ジードライブ!~起こすぜ!奇跡!!~   作:キータ

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3話 みんなのために

陸が初めてウルトラマンになった時の事を話し終えた。ただし、自分がベリアルの子供であることだけは伝えずに。

このことはウルトラマンゼロどころか、μ’sのみんなにもまだ話せていない。

いっその事、今ここで話してしまおうかと思ったのだが、

 

「あの夜は大変だったよね。あの日は学校に泊まったんだっけ?」

「ええ、初めての怪獣災害でみんな不安でしたから」

「あの時は生徒会で炊き出しとかして大変だったわ」

「今は怪獣倒されたら、すぐに家に帰ってまうのにね」

 

陸の初めての戦いを聞いて他のメンバーも当時の事で話し始めてしまい、タイミングを逃してしまった。

 

怪獣災害――今となっては慣れてしまったが(慣れたいものでもないが)、当時はみんな不安で仕方なかった。そしてそれはジードに対してもだった。

 

「あの頃よりはだいぶマシになったけど、ジードへの批判ってまだあるのよね」

「でも陸先ぱ、陸君は戦ってくれたんだよね。みんなのために」

 

1年生の西木野真姫と小泉花陽が当時のジードへの風当たりの悪さを思い出してフォローする。

 

「ありがとう。でも最初の戦いはみんなのためというよりも自分のために戦ったようなものだったんだ。」

 

だから本当の始まりはきっと、数日後に起こったあの事件なんだろう……

 

 

 

~~~

 

 

 

ニュース速報を皮切りにテレビは勿論、ネット上でも巨人と怪獣の話題で溢れていた。

一部ではあの巨人こそがウルトラマンなのではないかと話題に出始めている。

 

だが残念なことに世間の評価は全体的に好意的なものより、

「目つきが悪い、悪人面だろ、これ」「バカ野郎!なんてヘタクソな戦い方だ!!」「デカ物同士の喧嘩なら他所でやれ!」などなど批判的な意見が主であり、中でも1番多かったのは「ベリアルに似ているから信用できない」という意見だった。

 

「これじゃ僕が悪者みたいじゃないか!」

 

テレビのコメンテーターも僕の悪口を言っている。

聞いているとムカムカしてきたのでテレビを切った。

せっかくの飯が不味くなる。……カップ麺だけど

 

「決めた、もうウルトラマンにはならない」

 

そうだ、ウルトラマン辞めればいいんだ。そもそも僕が戦う義務も無いし。頑張って怪獣を倒しても、称賛されるどころか文句言われるくらいなら辞めてしまおう。そうしよう!

よし、なんかスッキリした。

 

「本当にいいの?ヒーローになれたって喜んでたじゃん」

「いいの!今日からまた普通の高校生に戻ります!」

 

僕はペガにそう宣言して、腹にたまったモヤモヤごとカップ麺のスープを飲み干した。

 

(ベリアルの子供がヒーローになれるわけないじゃないか……)

 

 

 

ウルトラマン引退宣言から数日後、僕はまた穂乃果の家に行くことになった。何か相談したい事があるらしい。

おばさんからも「友達の家で厄介になっているなら帰ってこい。」と言われてたから説明しなくてはならない。

何か上手い言い訳を考えないとな……

 

着くとお店に穂乃果とおばさんがいた。おばさんは「店が終わったら今後どうするか話すから待ってて」と言い、穂乃果が僕を2階にある自分の部屋に連れていく。

 

前から思っていたが簡単に部屋に招いたりして、穂乃果は僕のことを男子と思ってないのではないか?

まぁ影の中にペガもいるから2人きりになることはないのだが……

そんなことを考えながら部屋に入ると、ことりと海未が既に部屋にいた。

 

「あっ、りっ君おかえり」

「おかえりって、僕は呼ばれてきただけだよ」

 

ことりが笑顔で僕に言った。穂乃果の家に帰ってきたと勘違いしたらしい

 

「寮は怪獣に潰されたのに大丈夫なんですか?」

「いや、あ、新しい下宿先を探したから大丈夫だよ。それより穂乃果、相談って?」

 

海未の質問から強引に話を逸らした。

さすがに秘密基地に住んでますなんて言えないもんな

 

「それがね……」

 

穂乃果が言うには、どうやら怪獣災害の日から雪穂の様子が変らしい。

話を聞こうとしてもはぐらかされるし、部屋からも出ようとしないらしく心配になって僕達を呼んだというわけだ。

 

「なるほど、確かに心配ですね。上手く話を聞ければいいのですが……」

「いい考えがあるよ」

 

ことりが笑顔で僕を見た。

そして僕を連れて隣にある雪穂の部屋の前までいくと、

 

「雪穂ちゃん、りっ君が買い物に付き合って欲しいんだって!」

「えっ!?」

 

雪穂の声の後に何やらガタゴトと大きな物音が聞こえてきた。

そして数分後、部屋から雪穂が出てきた―――何故かおしゃれして

 

「いってらっしゃい!」

 

事態についていけず困惑する僕を、ことりは満面の笑みで送り出した。

 

 

「それで陸兄さん、何を買いに行くの?」

「(え、え~と……そうだ!)あのさ、この前の怪獣騒ぎで文房具やカバンが無くなっちゃったから新しいの買いに行きたいんだ。選ぶの手伝ってくれる?」

「もー兄さん、いくつなの?まぁ兄さんが自分で選ぶとドンシャイングッズ買ってきそうだけど」

「ハハハ…… 否定できないな」

 

ことりのお膳立て(無茶振り)で、僕は雪穂と買い物に出かけることになった訳だが当然無計画だ。

咄嗟に考えた理由は自分でも苦しいと思うけど、僕は女の子を連れだす気の利いた台詞がポンポン出て来る程プレイボーイではないんだ!

それに文房具やらカバンは買い直さないといけないから、嘘は言っていない。

ただ雪穂がその理由で納得されてしまったことに、兄貴分としての威厳が傷ついたけど……

 

「陸兄さん、この服どうかな?」

「なぁ雪穂、いつまで続くんだ……?」

「何言ってるの!兄さんは放っておくといつも上下デニムの着た切り雀なんだから、似合うコーディネートを考えてあげないと!」

「普通は女の子の服を選ぶのが定番じゃ?」

「だって兄さんは何着ても『うん、似合ってる』としか言わなそうだもん」

 

文房具やカバンも買い終わり、そのまま僕の服を選ぶと雪穂に連行されてしまった。

確かにドンシャイングッズを買うのに小遣いやバイト代を優先してしまうから、僕は服の持ち合わせが少ない。

というより年中デニムのジャケットとズボンで過ごしている。

でも僕が気に入っているから別にいいだろと思うのだが、雪穂にとってはどうやらお気に召さなかったらしい。

そんなわけで今僕は雪穂の着せ替え人形となっていたのだった(まぁもうお金がないから買えないけどね)

 

それに雪穂も楽しそうだし、穂乃果が言うほど雪穂の様子がおかしいとは思えない。

きっと穂乃果の思い過ごしか、怪獣が出たショックが大きくて参っていただけだろう。

 

帰る途中、公園で今日のお礼にと雪穂に飲み物を渡すとベンチに腰掛けた。

最近の少子化の影響か、はたまた怪獣災害の影響か公園には僕らしかいない。

 

「良かったよ。穂乃果が雪穂の様子が変だって心配してたけど、何ともなさそうで」

 

我ながら無神経だったと今は思う。雪穂はきっとこの時不安だったはずだ。

その証拠に僕の一言で雪穂の表情が固くなった。

 

「どうした?」

 

僕が聞くと、雪穂は急に走り去ろうとした。

引き止めるためにその手を掴むと

 

「熱!?」

 

あまりの熱さに手を離した。

雪穂が思いつめた顔で僕を見ている。

 

「……何があった?」

「分からない……少し前からこんなことができるようになって……」

 

そう言うと雪穂の胸に小さな輝きが灯ると同時に、両手から炎を出してみせた。

 

「陸兄さん、怖いの!私どうなっちゃたの!?」

 

今にも泣きだしそうな顔で僕を見ている。

恐怖―――ある日いきなり自分の意志とは関係なく、得体のしれない大きな力を持ってしまったらそれが当然の反応だ。

 

だが、僕はどうだった……

あの日僕にはウルトラマンの力がある。怪獣を倒せるほどの力があると言われて真っ先に沸き起こった感情は喜びだった。

憧れだったヒーローになれるかもしれないという期待だけで、自分の得た力に対して何も不安に思わなかった。

僕は自分が恥ずかしくなった。

何がベリアルの子供だからヒーローにはなれないだ……

違う!自分が持った力の大きさにすら気付いていない子供だったんだ!

 

でも雪穂は違った。

それに気づいて押しつぶされそうになりながらこの数日間を耐えていたんだ。

そんな僕が雪穂に偉そうなことなんて言えない。

だから黙って頭を撫でた。

その途端、雪穂は泣き出してしまった。

僕はただ頭を撫でてあげることしかできなかった。

 

雪穂が泣き止む頃、迎えに来てあげて欲しいと連絡しておいた穂乃果達がやってきた。

何があったのか聞こうとはしないが、雪穂の様子を見て何かを察してくれたようだ。

確かに何も解決できていないが、誰かに抱えていた秘密を話せたことで少しは楽になれたらしい。

本当ならレムに調べてもらいたいところだけど、あそこに連れて行くわけにもいかないしなぁ。

 

だがみんなで一緒に帰ろうとすると、全身をコートで覆った不審者が雪穂の前に立ち塞がった。

 

「なんだよ、あんた!」

「デュフフ…… 星の輝きを身に宿す少女、俺の人間標本に加えてあ、げ、る」

 

男は気色悪くに言い放つと、いきなり大きな銃を構えた。

僕は咄嗟にみんなを突き飛ばすと、銃から放たれた光線は僕達の代わりに公園の遊具に当たり、その遊具を縮小化してしまった。

 

そのありえない光景に気を取られている隙に雪穂に銃が向けられる。

雪穂は手から炎を放ち男のコートを燃やした。

男が燃えたコートを脱ぎ捨てると、シマウマのような白黒の身体の宇宙人の姿が露わになる

 

『陸、あれは三面怪人ダダです』

 

レムが通信で情報を教えてくれた。

だが、

 

「キャー!」

 

その姿に思わず悲鳴を上げてしまった雪穂を、ダダは縮小光線で小さくしてカプセルに閉じ込めると、カプセルを持って走り去った。

 

「レアたんGETですぞー!」

「逃がすか!」

 

僕は急いでダダの後を追った。

距離は10m程度離れていたがジャンプしてダダを飛び越し着地すると、雪穂の入ったカプセルを奪うために掴みかかる。

 

「何なんです、この人!?」

 

後から追いついてきた海未が驚愕している。

 

「お願い、雪穂を返して!」

「邪魔をするな!」

 

穂乃果は雪穂を助けるためにダダに立ち向かったが、敵わず突き飛ばされてしまう。

 

「お前らもなかなかカワイ子ちゃんだから、俺の人間標本に加えてあげよう。あ、男はノーセンキューなんで死んでもらうよ」

 

やられる!?そう思い、思わず目を閉じる。

……………… あれ?何ともない。

 

目を開けると目の前に銃とカプセルが落ちている。

そしてダダの顔に何かがへばり付いて身動きが取れなくなっている。

何だかよく分からないがチャンスだ!

僕はダダに飛び膝蹴りをかます。

その間に穂乃果達は雪穂が閉じ込められたカプセルを回収した。

 

「クソォ、もうAIBの奴らに見つかったでござるか!?覚えていろぉ!」

 

ダダは捨て台詞を吐くと凄い勢いで逃げていった。

……へばりついた何かがまだ顔から取れないせいで前がよく見えないのか、何度も物にぶつかっていたけどね!

 

カプセルのハッチを開いて雪穂を外に出すと、すぐに元の大きさに戻った。

 

「雪穂、大丈夫?」

「ありがとう、陸兄さん」

 

雪穂が僕に礼を言うと、また胸から小さな光が輝いた。

これが雪穂が狙われた原因……?

 

「雪穂を助けてくれてありがとう、りっ君」

「すごかったね、さっきのジャンプ!」

「雪穂、この光は……?」

 

3人に見られたくなかったが、隠す前に海未に見つかってしまった。

みんなが雪穂から発せられる光に驚いている。

気味悪がられることを恐れたのかうつむいてしまった雪穂に

 

「まるで小さなお星さまみたいだね」

「……え?」

 

ことりの予想もしていなかった言葉に思わず顔を上げる雪穂。

 

「無事で良かったよ、雪穂~!」

 

穂乃果が雪穂を抱きしめた。海未も優しく微笑んでいる。

 

「怖くないの? だって私、手から炎とか出るし、それにさっきも私のせいで……」

「怖くないよ、だって雪穂は雪穂だもん!」

 

穂乃果は幼子の様に泣きじゃくる妹の背中を優しく撫でてあげた。

やっぱり血の繋がったお姉ちゃんには敵わないな……

 

ズドーン!!

 

だが誘拐騒ぎから落ち着く暇を与えられなかった。

突然の地響きに周囲を見渡すと僕らの目の前に現れたのは

 

「あれ! この前倒された怪獣!?」

 

そう、数日前に僕が倒した怪獣――スカルゴモラがまた出現したのだ。

僕は咄嗟にライザーに手をかけた。

 

『フュージョンライズしますか?』

 

レムからの通信だ。その質問に僕は……

 

「……いや、しない」

(そうだ、どうせ戦っても怖がられるだけだし、そもそも僕にヒーローの資格なんてない)

 

みんなと一緒に避難所に向かうことにした。

 

避難中におじさん達から連絡が入り途中で合流できた。

トラブル続きで疲れ切っていた雪穂は、おばさん達の顔を見て安心したのか腰が抜けてしまい、おじさんが雪穂をおぶって行くことなった。

流石に中学生にもなって父親におんぶは恥ずかしがっていたけど。

 

避難所が見えてきた。

 

僕の前を穂乃果達が必死に走っている。

 

逃げ惑う人々が目に入った。

 

怪我をした人が倒れた。

 

助けを叫ぶ声が聞こえた。

 

 

僕の足が止まった。避難所はもう目の前なのに……

 

「足を放せよ、ペガ」

 

ペガに文句を言った。

 

「ペガは掴んでないよ」

 

うん、知っている。だって掴まれている感触がないから。じゃあ何でこの足は動かないんだ?

 

「それが君の意思だからじゃない?」

「僕の?」

「戦いたいんでしょ? みんなのために」

「そんなわけ……」

 

否定しようとするができない。心の中でもやもやした何かがそれを拒んでいる。

 

「陸は何でヒーローになりたかったの?」

「それは……」

 

それは憧れたからだ。

おじさん達が本当の両親でないことを知って泣いていた幼い日の僕を救ってくれたヒーローに。だからなりたいと思った。

泣いている誰かの所に颯爽と現れて、格好良くその涙を拭うヒーローに!

 

「……なれるのかな、ベリアルの子供でも」

「確かに陸はベリアルの子供。でも、陸は陸だ!」

「自分が持った力の大きさにすら気付かなかったのに?」

「でも今は気付いてる。あとは決めるだけだ」

「決める……何を?」

「覚悟を」

 

僕は振り向くとスカルゴモラに向かって走り出した。心のもやもやはもう無かった。

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」

 

誰もいない所まで来るとジードライザーを構えた。

最初の時はドンシャインの台詞を真似しただけで意味なんてなかった。

でも今は違う

 

みんなのために、

 

「決めるぜ! 覚悟!! ジィィィィィィィィィィド!!」

 

 

ウルトラマンに変身した僕はスカルゴモラに立ち向かった。

だが前回と同様に力では敵わず、尻尾の一撃で簡単に弾き飛ばされてしまう。

起き上がる間も無くスカルゴモラが火炎弾を放ってくる。

それをバリアで防いだが、着弾した煙で前が見えなくなった。

煙の中からスカルゴモラが突進してくる。それをかわせず、角の一撃をまともに受けた僕は大きく吹き飛ばされてしまった。

カラータイマーが鳴り始めている。悶え苦しむ僕を無視してスカルゴモラが移動を始めた。

 

 

「陸、怪獣の進行方向には先ほどの避難所があります。怪獣には何らかの意志があるようです」

 

何らかの意志?避難所には……

 

「あいつの狙いは雪穂か!?ここで止めないと!」

 

これ以上の進行を阻止するために尻尾にしがみつき力の限り引っ張った。

だがスカルゴモラの進行は止まらず尻尾に振り飛ばされてしまう。

今度は飛び越えて正面から押し合いだ。だがズルズルと後ろに押し返されている。

このままでは……

 

「お願い、みんなを助けて」

 

誰かの声が聞こえた。

 

「この声は……そうだ、みんなのために、負けられないんだぁぁぁぁ!!!!」

 

僕はスカルゴモラの手を振り払うと、力を振り絞ってその巨体を持ち上げ、

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そのまま空高く放り投げた。

そして全身の力を集中させ、赤黒い稲妻がスパークする。

 

「レッキングバーストォォォ!!」

 

必殺の光線がスカルゴモラに直撃し、空で大きな爆発を起こした。

勝ったんだ……

 

「ありがとう」

 

雪穂の声が聞こえた気がした。

すると雪穂の中にあったあの小さな星が僕に向かって飛んできて、ブランク状態だったウルトラカプセルに宿ると赤い戦士の姿が現れた。

 

「レオカプセルが起動しました」

 

レムが起動したカプセルについて教えてくれた。

 

「今度はちゃんとみんなを守れたのかな?」

「分かりません。ですがあなたに感謝している人は少なからずいるようです」

「ありがとう、レム」

 

僕は飛び去ると変身を解いた。

 

「お疲れ様、陸」

 

ペガが影の中から僕を労ってくれた。さぁ、秘密基地に帰るとし……

 

「ちょっと待って!!」

 

背後から急に呼び止められた。

聞き覚えのあるその声に、恐る恐る振り向くとそこにいたのは

 

「穂乃果!? それに、ことりと海未!?」

 

なんで避難所ではなくここにいるのか疑問だが、無事だったことを安心していると

 

「りっ君だったんだね、あのウルトラマン」

 

穂乃果がトンデモない発言をした。

えっ!?まさか変身を解くとこを見られた?いや、誰もいなかったはず。とにかくごまかさないと……

 

「何を言って「私達見たんです。陸がウルトラマンに変身するところを」

 

海未がごまかそうとする僕の話を遮った。

変身するところを見た……?

 

「ごめんね、りっ君が急に怪獣の方へ駆け出したから後を追いかけたの。だから見ちゃったんだ、りっ君がウルトラマンになるところ」

 

ことりが申し訳なさそうに補足してくれた。

いやいや……

正体バレイベントってのはこう終盤に差し迫った時にどうしようもない程切羽詰まった状況で起こる重要イベントでしょ!

中盤ならまだしも初っ端に起こるってどうなってるんだ!空気読めリアル!!

と軽く現実逃避を始めていると

 

「もうこうなったら正直に話すしかないんじゃない?」

 

とペガが影の中から言ってきた。

確かにもうそれしかないと観念した僕は

「分かった、説明するよ。とりあえずこれに乗って」

 

レムにエレベーターを出してもらい、穂乃果達も一緒に秘密基地へと向かった。

 

「わぁ!なに、ここ!?」

 

穂乃果とことりが目を輝かせて秘密基地の中を見ている。海未は理解が追い付いていないみたいだ。

 

『ようこそ。穂乃果、ことり、海未』

「えっ!?誰?」

 

レムが穂乃果達に挨拶したが、どこから声がしたのか分からず周囲を探している。

僕はレムのことをみんなに説明した。それにあともう1人、

 

「出てきてくれ、ペガ」

 

ペガが影の中から出てきた。

 

「一応、はじめましてかな?僕はペガッサ星人のペガ。よろしくね」

「「「う、宇宙人だ!!!」」」

 

もう説明するどころではなかった。

 

穂乃果達が落ち着いた後にいろいろ説明した。

ウルトラマンになったこと。ペガが実は中学生の頃からいたこと。これからここに住むこと。

 

雪穂から発せられた光はリトルスターと名付けられた。

どうやらリトルスターが発症すると宿主に特殊な力を与えるが、怪獣を引き寄せてしまうらしいとレムが結論付けた。

そして何らかの理由で宿主を離れたリトルスターがウルトラカプセル起動の鍵となるらしい。

喜ぶべきことに、リトルスターが離れた雪穂に炎を出す能力が無くなっていた。

これで狙われる理由もなくなったし普通の生活に戻れることだろう。

 

それからおじさん達に説明するために、この秘密基地を”星雲荘”と命名した。

3人が一緒に説明しに行ってくれたおかげでおじさん達も納得してくれた、というよりもしてもらった。

 

「明日からまた学校ですね」

「いよいよ2年生だね!」

「また明日ね」

3人が帰っていく。僕も帰ろう、星雲荘――僕の家に。

 

その時の僕らは知らなかった。明日、新学期早々に学生生活を揺るがす大事件が起こることを……

 

 

 

~~~

 

 

 

「だからこの戦いが本当の意味での始まりだと僕は思ってる」

 

話し終えた陸にみんなもそれぞれの反応で同意してくれた。

 

「それにしてもペガ君ともっと早く話したかったなー。中学生の時から居てくれたのに」

「ペガも話したかったよ。でも受け入れてくれるか怖くて……」

 

穂乃果とペガが仲良く話している。

陸しか話し相手がいなかったペガも今ではすっかりμ’sのみんなと仲良しだ。

 

「どうレム?僕のこと思い出せた?」

『ドキュメント・出会いとスカルゴモラを記録しました』

「メモリーが上書きされた!?」

 

レムの記憶を思い出させるどころか再登録されてしまった。陸が困惑していると

 

「だったら今までの思い出を再登録してもらえばばええんよ。カードも『振り返れ』って出とるし」

 

3年生の東條希がタロットカードを見せて打開策を提案した。

なるほど、そうなると次にレムに話さないといけないことは決まった。

 

μ’s結成の発端――廃校を知らされたあの日のことについて振り返るとしよう




~キャラ設定~
ペガ
ペガッサ星人の子供(本作は16~17歳相当)でウルトラマンジード本編のメインヒロイン。え、男だろって?円谷が公式擬人化で女体化したんだからセーフセーフ。
陸が中学生の時に出会い兄弟のように暮らしてきた。普段は家で造花作りの内職で家計の助け、外出時はダーク・ゾーンという亜空間を作り影の中に潜んでいる。人間への擬態はまだできない。

~次回予告的な~
穂乃果「2年生!私の輝かしい高校生活の新しいステージが…ん、何この紙?」
    ”本校は廃校となります”
   「私の輝かしい高校生活がぁぁぁぁ!?」

次回、「夢の始まり」

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