【#コンパス】とりあえず、卑怯に行こうか 作:ねむりたいねこ
・作戦会議
・13、ポロロッチョ、朝比奈の三人でバグ討伐に挑戦
私とポロロッチョ、13の三人は、voidollの指示に従い、黒と紫に染まったポータルの描かれたパネルの前に移動する。
この空間にはちょうど少し大きめの玄関ドアくらいの大きさのパネルが大量に浮かんでおり、現状はそのパネルの7割近くが紫と黒に染まっている。他は赤か青だ。
「本日ノばとるハ コチラノ 入リ口ヲゴ利用クダサイ」
空中をぷかぷかと浮かびながら、流線型の手でパネルを指し示すvoidollに、13は二丁拳銃を持ったまま首の後ろに手を組みながら、軽口をたたく。
「へいへい、わかりましたよ。報酬は1億ビットマネーで良いぜ?」
「れべる1ノ ばぐデスノデ、報酬ハ一体アタリ 10万BMデス。三体同時出現ナノデ、一人当タリ 10万BMデスネ」
「けちけちすんなよォ、もうちょっと増やしてくれたっていいんだぜ?」
「貴方ダケ、れべる3ニ挑戦シマスカ? オソラク イブツ ガ でりーとサレルダケデショウガ」
「そいつは勘弁させてもらおう」
肩をすくめて言う13。その言葉に、私は思わず問いかけた。
「そう言えば、説明でちらっと聞いたけど、レベル3のバグってどんなの? そんなにヤバいの?」
「ヤバいっつーか、まあヤバいんだが……」
私の素朴な質問に、13は困ったように言う。
見かねたポロロッチョが、困ったように微笑んで私の疑問に答えた。
「突然やって来たバットチェリーパイなのだけれども、あの子ったらとんでもないルール破りの苦いチェリーパイでね。バグをまき散らしたかと思ったら、いきなりシステムロックを始めて、バトルに敗北したヒーローを次々使用不可能にしたの。だから、voidollの手元に詳細なデータの残っていたオリジナルヒーロー以外のヒーロー……コラボヒーローたちは軒並みロックされちゃったみたいでね。その影響で、コラボカードも使えないみたいなの」
「詳細データの少なかった新規ヒーローも一部ロックされてるみたいだぜ。あんまりたくさん戦った相手じゃねえから、記憶に残ってねえけど」
ポロロッチョと13の補足説明に、私は小さく頷く。強力なカードもあったから、少し残念だけれどもね、とつぶやくポロロッチョに、13も同意するように頷いた。
なるほど、今のところ兵長だとかデズだとかを見ないのは、そもそもコラボヒーローが今回のバグ討伐に参加できないからか。
そんな雑談を行っている間に、voidollは「ソレデハ ヨロシクオネガイシマスネ」と言って空中をすさまじい速度で飛んでいった。ゲームで見るよりも移動速度が速いような気がする。
私は改めて、紫色のポータルが描かれた黒色の画面の前に立つ。
「ステージどこだろうね」
「……つっぺる工事現場じゃなけりゃどこでもいい」
肩をすくめた13は吐き捨てるように言う。聞いた話によると、13はヨウスケとつっぺる工事現場で戦闘し、敗北したらしい。ちょっとトラウマになってんじゃん
ポロロッチョはニコニコした表情を浮かべたまま、今回の作戦を反復する。
「開始直後、サーティーンちゃんは二陣に、朝比奈ちゃんは一陣に移動。敵タンクがCにドアを使用したら、ワテクシがアミスター使って背後転移で仕留めるわ♡」
「りょーかい。体力倍率があるから、朝比奈はアタリくんのHSを有効活用しておきな。敵の前でうろうろしてるだけで火力支援になる」
「へーい。13も適宜シールドブレイカーよろしく」
そんなことを言い合いながら、私たちは、紫色のポータルマークに手を伸ばした。
__一瞬視界が歪み、やがて真っ黒な世界に飲み込まれる。voidollの強制転移とは異なる、気分が悪くなるような強制移動だ。
そうして、私たちは、バトルエリアに転移した。
水の落ちる音が、響く。
目を開けると眩しい太陽の日差しと、少し遠くにそびえたつ壁が見えた。足元は青色のエリア。壁の中央には、Cポータルが一つ。間違いがない。ここは、グレートウォールだ。
「お、今回は俺がアイサツする番か。つっても、今部屋にドアが無いから、鍵もクソもねえんだよな……」
リスポーン地点の中央で、13が頭をかきながらつぶやく。そんな彼に、私は思わず首を傾げた。
「え? もうドア直ってるでしょ。ヨウスケが新しい鍵持ってるの見たよ?」
「おいマジかよ! 鍵かけ忘れてんじゃねえか!!」
「いえ、ヨウスケちゃんがしめてるはずだから、むしろ締め出されているのじゃないかしら?」
「畜生!!」
ポロロッチョの冷静な指摘と、地団太をふむ13。これがキャラ紹介場面ってマジ?
そんな私たちとは反対に、赤エリアのいびつなマネキン三体は、うねうねと不気味にうごめき、形を変貌させる。
三体のうち、後ろ二体はそれぞれ巨大な二枚刃のチェーンソーと真っ黒な氷でできた剣を持った姿に代わる。モデルは双挽乃保とアダムだろうか?
そして、三体のうち一番前にいたマネキンの手に、旗が握られる。真っ黒に塗りつぶされてよくわからないが、おそらく、タンクのジャンヌダルクの旗だ。
「……ヒーローの能力を使えるのは、
「だろうな。しっかし、ジャンヌモデルか……あいつアビリティ使えたっけか?」
「資料には何も書いていなかったはずよ」
13の疑問に、ポロロッチョは肩をすくめて言う。明確にHAもHSアビリティも使えないと分かっているのは、アタッカーの二体だけだ。
ジャンヌのアビリティは『私が死んでも あきらめないで』という自身の死亡時に味方のHPを全回復させるというものだ。#コンパスでは何回デスしても復帰することができるため、倒さなければHAで味方を回復させられ、倒せば削っていた敵のHPが全回復してしまうというなかなか厄介なアビリティである。
「ジャスティスならシールドブレイカーがよく通るし、そっちの方がよかったんだが……」
ぐっと眉を寄せて言う13に、私は軽く手を振って言う。
「妨害カードがないだけマシだと考えようか。どうせ倒すだけだよ」
「……いいなその考え。乗っからせてもらうぜ」
何故かわからないが、凶悪な笑みを浮かべ、13は前を向く。
その時、アナウンスが流れ始めた。
『ブルーチームの皆さん、準備はよろしいですか?』
例の無機質なアナウンスの声に、13は笑顔で親指を立てる。
「良いぜ、とっとと始めな」
「失礼よ、サーティーンちゃん。いつでも大丈夫よ♡」
「準備オールオーケー!」
13のサムズアップにつられて、私とポロロッチョも親指をたてる。全員が不敵な笑みを浮かべているようだ。……多分私も、ここに鏡があったら不敵な笑みを浮かべているのが見えただろう。
『バトルの始まりです』
アナウンスのその言葉が聞こえた瞬間、赤チームと青チームの両チームが、リスポーンエリアから飛び降りる。……否、一人、赤チームのタンクだけはリスポーンエリアから『どこでも行けるドア』を使用し、直接Cエリアへテレポートした。
「御旗ヲ掲ゲヨ」
無機質な発声の直後、『Cを奪われました』というアナウンスが響き渡る。しかし、その直後、ポロロッチョのカード『紅薔薇の副団長 アミスター』が炸裂した。
「クッ、ウウッ……」
ポータルキーの周囲に対しスタンを行うその攻撃をまともに食らったタンクのバグは、スタンボイスを上げる。
「流石に回収前に刺すのは上手くいかなかったわ……美しくないわね」
「そんなこと言ってる暇あったら、敵と合流される前にとっととタンク溶かせ! 【シールドブレイカー】!」
「わかってるわよ、チェリーパーイ♡」
二陣のBエリアに向かって走りながら、そう言う13に、ポロロッチョは心底楽しそうにHAの背後転移攻撃を行う。ポロロッチョのHAの条件は、敵にダメージを与えること。アミスターのようなポータル攻撃でもヒットさえさせれば、ターゲットにすることができるのだ。
改めてすごいヒーローアクションだよな、と思いながら、私は自陣一陣のAポータルに触れる。
『Aを獲得しました』
『Eを奪われました』
連続してアナウンスが響き、どちらのアタッカーがとったのかまではわからないが、敵が一陣を確保したのを理解する。足の速さから、少し遅れて13がBポータルを確保。数秒遅れて、敵二陣のDポータルが奪取されたというアナウンスが響く。
そして、ほんの少し遅れて、ポロロッチョの勝利の雄叫びが聞こえてきた。
「ヘイカモーン♡」
『ブルーチームが敵を倒しました』
同時に響く無機質なアナウンス。そう、#コンパスのゲームは、3分間という超短時間での勝負で、コロコロと変化する戦況もかなりの魅力である。……逆に言うと、序盤に有利をもぎ取っても、逆転負けすることもある、ということなのだが。
バグタンクが回収してすぐに背後転移攻撃をしたため、そこまでポータルが広がっていなかったのだろう。数秒後にはポロロッチョがCポータルを獲得した旨のアナウンスが流れた。
「ここまでは完全に想定内。__こっから、一気に行こう!」
「お前待ちだけどな」
「それは言わない約束じゃない?」
Bポータルを確保した後、ポータルをむやみに広げないようにAポータルへ移動した13は、既にHSを貯めたのか、体が薄く発光している。今回はヒーローを近づけさせないために、ガンナーメインで戦闘を行う予定なのだ。
とはいえ、スプリンターだというのに真っ先にAポータルを回収させてもらえれば、かなりのスピードでヒーロースキルゲージは溜まる。もうすでにあと半分だ。
「サーティーン、アタッカーが来てるわ。念のため、前線移動よろしくね♡」
「了解だ!」
壁の上から声をかけてくるポロロッチョの言葉を聞き、13は前線へ移動する。私もさっさと向かいたいところだが、これからの計画に、私のHSは必須だ。ここは我慢だ。
Cエリア付近では、やって来たアダムみたいなバグとタイマンをしているポロロッチョ。13もCエリアへ向かっているが、おそらくバグノホもどきの到着に間に合うか間に合わないか、というくらいだろう。
Aポータルを広げきり、Bエリアを踏んだところで、HSゲージがマックスに溜まる。
「ヒーロースキル切ります!」
そう宣言してから、私は右手のスプリンターの模様に触れ、ヒーロースキル【モンスターサーカス】を発動させる。
このヒーロースキルは、自分の周囲にドットのモンスターを展開し、周囲に自動攻撃を行うというものだ。一定以上のダメージを喰らうと自動で解消されてしまうが、逆に言えば、ダメージさえ喰らわなければ半永久的にモンスターサーカスは展開されたままだ。
敵に即死HSを使う者がいると時々詰むのだが、今回のアタッカー二人はHSの使用はできない。カード攻撃と通常にだけ気を遣うだけで済むのだ。大変ありがたい限りである。
「目指せ5-0完全勝利!」
私は不敵に笑んで、レンガ造りの地面を走り出す。
状況は、完全に青チーム有利だった。
【現在の試合戦況】
3-2 (青チーム有利)
Aポータル 青(MAX)
Bポータル 青(3割)
Cポータル 青(MAX)
Dポータル 赤(6割)
Eポータル 赤(4割)
【現在分かっている敵陣営情報】
バグ(モデル:ジャンヌ):タンク
使用カード
・どこでも行けるドア (UR)
・回復(不明)
・回復(不明)
・強化(不明)
バグ(モデル:アダム):アタッカー
使用カード
・近距離(不明)
・近距離(不明)
・回復(不明)
・ガード(不明)
バグ(モデル:ノホ):アタッカー
使用カード
・連撃(不明)
・連撃(不明)
・回復(不明)
・ガード(不明)