ニュージェネライブ デッカー編STAGE3に現地行ってきましたが、最高でした!
~~陸side~~
令人とゼロが最大のピンチを迎えている中、陸とギャラクトロンの戦いは続いていた。
夕日が沈むにつれて太陽エネルギーが少なくなっていき、カラータイマーの点滅が始まっている。レムやぺガがエネルギーの消費を抑えろと忠告をしていたが、今の陸は聞く耳を持たなかった。
『よくも……よくも、よくも!!お前だけは絶対に許さない!!』
好意を持っていた伏井出ケイに裏切られたこと、学校やみんなを狙われたこと、令人先生とゼロが攻撃されたこと―――様々な感情がぐちゃぐちゃに混ざり合っていく。そしてそれは怒り―――いや、それを超える黒い感情へと変質していった。
『うわァアアアア!!』
陸が自分の中の黒い感情を解き放つかのように叫ぶと、ジードの眼の色が青から赤へと交互に点滅を繰り返し始めたかと思うと、今度は身体の内から凄まじいエネルギーが放出され、赤黒いオーラを身に纏わせた。
それは若き光の戦士としてはあまりに異質で異常なエネルギーで、それを示すかのようにジードの身体の周囲ではバチバチと赤黒いスパークが起こっていた。
「何だ、この力は……」
陸は今までに感じたことが無い己の力に戸惑いと興奮を覚えていると、突然激しい頭痛と共に頭の中に声が響いた。
「コワセ……気ニ入ラナイ物ハスベテ!!」
……そうだ……この力が何だろうと、今はどうだっていい。あいつを倒せるなら!
ジードは腰を低く落として構えを取った。それはさながら獲物を狙う獣のようであった。
そして勢いをつけて飛び掛かると、固く握りしめた右拳を大きくかぶりを振ってギャラクトロンに叩きつける。
殴りつけられたボディからミシミシと軋む音が聴こえてくる。
だがジードは構わずその拳を打ち抜くと、ギャラクトロンは学校から数百メートル離れた場所まで吹き飛ばされてしまった。動作不良を起こしたのか、ギャラクトロンは仰向けに倒れたまま起き上がろうとしない。
陸はそんなギャラクトロンに馬乗りになると、赤雷を纏った拳を何度も降り下ろした。1撃ごとに衝撃が大地を揺るがし、遂にはギャラクトロンの装甲に亀裂が入った。
陸は最後の1撃を叩きこもうと右の拳を天高く掲げた―――その拳はいつの間にか普段の銀色ではなく、黒く変色していた。
『とどめだァアア!!』
拳が亀裂目掛けて振り下ろされ、ギャラクトロンを粉砕する―――まさにその瞬間、ジードを覆っていたあの赤黒いオーラが突然消え失せた。
途端に全身から急激に力が抜け始める。
叩きつけられた拳はギャラクトロンを粉砕すること叶わず、コーンッと鈍い金属音を鳴らすだけに終わった。
突然のパワーダウンに慌てたジードが自分のカラータイマーを見た。
気づけばカラータイマーが今までに見たことがない速度で点滅を繰り返しており、カラータイマーが赤く光っているかのような錯覚を受けた。
そしてウルトラマンの姿を維持することすらままならなくなった陸は、ギャラクトロンの腹の上で人間の姿に戻ってしまった。
「はぁ、はぁ……何でだ!?まだ3分経ってないのに!?」
まるで体力の限界まで全力疾走をさせられたかのような疲労感に襲われ、陸はがっくりと膝から崩れ落ちてしまう。
次々に起こる異変に理解が追いつかず困惑する陸の目に夕日が差し込んだ。眩しさで反射的に夕日の方へ目を向けると、その目に映ったのは夕日に照らされ赤く染まった街。
普段ならきれいに感じるその景色も、何故だか今日は夕焼けがいつもよりやけに赤く、街が血まみれになったように感じた。
敵を倒したはずなのに、陸の心に勝利への達成感や爽快感はない。あるのは胸の中で燻ぶり続ける黒い何かだ。
「くそっ!くそっ!ちくしょぉぉぉ!!」
それを吐き出すように陸は叫んだ。だが、その叫びを聞く者は誰もいなかった。
~~令人side~~
ゼロさんが死んだ……
いつも自分のことを無敵のヒーローだと言っていたあの人は、僕を庇ってあっけなくいなくなってしまった……
その事実を突きつけるように、光を失い石化したゼロアイが僕の眼前に転がっていた。
「なんだよ、これ……。ゼロさん、嘘ですよね?いつも自分で言ってたじゃないですか、『俺は無敵のヒーローだ』って……」
返事はない。何が面白いのか、乾いた笑いが自然と僕の口から漏れてきた。
そのまま呆然としている僕のもとに、講堂の中にいたはずの絢瀬さんたちが心配して追いかけてきた。
「先生!!大丈夫ですか?一体何が……っ!?」
変わり果てたゼロアイを見て、僕とゼロさんの事を知る高坂さん、南さん、園田さんはここで何があったのか察したようだ。
「……ゼロさんが、僕を助けるために……」
どうにか言葉を絞り出した僕のもとへ、手を叩きながら1人の男近づいてきた。
「自分の命を賭けて無力な人間を救う……まさに英雄的行動でしたね。お見事です、ウルトラマンゼロ」
みんなが驚いて振り向くと、そこにいたのはやはり伏井出ケイ。
奴はゼロさんを称賛するように拍手を送っているが、その実、ゼロさんを嘲笑っているのはその態度から明らかだ。
みんなが伏井出ケイに警戒、あるいは恐怖して身を縮めるなか、高坂さんが1歩前に出た。
「何でこんな酷いことをしたんですか!?」
その声には普段の彼女からは考えられない怒りが込められていた。だが伏井出ケイはそれに対して意味深な笑うと、
「ヒーローが活躍するには必要なんですよ、強い悪役が……」
先程の講演会の続きかのように答えてみせた。でもその意味が分からず、高坂さんは困惑した表情を浮かべている。
そんな彼女を見下しながら、伏井出ケイは懐からギャラクトロンカプセルを取り出した。
みんなはまた怪獣を出すのかと身構えたが、伏井出ケイはカプセルのスイッチをOFFにした。すると地面に横たわっていたギャラクトロンが忽然とその姿を消した。
「ご安心を。ギャラクトロンは先程のダメージで休眠状態です。おそらく再起動には20時間程度はかかるでしょう。それまでにあの力を引き出せるようになっておくよう貴女達のヒーローに伝えて下さい。では……」
それだけ言い残し、伏井出ケイは悠々と僕らのもとを去って行った。
~~~
姿を消したギャラクトロンについて、政府はウルトラマンジードによって倒されたと発表し、怪獣災害の警報は数時間後には解除されていた。
しかし、送電線がやられた影響で交通機関はまだ回復しておらず、安全面を考えて帰宅困難な生徒は学校で一晩を過ごすことになり、僕以外の先生たちはその対応に追われていた。
僕はというと、戦闘に巻き込まれて負傷したということで、アイドル部の部室で手当てを受けていた。
僕の手当てをしている間、園田さんの口から僕とゼロさんのことを知らなかった子たちに事情が説明された。
朝倉君がジードだと知っていた子たちは最初に驚きこそしたけど、僕の事情を受け入れることに時間はかからなかった。むしろ、矢澤さんの事件の時にゾアムルチの動きを止めたのはゼロさんだったのだと合点がいったようだ。
「あの会長?さっきから静かですけど、大丈夫ですか?」
「えぇ……信じられないことが続きすぎて、今なら何でも信じられるって気がするわ……」
一方、今日初めて色々な事情を知った絢瀬さんはすっかり疲れ果ててしまっていた。
「みんなが何か秘密にしているってことは分かっていたけど、こんな面白そうなん隠していたやなんて、後でお仕置きわしわしや……なんて、冗談言っている時じゃないんよね……」
不思議なことに、東條さんはこれといって驚いた様子は無かった。
さすがに空気を呼んで、いつものセクハ…もといマイペースな発言は控えているようだったけど。
一通りの手当てが済んだところで、コツコツと部室の窓を叩く音がした。
何かと思って高坂さんが窓を開けるとレムの端末であるユートムが室内に入って来た。どうやらレムが星雲荘から送ってくれたようだ。
ユートムから赤い光が照射され、僕の身体の状態をスキャンする。すぐに検査が終わり、レムから結果が告げられた。
『令人からはウルトラマンゼロの反応が検出されませんでした』
それはここにいる誰もが想像した―――しかし口には出さないようにしていた結果だった。
「それって……死んじゃったってこと?」
星空さんが恐る恐るレムに尋ねた。
『不明です。死亡、あるいは検知できない程にエネルギーが低下していると考えられます』
「もしそうなら、エネルギーをあげられたら復活することができるってこと?」
『不明です。仮にエネルギーを与えるとしても、そのエネルギーを作り出す手段が私たちにはありません』
レムの答えを聞き、僅かな希望を抱きかけたみんなは再び消沈してしまった。
重い空気の中、僕の口から出たのは、
「ごめん……」
誰へ向けたものなのか自分でさえも分からない謝罪の言葉だった。
でもこの時の僕はそれしか言うことができなかった。
みんなは必死に僕のことを励まそうとしてくれたが、どの言葉も僕には届かなかった。
その時、西木野さんが突然「みんな、これを見て!」と慌ててスマートフォンを机の上に置いた。
そこに映っていたのは伏井出ケイがインタビューを受けている中継映像だった。何人ものマスコミに押し寄せられながら、伏井出ケイは怪獣災害に被災したことに対するコメントを求められ、悲痛な面持ちでこう答えた。
「怪我をされた生徒の方がいなかったことだけが幸いです。あの時ウルトラマンジードが来てくれなかったらと思うと……彼こそ本当のヒーローです!ありがとう!本当にありがとう!今度怪獣が現れても、きっと彼がまた―――」
その言葉を遮るように、バンッ!!と机を叩く大きな音が部室に響き渡った。
見ると朝倉君が鬼のような形相をして画面を睨みつけている。
「りっくん、どうしたの?そんな怖い顔して―――きゃっ!?」
南さんが心配して声を掛けたが、朝倉君は無言で部室を飛び出そうとした。そんな彼の腕を掴んで止めようとしたのは園田さんだった。
「待ちなさい!どこに行くつもりですか!?」
「放せ!放せよ!」
朝倉君が声を荒げながら園田さんの手を強引に振り解こうとする。彼がここまで怒りを露にするのを見るのは初めてで、それを見ていた小泉さんや星空さんはすっかり怯えてしまっていた。
「落ち着いて下さい!あなたが行ったところで何ができるというのですか!?」
「だからって黙っていられるかよ!?あいつ、自分でやっておいてあんなことを言っているんだぞ!」
「それは……」
「やられっぱなしで悔しくないのかよ!?」
朝倉君の怒気に園田さんは圧されてしまった。普段からは考えられない彼の様子にみんなが言葉を失い、重苦しい沈黙が部室を包む。
「……悔しいわよ」
それを破ったのは絢瀬さんだった。絢瀬さんは目に涙を浮かべながら、それを必死にこらえていた。
「悔しいに決まっているわよ!目の前でみんなが怪獣に襲われて、何もすることができくて……」
それは他のみんなも同じ気持ちだったようで、絢瀬さんの言葉に全員の表情が曇っていく。
「だったら、今すぐあいつのやったことをみんなに知らせないと―――」
「冷静になりなさい!証拠も無いのに私たちが……ただの高校生が何を言っても、誰も信じてはくれないわよ……」
「だったら……せめてあいつを1発ぶん殴って―――」
「いい加減にしなさい!!伏井出ケイは世間でも有名な小説家。手を出したら、あなたは逮捕される。良くても退学よ」
「たとえそうだとしても構うもんか!」
「じゃあ廃校が決定的になるならどう!?あなたが護りたいものを、あなたが壊すことになるのよ!」
「……えっ?」
絢瀬さんから自分が学校を廃校にさせると言われ、朝倉君は何かを思い出したかのように顔から血の気が引いていた。
それでようやく落ち着きを取り戻したのか、朝倉君は絢瀬さんの言葉に耳を傾けた。
「有名な小説家に暴行を加えた犯罪者がいる学校。そんなレッテルを張られたら、入学希望者なんて来るわけない。そうなれば廃校は決定的になる。こっちから手を出せば、その時点で負けよ。だからあなたは―――私たちは伏井出ケイに何もすることができない……してはいけないの」
「……くそっ!!」
伏井出ケイの用意周到な計画に自分は敗北したことを理解し、朝倉君は力なく項垂れた。
でも生徒たちが得体の知れない悪意に利用され悔しい思いをしているというのに、僕はどこか他人事のように感じていた。
まるでテレビ番組のワンシーンを見ているかのようで、実際に怪我までしたというのに自分も当事者だと思うことができなかった。いや、そう思わないようにしていたのだろう。
その時、僕の携帯から着信音が突然鳴り響いた―――瑠美奈さんからの電話だ。出ると、今にも泣きだしそうな瑠美奈さんの声が聴こえてきた。
「令人君、無事なの!?もう、心配したんだから!」
「ごめんなさい、瑠美奈さん……」
「生きているなら良かったよ……。今どこ?すぐに帰って来て!うちの地域もたぶん避難地区に指定されるから急いで支度しないと!」
「……分かりました。すぐに帰ります」
僕は電話を切ると、そそくさと部室を出て行こうとした。でもそれを見た朝倉君に呼び止められた。
「先生!」
「家に帰らないと……家族が心配しているんだ……」
「待ってよ!ゼロは絶対に生きている。その時、ゼロと一緒に戦うのは先生だ!今、この世界を護れるのは僕らしか―――」
朝倉君が僕を必死になって引き止めようとする。だけど僕は、
「僕“ら”……?君だけだろう!」
「えっ!?」
それをきっぱりと拒絶してしまった。唖然とする朝倉君の顔を僕は見ることができず、思わず顔を背けた。
「怖いんだよ!……実際にあの場に立って、死にかけてみて分かったんだ。やっぱり僕に、戦うなんて無理だ!」
そして本音を全てぶちまけると、石化したゼロアイを机の上に叩きつけて出口に向かう。
部室から出ていこうとする僕にみんなは何か言いたげだったけど、勢いにのまれてか何も言わず道を開けてくれた。でもただ1人―――
「逃げるのですか?先生、私が生徒会長になった時に言ってくれた事を忘れちゃったんですか?」
絢瀬さんが厳しい言葉で僕を批難した。
それに対して僕はあろうことか、反射的に絢瀬さんを怒鳴ってしまった。
「……だったら……だったら僕にどうしろっていうんだ!もうゼロさんはいない!なら、僕はどこにでもいる凡人じゃないか!それに僕には家族がいるんだ!君たちのように無責任に命を懸けるわけにはいかない!無駄死になんてしたくないんだよ!!」
そこまで言ってしまってハッとした。自分の生徒に何てことを言ったんだと今でも思う。だけどもう遅い。吐いた唾は呑み込めない。
ただ、その時の絢瀬さんの表情がすごく悲しそうな顔だったことは今でも覚えている。
「家族が心配なんだ……僕は家族とこの街を出るよ、ごめん……」
僕はその場から逃げ出すように、誰とも目線を合わせず部室の扉の前まで行く。扉に手を掛けた時、背後から東條さんの声がした。
僕は背を向けたまま、ポケットからあの死神のカードを取り出した。
「東條さん……君があの時に伝えようとしたのはこのことだったんだね。君は言ったよね、『負けたらあかんよ』って。でも無理だよ……、死神のカードが示した通りこれで終わり。これが僕の運命だったんだ!」
「先生待って!あのカードの本当の意味は―――」
東條さんが最後に何かを言いかけていたが、僕はそれを無視して部室から、そして音ノ木坂高校から逃げ出した。
いったいどれだけ走ったのだろう?
気がつくと僕は街外れの人気のない裏道にいた。明かりは小さな街灯だけで、僕の足元を薄暗く照らしている。
息を整えながら、僕は自分があの死神のカードを握りしめたまま走っていたことに今さらながら気づいた。
タロットに描かれた死神が僕のことを見つめている。その顔があの伏井出ケイに重なり、僕はカードを怒りのままに破り捨てようとした。でもその瞬間―――
『何だよこれ!縁起わりぃな!』
ゼロさんの声がフラッシュバックした。それをきっかけにゼロさんとの思い出が蘇ってくる。そうだ……こんなカードでもゼロさんとの最後の思い出の品なのだ。
まだ数ヶ月しか経っていないというのに、あの破天荒な人と過ごす日々はたくさんの思い出に満ちていた。事あるごとに振り回された日々は、それはもう大変だった。できることなら早く別れて普通の生活に戻りたいと思ったことも何度もあった。
でも、いつしかそんな日々がもう僕の中で当たり前になっていたことに、ゼロさんを失って初めて気づかされた。
『令人……よく頑張ってくれたな……』
ゼロさんが最後に僕に向けた言葉が鮮明に蘇る。
よく頑張った?……違う!僕は頑張ってなどいない!本当は逃げ出したかったのに、それを言う勇気が無かっただけの臆病者だ!
だからゼロさんに頼った、いつものように護ってくれと。
そんなゼロさんのことを、僕は無駄死にだと言ってしまった。それなのに自分の生徒からは逃げ出して……どこまで情けない男なんだ、僕は。
街灯の薄暗い光に照らされながら、令人は自分の不甲斐無さに1人泣きじゃくるのだった……。
ジードの赤黒オーラ状態はドラゴンボールのスーパーサイヤ人2+新劇エヴァ破の2号機ビーストモードをイメージしてください。