「あの事件の後、モコは1度保健所に連れて行かれちゃったんだけど、地味井さんが約束通りモコをこの学校で暮らせるように手配してくれた。そして地味井さんも一緒に保健所からこの学校に出向してきたってわけ」
陸の説明が終わると、一緒になって聞いていた穂乃果が地味井のことで気づいたことを口にした。
「地味井さんって事件が起きると、いつもその近くに居るよね」
「あー、確かに居ますね」
「私、この前も怪獣が出た時に会ったよ。『怪我した人を助けないと。私、保健の先生だから!』って言ってすぐにどこか行っちゃったけど」
海未とことりもうんうんと頷いて答えた。
「でも、いっつも肝心な場面でいないにゃ!」
「確かに。モコの時だって、真っ先に廃工場に入ったのに宇宙人の秘密基地を見つけられなかったみたいだし」
にこと凛はそのおかげで酷い目に遭ったと言いたいようだが、「あの時車で待っているように言われたのに飛び出したのは凛で、偶然秘密基地に入った上に罠にかかって事態を悪化させたのはにこだよな……」と陸は心の中でツッコんだが、実際にそれを言うと後が面倒なので黙っておくことにした。できるマネージャーは空気が読めるのだ。
「地味井さんのおかげでモコを学校で世話してもいい事になったんやから、もう少し感謝してあげてもええんやない?」
希がタロットカードを見ながら訳知り顔でにこと凛を窘めた。
「でもモコを世話することは生徒会に事前に話が通ってなかったから、正直複雑な気分だったわ。また学校から除け者にされたような気がして……」
『除け者とは?』
当時の事を振り返って、苦笑いを浮かべていた絵里にレムが興味を示した。
「穂乃果たちがスクールアイドルをやって学校を救おうとしていたように、私も生徒会として学校の為に何かしようとしていたんだけど、理事長が何故か認めてくれなくて焦っていたの」
「あの頃の絵里は正直トゲトゲしてて、ちょっと怖かったよな」
「それはっ!?……生徒会の活動は認めてくれないのに、μ’sの活動は簡単に認められるから、何だか悔しくて……」
絵里が顔を赤くして弁解したが、自分でも思うところがあるのか少し恥ずかしそうだった。
『それがどうしてμ’sに加わることになったのですか?』
「あ、それじゃあ絵里と希がμ‘sに入った時の話をしようか!まずはね―――」
~~~
それはいつもの朝。いつもの待ち合わせ場所で、いつものように遅刻してくる穂乃果を、ことりと海未と一緒に待っていた。
でもちょっと違うことがある。いつもだったら遅刻している穂乃果にブーブー文句を言っているところだけど、今日の僕はそんな小さなことには腹を立てないことだ。むしろ、いつもの僕がどれだけ器が小さかったのか反省しなくては……。
「りっ君どうしたの?何だかすごく嬉しそうにしているけど?」
「ニマニマして……何か悪い物でも食べましたか?」
ことりが不思議そうに聞いてきた。やっぱり顔に出ていたようだ。それはそうだ、自分でも頬骨が上がっているのが分かるもん。あと海未、失礼だぞ!でも笑って許してあげよう。なぜなら―――
「ふふふ……。実は今朝のニュースで、ジードの支持率がいよいよ40%を超えたんだ!このままいけば直に50%越えも確実だな!」
そう。テレビでやっている世論調査によると、ジードの支持率が遂に過半数越え間近に迫ってきたのだ。最初の頃は散々な言われようだったけど、伏井出先生がジード支持を表明してから徐々に支持する声も増え始め、怪獣騒ぎを解決する度にその声は大きくなっていった。
「わぁ、おめでとう!!」
ことりは素直に祝福してくれた。天使かな?
それに引き換え海未ときたら……
「調子に乗りすぎです!こうやってみんなが認め始めてくれた時だからこそ、気を引き締めて今まで以上に平和のために励んでですね……」
と、せっかくのいい気分に水を差すようなことを言う。まるで母親だな。
「聞いているのですか、陸!!」
「分かってるよ、母さん……」
「誰が母さんですか!?」
海未が顔を赤くして僕を怒った。怒る海未をことりが「まぁまぁ……」となだめているうちに穂乃果がやって来た。
「ごめーん、遅くなっちゃった」
「いつもの事とはいえ、穂乃果、もう少し早く起きられないのですか?」
「やっぱり母さんじゃん……」
その時、星雲荘で留守番していたペガから通信が入った。
「陸、大変だよ。これ見て!」
スマホに送られてきた映像を見ると、怪獣が街で暴れていた。
その映像の横に、レムが解析したデータが載せられている。
怪獣の名はサンダーキラー(レム命名)。
以前に僕が倒した宇宙怪獣エレキングに、異次元超人エースキラーという奴の力を合わせた合成怪獣らしい。
見た目はエレキングが金色の甲冑を着ているかのような姿だが、左手は大きなカギ爪となっている。あれをまともに食らったら痛いどころじゃ済まないだろう。でも動きはのろそうだし、スピードで攪乱してやれば問題ないだろう。
おっと、呑気に分析をしている場合じゃない。早く行かないと街が危ない。
「行かなきゃ。みんなは先に学校行ってていいから」
「うん。気を付けてね」
「ああ!よし、目指せ50%超え!」
「そんな浮ついた気持ちでは足元を救われますよ……」
海未がまた僕のやる気を削ぐようなことを言った。
大丈夫だって、まったくお母さんは心配性だなぁ……。おっと、早く行って倒さないと学校に遅刻しちゃうよな。
僕は急いでジード<プリミティブ>に変身し、サンダーキラーの所に飛び立った。
現場に到着した僕は暴れ回るサンダーキラーの姿を上空から捉えた。
レムからの情報だと付近の避難は既に完了しているらしい。流石にこう何度も怪獣災害が続くと、みんなも避難には慣れたのか(慣れたいものではないけど…)行動が迅速で助かる。これで心置きなく戦えるってものだ!
僕は敵目掛けて一気に急降下。不意を突いて速攻で片付けようとしたが、サンダーキラーが突然こっちを向くと口から黒い三日月状のカッター光線を連射してきた。
『うわっ!?』
間一髪のところで初撃を回避したが、続けざまに放たれたカッター光線を全て避けることはできず、そのうちの1発が肩に命中し地上に落下してしまった。
どうにか受け身を取って着地できたが、サンダーキラーが間髪入れず襲い掛かってくる。見た目の鈍重さとは裏腹に意外と素早い。どうにか応戦したが、電撃を帯びた敵の攻撃に僕は苦戦を強いられた。特に左の大カギ爪は注意していたのにも関わらず、背後からきた尻尾の不意打ちで怯んだ瞬間、その一撃をくらってしまった。その攻撃は想像以上に凄まじく、切り裂かれた激痛と電撃の痺れによるダブルパンチで意識が飛びそうになった。でもここでやられるわけにはいかない。それにカッコ悪いところなんか晒されたら、折角の支持率がパーだ。
『カギ爪が武器ならこれだ!』
僕はセブンとレオのカプセルを使い硬質の身体を持つ<ソリッドバーニング>に変身した。これならカギ爪だろうがへっちゃらだ!
僕はスラッガーを右腕に装着し背中のブースターを噴かせて飛び込むと、必殺のブーストスラッガーパンチを繰り出した。
完璧なタイミングで放った一撃は確実にサンダーキラーを捉え、次の瞬間には真っ二つに切り裂いていると僕は確信した。だが―――
『何!?』
肉を切り裂く感触の代わりに、硬いものとぶつかった感覚とガキンッ!という金属音が周囲に響き渡った。何が起きたのかすぐに理解できなかったが、次の瞬間、僕は自分の目を疑った。
なんとサンダーキラーは僕の攻撃を完璧に見切ると、その大きなカギ爪でスラッガーを受け止めていたのだ!
(こいつ、怪獣のくせに賢いのか!?)
そのまま押し切ろうと全身の力を込めブースターも全開にしたが、サンダーキラーはびくともしない。
『くそっ、負けるもんかぁああ!!』
スラッガーと大カギ爪の火花散るつば迫り合いが続く最中、突然サンダーキラーが口からカッター光線を放った。つば迫り合いに勝つことに躍起になっていた僕は、その奇襲に反応するのが遅れてもろにその攻撃を食らってしまった。
攻撃を受けて怯んだ僕に、今度はサンダーキラーの尻尾が身体に巻き付いてきた。
『しまっ!?』
気づいた時にはもう手遅れだった。身体に巻き付いた尻尾から、エレキング以上に強力な電流が全身に流された。咄嗟に額のビームランプから光線を撃って拘束を解いたが、体力を激しく消耗してしまいカラータイマーの点滅が始まった。
手強い。まるで詰将棋のように僕の行動の2手先、3手先を読んで攻めてくる。……だったら、読まれていてもどうにもならない攻撃で勝負を決めるしかない!
『これならどうだ!ストライクブーストォォォ!!』
ふらふらになりながらもどうにか起死回生のストライクブーストを放った。だがサンダーキラーはそれを平然と胸で受け止めると、光線を吸収しそっくりそのまま撃ち返してきた。
予想もしない反撃に度肝を抜かれた僕は、回避することもできず直撃を受けて吹っ飛ばされ、そこにあったビルを下敷きにして倒れ込んでしまった。
(マズい、動けない……)
度重なるダメージと必殺技を破られたショックで、もう僕は立ち上がる力が無かった。そこへサンダーキラーがカギ爪を向けて僕に近づいてくる。
「もう駄目だ……」と諦めかけた―――その時
『だらしがねぇぞ、ウルトラマンジード!』
聞き覚えのある勇ましい声と共に、ウルトラマンゼロが僕とサンダーキラーの間に割って入るように現れたのだ。
『貴方は……ウルトラマンゼロ!?』
『へへ、お前はそこで大人しく寝てな。ここは俺に任せろ!』
どうにか上半身だけを起こした僕にゼロはサムズアップで答えると、頭部のゼロスラッガーをゼロツインソードに合体させてサンダーキラーに立ち向かった。
ゼロツインソードと大カギ爪が激しくぶつかり合い、一進一退の攻防が続く。だが流石のゼロも、強敵サンダーキラーを前に攻めあぐねているようだ。
『チッ、やるじゃねぇか!本調子じゃないとはいえ、この俺とここまでやり合うとは……。仕方ねぇ、こうなったら奥の手だ!』
このままでは埒が明かないと見たゼロは、切り札を出すことに決めた。
ゼロツインソードをゼロスラッガーに戻したゼロは、それを自身のカラータイマーに装着した。すると2本のスラッガーがエメラルド色の輝きを放ち、光がゼロを包み込んだ。何かを察したサンダーキラーはゼロに向かって駆けだすと、その勢いのままカギ爪を振り下ろした。
だが、その攻撃がゼロに傷をつけることはなかった。ゼロの右腕に装着された剣が攻撃を受け止めていたからだ。いや、装着されたのは剣だけではない。光が晴れて現れたのは、白銀のアーマーを身に纏ったゼロの姿だった。
『ゼロスラッガーギア!キーパーフォーム!!』
ゼロスラッガーギア―――ゼロがかつての戦いで使っていた、ゼロスラッガーを変化させた鎧だ。
<キーパーフォーム>になると防御力とパワーが上がり肉弾戦に有利になる。ブレスレットやタイプチェンジができるようになってからは使わなくなっていたらしいが、それらが使用できなくなっている今、再びこの力を使うことを決めたのだ。
<キーパーフォーム>になったゼロはそのパワーと右腕の剣“リフレクションブレード”でサンダーキラーを追い詰めていく。
だがサンダーキラーも負けじと、強力な電撃をゼロに放った。ゼロはリフレクションブレードで受け止めるが、その威力に身体が徐々に後ろに押されていく。そして戦闘で巻き上げられた塵に引火して生じた爆発がゼロを包み込んだ。
サンダーキラーが『やったか!?』と勝ち誇ったような表情になったと感じたのは、僕の気のせいではないだろう。
だが爆炎の中からゼロは何事もなかったように飛び出すと、さっきまでと違う素早い動きで接近し、すれ違いざまに一撃を与えるとサンダーキラーの背後に着地した。ゼロはゆっくり振り返ると、己の姿をサンダーキラーに見せつけた。なんと今度は青いアーマーを身に着けている。
『ゼロスラッガーギア!スーパーフォーム!!』
<スーパーフォーム>は攻撃とスピードに特化したスマートな形状の青いアーマーだ。
それを身に纏ったゼロはまるで地面を滑るかのような動きと、ブレイクダンスの如き足技を披露する。何発もの痛烈な蹴りの前に、さしものサンダーキラーが怯んだ。それを好機とみたゼロは、アーマー胸部のスターマークにエネルギーを集中させる。
『トドメだ!エメリウムスタービィィィム!!』
ゼロがトドメの一撃を発射した。エメラルドに輝く星形の光線がサンダーキラーに目掛けて飛んでいく。
だがそれが届く直前、サンダーキラーはまるで煙の様に忽然とその姿を消してしまった。
何かの特殊能力ではないかとゼロは警戒したが、直後にレムから怪獣の反応は周囲に無いと連絡が来た。
それを聞いた僕は、残りエネルギーがギリギリになっていたからか、それとも命拾いした安堵からか、変身が勝手に解けて地面に倒れ込んでしまった。
『おい!?』
僕が突然人間に戻ったことに驚いたゼロも慌てて変身を解いた。するとゼロ以上に慌てふためく伊賀栗先生が僕の目の前に現れた。
「ちょっとゼロさん!?勝手に変身したり戻ったり…って朝倉君!?ちょっと、しっかりして!」
先程のダメージで立つのもやっとの僕に、伊賀栗先生は駆け寄ると肩を貸してくれた。
「先生……本当に先生がウルトラマンゼロだったんですね……」
「まぁ色々あってね。それより朝倉君、どこかで怪我の治療をしないと」
「ああ、それなら……」
僕が言いかけると突然目の前に星雲荘のエレベーターが出現し、中から先に学校に行ったはずの穂乃果たちが出て来た。
「りっ君大丈夫?」
「あれ、伊賀栗先生?」
「どうして先生がここに?」
「高坂さん、南さん、園田さん!?君たちこそどうして!?というか後ろのそれ、何!?」
みんな状況についていけず互いに質問をし合うだけで話が一向に進まない。そして最終的に、
「「「どういうことなの(なんです)、りっ君(陸)(朝倉君)!?」」」
やっぱり僕に質問が集まってきた。いや、ぼくに聞かれても困る。
それにまずは―――
「星雲荘で休ませて……」
『……とまぁこうして俺は令人と一つになったんだ。要するに、Win―Winの関係ってことだな!』
今朝の騒ぎの影響で1限が休みになった。
その時間を使ってお互いの経緯を説明したのだが、普段の柔らかい雰囲気の先生とゼロのギャップに、にこの事件の時に聞かされていたとはいえ戸惑ってしまった。
穂乃果たちは先生と入れ替わったゼロに何度か会ったことがあるらしく、驚くどころかむしろ納得していたけどね。
その話を聞きながら僕はペガに手当てしてもらっていたのだが、サンダーキラーにやられた傷を消毒された痛みで飛び跳ねた。
「いってぇ!?ペガ、もっと優しくやってくれよ」
「ごめん、ごめん。でも今日は派手にやられちゃったね……」
確かに……。多少の傷だったらジードから戻ると勝手に治ってくれるのだが、ペガの言う通り今日は違った。カギ爪の傷もそうだし、何度も電撃を浴びたせいでまだ痺れているような気がした。
「ペガが謝る必要ないですよ。陸の力が足りてなかったんです。明日から特訓のメニューを増やさないとですね」
「いや、これ以上増やされると戦う前に死ねるんだけど……。そ、それよりレム、ジードの評判がどうなっているか調べてくれないか?」
海未が地獄の特訓を考え付く前に話題を変えるため、レムにエゴサを頼んだ。
既にテレビのニュース速報で怪獣災害が報じられていたのをレムがスクリーンに出してくれたのだが、その内容はゼロの事がメインで、ジードの事はまるで添え物のような扱いだった。
ネットの方も、今朝の騒ぎを目撃した人達が「格好良かった!」、「ヒーローはやっぱああでなくっちゃ!」、「強い上に切れ長の目がイケメン!嫌いじゃないわ!!」とウルトラマンゼロの活躍をしきりに讃えている。
……それに引き換えジードへのコメントは辛辣だった。
やれ「弱い」だの「いいようにやられて情けない」だの、挙句の果てに「あの目つきの悪い面構えが気に入らない」ときた。ほっといてよ!それに目つきが悪いのはゼロだって似たようなものじゃないか。
『あー……まぁ、ウルトラマンやっていりゃあ色々な事があるさ。気にするな』
ゼロが僕の事を気遣って慰めの言葉を掛けてくれたのだが、それはかえって僕を惨めな気分にさせた。
「……ゼロはずるい」
「は?」
だからつい、ゼロに八つ当たりしてしまった。言った後に「しまった」と後悔したが、口から出た言葉はもう取り消すことはできない。それに、湧いてくる嫉妬の感情を抑えることもできなかった。
「だって最後の方にサッと出てきて、ちょこっと戦っただけじゃないか!」
「それはお前がやられそうだったから―――」
「やられてなんかいない!……ちょっと休憩して、これからどう逆転しようか考えていただけだ。それなのにゼロが突然出てきて、しかもこれ見よがしにパワーアップまでしちゃって!」
「おいおい……。あの怪獣は結構手強かったぞ。それに手負いのお前を庇いながら戦っていたんだ。出し惜しみなんかしてられるか」
「ぅ~~~、とにかく!あんな怪獣、僕1人で十分倒せ―――」
「無理ですね!」
癇癪を起した子供のような僕の言い分を海未が一蹴した。
「あなたは完全に押されていました。あのまま戦っていても勝ち目はありません」
「光線も全く効いてなかったし……」
「凄かったよねぇ!こう、胸でガーッ!って受け止めて、それバーッ!って打ち返して」
海未とことりにきっぱり否定され、もう僕の立つ瀬は無かった。穂乃果に至ってはご丁寧にジェスチャー付きで怪獣の凄さを解説しているし……。
「みんなには分からないんだよ、ウルトラマンの大変さなんて!おかげで勉強も落ち着いてできないから、この前の中間テストも散々だったし……」
「おいおい、大丈夫か?論点がズレてるぞ?」
「それに成績が下がったのは、普段からきちんと予習復習をしないからです」
「ズレてないよ!……僕が言いたいのは、そんなに最初から全部上手くできないってことを……」
悔し紛れに言い訳してみたが、ゼロの言う通りもう自分自身で何を言っているのか分からなくなっていた。
そしてそれを黙って聞いていた伊賀栗先生が、突然ゼロと入れ替わってとんでもない事を言い出した。
「あの、僕が……僕が代わりにウルトラマンやります!」
「「「「「え!?」」」」」
その突拍子の無い発言にみんな呆気に取られてしまった。
え?先生がウルトラマンに!?
「さっき怪獣と戦ってすごい充実感でした。あんなの、生まれて初めて……」
『おいおい、ウルトラマン舐めるなよ。そんなに簡単なことじゃねぇぜ。 そんな下らない理由で―――』
のぼせ上がった顔の伊賀栗先生をゼロが咎めた。傍から見ると先生が1人でボケツッコみしているようにしか見えないけど……。
でも先生がゼロを押しのけてまた表に出てくると、今度は真面目な顔で言った。
「それだけじゃありません。生徒がこんな傷だらけになって戦っているのを見てしまったら、教師として黙って見過ごすなんてできません!今までは黙って応援しようと思っていましたが、実際にこんな姿を見てしまうと……。だから僕が戦います。僕が頑張ります!」
何だか先生が妙に張り切っているように見える。
つまりそれって、子供がこれ以上首を突っ込むと危ないから、後は大人に任せておけってこと?なんだか今までやってきた事を否定されたような気がして面白くなかった僕は、
「先生にウルトラマンができるわけないでしょ!」
と、嫌味ったらしく言ってやった。
まったく、たった1回ウルトラマンになったくらいでいい気にならないで貰いたいよね!これだから素人は……
だが今の言い方が気に障ったのか、先生も大人気なく言い返してきた。
「朝倉君にだってできるんだから、僕にだってできます」
「それってどういう意味ですか!!」
「言葉通りの意味さ。それに、生徒の安全を守るのは先生の義務だからね」
「先生は先生の仕事をしていればいいでしょ!仕事しながらヒーローなんてできっこない!きっと戦わなきゃいけなくなっても、『これから授業だから戦えませ~ん(泣)』ってなるに決まっているよ!」
「だったら君はどうなんだい?さっき自分でも言っていたけど、君の担任の先生から、急に君の成績が下がったことを相談されたんだ。学生の本分は勉強!それをウルトラマンを理由に疎かにするのはどうなのかな?」
「「~~~っ!!」」
他のみんなが子供の喧嘩かと呆れる中、僕と伊賀栗先生の火花を散るにらみ合いは遅刻寸前になるまで続くのだった……。