【#コンパス】とりあえず、卑怯に行こうか   作:ねむりたいねこ

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前回のあらすじ
・ミツル「食堂出禁になっちゃった☆」
・ポロロッチョ「ワテクシが料理作るわよ」


食後のティータイム

 ポロロッチョの作った晩御飯を食べた私たちは、そのまま部屋でお茶を飲む。皿洗いは一通り終わったため、とりあえずこれからのことを考えるために話し合いを始めたのだ。……うん、そのつもりで話し合いを始めたのだ。

 

「まさか、総帥が皿洗いもできなかったなんてね……」

「や、やかましい! 我の本業は軍を指揮することと民を導くことだ! 料理は仕事の内でないわ!」

 

 アズの指摘に、忠臣は言い返す。

 シンプルに馬鹿力で皿を何枚も割った上に、手についた異形の口に洗剤が入ってしまうらしく、早々にできないと判断された。何気にその手、不便そうだね……

 

 私? 皿洗いくらいなら流石にできる。

 

 とりあえず、私と忠臣は双方料理ができないことが分かったため、食堂の出禁が解除されるまで対価を支払ってできるだけポロロッチョに頼み、無理そうなときは売店で購入することにした。

 

 アズたちは食堂を利用できるが、ポロロッチョ曰く食堂よりも自炊の方がチェリーパイな食事ができるとのことで、基本は食堂を利用せず、料理をしてくれるとのことだ。……フリフリエプロン姿のポロロッチョはなかなか見た目にインパクトがあるが、気にしたら負けだろう。

 

 とりあえず、真面目に話し合いを始める。

 

「チェリーパイたちは、バグ退治に参加するのでしょう? なら、私たち四人のうち交代で三人ずつ戦えばいいのかしら?」

「それなんだけどさ……ねえ、アズ。アズのロールって何?」

 

 緑茶をすすりながら、私は確認目的でアズに問いかける。彼女は、少しだけ目を逸らして答えた。

 

「私はアタッカー。使用ヒーローは忠臣よ。」

「お前の選択は正しい、安心しろ。」

「今回ばかりはその選択が安心できないんだよなぁ……」

 

 ドヤ顔でサムズアップする忠臣に、私は思わずそう言う。

 ムッとした忠臣だったが、ポロロッチョは気が付いたらしい。

 

「そう言えば、チェリーパイ……ミツルちゃん以外、全員アタッカーじゃない。チームのバランス、悪いわね。」

「そうなんだよね……」

 

 そう、ポロロッチョのロールはアタッカー。アタリを使用している私以外全員がアタッカーという戦うにはやや偏った編成なのだ。

 

「私はキルスプできないし、できればタンクかガンナーが欲しいよね。そっちの方が安定するけど……」

「剣道やってたから、私はできれば刀を使うヒーローの方が動きが安定するのよね。ガンナーできないわけじゃないけど……」

 

 私の言葉に、アズはそう言って言葉を濁す。

 どうやら、アズはアタッカーを希望するらしい。刀を使うのはアタッカー以外だと佐藤四郎だが、彼はコラボキャラであるため、使用することはできない。

 

 アズは少し考えた後、口を開く。

 

「とりあえず、忠臣でかぶってると後々面倒そうだから、私は狐ヶ咲に転向しておく。カウンター使えるの便利だし」

「な……?!」

 

 あっさりと使用ヒーローを変えられた忠臣は、愕然としたような声を漏らす。そんなにショックだったのか。

 

 忠臣は少しだけ不貞腐れた様子のまま口を開く。

 

「他のロールなら……グスタフはどうだ? あやつがいれば、アタッカー、タンク、スプリンターでチームを組むことができるぞ」

「ガンナーなら、ルチアーノにイスタカ……いいチェリーパイがそろってるじゃない」

 

 舌なめずりをするポロロッチョに、ヒクリと体を震わせる忠臣。盟友相手が襲われかねないと思ったのだろう。ちょっと同情する。

 デザートの羊羹を上品につまむポロロッチョを横目に、私は口を開く。

 

「それもアリだけど……アズ、眠り羊くんがジャスティス使いだったよね」

 

 私の言葉に、アズは小さく頷くも、困ったように口を開く。

 

「転移者ね……でも、私もミツルも普段使ってるロールとは違うのを選んでるじゃない。眠り羊君がタンクとは限らないわよ?」

 

 彼、性格的にアタッカーが得意そうじゃない? と言葉を続けるアズ。確かにそうかもしれない。

 

「ふむ、転移者か? 悪くは無いと思うが、朝比奈はキルスプリンターではないだろう。ジャスディスではバランスが悪いのではないか?」

「連撃ジャスティスが得意みたいだから、キルとれるのよ。」

 

 忠臣の質問に、アズは答える。スプリンターの私が援護カードを持っておけば、問題なくチームを組むことができそうだ。

 

 私たちの話を聞いたポロロッチョは、大きく頷くとこう結論を付けた。

 

「なら、明日以降はチュートリアルを受けながら、眠り羊くん、って子を探す方針でいいかしら?」

「賛成!」

「あいわかった。見つからなければ、我がグスタフに声をかけておこう。」

「うん、そうしようか」

 

 そうして、私たち四人はこれからの方針を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、冗談だろ? お前さん、何でこんな弱っちいのにタンクなんて選んだんだ?」

 

 挑発混じりにそう聞くのは、深紅の鎌を背中に、二丁拳銃を持った男。顔の大半を黒色のマスクで隠し、ニマニマと笑みを浮かべるヒーロー。

 

 その前に膝をつき、荒く呼吸を繰り返すのは、身の丈ほどの大きさのハンマーを持った少年。色白で、目の前の男と比較するのが哀れになるほど、その体は細い。

 

 ここはつっぺる工事現場のAエリア。状況は敵一陣であるEポータルとDポータルが回収され、自陣一陣であるAポータルをどうにかタンクの少年一人が守っているという状況だった。

 

 HPバーは既に何度も空になり、3対1だというのに、この男は彼ばかりを狙って執拗なキルを繰り返した。

 いや、そう言うと語弊がある。彼以外の二人は、すでにリスポーンエリアの前からうごかず、がくがくとその体を震わせるだけだった。

 

 序盤はほかのポータルは3人で回収し、4-1で勝っていた。だが、開始1分でその状況はひっくり返り、あわや敗北一歩手前のところまで追いつめられていた。

 

 カード一枚切れない少年は、必死になって男の放つ銃弾からハンマーを盾にすることで身を守った。だが、他二人は奇妙なまでにそのような動きをせず、カードを切ることでダメージカットをはったり、何なら度々響く銃声に悲鳴を上げたりしていた。

 

 カードの使い方どころか、今何のデッキを使っているのかすらわからないような状況のさなか、少年はハンマー一本で目の前の男と渡り合っていた。……HPは残すところ半分、といったところだが。

 

 ヒーローはニマニマと不敵に笑い、挑発を繰り返しながらも中身は狡猾であった。ガンナーというロールを理解し、少年の攻撃射程範囲外からのみ攻撃し、Aポータルを広げきられない程度に陣を踏む。それを繰り返す。

 だが、少年は諦めなかった。

 

「ボクが、タンクを選んだのは……かっこよかったからだ!」

「え? カッコいい? ジャスティスのおっさんか、それともグスタフ? 大穴でトマス爺さん?」

 

 目の前の男は、ジャスティスのHAの姿勢を真似して少年をからかう。だが、少年はそんな挑発には乗らなかった。

 

「……君が何をしようと、ボクは君にここを通らせない。仲間に、手出しはさせない……!」

「ははっ、できるもんならやってみろよぉ!」

 

 ゲラゲラと笑い、HAのため打ちをタンクに打ち込むヒーロー。その瞬間、少年のHPは全損し、ポリゴンへと変わった。

 

 #コンパスにおいて、デッキレートの差ほど恐ろしいものはない。

 だが、デッキレートの差以前の問題であることもある。

 

 ヒーローにとって得意でないカードを使ってしまっていること、カードの使い方を間違っていること、それに、カードのレアリティが低すぎること。

 

 少年のデッキは、初期デッキを変えることができなかったがために、『手持ち花火』、『チェーンソウ』、『ドリームステッキ』、『武器商人』と、見事にオールN(ノーマル)のデッキである。そして、使用しているヒーローの適性カードである連撃カードは、一枚足りともない。

 

 オールノーマルカードで、URデッキに勝利することは、まずできない。そもそものカード性能の違いというのもあるが、まず、ステータスに大きく差がついてしまうためだ。事実、少年の最大HPはタンクというロールを使っているにもかかわらず、2000ほどしかない。中ダメージを与える効果のカードで沈んでしまうだろう。貫通射撃攻撃を使われればそれまでだ。

 

 絶望的な状況の中、リスポーンした少年は諦めることなく、ただただ前を見据える。その瞳の奥に、勝利を望みながら。




【現在分かっている敵陣営情報】
キャラクター
 不明:ガンナー
 使用カード
 ・不明(UR)
 ・不明(UR)
 ・不明(UR)
 ・不明(UR)
 使用メダル
 ・不明
 ・不明
 ・不明

【試合状況】
Aポータル 青(3割)
Bポータル 青(5割)
Cポータル 青(MAX)
Dポータル 赤(1割)
Eポータル 赤(8割)
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