【#コンパス】とりあえず、卑怯に行こうか 作:ねむりたいねこ
・ガンナーが試合を放棄
・13のメダルがヒーロースキルゲージ増加量アップ+9
・秋葉が覚醒
死から自力で立ち上がった秋葉は、ハンマーを握り締めて転倒した13の方を見る。現在の残り時間は1分45秒。あと15秒すれば、再びBポータルからDポータルまでの直線の地面がなくなる。
__皆の近くに13が来ないように、前線をCに戻す。
そう判断した秋葉は、動きの遅い足を動かして、Cエリアに13を誘導すべく、転倒状態から起き上がろうとしている13の方へ駆け寄る。
13のカードデッキは、【マジスク】【シールドブレイカー】【フルーク】【カノーネ】の四種類。回復なしではあるが、13のヒーロースキルで回復できることや、アビリティで敵をキルすればHPの半分を回復できることを鑑みると、元々必要としていなかったのかもしれない。
13のデッキのうち、カノーネはガードカードを持っていない秋葉には効果がなく、シールドブレイカーもあったところでステータスがそもそも低い秋葉にとってはさほど意味がない。
警戒すべきは、バリアを張っても大きくHPを削られてしまう【機航師弾 フルーク・ツォイク】と、行動速度を下げられてしまう【ドリーム☆マジカルスクエア】の二つ。そもそも、HAでバリアを張っても、通常攻撃をどれだけ耐えきれるかどうかすらわからないのだが。
感覚でカードの使用方法を理解した秋葉は、改めて自分のデッキを確認する。
__『手持ち花火』、『チェーンソウ』、『ドリームステッキ』、『武器商人』……武器商人以外は全部前方小ダメージだから、ガード入ってない13には刺さると言えば刺さる……のかな?
立ち上がった13は、秋葉を睨むと、吐き捨てるように言う。
「クソみてえなデッキを使ってるみたいだな。……俺様を舐めてんのか?」
「……いいや、君を侮るわけがないよ。デッキはただの事故だ」
「そうかよ。それはそれで腹が立つな。」
13はそう言うと、【シールドブレイカー】を使用して、秋葉の防御力を下げる。
そして、13は即座に二丁拳銃を向ける。
「死ね!」
「__死んでも、みんなを守るだけだ!」
銃弾をバリアで防御しながら、一歩ずつ、一歩ずつ、秋葉は13の方へと歩み寄る。
突き抜ける赤の弾丸は、容赦なく秋葉のHPを減らしていく。それでも、彼の眼の奥の闘志は、消えはしない!
もうすぐ近距離カードの間合いになるというところで、先にしかけたのは、想定外の意志の強さに若干の焦りを見せた13の方だった。
「考えんな、感じるんだ!」
「__!」
振り抜かれた近距離カード。カードが見えた瞬間、秋葉は後ろへ飛びのいた。
空振りした大ダメージカード。できたこの隙を、秋葉は見逃しはしない。
「外し……」
「あた、れぇぇぇ!」
近距離攻撃カード【ドリーム☆ステッキ】をカウンターとばかりに発動させ、秋葉は目を見開き動揺する13をCエリアの方へと吹っ飛ばす。
Cエリアに戦線を持っていきたい秋葉は、削れたHPのままためらうことなくCエリアへと向かう。
カノーネを切って着地を決めた13は、鳴り響くブザー音のさなか、盛大に舌打ちをすると、吐き捨てるようにつぶやいた。
「死にかけの癖に……!」
残り5秒で床が落ちる。比較的短距離で着地を決めたため、13の位置は丁度右手にCエリアがあるあたりだ。
……勝とうと思えば、勝てる。秋葉をキルし、Cを回収すれば、秋葉が13をキルできる手段がない以上、勝ちは確定する。
だがしかし、それでは、何故か、腹に据えかねた。
__コイツしか戦っていなくて、コイツはクソデッキで、他の野郎どもは戦ってねえのに……!
ぐしゃぐしゃの思考の中、13は誰に対するモノなのかもわからない怒りを腹に抱え、ギリギリと奥歯を噛みしめる。そして、腹の中の訳の分からない感情に対し、こう結論付けた。
__クソタンクの、悔しがる面が見たい。心をへし折れば、俺様の勝ちだろう?
そう判断した彼は、ぐっと歪みそうになる表情をこらえ、強く拳銃を握り締める。ギシリと嫌な音が小さく響き、こめかみに薄く血管が浮き出る。もはや、勝負に勝とうという気概はなく、ただ、ある種の仕返しをしたいとでも言いたいかのような、幼稚な思考が、彼を支配したのだ。
鳴り響くブザー音の中、13は迷いもなく秋葉の方へと歩み寄る。銃は構えない。構える必要はない。
距離を利用しないらしい13の行動に、秋葉は心の中で首を傾げる。
前方攻撃のフルークは先ほど使用していた。カノーネも着地に使っていたため、すれ違いざまに一撃を食らわせるということはできないはずだ。
訳が分からないが、とりあえず、好機だ。
地面がなくなった空間に吹っ飛ばせれば、13をキルできるかもしれない。火力という武器がない秋葉は、そう判断して真正面から近づいてくる13に対してカードを切る。
「【手持ち花火】!」
しかし、その瞬間、13もカードを切っていた。
「そらよ」
ほぼ同時にカードが切られたため、13は吹っ飛ばず、甘んじて小ダメージを受ける。代わりに、秋葉の表情が、ひきつった。
13が使用したカードは、【マジスク】だった。動きが遅くなり、脇を通り抜ける13に伸ばした手が、空を切る。
「そこで一生引きこもってな、クソタンク」
煽る13は、通り抜けざまバックショットを放ち、Cエリア側に秋葉を押し込む。落ちる地面を駆け抜け、Aエリアへと踏み込んだ13を見て、秋葉は、即座に、行動できてしまった。
Cエリア横の安全地帯から離れ、Cエリアへ近づいてくる崩落の音の方へ、駆け出す。
ほぼ投身自殺のような状態で虚空へと落ちた秋葉は、リスポーンすると同時に、ガンナーへ銃口を向けようとしていた13の前に立ちはだかる。
自死すら厭わない、ある種の狂気すら孕むその行動に、流石の13も表情が引きつる。
「おいマジかよ」
その言葉に、秋葉は、言葉を返さない。ただ、リスポーン地点から降り、巨大なハンマーを構えて、それを答えとした。
そして、話は冒頭に戻る。
「おいおい、冗談だろ? お前さん、何でこんな弱っちいのにタンクなんて選んだんだ?」
挑発混じりにそう聞くのは、深紅の鎌を背中に、二丁拳銃を持った男。顔の大半を黒色のマスクで隠し、ニマニマと笑みを浮かべるヒーロー。しかして、彼の額にはうっすらと汗がにじんでいる。
あまりにも諦めが悪すぎる。絶望的なステータス差でも立ち上がり続け、たとえ数秒で散ったとしても何回でも立ち上がるタンクを前に、もはや言うべき煽り文句も尽きかけている。
13の前に膝をつき、荒く呼吸を繰り返すのは、身の丈ほどの大きさのハンマーを持った少年。色白で、目の前の男と比較するのが哀れになるほど、その体は細い。
秋葉は、Aポータルをどうにかタンクの少年一人が守っている……というよりも、後ろにいるガンナーとスプリンターを守るべく、立ち上がり続けていた。。
HPバーは既に何度も空になり、3対1だというのに、この男は彼ばかりを狙って執拗なキルを繰り返した。
いや、そう言うと語弊がある。彼以外の二人は、すでにリスポーンエリアの前からうごかず、がくがくとその体を震わせるだけだった。
ヒーローアクションを使いカードキャンセルをされ続け、距離をとらされ続け、カード一枚切れない少年は、必死になって男の放つ銃弾からハンマーを盾にすることで身を守った。だが、他二人は奇妙なまでにそのような動きをせず、カードを切ることでダメージカットをはったり、何なら度々響く銃声に悲鳴を上げたりしていた。
圧倒的なレアリティの差を理解しながら、圧倒的な力量の差を理解していながら、少年はハンマー一本で目の前の男と渡り合っていた。渡り合えてしまっていた。あまりにも、精神的に強すぎたのだ。
ヒーローはニマニマと不敵な笑顔で動揺を隠し、ひたすらに狡猾であり続けることを選ぶ。ガンナーというロールを理解し、少年の攻撃射程範囲外からのみ攻撃し、Aポータルを広げきられない程度に陣を踏む。それを繰り返す。
__早く、諦めろよ! お前じゃ俺様には勝てねえだろ……?!
心の中でそう叫ぶも、少年は諦めなかった。
「ボクが、タンクを選んだのは……かっこよかったからだ!」
「え? カッコいい? ジャスティスのおっさんか、それともグスタフ? 大穴でトマス爺さん?」
目の前の男は、ジャスティスのHAの姿勢を真似して少年をからかう。だが、少年はそんな挑発には乗らなかった。
「……君が何をしようと、ボクは君にここを通らせない。仲間に、手出しはさせない……!」
「ははっ、できるもんならやってみろよぉ!」
ゲラゲラと笑い、HAのため打ちをタンクに打ち込むヒーロー。その瞬間、少年のHPは全損し、ポリゴンへと変わった。
#コンパスにおいて、デッキレートの差ほど恐ろしいものはない。
だが、デッキレートの差以前の問題であることもある。
ヒーローにとって得意でないカードを使ってしまっていること、カードの使い方を間違っていること、それに、カードのレアリティが低すぎること。
少年のデッキは、初期デッキを変えることができなかったがために、『手持ち花火』、『チェーンソウ』、『ドリームステッキ』、『武器商人』と、見事にオール
オールノーマルカードで、URデッキに勝利することは、まずできない。それでも、彼は絶対にあきらめない。
絶望的な状況の中、リスポーンした少年は諦めることなく、ただただ前を見据える。その瞳の奥に、勝利を望みながら。
その瞳の先にいる13は、どうしようもなく、ただ、気圧されているのを理解した。
__有利なのは、俺だ。その、はずなのに……!
13はAポータルに触り、エリアを狭めていく。
それでも、取りきる前に戻って来た秋葉にエリアを踏まれ、取りきることができない。
執着にも近いタンクのその行動に、13は盛大に舌打ちをする。
「いい加減、諦めろよ!! てめえに勝ち目なんざないだろうが!」
「ああ、そうさ。でも、負けたくない。勝てるかもしれないのに、負けたいわけがないだろう!」
バリアを張って叫ぶ秋葉。その瞳に、『諦め』の感情はかけらも見えない。
そうこうしているうちに、残り時間はもう後数十秒になる。
「テメエのあきらめの悪さは認めてやる。だが、勝つのは俺様だ!」
残り十秒。振り抜かれたフルークはバリアを貫通し、HPを消し去る。ポリゴンに変わって消えて行く秋葉。青ポータルは後2割で、足の遅いタンクでは、もう間に合わない。
これで、勝ちだ。心はへし折れなかったが、試合上勝ちならそれはそれでいい。
そう思って、急速にポータルの回収を進め__
その時、突然、13の手が、ポータルから弾かれる。
「……は?」
茫然とする13。彼が見たのは、デスサイズを背負い、二丁拳銃を持った、涙と鼻水でどろどろになった男。先ほどまで、戦闘放棄をしていた、ガンナーだった。
「テメエ……!」
訳が分からず、13は、ぎっと情けない面のガンナーを睨む。
しかし、ガンナーは恐怖で震える体をそのままに、涙声で叫ぶ。
「俺より小さい子が、俺より頑張ってるの見てて、何もできねえほど、落ちぶれたくないんだよ!!」
「クソがクソがクソがクソがクソが!!!!」
いら立ちのまま叫ぶ13。ノックバック付きのHAで無理やりポータルから引きはがそうとしたその瞬間、ガンナーは引きこもっていた間に貯めていたヒーロースキル__【堕天変貌】を使用する。
HSの無敵時間中は、攻撃ができない。同時に、秋葉相手に【フルーク】を使用してしまった13は、無敵時間が終わった後もガンナーをポータルから引きはがす手段がない。
__詰んだ。
13が敗北を理解すると同時に、試合終了のアナウンスが響く。
『バトル終了です』
だらりと二丁拳銃を地面に下げ13は、震える体で大鎌を構えるガンナーを茫然と見つめる。
少年の無謀で命を捨てるような献身は、別の人間の勇気を、奮い起こさせたのだ。
__『チュートリアルスキップ:13†サーティーン†戦』
勝者、青チーム 3-2
ベストプレイヤー
【現在分かっている敵陣営情報】
キャラクター
13†サーティーン†:ガンナー
使用カード
・機航師弾 フルーク・ツォイク(UR)
・ドリーム☆マジカルスクエア(UR)
・連合宇宙軍 シールドブレイカー(UR)
・反導砲 カノーネ・ファイエル(UR)
使用メダル
・ヒーロースキルゲージ増加量アップ+3(黄)
・ヒーロースキルゲージ増加量アップ+3(黄)
・ヒーロースキルゲージ増加量アップ+3(黄)