【#コンパス】とりあえず、卑怯に行こうか 作:ねむりたいねこ
・茶番回
・グスタフとニアミス
全裸ドア破壊事件という地獄のような事件のあと、私たちは残りの細かいチュートリアルを受講し、いざ実践として一番弱いバグの討伐を行うことになった。
流石にバトルとなれば衣装は着替えるらしく、『恐れるものなど皆無』な恰好からいつもの緑の軍服に着替えた忠臣は、無機質な金属製の机を指でトントンと叩きながら、私に向かって言う。
「で、何故バトルだというのに、バトルエリアに向かわないのだ?」
「事前情報もらえるのに、対策しないアホってあんまりいなくない?」
「ほう、我を阿呆だと?」
「対策する気なかったんか総帥」
そんなことを言い合う私たちが今いるのは、ドアを修理中の眠り羊……ヨウスケ君の部屋の中にいる。ドア破壊犯の忠臣とポロロッチョを胡散臭い目で見ながら椅子で足を組んでいる13は、2丁拳銃をコツコツと指で叩きながら、私の方をじろりと見る。
「何で俺様の部屋で会議してんの? よそでやれよ」
「ミツルと忠臣は食堂出禁で使えないし、廊下を占領するのもマナー違反じゃない。私たちの部屋は女子の部屋だからって遠慮されたし……」
「我の部屋は機密書類が詰まれているからな。一般人を踏み入らせるわけにはいくまい」
「ワテクシの部屋なら大歓迎なのだけれども、総帥様が嫌だって駄々こねてねェ……」
部屋から緑茶を持ち込んだアズはそう言って首を横に振る。
ヨウスケと13の部屋は、基本的に13の荷物が大部分を占領しているらしく、大量の段ボールが置いてある。中身はエナジードリンクやら未開封のチップやらが雑多にしまい込まれているようだ。
ベッドルームは別部屋であるため、二人の部屋は見えない。が、ドアが開きっぱなしだった13の部屋は荷ほどきし終わっていないらしい段ボール箱がいくつも重ねられていたのが見えていた。
不服そうな13に申し訳なさそうに微笑んだヨウスケは、体の大きさ程あるハンマーをそっと壁に立てかけながら、改めて金属製の机の上に広げた紙を覗き込む。
「とりあえず、今回のバトルについての話し合いをしましょうか。敵編成はアタッカーが2、タンクが1で接近型が多い印象ですね」
「使用可能カードはNからURまで。デッキレベルは双方20レベル固定。コラボカードは使えんようだな」
忠臣は二人掛けのソファを一人で占領するように腰かけながら、書類をつまみ上げる。横柄で傍若無人な行動ながら、彼がすると様になるのは、顔がいいからに他ならない。
土産として持ってきたクッキーを食べながら、13は首を傾げる。
「アタッカーは両方ヒーロースキルもアビリティもアクションも無し。タンクだけ周囲に回復を与える効果をアクションとして持っている、か。向こうが使えるのは通常とカードだけって、俺たちには結構ヌルゲーじゃねえか?」
「その代わりにどの子もHPが1.5倍みたいよ。結構ハードなチェリーパイなのかしら」
派手な衣装をまとったポロロッチョはそう言って顎に手を当てる。バグたちは何かのヒーローをモデルにしているのか、攻撃の間合いはある程度規則性がありそうにも見える。しかし、資料を見る限り、ステータス倍率はおかしなことになっていた。アタッカーで体力倍率が1.5のキャラクターは確かいなかったはずだ。
アズは紙を覗き込みながら口を開く。
「今回は遠距離攻撃ができる人中心でチームを組んだ方がいいと思う。具体的には、ガンナーは絶対必要ね」
「カード編成の紙どこだ? 敵のカード確認できたよな」
「我が持っている。アタッカーの一人が連撃、連撃、回復、ガード、もう一人が近距離、近距離、回復、ガード、タンクは転移、回復、回復、強化だな。カード名はわからん」
忠臣はそう言って敵陣営の上方の乗った紙をテーブルの一番上に置いた。その紙を覗き込んでみると、写真が三枚横並びに張り付けてあるのが分かった。
写真を見てみる限り、バグは黒いマネキンのような見た目であり、アタッカーは小柄なアタッカーと、大柄で何か細長い棒のようなものを持ったアタッカー。そして、先が槍になった大きな旗を持ったマネキンの姿が映っている。
三枚横並びに張り付けられた写真の下には、それぞれのロールやステータス、特徴などと一緒にカード編成が4枚並べて書いてある。
具体的なカード名は書いていないが、バグたちのカード編成はなんとなく理解できた。
グレーの4つ並んだ四角に指をあてながら、私は推測する。
「タンクの転移はドアかな? 多分回復はポータル回復のミロ―ディアか全体回復が入っていそうだよね。連撃のアタッカーはどっちかの連撃に貫通は入っているはず」
「タンク以外全員にガードが入っているなら、カノーネを入れたほうがよさそうね。タンクの強化は全体強化かしら? それだともしキルしてリス地に送り返しても、援護される可能性が高いわね」
アズは緑茶をすすりながら言葉を紡ぐ。そんな彼女に、13は問いかける。
「
「そうね……タンクに持続回復もありそうだし、余裕があったら検討でいいんじゃないかしら。」
「マストはカノーネ、アタッカーの近距離にカノーネ入ってそうだし、貫通連撃警戒目的でカウンターがあると良い感じ、ですかね?」
ヨウスケはそう言ってクッキーをポリポリと食べる。
そして、私はバトルエリアとなる場所……立体交差点のエリア図面を引き出し、最終確認作業を行う。
「メンバーは、13は確定として、後誰行く?」
「ワテクシはイデアとの相性イイから、参戦しようかしら。タンクにガードが入っていなければ、ただのカモよ♡」
「あとは、スプ来いよ。貫通連撃入ってんなら、ジャスティスモデルのソイツよりも、足で避けられるスプの方がいい」
「おっけ、13、ポロロッチョ、私ね。スプリンタータンク編成にしておくかぁ」
全員でそう同意した後、忠臣はちらりと残りの二人を見て、声をかける。
「我はバトルには出れないのか。なら、そこの二人。我とともに木っ端みじんの雑魚どもを蹴散らしに行くぞ!」
「アタッカー2人だとちょっとバランス悪くないかしら?」
狐ヶ崎甘色に転向したアズの指摘に、忠臣は首を横に振って言う。
「妖華穿突刃とドアがある。我が擬似スプリンターをすればいいだろう」
「ドア二枚ですか……偏ってはいますが、あんまり無茶苦茶な敵じゃなければ何とかなりそうな感じがしますね」
ハンマーに座ったヨウスケはそう言って忠臣の言葉に賛同する。忠臣が二人掛けのソファを一人で占領しているため、椅子の数が足りなかったのだ。
クッキーをかじり、私は口を開く。
「なら、メインのバグ戦は私たちが、メイン級じゃないバグ掃討の手伝いを3人が、って形で別れようか。」
「まあ、負けてもvoidollの保護システムが働く。死にはしないから、あまり気張りすぎるなよ。」
ソファに思いっきりもたれかかり、手をひらひらと振って言う13。その言葉に、私は親指をぐっと立てて言う。
「オッケー、死なない程度に頑張るね。」
「貴様はできるだけスポーンして来い。生き汚すぎる。」
「あー、あー、何も聞こえませーん!」
「……voidollにデッキロックされたのが悔やまれるな。今すぐにでもフルークを振り回したい気分だ。」
あきれたように言う忠臣から全力で顔を逸らし、私は逃げるようにさっさと椅子から立ち上がる。そんな私にアズは頭を抱え、ヨウスケも苦笑いする。
解散ムードになった全体に、鞘の付いた日本刀で床をついた忠臣は、不敵な笑顔で宣言した。
「愚者に死を、我に勝利を。出陣!!」
「さー、いえっさー!」
こうして、私たちは、それぞれの戦いに向かって行った。
【現在分かっている敵チームの情報】
・アタッカー(モデル:???)
近距離 近距離 回復 ガード
・アタッカー(モデル:???)
連撃 連撃 回復 ガード
・タンク(モデル:???)
転移 回復 回復 強化
バグによる試合条件
・カードは恒常URまで
・デッキレベルは双方20レベル固定
・敵陣営のステータスはどのヒーローをモデルにしているに関わらず、体力は1.5倍固定