【#コンパス】とりあえず、卑怯に行こうか   作:ねむりたいねこ

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前回のあらすじ
・ミツル「アタッカーばっかりでバランス悪くない?」
・忠臣「我がグスタフに声をかけておこう」
・工事現場で戦闘中……?


眠る羊は夢を見るのか?

「あー、めんどくせぇ……」

 

 ヤンキー座りをして白髪頭を掻きながら、13はため息混じりにつぶやく。

 今日も今日とてバトルかと思えば、ウィルスが侵入しただとかなんだとかで予定は白紙、そして、倍以上の重労働が舞い込んだ。

 

 voidollに押し付けられた仕事は、チュートリアルスキップ希望者の相手。どうも3対1での闘いらしい。当然、1が13である。

 3人のうち、気に入ったプレイヤーの仲間になれと指示されたが、正直、チュートリアルをスキップしようとする連中、つまり、戦いをなめて考える連中の仲間になりたいとは欠片も思えなかった。

 

 だが、仕事は仕事。ほかのヒーローたちも同様にして戦っているとのことだったので、バックレるわけにもいかなかったのだ。二丁拳銃を構え、13は目を細めて試合開始を待つ。

 

 会場はつっぺる工事現場。がこんがこんと聞こえてくる足場の崩れる音を聞きながら、13は大きくあくびをする。たとえ不利でも、負けるつもりはなかった。

 

__人数差的に正攻法で殴り掛かってもまず勝てねえ。……心をへし折るまでボロボロすれば、それでいいか。

「相談がある。__負けてくれないか?」

 

 不敵に笑みを浮かべ、バトル開始の合図とともに13はリスポーンエリアから飛び降りた。

 

 

 

 少年……秋葉 ヨウスケが戦い始めたのは、数分前。チュートリアルを受けようと待機していたところ、voidollの転移に巻き込まれてバトルアリーナに飛ばされた。

 ガンナーとスプリンターの仲間二人に質問することで、何とか使用キャラクターをいつも使っているジャスティスに変えることができたが、カードの変え方までは教えてもらえなかった。当然、使い方も。

 

 チュートリアルスキップ希望者の二人は、試合が始まると早々にAとCを回収し、陣地を広げていく。その様子を見ながら、ヨウスケは必死にBへと向かう。タンクは、どうしても足が遅いのだ。普段ならドアかぶじゅつかを入れて加速するところだが、あいにくカードの使い方がわからない。加速なし徒歩タンクでBへと向かう。そして、あることに気が付いて、喜びのあまり小さく息を飲んだ。

 

__歩けている……!

 

 少年、ヨウスケは、6歳のころ事故に遭い、それ以来足の大部分の筋肉といくつかの内臓器官を失ったため、ほぼ寝たきり同然の生活を送っていた。走ることはおろか、一人でまともに移動することすら大変だったというのに、今は呼吸器なしで運動ができている。それが、驚きだった。それどころか、重そうに見えるハンマーが持てているということも驚きだった。

 

 見た目も大きさもヒーロー、ジャスティスハンコックが使っているものそのままであるため、柄だけでも軽く少年の体の大きさを超え、さらに体の細さからよりハンマーの大きさが際立って見えていた。

 寝たきり同然の生活の中で、一番の楽しみがゲームをすることだった。

 

 ゲームで友達ができた友達二人は、大丈夫だろうか。巻き込まれてしまっていないだろうか。

 ヨウスケは心の中でそんな心配を抱えながら、味方の煽りに近い怒鳴り声を聞き流す。

 

 

 

 敵は、三人。ジャンプのできるスプリンターが一人に、13と同じく鎌と拳銃を持ったガンナーらしき人物が一人、そして、巨大なハンマーを抱えて徒歩移動するタンクが一人。

 

「俺とキャラ被ってんじゃねえか。」

 

 13は思わずそう呟きながら、手前のEポータルに触れる。接近戦を強いられるアタッカーがいなくてよかったと喜ぶべきか、ロールが全員ばらばらで戦いにくいと嘆けばいいのか、微妙なところだ。

 開始数秒、足場が崩れ落ちていくのを見ながら、一陣であるEポータルに手をつける。

 

「いいオブジェだな、部屋に飾りたい。」

 

__タンクは置いておいて、とりあえずスプリンターとガンナーが前に来る前にどうにかDを回収したいところだな。タンクにドアが入ってないと良いんだが。

 

 Eポータルを赤く広げながら、13はそう考える。

 今回のバトルが1対3である以上、スプリンターによる裏取りは警戒に越したことがない。むしろ、こちらが敵を倒しているときに裏取りをされて負けるほうが恰好が悪い。赤色の陣地に変えたEポータルを適当に広げつつ、落ちた足場が復活するのを待つ。

 

 数秒後、足場が戻るとほぼ同時に駆けだしたスプリンターは、案の定13の二陣であるDポータルに向かって走って来た。ガンナーは13を使用ヒーローとしているため、HSがたまる速度が速い。ドアが入っていなかったらしいタンクに変わってCポータルを回収しに行っているのだ。

 

 防御力の極大アップカードである【ドルケストル】を使用し、Dに触れたスプリンター。

 そんなスプリンターに対し、13は容赦なくタメ攻撃をしてノックバックを加える。

 

「食らいやがれ!」

「いって!」

 

 悲鳴を上げてノックバックを喰らい、ポータルから距離の離れるスプリンター。それを見た13は、即座に『マジカルスクエア』をスプリンターに向かって使用し、足が遅くなっているスプリンター相手に『フルーク』を使用し、吹っ飛ばす。

 

 ドルケストルが使われていたため、スプリンターには1ダメージしか通らなかったが、これでDポータルは回収可能となった。13はCエリアにいるガンナーに注意しながら、Dポータルに触れる。キルにこだわっていると、ガンナーが援護に来てしまうと判断したのだ。

 

 『みみみ』を使って着地とダメージを回復を行ったガンナーとにらみ合いながら、適度にエリアを広げたところで、13のヒーローゲージがたまり切った。それを皮切りに、彼は攻勢に出ることにした。

 

「景気づけに一発いっておくか。」

 

 そう呟きながら、13はヒーロースキル……【堕天変貌】を発動させる。

 

「輪切りにして、盛り付けてやるよ!」

 

 タイムは現在試合開始から三十数秒。

 二丁拳銃から真っ赤なデスサイズに持ち替え、アタッカーモードの転換した13は、不敵に笑んで【連合宇宙軍 シールドブレイカー】を発動させる。全体にデバフがかかったところで、不用意に近づいてきていたガンナー相手にHA……堕天の一撃を食らわせる。

 

「んなっ……?!」

「ぐっ……!」

 

 6割方が削れたガンナーと、巻き込まれたスプリンターのHPがほぼ7割えぐり取られる。

 ヒーロースキルの堕天変貌の効果で、一時的なバフのおかげで強烈な一撃を喰らった二名は、大きくノックバックし、表情を引きつらせる。

 

 それでも即座に回復カードを使用する。

 しかし、スプリンターの回復カードはHPの30%回復しか行えない【みみみ】だ。即座にみみみを発動させても、回復するのはHPの6割。

 

「そぉい!」

 

 即座にスプリンターに対してヒーローアクションを行う13。ガードカードを使う暇もなく大鎌による前方範囲攻撃を喰らったスプリンターは、砕け散ってポリゴンと化した。

 真っ赤な大鎌を軽く振るい、ポリゴンをふるいおとした。

 

「ひ、ひぃっ?!」

 

 人が突然砕け散る様子を目の当たりにしたガンナーは悲鳴を上げる。彼は追撃対策として【ディーバ】を使用してから【ガブリエル】を利用していたために、13のターゲットにはならなかったのだ。

 

 戦局はBポータルを回収したタンクがCポータルへと向かっており、ガンナーは発砲することさえ忘れてCポータルから離れて13から逃げようとしている。

 ならば……

 

「近づくやつをぶっ殺す、ガンナーは射程範囲に入ったらぶっ殺す、それでいいか。」

 

 そうして、有利状況から一転、13による攻勢が始まる。

 シールドブレーカーで減った防御力は、タンクの割にはHPの少ないジャスティスには突き刺さった。

 

 逃げたガンナーを置いて、Cポータルを回収するために青色のポータルに触る。その瞬間、ギリギリでポータルを踏むことができた秋葉に向かって、13はニッと不気味に笑む。そして、カードスキルを発動させた。

 

「考えんな、感じるんだ。」

「ぐぅっ?!」

 

 【フルーク】を使用された瞬間、秋葉は反射的に巨大なハンマーを盾に防護を行う。その行動は奇跡的にジャスティスのヒーローアクション【多層型ヘキサバリア】を発動させる。黄金のバリアにフルークの強烈な一撃が加わり、ダメージは大幅に減少する……はずだった。

 

「えっ?!」

「……あ?」

 

 強化カード一枚発動していないにもかかわらず、13のフルーク一発で秋葉のHPが残り数ミリまで減った。動揺する秋葉と、困惑する13.先に動けたのは、秋葉だった。

 原因がカードレアリティであると気が付いた秋葉は、即座に口を開く。

 

「ガンナー、立て直しを! 多分僕はしばらくしたら、リスポーンする!」

「……ふざけんなよ! 何で屑デッキで来たんだ!」

 

 罵倒されるが、気にしている暇はない。とどめの一撃を放とうとする13を前に、ポータルを盾にした回避を行い時間を稼ぐ。あまりにもわかりやすすぎる時間稼ぎに、13はイラつきを隠せず舌打ちをする。そして、そのいら立ちのまま弾を秋葉に当てようと狙いを定めるも……

 

「っ?!」

 

 鳴り響く警戒のブザー音と、つっぺる工事現場の巨大電子蛍光版にうつりこむカウントダウンの音。試合開始から一分が経過したため、再び床の崩落が始まり始めていたのだ。そのブザー音に13は盛大に舌打ちをする。

 

 そして、この時点であることに気が付き、青チームのリスポーン地点の方を見た。

 

 壁に挟まれて見えにくいが、確かにわかることが一つ。__もうとっくの昔にリスポーンしたはずのスプリンターが、前線に戻ってこない。

 

「……何だ?」

 

 変則デッキでドアが入っていることを警戒した13は、不審なスプリンターの挙動を警戒し、崩落が始まると同時に秋葉から離れ、赤チームの一陣であるEポータルへと移動した。

 その隙に、秋葉は急いで青チーム一陣のAポータルに戻る。

 

 そして、彼はスプリンターが前線復帰しなかった理由が、理解できてしまった。

 

 リスポーンエリアの上で、膝を抱えて震えるスプリンター。彼は完全に怯えきっており、その行動からもわかるように、戦闘を拒否していた。アタッカーもよく見ると体がかすかに震えており、このまま戦闘が継続できるか不安な状態である。

 

 秋葉は、小さく息を飲む。

 戦況は、少しずつ悪くなっていた。




【現在分かっている敵陣営情報】
キャラクター
 13†サーティーン†:ガンナー
 使用カード
 ・機航師弾 フルーク・ツォイク(UR)
 ・ドリーム☆マジカルスクエア(UR)
 ・連合宇宙軍 シールドブレイカー(UR)
 ・不明(UR)
 使用メダル
 ・不明
 ・不明
 ・不明
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