【#コンパス】とりあえず、卑怯に行こうか   作:ねむりたいねこ

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 中の人は13とリリカを交互に使うタイプのプレイヤーだが、持っているカード的に忠臣が最適解という悲しみにあふれるスタイル。アバカン欲しいな……


私のチュートリアルは⁈

 気が付くと潮の匂いのする場所に立っていた。

 まぶしい日差しが全身に降り注ぎ、さざめく波の音が耳を撫でる。

 

 私は、ここを知っている。だが、来たことがあるわけではない。

 

「嘘だろ……」

 

 私の頬を、汗が伝う。暑いからじゃあない。冷や汗だ。

 

 ここは、チュートリアルの場所ではない。

 私は、ちゅら海リゾートの青色リスポーン地点に立っていた。

 

 

 

 どうやら、私のチュートリアルは文字通り吹っ飛んだらしい。

 

 

 

 

 戦々恐々としながら回りを見ると、私以外に二人の男性がいた。

 

 一人はおもちゃの銃を持ち、どこぞのニートのようにパーカーを着た男性。

 もう一人は、紺色の着物に刀を持った男性。銃刀法違反もいいところじゃない?

 見た目的にNPC(ノンプレイヤーキャラクター)ではなさそうだ。というか、こんなヒーロー、見たことがない。

 彼らは、ここにこれたことに驚きと喜びを感じているのか、あたりをきょろきょろと見回していた。

 

「あのー」

 

 私が彼らに声をかけると、二人はこちらを見て、きょとんとした表情をした。

 

 おもちゃのような銃を持った男が、眉をひそめて私に言う。

 

「お前、何だ? アタッカーかなにかか?」

「……What?」

 

 意味が分からず、私は思わず質問する。

 

「えーっと、役職って、どうやって判断するのですか?」

 

 そう質問した私に、おもちゃの銃を持った男が、呆れたように言う。

 

「何だ、お前、ガードロボの話を聞いていなかったのかよ。右手の手の甲見ろよ。マークがあるだろ? っていうか、自分で決めた役職ぐらい覚えておけよ。」

 

 私は慌てて両手の甲を見る。そうすれば、右手の甲に靴のマークが印されていた。

 

「スプリンターか……思いっきり苦手な奴引いた……!」

 

 最悪だ。私は、とにかくスプリンターのロールが苦手だ。スプリンターをするくらいならHA(ヒーローアクション)ノーコンガンナーをした方が楽なくらいには苦手だ。なにせ、ダッシュアタックが決まらないのだ。

 私の反応に、刀を持った男が、眉をひそめて不快感をあらわにしながら質問する。

 

「……お前、カードはセットしただろうな?」

「し、仕方があるのですか?」

 

 思わず私がそう聞くと、二人は明らかに面倒くさそうな表情をした。

 

「あるっての! ガードロボが説明してたろ!」

「あー、めんどくせー。思いっきり地雷じゃん。」

 

 二人はそう怒鳴ると、そっぽを向く。

 どうすればいいかもわからず、とりあえず左手でそのスプリンターのマークに触れる。すると、目の前にいきなりカードが四枚、透明な板に張り付けられた状態で、ばっと現れた。

 

「うわっ!」

 

 あまりに唐突な現れ方に、私は思わず声を上げる。

 

 セットされていたのは、『手持ち花火』と『チェーンソウ』、『ドリームステッキ』『武器商人』のオールノーマルだった。チュートリアルのデッキそのままか。

 カードに恐る恐る触れてみると、『変更しますか?』という文字が浮かび上がる。私は、ためらうこともなく「はい」の文字をタップした。いつも使っていたカードが使えるのかな?

 

 そうすると、目の前にカードの一覧が現れた。どうやら、私の手に入れたカードではないらしく、コラボカードを除いた全カードが表示されていた。空駆け……まあ、持っていなかったけれどもさ。

 

 とりあえず、役職の変更ができないかを考えるも、やり方が全く分からない。

 

 だったら、とりあえずカードの変更だけしてしまおう。

 そう判断した私は、適当にカードをスクロールする。『ガブリエル』、『全天』『秘めたる』……

 そこまで変えたところで、私は一瞬戸惑った。

 

 スプリンターって、何を使えばいいのだろう? いつもならフルークを積んで攻撃力を増すところだけれども……。とりあえず、属性変化のためにできれば赤色カードが欲しい。

 

 そんなことを考えていると、電子音が聞こえてきた。

 

『バトル開始まで、あと十秒』

「うそん、ど、どうしよう!」

 

 パニックになりかけ、私は慌てて指を滑らせる。そして、あるカードが目についた。

 それは、URの赤色カードだった。だが、持っていなかったうえに、いつも使っていたロール的にも触れたことのないカードだった。

 だが、もう時間がない。とりあえず、これでいいか!

 

 適当にカードをそろえ、私は慌てて前に向き直る。あわただしく準備をする私に対し、男性二人はすでに悠々と武器を構え、前を見ていた。

 私も、緊張を抑えるために軽く息を吐きだして、ダサい体操服の胸を抑える。……まな板と言ったのはどこのどいつだ!

 

 バトル開始5秒前といったところで、ちゅらうみリゾートに設置されたスピーカーから、突然、BGMが流れてきた。

 聞き覚えが無いわけではない。むしろ、何度も聞いたことがある。

 

 これは……

 

「『残響』……敵は桜華忠臣か。ルチアーノがよかったな……」

「やりぃ、俺の使用率ナンバーワンのキャラが選ばれた!」

 

 そう喜ぶのは、刀を持った男性。ああ、なるほどね、だから刀なのか。

 

『バトルの開始です』

 

 無機質な電子音声とともに、バトルの開始が宣言される。

 私には、不安しか残っていなかった。


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