【#コンパス】とりあえず、卑怯に行こうか   作:ねむりたいねこ

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前回のあらすじ
・赤UR『ドラゴン花火』を使用
・桜華忠臣に勝利


笑顔でさんはい(白目)

「『つまらない幕引き』で、ごめんねぇ?」

 

 青に変わったCポータルを前に、私は不敵な笑みを浮かべて言う。内心ハラハラだったが、『ドラゴン花火』がきちんと作動してくれてよかった。何か忘れてると思ったんだよ。今回の忠臣はクールタイム短縮型だったし、ドアは一番最初に見ていた。ヒントはきちんとあったのだ。……まあ、『ドラゴン花火』は本当にたまたまだったわけだが。

 

 すがすがしいほどの煽りを見た忠臣は、一瞬だけ口をポカンと開けたが、やがて口元を歪め、口角を持ち上げた。

 

「……ふっ、ふはははははは!」

 

 腹を抱え、盛大に笑う忠臣。どうした? 気でも触れたのか?

 そう思っていたが、どうやら彼は違ったらしい。

 

「いいだろう。貴様の仲間とやらになってやる。」

 

 ニッと楽しそうに笑って言う桜華忠臣。そんな彼に対し、いい笑顔で、私は答える。

 

「別に大丈夫です。っていうか、何の話?」

「……貴様、不敬だぞ?」

「いやいやいやいや、私、そもそもチュートリアル受講希望者なんだけど。本気で話の流れがつかめなくて今現状だからね?」

「……ふむ?」

 

 私の言葉に、忠臣は眉を寄せて首をかしげる。そして、ちゅら海リゾートの透き通るような青空に向かって声をかける。

 

「ぼいどおるとやら! こやつはどうなっておる!」

「カピ? 確認イタシマス」

 

 忠臣の声に反応してか、空に青色のエフェクトが発生し、エリア内にvoidollが現れる。

 真っ白なボディがリゾートに照り付ける太陽に反射して眩しいvoidollは、空間をふよふよと飛んで私の側へやってくると、首をかしげて平たい手で何かを読み取るように縦にスライドする。そして、そのディスプレイの目を動揺で揺らして、高い声を上げる。

 

「カピピッ?! 何故チュートリアル受講希望者ガコチラニ?!」

 

 voidollは私を見て、驚いたように電子音を震わせる。

 

「え、そんなの分かるの?」

 

 思わず声に出してしまった私に、voidollは首を縦に振って言う。

 

「ハイ。がいどろぼニヨル説明ヲ受講シタ履歴ガゴザイマセン。ちゅーとりあるヲ選択シテイル方ニハがーどろぼノ説明ヲ省クヨウニ設定シテオリマシタノデ、説明ノ受講履歴ガ無イトイウコトハ、何ラカノ事故ガ発生シタト考エルノガ自然デスカラ」

 

 voidollの説明に、私は、思わず表情を引きつらせる。……つまり、あの時のバグの強制転移に巻き込まれた人は、何の説明もなくヒーローとの戦闘に放り込まれている? ……すぐ近くに、私の友達もいたのに?

 

「アズは……夕凪アズは、大丈夫ですか?! 私の友達で、このバグに巻き込まれたかもしれないんです!!」

「確認中デス。……大変申シ訳アリマセン。ばぐノ強制転移ニ巻キ込マレタちゅーとりある希望者ハ三名。現在試合中ナノハ、一名。ぷれいやー夕凪あずハ、既ニげーむ二勝利シテイル模様デス。残リ一名ノ試合ヲ緊急停止イタシマ……イエ、時間切レデ終ワッテシマイマシタ。勝利シタヨウデス。」

 

 どこかほっとしたような表情でそう言うvoidoll。なるほど、アズは勝ったのか。それでも、私の口からは、どうしても不安が漏れた。

 

「怖い目に、あったりしてないよね?」

「……大変申シ訳アリマセン。 アナタ方ニ対シテ、後デ賠償ヲサセテイタダキマス。」

 

 深々と頭を下げたvoidollはそう言うと、来た時と同じように、青いエフェクトとともにどこかへ消えてしまった。

 私は、深くため息をつくほかなかった。

 

 こうして、クソダサジャージを身に纏った私は、#コンパスの初バトルを終えたのだ。

 

 

 

 

 ゲームを終えた直後、私はとりあえず、忠臣とともにチュートリアルを受けなおす。チュートリアル会場は普通の体育館を四等分にしたくらいの狭さの窓一つない広場で、板張りの地面には何もなく、中央に白色のサンドバックが一つ、置いてあるばかりだ。そのサンドバックの隣にガードロボが一体いて、どうやらこのロボガチュートリアルを進めてくれるらしい。

 

 一番最初に習ったのは、ロールの変更方法……というか、キャラクター選択だった。

 

 私の右手には今、スプリンターのあの靴のマークが張り付いている。これに触ることで今セットしているカードデッキを確認できるわけだ。ロールの変更……というよりも、キャラクターの変更方法は、ゲーム開始前にデッキ確認画面を左にスライドすることである。右にスライドすると、メダル変更画面になってしまうようだ。

 

 先ほどのゲームで私が使用していたヒーローは『十文字アタリ』。デフォルトヒーローのままであったらしい。当然、メダルは無しだ。

 バトル参加者はコラボを除いたコンパスヒーローのステータスを引き継ぐことになるらしい。オリジナルなキャラクターになることはできないようだ。

 

 ちなみに、衣装は選択可能だ。私が一番最初にジャージだったのは、学校にいたときの恰好を少しだけシステム側がいじったらしい。もうちょっとカッコイイ格好にしてくれても良くない?

 

 ひとまず、いつもゲームで使用しているキャラクター、デルミンをキャラクターとして選択する。それを見た忠臣が、残念そうに眉を下げた。

 

「何だ貴様、アタッカーを使うのに、この我を選ばないのか?」

「HAが苦手なんだよね。当たったためしがない。」

「下手くそか。」

「さっきの試合でHA外した人は黙っててくれますー?? 後隙が嫌いなんですー。」

「ほう、再戦を希望か? すぐにでも叩きのめしてくれよう!」

 

『ピピピ……リカイ フノウ』

 

 今にも殴り合いを始めそうになった忠臣と私を前に、ガードロボが呆れたように機械音声を流す。その音声を聞いて、私は咳ばらいをして、首を横に振った。

 

「うん、とりあえず、キャラクター変更はできたね。で、これで、どうやって攻撃するの?」

「普通に殴る蹴るをすればいいだけだ。しすてむとやらのせいで、首を切っても一撃で殺せんのは、やや不可解ではあるが……」

「うーん、物騒……」

 

 忠臣の台詞に、私は思わずそう言いながら、ガードロボが用意してくれた電子サンドバックに軽く拳を当てる。ヒーローとしての特性か、かなり軽く体が動き、そのまま二撃、三撃と拳が流れるように動き、四発目、少しのタメ時間のあと、強い一撃が加わった。

 

 ぱしん、と大きな音が鳴って、サンドバックが大きくノックバックする。無限と表記されたサンドバックのHPも、今回ばかりは少しだけ減少し、持続回復でじわじわと回復していった。

 そう、これこそがデルミンのアビリティ『秘奥義・デルミンしゅーと』である。デルミンのプレイングは簡単。HAの瞬間高速移動で敵に近づき、拳で仕留める。それを繰り返すだけだ。……しかし、ここで問題が出てきた。

 

「……HAの高速移動って、どうやるの?」

「む? 貴様、さっきは普通にだっしゅあたっくができていただろう?」

 

 不思議そうに首をかしげる忠臣。ヒーローアクションについては、ガードロボも説明が難しかったのか、「がんばればできます」とだけ言われ、私は茫然とすることしかできなかった。そんな私に、忠臣は刀を鞘から抜いてあっさりと言う。

 

「まあ、一度実地で試してみればいいだろう。__喰らうがいい!!」

「うわぁぁあああ?!!??」

 

 唐突にフルークのカードを発動し、近距離攻撃を放つ忠臣。反射的に私は後ろに向かって瞬間移動し、近距離カードの間合いから逃げ出していた。

 素振りと化したフルークに忠臣は小さく舌打ちをするも、肩をすくめて言う。

 

「何だ、できたではないか」

「殺す気か!!」

 

 バクバクと激しく動く心臓をそのままに、私は思わず忠臣に叫ぶ。彼はただ「はっはっは」と高笑いするばかりだ。ふざけるな、後で覚えてろ……!

 そして、理解した。今の私には、デルミンは使えない。

 

 緊急回避はできると判明したが、デルミンのように瞬間移動を繰り返すことで擬似スプリンターのようなことをすることができない。そうである以上、強みはかなり失われてしまうのだ。一番得意なヒーローが使えないと分かり、私はがっかりしてしまった。まあいいか、とりあえず、他のヒーローも試してみようか。

 

 

 ……数分後、既に飽きて体育館の壁に寄りかかって眠っている忠臣の脛を蹴る。

 

「?!」

 

 敵襲を警戒した彼が振り下ろした日本刀を『ディーバ』で受け止め、私は、頭を抱えて叫んだ。

 

「スプ以外全部できないんだけど?!!??」

「貴様、いい加減消し炭にするぞ?!」

 

 脛キック(1ダメ)を喰らった忠臣は、額に青筋を浮かべて私に向かって怒鳴る。待ってくれ。私は今、それどころじゃないんだ。

 嘆き悲しむ私を置いて、ガードロボは無言で忠臣に向かって先ほどまでのチュートリアルのリプレイを見せた。

 

 デルミンがダメだと判明してからすぐに、ガンナーに転向。結果は、通常攻撃が動きもしないサンドバックに当たらず、断念。

 タンクに転向するも、重量武器のジャスティスのハンマーは持ち上がらず、ヴィオレッタのオルガンは弾けず、トマスのトランクは言うことを聞かず、ジャンヌのHAはできず、おまけにグスタフはHAができなくてあえなくナタデココと化した。初のデスが自爆って何?

 

 私がナタデココとなる場面を見た忠臣は、一瞬茫然としたものの、頭を抱えてうずくまった。え、何? 私の心配してくれた?

 

 そう思ったのもつかの間、彼の口から、怨嗟の声が漏れた。

 

「我は、こんな雑魚に負けたのか……何たる屈辱……!」

「めちゃくちゃ失礼!!」

 

 

 

 

 すべてのチュートリアルとチュートリアルスキップ者のバトルを終え、voidollは小さくため息をついて、ガードロボからの報告を受け取る。そして、がっかりしたようにつぶやいた。

 

「カピ……ニンゲンハ 無駄ガ好キ……知ッテハイマシタガ、ココマデトハ。……期待値ヲ、下方修正シテオキマショウ」

 

そう呟いたvoidollは、記録したデータを反芻する。

 

 

 バグによる転移人数 1324人

 

 チュートリアル受講者 820人 

 チュートリアル受講者の勝率 72.844% 戦闘継続拒否者 22.451%

 理由の抜粋

 ・人を殺すことにためらいが出た

 ・戦闘に向いていないと判断した

 ・仲間と協力し合うことができないと判断した

 

 チュートリアルスキップ者 211人

 チュートリアルスキップ者の勝率 3.246% 戦闘継続拒否者 93.825%

 理由の抜粋

 ・戦闘に向いてないと判断した

 ・キルされることに耐性が付いておらず、トラウマとなった

 

 戦闘拒否者 290人

 その他 3人

 

 特筆事項

・チュートリアルを希望したものの中で、ウィルスの乱入により強制チュートリアルスキップを引き起こされた事案が発生。それによって3名がチュートリアル及びガードロボによる設定作成、ルールチェックが終わらぬまま試合に巻き込まれた。しかし、3名とも勝利し、トラウマになることなく戦闘継続を決意。

・チュートリアル受講者はゲームに敗北しても戦闘を継続する意思を見せたものが多かったが、チュ―トリアススキップ者は多くの場合戦闘継続を拒否した。

 

 結論

・転移者の保護を最優先に、バグの掃討を進める必要がある。よって、サポートAIシステムの確立、修正が必要であると判断。プログラム構築を急がなくてはならない。

・転移者のうち戦闘継続の意思のある人間は、『絶望』に弱い。できるだけ『希望』を見せ続けるべき

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