【#コンパス】とりあえず、卑怯に行こうか 作:ねむりたいねこ
皮膚を焦がすようなまぶしい日差し。
頬や体に浮かぶ、玉のような汗。
身につけているのは、学校指定のクソダサ運動服。小豆色のジャージとか、誰が着たいと言い出したのだろう。美的感覚が私たち人間とは異なっているのではないのだろうか?
必死に現実逃避をする私に、男は何のためらいもなく
「死ね!」
「ああっ! あっぶなぁぁぁぁぁぁあああ!」
すさまじい炸裂音が背後で響く。私は、全力で駆け抜けることでそれを回避した。
鼻につく潮風。まぶしい太陽。さざめく波の音。砂浜と水着があれば、私はきっと海にでも逃げていたはずだ。まあ、見えない壁があるせいで絶対に無理なのだが。
「避けるな、小賢しい!」
「避けるわ、バーカ!」
怒鳴り声を上げる日本刀を持った男性に、私は思わず怒鳴り返す。
男はそんな言葉が返って来るとは思っていなかったのか、一瞬だけポカンとした表情をしたあと、口角を上げてニッと笑った。だが、目は決して笑ってはいない。
さっきのは何だった? フルーク? ぶれいすどらごん? それとも始龍? どれにしたって直撃すれば今の私のHPでは耐えきれない。私のHPは残り半分。
後方のリスポーン地点でうずくまり、震えているガンナーとアタッカーの二人に向かって私は大声で聞く。
「ねえ、せめてアイツのデッキ構成くらいは教えてよ!」
「ひぃっ?!」
「怖い嫌だ怖い嫌だ怖い嫌だ怖い嫌だ怖い嫌だ怖い嫌だ怖いいやだ怖い嫌だ怖い嫌だ怖い……」
だめだ。まともな返答が返ってくる気がしない。だが、ある程度は予想できている。どうせわからない残りの一枚は近距離攻撃カードだ。
「カノーネドア臣ガブリエル持ち……!」
今のところ見えたのは、その3枚。桜華忠臣だったらケルパーズ(ノーマル)でも積んでおけよ、モチーフカードだろ。私は一度も使ったことが無いけどさ……!
視界の端を意識してみれば、残り時間はあと一分半。さすがに冗談だろ? まだあと一分半も続くの?
私のHPは残り半分。デッキにガブリエルが入っているが、
「タイマン番長に回復不可ダメカなし低耐久スプリンター一人とか……どんな地獄だよ!」
そう全力で逃げながらそう叫ぶ私に、男は笑いながら言う。
「はっはっは! 我が貴様に真の地獄を見せてやろうぞ!」
「煽ったの怒ってる! ってか、それ、グスタフじゃない?!」
こんなことになったのは、数分前にさかのぼる。