ウルトラマンゼロ――僕にそう名乗ったウルトラマンはダークロプスが立ち上がるとすぐに交戦を開始した。
僕があんなに苦戦したダークロプスを相手に互角の戦いを繰り広げている。
ダークロプスが腕をL字に組んで光線を発射すると、ゼロも腕をL字に組んで光線――ワイドゼロショットを放つ。
2つの光線は激しくぶつかり合うと拮抗し空中で大きな爆発が起こった。
ダークロプスがその余波で姿勢を崩す。
その隙を見逃すゼロではない。
『ウルトラゼロキィィック!』
爆発と共に宙高く跳んだゼロが必殺のキックを繰り出す。
それをまともに受けたダークロプスはあっけなく爆散した。
だがゼロも突如苦しみだし、地に片膝をついた。
『やっぱまだ本調子とはいかねぇか、量産型のダークロプス如きに手こずるとは……おい、大丈夫だったか?』
そう言うとゼロは立ち上がって、こっちに寄って来ると僕の顔を見た。
あとで本人から聞いたことだけど、ゼロは今まで数多くの宇宙でウルトラマンの助っ人をしたことがあるらしい。
今回も新米ウルトラマンがピンチになった所を助けたくらいにしか思っていなかったみたいだ。
だがら本当に驚いたんだと思う。だって助けた新人が……
『その目、ベリアル!?いや……』
死んだはずの宿敵にそっくりな目をしていたんだから。
『お前、何者だ?ベリアルと何か関係あるのか!?』
ゼロが僕のことを警戒する。
だが僕にはこれ以上ウルトラマンの姿を維持するだけの力は残っていなかった。
エネルギー切れで体が光の粒子となって霧散し、人間の姿に戻る。
突然僕が人間の姿に戻った事にゼロは戸惑ったようだけど、警戒を解かずに僕を見据えていた。
(どうしよう? 何か話した方がいいのかな? でもさっきベリアルとの関係を聞いてきたけど、その息子って分かったらどうなるんだろう!? やっぱり捕まるのかな?いや、もしかしたら最悪殺されるかも……)
次々と起こる騒動に僕はもうパニックになっていた。
そしてゴチャゴチャした頭の中で弾き出した結論は、
(よし、逃げよう!)
三十六計逃げるに如かず!僕はゼロに背を向けた。
『おい!?待て!!』
逃げる僕を制止するゼロの声を無視して走り出す。
でも痛めた右足では思うように走れない。
このままではすぐに捕まるかもと焦る僕の耳に、
「陸、こっち!」
突然ペガの声が聞こえた。
その声に反応し足を止めた僕にペガが駆け寄ってくると手を引いて走り出した。
その先には星雲荘へのエレベーターが出現している。
僕は手を引かれるままエレベーターに乗り込んだ。
星雲荘に戻ると中央指令室では穂乃果、ことり、海未の3人が心配そうに出迎えてくれた。
そのままソファに腰かけて右足の状態をレムに診てもらう。
『骨等に問題はありません。冷やしておけば問題ないでしょう』
どうやら大したことはなさそうなので買い置きしておいた湿布を貼る。
一応マネージャーとして穂乃果たちが怪我した時の為に買っておいたのだが、まさか最初に使うのが自分になろうとは……
モニターを見るとダークロプスとの戦闘が映し出されている。
「手も足も出ませんでしたね」
「うっ、確かに押され気味だったけど、でもレオカプセルの力を使った攻撃はいい所までいったんだ!……確かに倒せなかったけど」
海未の冷静な言葉に反論するが、倒せなかったのは事実なのでだんだん言葉が尻すぼみになる。
『それは陸の肉体がカプセルの持つ膨大な力に負けているからです。単独使用でも想定通りの力を発揮していれば、レオカプセルの攻撃でダークロプスは倒せていました』
レムがその原因を指摘する。
つまり今の僕ではレオの力を十分に発揮できないどころか、強すぎる力に肉体がついていけないらしい。
「そうなるとやはり特訓ですね!今のメニューを倍にしましょう!」
「それは戦う前に死ぬから止めてくれ……」
海未が嬉々として特訓メニューを増やそうとする。
前から思っていたけど、理知的に見えて実は脳筋だよなこいつ……
「そういえばこの人もウルトラマンなんだよね?」
ことりがモニターを見ながら言った。
モニターにはウルトラマンゼロの姿が映し出されている。
『データベース参照。彼の名はウルトラマンゼロ。ベリアルと敵対していた光の国の戦士です』
レムが解説してくれた。
敵対してたってことは、ベリアルの息子だとバレたらやっぱりマズいのかもな……
「格好よかったよねー。りっ君のピンチに助けに来てくれたのかな?そういえば何で逃げちゃったの?」
「いや……ほら、まだ味方かどうか分からなかったし……」
穂乃果が無邪気に聞いてくる。
助けてもらったのに逃げたんだから当然の質問だ。
多少(いやかなり)苦しい言い訳だけど、本当は僕を捕まえに来たのかもなんて言えるわけがない。
そうしたら3人にも僕がベリアルの息子だと伝えなくてはいけなくなる。
それだけは絶対に知られたくなかった。
「そういえば、みんな学校はいいの?」
そんな僕の心情を察してかペガが助け舟を出してくれたおかげで話題が逸れた。
そうそう、学校にいかないとな……えっ!?学校!?
「だってダークロプスと戦った場所は学校から離れていたし、暴れた時間もだいたい3分くらいでしょ?そのダークロプスもゼロが倒して警戒警報も解除されたし……」
都市機能の麻痺を防ぐため政府が先日、”怪獣災害の被災地区以外は、警戒警報が解除され次第、普段通りの生活へ復帰するように”という方針を発表した。
つまり怪獣が暴れた地区以外は大した被害が出ていないんだから、極力普段通りに生活しなさいということらしい。
それに従うと、ダークロプスが暴れた場所は学校がある地区からは離れていたから通常通り学校があるってこと……?
時刻を見ると今は8時30分(始業時間は8時20分)
「「「「遅刻だー!」」」」
今朝の騒動で午前は慌ただしく過ぎ去っていった。
ようやく一息ついて穂乃果たちと学校の中庭で昼食を食べながら、僕はウルトラマンジードについてエゴサを始めた。
調べてみるとSNS上で巻き起こる誹謗中傷の嵐。目を通すのが嫌になってくる。
……だったら見るのを止めればいいだろうって思うだろうが、それでも世間が僕をどう見てるか気にはなるんだ。
「うわー……それにしても散々な言われようだな」
「食事中にスマホを見るの止めたらどうです」
海未が食事マナーを注意してくる。
確かに行儀が悪いのは分かっているが、学校では昼休みくらいしかじっくり調べる時間がないんだから仕方ない。
横から穂乃果とことりが画面を覗いてくる。
「みんな酷いよね、りっ君は頑張ってるのに」
「そうだね。あ!ここにカッコイイってコメントが……」
そう言いかけてことりが言葉を詰まらせた。
分かっている。さっきからそういったコメントの大半は『助けに来たウルトラマンがカッコいい!』、『強くてイケメン!嫌いじゃないわ!』とゼロのことばかり褒めているのだ。
テレビでもゼロが名乗りを上げた所を特集したようで、世間ではウルトラマンゼロの名前がさっそく認知され始めている。
それに引き換え僕は……と若干卑屈になりながらさらに読み進めると、一つのコメントが僕の目に留まった。
『皆さん、確かに彼――ウルトラマンジードは今回敵に敗れました。ですが、今まで我々を守ってくれたのは他でもない彼です。恐らく皆さんがご指摘の通り、彼はまだ未熟なのでしょう。だからこそ私は敢えて言いたい!未熟なヒーローがそれでも体を張って頑張る姿は、百戦錬磨の勇士が危なげなく敵を倒す姿より尊いと!私は彼を応援しています。頑張れ、ウルトラマンジード!』
それを見て――我ながら単純だと思うが――少し元気が出た。
しかもコメント主はどうやら一般人ではなくかなりの影響力を持った人のようで、その人のファン達が賛同するコメントを多く返信している。
一体誰なんだろう?と気になって名前を見た。
その人の名前は”伏井出 ケイ”――多方面で幅広く活躍する大人気のSF作家だった。
~独自設定~
レムアプリ
レムが作成したスマホ用のアプリ。
これを起動することでスマホからレムと会話したり、監視衛星ユートムからの映像を見ることができる。
陸以外にも穂乃果たちのスマホにもインストールされており、陸以外が外でレムと通話する時はスマホを使っていると解釈してください。