「レムが教えてくれたから、私たちはスクールアイドルを始めることができたんだよね。でも部活動の申請に行ったら絵里ちゃんに、『変なこと考えてないで、残り2年どうすべきかよくお考えなさい!』って断られちゃってさ」
「仕方ないでしょ。あの時は私もどうすれば良いのか分からなくて悩んでた所にアイドル部の申請だもん。正直、ふざけているのかと思った。でも私、そんな言い方はしてないわよ!」
穂乃果が絵里の似てない物真似をしながら当時のことを振り返っている。
絵里も頑なだった自分を反省するが、しかし穂乃果の大袈裟な言い方には不満があるようだ。
「ごめんごめん。でも絵里ちゃんも学校の事を大事に思ってくれてたのは分かっているから」
穂乃果が謝ると絵里は少し不機嫌そうな顔をするが、すぐに悪戯が成功した子供のように笑った。それにつられて穂乃果も笑う。意見の対立こそあったが、いやだからこそ、今では共に笑いあえる大切な仲間だ。
「そしてその数日後、部活動として認められないまま新入生歓迎会後のライブのために、講堂の使用許可をお願いしに行ったのですよね」
「えっ!?レム思い出したの……って何だ海未ちゃんか」
「また間違えたのですか?」
「だって声が似てるんだもん……」
「人の話をちゃんと聞かないから、誰が話したのか分からなくなるんです!」
海未が話を続けようとすると、穂乃果の勘違いでまた話が逸れた。
そのまま海未のお説教タイムが始まりそうになると、陸がフォローに回るが……
「まぁまぁ、海未とレムの声が似ているって事に最初に気付いたのは穂乃果なんだから、むしろ海未の話をよく聞いているってことだろ」
「それは、まぁ、そうかもしれませんが……」
「そうだろ。しかも加工された声な上に話し方も違うからな。海未の方がトゲトゲしているというか……」
「それ、どういう意味ですか!!」
陸の余計な一言で海未のお説教タイムは結局始まった。他のみんなも、もはや部の風物詩だと呆れてスルーする。
「それで講堂の許可を取りに行ってどうなったのですか、穂乃果?」
レムが穂乃果に続きを話すように促す。
「あ、ごめんねレム。その時は希ちゃんのおかげで、新入生歓迎会の放課後に講堂を使用する許可を貰うことができたんだけど……」
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「何度も言ったじゃないですか!ライブの事は伏せて借りておこうと……」
生徒会長さん達から無事に講堂の使用許可を取ることができた。
安心した私はお昼前にパンを中庭で食べていると、海未ちゃんが文句を言ってきた。
何か問題あったかな?うん、今日もパンが美味い!
「とにかく、無事に借りることができたんだから良かったじゃないか」
「そうですけど、ハァ~……あとお昼前に食べると太りますよ」
私が気にせずパンを食べているとクラスメイトのヒデコ、フミコ、ミカの3人がやって来た。3人とは高校に入ってからの友達。私が「ちゃん」付けして呼ぶと『子供っぽいから呼び捨てでいい』と言うんだよね。そのおかげか、アイドル部のみんな以外だったら1番仲がいいかも。
「おやおや、お揃いで」
「掲示板見たよ!スクールアイドル始めたんだってね」
「海未ちゃんがやるとは思わなかったな~。朝倉君も一緒にアイドルやるの?」
「やらないよ!僕はマネージャーとして手伝うだけ」
「えー?やらないのー」
りっ君がヒデコ達にからかわれている間に、海未ちゃんが私にそっと耳打ちしてきた。
「掲示板に何か張ったのですか?」
「うん。ライブのお知らせを。ペガ君凄いんだよ、頼んだらすぐに綺麗なポスターをデザインしてくれて」
「いくら何でも勝手過ぎます。新入生歓迎会までそんなに時間もないのですよ」
「でも、ことりちゃんは『いい』って言ってくれたよ」
「まったく、ことりまで……本当にできるか見通しもたっていませんのに」
私達が教室に戻ると、ことりちゃんは1人でノートに何かを描いていた。
何やっているんだろう?
「うん、こんなものかな?」
あ、出来上がったみたい。
ことりちゃんが出来上がったイラストを私達に見せてくれた。これってもしかして……
「ステージ衣装を考えてみたの!」
そこにはワンピース状の可愛いステージ衣装が描かれていた。
胸に大きなリボン、ひらひらのスカート、正にアイドルの衣装って感じ。
「「可愛い(じゃん)」」
私とりっ君の感想を聞いてことりちゃんは笑顔になった。
「2人ともありがとう。ちょっと難しそうだけど頑張ってみるよ」
「でもことり1人で間に合うのか?3人分の衣装だぞ?」
「うん、何とかなるとは思うけど……」
「じゃあペガ君に頼んでみようよ。ライブのポスターも上手に作ってくれたし」
「あれ作ったのペガだったのか。何か作っているのは知ってたけど、内緒って教えてくれなかったんだ」
「りっ君を驚かせたかったんじゃない……って、あれ?海未ちゃん、どうしたの?」
ことりちゃんが海未ちゃんを不思議そうな顔で見た。
私も見ると、海未ちゃんは椅子に座って何故かワナワナ震えてイラストを見ていた。
それからほっぺを紅く染めて、イラストの女の子の足を指さして、
「こ、ここのスーッと伸びているものは…?」
??そんなの決まってるじゃん。
「足よ」
ことりちゃんが笑顔で答える。
だよねー。
「素足に短いスカートってことでしょうか?」
「アイドルだもん!」
海未ちゃんは恥ずかしそうに自分の太ももの辺りを見た。
ハハァーン、分かった!もう、そんな事を心配するなんて海未ちゃんも乙女だなぁ……
「大丈夫だよ!海未ちゃん、そんなに足太くないよ」
「違います!それと人のこと言えるのですか!!」
あれ?違ったの。それはそうと……
触って自分の足を確認する。む、これは……
「よし、ダイエットだ!」
「2人とも大丈夫だと思うよ。……あとりっ君は足を見すぎ」
ことりちゃんの言葉で、私と海未ちゃんはとっさに手で足を隠した。
海未ちゃんは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにりっ君をにらんでいる。
りっ君は見ていないと必死にごまかそうとしているけど、幼馴染の私達には通じないよ!
「スケベなりっ君はおいといて、決めなきゃいけない事がたくさんあるよね。サインでしょ、ファンから隠れるための変装方法でしょ……」
「だから誤解だって!それと、その前に決めることがあるだろ!」
「なに?」
「グループ名だよ!あと練習場所も」
「「「あっ!」」」
「大丈夫か、この部……?」
結局グループ名は決まらなくて、私は掲示したライブのお知らせに”グループ名募集中”と書き加え、意見箱を置くことにした。
「自分たちで決めなくていいのか?」ってりっ君はぼやいてるけど、きっとこの方がみんなも興味を持ってくれるよね!
次に歌やダンスが練習できる場所を探すことになったんだけど……
グラウンドや中庭、体育館、どこに行って生徒で一杯で練習なんてとても出来そうにない。
ならば空き教室を使わせてもらおうと思ったけど、鍵がかかっていたので職員室にお願いしに行った。
やっぱりお願いするなら、頼みやすい先生がいいよね…… いた!
「令人先生!」
伊賀栗 令人先生――1年生の時の担任の先生で、ちょっぴり頼りない感じがするけど、優しい先生なんだ。
「あれ?高坂さん、どうしたの?」
「どこでもいいから、空き教室を使わせて欲しいんです!」
「空き教室を? 何でだい?」
「その…スクールアイドルの練習に……」
「スクールアイドル? 良く分からないけどアイドルごっこの為には許可できないなぁ」
「ごっこじゃありません! ちゃんとした部活で……」
「だったら部活の顧問の先生にお願いしたらいいんじゃないかな?」
「え、それは……」
「ごめんね。これから他の先生と会議なんだ。みんなもアイドルごっこはいいけど、程々にして勉強もしないとダメだよ。それじゃ、またね」
そう言うと令人先生は職員室を出ていった。
やっぱり部活動って認めてもらえないと、まともに相手をしてもらえないのかな……
「そしてたどり着いた場所がここか」
私達が見つけた練習場所、それは学校の屋上だった。
確かに日陰もないし、雨風も防げないけど贅沢は言っていられない。
ここなら誰の迷惑にもならないだろうし。
「よし、早速練習だ!まずは歌から。りっ君マネージャー、曲!!」
スゥ……
私達3人は歌いだすために息を吸い込んで…
…………
………
……まだ?
「なぁ、曲は?」
「あ……」
「前途多難だな……」
放課後、私達は星雲荘に集まって話し合いをすることにした。海未ちゃんは弓道部に顔を出すから遅れるみたい。
「海未抜きでも進められる作業は進めていこう」
「うん。ねぇペガ君、この衣装なんだけどね…」
「わぁ可愛い衣装!これ作るの?もちろん手伝うよ!」
「ありがとう!でね、ここなんだけど……」
「こっちは歌う曲だね」
「よし。レム、ライブ映像を片っ端から出してくれ」
『了解しました、陸』
ことりちゃんとペガ君は衣装の話し合い、私とりっ君は曲の話し合いをすること。
そこで参考にするために全国のスクールアイドルの映像をレムに出してもらう。
やっぱり多くはオリジナル曲を歌っているみたい。そして楽しそうに笑って歌っている。
オリジナル曲か……作曲を1年生のピアノが上手いあの子にお願いできないかなぁ?
作詞については1人当てがあるし……
私が真剣に映像を観ていると、ポリポリと何かを食べる音が聞こえた。横を見るとりっ君がいつの間にかスナック菓子を持ってきて食べていた。
「あ、ずるい!」
私はお菓子に手を伸ばそうとした。
『そのスナック菓子1袋に含まれるカロリーはおよそ350kcalです。穂乃果、貴女はダイエットをするのでは?』
「はっ!?そうだった。……それにしても今のレム、海未ちゃんに似てたね。りっ君」
「え、そうかな?気のせいじゃない」
気のせい、そうかなぁ?
気を取り直して映像を観ようとすると、ぐーとお腹の音がなった。
……考え事するにも、まず腹が減ってはなんとやらと言うしね。
私はお菓子の袋からスナックを取り出し1口食べた。美味しいけど食べたことないお菓子だ。
「結構イケるだろ?最近復刻したドンシャインスナック!おまけのドンシャインカードが欲しくてたくさん買っちゃってさ」
ドサッという音と共に、同じ袋のスナック菓子が段ボールの中から大量に出てきた。
『陸、同一の商品を大量に購入するのは無駄遣いです』
「固いこと言わないでよレム。ちゃんと食べるんだから。……確かに今のは海未みたいかもな」
「でしょう。いっただきまーす!」
「……ダイエットするのではなかったのですか、穂乃果?そして陸、無駄遣いするなと以前にあれ程言ったはずですよね?」
「おっ!?今度は海未ちゃんそのものだ」
「レムやるな!」
『いいえ、今のは私の発言ではありません』
えっ?じゃあ……
りっ君と一緒に後ろへ恐る恐る振り返ると、海未ちゃんが笑顔でそこに立っていた。
『私の声が海未と類似していると感じるのは、私のボイスサンプルが海未だからでしょう』
海未ちゃんにたっぷり絞られた後、レムが何で私がそう感じたのか理由を教えてくれた。
「なぜ私の声をサンプルにしたのですか!?プライバシーの侵害です!」
『申し訳ありません。ですが、マスターである陸の警戒を減らすためには、近しい者の声をベースにした方が効果的と判断しサンプリングした結果、海未の声をベースとすることになったのです』
「あー、だから前にレムからマスターって言われた時に変な感じがしたのかな?」
「穂乃果ちゃん、よく分かったね。レムの声、機械で加工されているのに」
「えへへ……」
「ハァ、もういいです……それより進捗はどうなのですか?」
海未ちゃんがため息交じりで進捗状況を聞いてきた。
「衣装ならペガ君が手伝ってくれれば間に合いそう」
「作曲は1年生に歌とピアノのすごく上手な子がいて、その子に明日頼んでみる。作詞はもう当てがあるんだ!」
私は海未ちゃんに期待の眼差しを向けた。
「海未ちゃんさぁ……中学の時にポエムとか書いていたことあったよね!」
~キャラ設定~
南ことり
音ノ木坂高校2年生で陸、穂乃果、海未の幼馴染にして4人の潤滑油。穂乃果と海未の喧嘩や陸が天然で起こす騒動は彼女の仲介で解決されている。原作ではμ’sの衣装は全て彼女が制作しているが、あの量の衣装をライブまでにどうやって作り上げていたかは永遠の謎。本作ではペガがサポートに付くので頑張って!