。

……この時の私が彼らを如何に甘く見ていたか、それをすぐに痛感することになる。

 

廃工場の中は電気が通っておらず、明かりは窓から差す日の光のみで薄暗かった。

1階、2階と警戒しながら工場内を見て回ったが、あの黒服男も連れ去られたルナーも見つかりはしなかった。

まさかあの放置された車は罠で、犯人は別の手段で逃げ出したのでは?

どうしよう?このまま逃がしましたと報告したら私の優秀な成績に傷が……。

いや、民間人の保護を最優先したことにしよう。そうしよう!

対象が見つからず、誤魔化すための言い訳を考え始めた私の耳に、突然ゴゴゴゴ……と大きな物が動く音が1階から聞こえた。

何が起こったのか確かめるために急いで音のした方へ行くと、さっき通った時には何も無かったはずの場所に扉が出現していた。

偶然何かで仕掛けが解けたのか?はたまた誰かがここから出入りしたのか?分からないことだらけだが、この先に何か秘密があるに違いない!……でもゼナ先輩抜きで本当に大丈夫だろうか?

不安になった私は通信機でゼナ先輩に連絡を入れた。

 

「ゼナ先輩、犯人のアジトらしき場所を見つけました。至急応援を……」

 

だが通信機からはザーッと音がするだけで繋がらなかった。

どうやらこの先から強力な妨害電波が出ているようだ。

やはり一度帰って出直した方が……。怪我しても宇宙人には労災は出ないし。

怖気づいた私の脳裏に、モコを助けたいと必死に訴えてきたあの子たちの顔が浮かんだ。

……仕方ない。必ず助けると約束してきたのは自分ではないか!

私もAIBの超エリート(自称)エージェント。何を臆するものか!

私は自分を奮い立たせると、扉の奥へと進んで行った。

 

 

扉の先は廃工場とはまるで違う、明らかに地球外のテクノロジーで作られた正しく基地とでも呼ぶべき空間だった。

まぁ宇宙人を追ってきたのだから当然ではあるが、それにしても高い科学力だ。

得体の知れない秘密基地を目の当たりにし、私の足がガクガクと震えていたが勘違いしないで欲しい。これは武者震いだ。決してビビっているわけではない。こんなのミジー星の科学力よりちょっと、ほんのちょ~っと高いだけではないか!

だけどこういう場所には侵入者を捕らえるトラップがあるのは常識。ほら、現に作動した形跡のあるトラップが5個ほどあったし。だからこうやって通路をこそこそ隠れて進んで行くのは何も間違っちゃいないんだ。と誰に言っているのか分からない言い訳をしながら慎重にトラップを回避して通路を進んで行く。

すると、通路を抜けた先にある部屋から声が聞こえてきた。

 

「ちょっと、これ外しなさいよ!!」

 

その聞き覚えのある声に嫌な予感がした私は、こっそりと部屋の中を覗き込んだ。

後の調べで分かった事だが、ここは捕まえて来た生物を生体兵器に改造するための実験場だったようで、私がたどり着いた部屋の中には様々な生物が檻の中に閉じ込められていた。その中には当然、モコの姿も確認できた。

……なのだが、それよりも問題なのは、なぜ陸君たち5人がここに居るのかという事だ!?

しかも全員あの黒男に捕まって、今は椅子に座らされた状態で両手をひじ掛けの拘束具で固定されて動けなくされている。

どうやら私の言いつけを無視して廃工場に入り、しかも私より早く隠し扉を見つけて乗り込んだみたいだ。

つまりここに来る途中に作動していた5つのトラップというのは、陸君たち5人を捕らえるために作動したということか。

だから車から出るなとあれ程言っておいたのに……。

 

「そういう訳にはいかないよ、お嬢ちゃん。どうやって隠し扉を見つけ出した上に、ここまで忍び込めたのか知らないが、君たちは私の大事な商品を逃がそうとしたのだからね」

「モコは商品なんかじゃないわよ!」

「商品だよ。君たち地球人だって犬や猫をペットショップで買うだろ?それと何が違う?」

「そんなことはどうだっていいつってるのよ!とっとと私たちの手錠を取って、モコを返しなさいよ!!」

 

黒服男が詭弁を並べるが、にこちゃんは押し黙らずまくし立てた。

それを男はしばらくの間じっと聞いていたが、唐突に手に持ったリモコンのスイッチを操作すると椅子の背もたれから黒いテープを持ったマジックハンドが飛び出し、にこちゃんの口にテープに貼り付けて喋れなくしてしまった。

口を防がれたにこちゃんはそれでも「ムー!ムーッ!」と喚いていたが、黒服男は無視することに決めたらしい。

コホンッと咳払い1つして仕切りなおすと、黒服男は余裕ある紳士のような仕草で名を名乗った。

 

「申し遅れたね。私はノワール星人のシュバルツ。お察しの通り地球人で言うところの宇宙人だ」

 

ノワール星人。その名はAIBのデータベースで見覚えがあった。確か宇宙狩人という別名で知られる種族の宇宙人で、改造生物の密売組織の主犯格としてマークされていたはずだ。様々な惑星の生物、特に怪獣を改造し兵器として売り払う危険な奴らだと聞いていたが、まさか地球に侵入していたとは……。

 

「僕たちをどうするつもりだ?」

「君たち?勝手に来ただけだから考えてもいなかったが、そうだなぁ……。地球人はひ弱だから兵器としての使い道は無いが、愛玩目的なら需要はあるだろう」

 

そう言うとシュバルツは邪悪な笑みを浮かべると、まずは花陽ちゃんの全身を舐めるように見回した。

花陽ちゃんは恐怖のあまり声にならない悲鳴を上げた後、か細い声で「誰か助けて……」と呟いた。

 

「かよちんに何する気!?」

「ちょっとやめなさいよ!!」

 

それを見過ごせなかった凛ちゃんと真紀ちゃんが怒鳴りつけたが、シュバルツはむしろそれを面白がっているように見えた。

 

「気の強い子はとある筋には売れ行きがいい。たっぷりと調教されて可愛がってもらうといい」

「きゃあっ!」

 

そう言ってシュバルツは真紀ちゃんの頬に手を当てじっくりとその顔を観察すると、生理的嫌悪感からか真姫ちゃんが悲鳴を上げた。

 

「やめろ!!」

 

椅子に拘束されながらも陸君が彼女たちをどうにか助けようと必死に藻掻くが、ただ体を前後に揺らせるだけだった。

それを見たシュバルツは陸君を嘲笑ったが、それでもなお諦めず、陸君は鬼のような形相でシュバルツを睨みつけていた。

だがその反抗的な態度が気に入らなかったのか、シュバルツは隠していた銃を抜いて陸君に銃口を向けた。

 

「君は邪魔だ。余計な事をされる前に、とっとと消えてもらおう」

 

無慈悲に銃の引き金を引こうとするシュバルツ。だがこの状況を黙って見過ごすAIBではない。

私は5人を助けるべく部屋に突入―――しようとしたのだが、陸君の影から何かが飛び出したのが見えた。

あれは……ペガッサ星人の子供か!?でもなんで陸君の影の中に!?

私が驚いたのと同様に、シュバルツも不意を突かれて手にしていたリモコンをペガッサ星人の子供に奪われてしまった。

ペガッサ星人がそのリモコンを操作すると、陸君たちの両手の拘束、そしてモコたちを閉じ込めていた檻のロックが解除された。

モコ以外の生物はこれ幸いとさっさと逃げ出していった。―――後日、脱走した地球外生物の大捜索とそれを巡ってヴィランギルドと一悶着があるのだが、それはまた別のお話。

 

「やった!陸、やっちゃえ!!」

「ありがとう、ペガ!うりゃぁあああ!!」

 

ペガッサ星人に檄を飛ばされた陸君はシュバルツに椅子から飛び掛かろうとした。

だが銃を構えていたシュバルツの方が僅かに早い。

そう判断した私はみんなの死角の位置からアナスタージ・ガン―――AIBエージェントに支給される携帯銃―――でシュバルツの銃を撃ち落とした。

銃を弾き飛ばされたシュバルツは次から次へと起こる不測の事態に翻弄されたまま、陸君の攻撃をまともに受けてしまい、頭を床に強かに打ち付けて動かなくなった。

 

「死んじゃったんですか?」

 

拘束から解かれた花陽ちゃんが恐る恐る陸君に尋ねた。

 

「いや、気を失っているだけみたい」

「良かった、りっ君先輩が人殺しになったらどうしようって思っちゃったにゃ」

 

凛ちゃんと花陽ちゃんはホッと胸をなでおろした。だが真姫ちゃんはまだ椅子に座ったままだ。陸君は心配して真姫ちゃんに駆け寄った。

 

「真姫も大丈夫だったか?」

「……『大丈夫だったか?』じゃないですよ!あいつがたまたま銃を落とさなかったら、先輩が撃たれて死んでいるところだったんですよ!」

「まぁそうだけど……上手くいったんだからいいじゃんか」

「そういう問題じゃない!……………でも、ありがとう(ボソッ)」

「ん?何か言った?」

「べ、別に何も言ってない!……というか、先輩の後ろにいるそれ!説明してください!」

 

真姫ちゃんが陸君の後ろにいるペガ君のことを指差して尋ねると、陸君は答えにくそうに言った。

 

「えーと、なんというか、僕のルームメイト…みたいな?」

「どうも初めまして。僕はペガ。陸と一緒に住んでます」

「「「一緒に住んでる!?」」」

 

ペガ君の発言に花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃんは目を丸くしたが、いつの間にかモコを助け出したにこちゃんが、

 

「アンタ達、ここでこれ以上お喋りしてる暇はないわよ!こいつが目を覚まさない内に早く逃げなきゃ!」

 

とみんなに脱出を促した。

それを聞いてペガ君の件を保留することにしたみんなが出口、つまりこちらに向かって走って来る。

ここで鉢合わせてしまっても面倒だ。それにまだ片づけなくてはならない仕事もある。

私は陸君たちに見つからぬよう身を隠し、みんなが通り過ぎるのを待つ。

全員が行ったことを確認すると、入れ替わりでその部屋に入った。

そこには今やっと目を覚まし、陸君たちを追いかけようとするシュバルツの姿があった。

気絶したままだったら捕まえるのも楽勝だったのに、空気の読めない奴め!

 

「何だお前は!?」

 

シュバルツは陸君たちに良いようにやられて、さっきまでの余裕ぶった態度はどこにもない。どうやら相当頭にきているようで、現れた私を見て激高した。

だがいくら吠えようが、所詮は高校生にやられるような奴だ。

 

「AIBだ。大人しく投降しろ!」

 

 

私は臆することなくシュバルツに銃を突き付けて投降するように促した。

―――までは良かったのだが、シュバルツは思った以上に手強く、あっさりと銃を払い除けられた私は今、腹部に強烈な拳の一撃を食らい地面に這いつくばっていた。

こ、こんなはずでは……。

 

「さっきの地味な邪魔も貴様の仕業か?全く、見た目も地味ならやることも地味だな!こんな冴えない奴がよくAIBのエージェントを名乗れたものだ!?大方あのガキたちを助けるヒーローを気取ったつもりだろうが、とんだモブキャラだな!!」

 

倒れた私にシュバルツは怒りに身を任せて何発もの蹴りを入れながら言う罵りを、私は静かに聞いていた。

残念だがこいつの言う通りだろう。確かに私のように地味な奴は、きっと物語の主役のヒーローには到底なれない。そんな事は誰よりも自分が一番よく分かっている。それがコンプレックスだったこともある。

でも、それでも―――

 

「そう。それでも……」

「ハァ、ハァ……うん?なんですって?」

 

私の言葉に反応してシュバルツの蹴りが止んだ。その一瞬の隙に私は懐からあるものを取り出すと、シュバルツの顔面に向けて放った。それが見事に直撃したシュバルツは何が起きたのか分からず慌てふためいた。

 

「モガモグ、モグァ!?(何です、これは!?)」

「AIBの正式採用新装備、綿菓子銃~AIB EDITION~だ。どうだ、美味しいだろ!」

「モゴマゴゴミムマメモ!!(どこまでも地味な手を!!)」

「何言っているのか良く分からないだよ!あと覚えておけ!地味だろうと、モブキャラだろうと、それでも平和を守る仕事くらいできるんだ!!」

 

私はその言葉と共に右拳を思いっきりシュバルツの顔面に叩きつけた。

さっきの陸君から受けたダメージが残っていたシュバルツにそれはトドメの一撃となった。

だが倒れながらも、シュバルツは最後の力を振り絞って床に転がったリモコンを拾うと何かの命令を入力すると、それを合図に揺れ始めたかと思えば、今度は建物の外から地響きが聞こえた。

 

「何をした!?」

「ムガガガガガ!……ミンマミンメムママ!!(フハハハハハ!……みんな死んでしまえ!!)」

 

プライドを傷つけられて自棄になったのかシュバルツが捨て台詞を吐くと狂ったように笑いだした。

私は錯乱するシュバルツに手錠を掛け、AIBの収容所に強制転送させた。

そして外で何が起きたのかを確かめるため、急いで工場の外に向かった。

 

廃工場の外に出ると、そこには土砂を巻き上げて地面の下から現れた怪獣と、それから必死に逃げる陸君たちの姿が見えた。

怪獣はアーストロンのような外見だが、頭や手足、それにしっぽなど全身に改造が施されサイボーグとなっていた。

後にアーストロン=メカレータと呼称されるこの個体は脳や筋肉に取り付けられた特殊な装置によって、シュバルツの意のままに動くよう改造が施されていたことが分かった。

そして今、アーストロン=メカレータはシュバルツの最後の命令によって計画を邪魔した陸君たちを抹殺しようと迫っていく。

 

「ぜぇ、ぜぇ……何なのよコイツ!?」

 

にこちゃんは既に息も絶え絶えで足もろくに上がっておらず、遂に足がもつれて転んでしまった。

それに気づいた花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃんの3人が急いで助けに向かうが、無情にもアーストロン=メカレータの足が4人の頭上に振り下ろされようとした。

駄目だ、ここからでは間に合わない。

私はこれから数秒後に起こる惨劇を想像して目を背けようとした。だがその時、

 

「ジーっとしてても、ドーにもならねえ!」

 

彼女らを庇うように立ち塞がった陸君が叫ぶと同時にその身体は眩い光に包まれ、その姿を巨人―――ウルトラマンジードへと変えた。

ジードは巨大化する勢いを利用してアーストロン=メカレータを突き飛ばした。足元から突然巨人が現れたことでアーストロン=メカレータは大きくバランスを崩して転倒したのを確認すると、ジードはゆっくり彼女たちの方へ振り向いた。

陸君がウルトラマンジード。

話の展開が急すぎて、脳の処理が追い付いていない。

確かにウルトラマンが他の星に滞在するため、現地の生命体と同化、もしくは擬態することがあるというのは聞いたことがあったが、まさか高校生の少年だとは思いもしなかった。

どうやら彼女たちも知らなかったようで、自分たちを助けてくれたウルトラマンが朝倉陸その人であることに戸惑いを隠しきれていない。

 

ジードと花陽ちゃんたちの間に気まずい空気が流れる中、それを掻き消すようにアーストロン=メカレータが怒りの咆哮をあげた。

ジードもファイティングポーズを取って真っ向から突撃していったが、アーストロン=メカレータは改造によって強化された強靭な腕力、取り付けられたミサイルなど多種多様な武装でジードを攻め立てていく。

その的確な攻撃の前にジードは防戦一方となってしまい、遂に口からの火炎放射を受けて倒れてしまった。

カラータイマーが赤く点滅を始め、ジードは苦悶の声をあげて今にも力尽きようとしていた。

 

「朝倉先輩、頑張って下さい!」

「頑張るにゃー!りっ君先ぱーい!」

「先輩はウルトラマンなんでしょ!だったら立ち上がって!」

「負けたりなんかしたら承知しないわよ!」

「モコ!モコ!!」

「陸!みんなが応援してくれているんだよ!立って!」

 

みんながジードを―――いや、陸君に応援の声を送った。

その声で自らを奮い立たせたジードは、残された力を振り絞って再び立ち上がる。

その姿に私の心もいつの間にか熱くなっていた。

格好いいじゃないか!みんなの声援を受けて立つ。それがヒーロー、それが主役だ!

だが、このまま戦っても同じようにやられてしまうだけだ。ならば(モブキャラ)のやるべきことは1つ。ヒーローを勝利させることだ!

私は秘密兵器を取り出した。

 

「行け!ドローンガラオン!!」

 

ドローンガラオン―――我らがミジー星人の先人がかつて使用した侵略ロボットであるガラオンのデータを基にAIBの技術で製作した全長10cm程度のドローン兵器だ。

常に携帯できるように折りたたまれてポケットに収納できるようになっている。

 

ARコントローラーでドローンガラオンを操ると、アーストロンの頭部にある装置をスキャンした。

予想通りこれは制御ユニットとなっていて、ここを破壊してしまえばアーストロンは武装を使うどころか動くことさえできなくなる。

それが分かった後は早かった。

ドローンガラオンから流された電磁波によって頭部ユニットが破壊されたことでアーストロン=メカレータは活動を急停止した。ジードはアーストロンが急に動きを停めたことに首を傾げていたが、残り時間が後僅かだったこともあり、そのまま必殺光線を放った。

その一撃を受けてアーストロン=メカレータは木っ端微塵に吹き飛んだのだった。

 

アーストロン=メカレータを倒したジードは光の粒子になって消えた。そしてその粒子が一か所に集まると陸君の姿に戻った。

にこちゃんと凛ちゃんは「どういう事なのか説明しろ!」と陸君とペガ君を質問攻めしているが、花陽ちゃんと真紀ちゃんはどこか納得したような表情だった。

少し離れた場所からその様子を眺めていると、ゼナ先輩から通信が入った。

 

「ゼナ先輩。どうしたんですか急に?」

「(首謀者のノワール星人を確保、さらにウルトラマンジードと怪獣との戦闘があったというのに報告が一切ないとはどういうことだ?)」

「あっ!?……すいませんでした」

 

そういえば妨害電波のせいで一切報告ができていなかった。

この厳しい口調……もしかして、またゼナ先輩に叱られる!?

 

「(……まぁ無事だったならそれでいい)」

 

あれ?普段だったらさらにお小言が続くはずなのに、今日はすんなりと終わってしまい拍子抜けしてしまった。

……もしかして私の事を心配してくれていたのだろうか?

ゼナ先輩には普段叱られてばかりだから、そんな言葉を掛けられるとかえって緊張してしまう。

 

「(ところで、ウルトラマンジードは飛び去ったのではなく忽然とその姿を消したと報告があったのだが、何か見ているか?)」

「ギクッ!?」

 

……どうしよう?何かどころかその正体まで見ちゃったんだけど……。

現在ウルトラマンジードへの見解はAIB内でも否定的な意見が多い。

他のウルトラマン同様に宇宙の秩序を守る存在と見なす者もいるのだがそれは少数派で、クライシス・インパクトの恐怖が残るこの宇宙では、ベリアルとの類似点を多く持つジードに嫌疑の目が向けられるのはある意味必然だった。

故に上層部からはウルトラマンジードに関することはどんな些細なことであっても全て報告するように指示が出ている。その正体とならば尚更だ。

 

「えーと、実は……」

 

だけど言いかけて私は自分に待ったをかけた。

本当に言うべきなのだろうか?

もし私が報告してしまえば、陸君は常にAIBの監視下に置かれることになる。いや、そのまま彼の高校生活を奪ってしまうだろう。

だけど今日1日という短い時間の付き合いではあるが、彼が悪い子ではないことぐらい分かったつもりだ。

そんな彼から日常を奪うのは正しいことなのだろうか?

 

「(どうした?)」

「……いえ、すいません。何も見ていません。ピカッと光って消えちゃった……みたいな」

「(……そうか)」

 

悩んだ末、私は報告しないことを選んだ。

間近でジードが戦う姿を見ていたけど、やはり私にはジードが、何より陸君がAIBの上層部が危惧するような存在にはどうしても思えなかったからだ。

ゼナ先輩は上手く誤魔化せたようだしこれで全て解決―――

 

「(ところで、ルナーは確保できたか?)」

「ギクギクッ!?」

 

―――してなかった。

そういえば私の本来の任務はモコを回収する事だった。

でもシュバルツから体を張ってモコを護ろうとしたあの子たちを見てたらモコを引き渡せなんて、やっぱり言い辛い……というか心苦しくて言いたくない。

私はダメもとでゼナ先輩にお願いしてみることにした。

 

「あの、ゼナ先輩。ルナーを……モコをあの学校に住まわしてあげちゃ駄目ですか?」

「(どうした、急に?)」

 

私はモコがどれだけあの子たちに大切にされているか話した。

それにモコもあの子たちから離れたがっていない。もしこのまま回収しても、もしかしたら施設を脱走して戻ろうとするだろうとゼナ先輩に伝えると、

 

「(お前の意見は分かった。ルナーがあの学校で暮らすのを許可する)」

「やっぱり駄目ですよね……って、本当ですか!?」

 

まさかのOKだった。

いやー、さすがゼナ先輩!話の分かる宇宙人だ。

 

「(ああ。ただし監視をつけるのが条件だ」」

 

監視かぁ。まぁ確かにそれが落とし所だろう。

 

「分かりました。それではすぐに派遣する人員の手配を……」

「(何を言っている?監視はお前がやるんだ。ちょうど良かった。お前にはこれから音ノ木坂高校に潜入してもらう)」

「ええっ!?」

 

予想外の展開になってきた。

私がモコの監視のために音ノ木坂高校に?

それってつまり……現場担当を外されるってこと!?左遷?私、左遷なの!?

突然の異動命令にパニックになった私は、とにかく監視役を撤回させるべく説得を試みた。

 

「私、さっきそこの生徒さん達と知り合いになっちゃたから無理ですよ。しかも保健所の職員って名乗ったのに、教師として行ったら変ですよ!」

「(問題ない。お前には保健師として保健室の教員になってもらう。“元”保健所の職員と知られているならば肩書きに信憑性も持たせられるし好都合だ。早速手配しておく)」

「保険のセールスや保健所の職員といい、AIBは“ほけん”の仕事以外で偽装方法を知らないんですか!?」

 

とんとん拍子に話が進んでいく状況に、つい前々から思っていたことをツッコんでしまった。

どうやらゼナ先輩の頭の中で私が行くことは確定事項らしい。

……ゼナ先輩にとって、私はもう不要という事なのだろうか?

 

「ゼナ先輩……。私、左遷ですか?現場担当を外されるような悪い事しました?確かにゼナ先輩に隠れてこっそり仕事サボったりしたことありますけど、きちんと仕事はしていたはずです……。お願いします!私、これからも地味に平和を守っていきたいんです!」

「(サボりの件は帰った後に詳しく聞かせてもらうとして、お前は一体何を勘違いしている?)」

「え!?」

「(お前を音ノ木坂高校に潜入させるのはある人物を内偵してもらうためだ。その人物の名は……)」

 

通信が終わり、私には次の任務が下された。

果たしてどんな任務になるのやら。

ウルトラマンの通う学校への潜入―――上等ではないか!

それに私の独断で正体を伏せることにしたが、もし彼が本当に危険な存在だったら即座に報告することができるし。

だが―――

 

「おーい!地味井さーん!!」

 

私を見つけた陸君がこちらに手を振って呼んでいる。

 

―――だがその心配は無用だろう。

仲間と一緒にはしゃぐ陸君の姿は、とてもさっきまで怪獣と戦っていたヒーローだとは想像もできないくらい、年相応の高校生そのものだ。

それを見て、私は自分の判断が間違えではないと確信する。

彼がこの宇宙の脅威になるはずない!仲間と共に笑いあう少年の顔が確かにそう物語っていた。

 

 

 

~~~

 

 

 

こうして地味井はその後すぐに音ノ木坂高校に保健の先生として赴任することになった。

左遷だなんだと言っていたが、保健室に来る生徒の怪我や悩みの解決する日々は中々にやりがいがあるものだった。

むしろ蓋を開けてみれば日中は学校の仕事、それ以外はAIBの仕事と前にも増してハードな仕事になっていた。しかもここ最近はこの学校の周辺に事件が多発するものだから休む暇もなく、ハードを通り越してブラックと言っていい。

 

「……まぁ宇宙人が駆け込める労基なんか無いんだけどねぇ~っと。ほい、出来上がり!」

 

ようやく提出する報告書を書き上げ、ゼナに送信する。

地味井が一息ついてコーヒーを入れようとしたその時、ゼナから連絡が入った。

 

「(送られてきた物を読んだ。何だあれは?)」

「何って、この前ゼナ先輩に提出するように言われた、最近の事件を纏めた報告書です」

「(……これは報告書ではなくただの日記だ!大至急書き直して再提出しろ!)」

「ええ~!?そんなぁ……」

 

せっかく時間をかけて作った報告書の再提出を命じられ、まるで宿題をやり直しを食らった生徒のように項垂れた地味井にゼナは呆れながら本題に入った。

 

「(それで内偵の結果はどうだ?)」

 

ゼナの問いに、地味井も即座にエージェントの顔に切り替え調査結果を報告する。

 

「間違いありません。ゼナ先輩の見立て通り、伊賀栗 令人―――彼がウルトラマンゼロです」

 

 




~キャラ設定~
ゼナ先輩
AIBの上級エージェントで地味井の上司。人間に擬態しているが、シャドウ星人は表情筋がないため無表情。非常に優秀な人なのだが、裏設定では方向音痴で可愛い物好きだったり、TV本編をよく見ると結構おちゃめな一面もある。

モコ
ニュージェネで新たに生まれたマスコット怪獣。普段はアルパカ小屋で飼育されている。頻繁に小屋を抜け出すが、学校の敷地から外へは出ないよう言いつけられている。アルパカの頭の上に乗るのが好きだが、一番のお気に入りはにこの頭の上。


~次回予告~
陸「突如現れた謎の怪獣に倒された僕。
  伊賀栗先生はなんと自分が代わりに戦うと言い出した。
  そんな中、花陽の口から明かされるトンデモナイこととは?」

次回、「僕らのやり方で」
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