我らエンリ将軍閣下が配下!   作:セパさん

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ドワーフの鍛冶職人達

 カルネ村を閃光が包み込み、遅れて爆音が轟く。それはエンリも何をしているか知らないドワーフの鍛冶職人達の工房からで、爆風と共にドワーフの1人が工房から吹き飛ばされ、四肢が飛散し内臓が漏れ出す重体の様相を呈している。幸いドワーフには息があり、エンリが駆けつけた頃にはゴブリン神官によって治癒魔法が施されていた。

 

「儂に構うな!(ふいご)を絶やすな!」

 

「だ、大丈夫ですか!?他に怪我をしている方は!?」

 

 エンリはゴブリン神官や魔法支援ゴブリンに囲まれ治癒されるドワーフに声を掛けるが、顔は興奮に滾っており、痛みなど全く感じていない様子だ。

 

「神じゃ!神を見た!ちがう、見たか!神を造ったのじゃ!いや、それも違う!正にあの方こそ神だったんじゃ!」

 

 目を爛爛と光らせ充血させるその姿は、完全にエンリが理解出来る精神状況ではない。中にもけが人……下手をすれば死者までいるのでは無いかと思うと気が気でない。

 

「わ、わかりました!それよりもけが人はいませんか!?もうすぐ治療が終わります!交代で怪我している方を……。」

 

「感謝する!神を見る前に朽ちるところじゃった。安心してくれ、最後の鑿の一撃下した儂だけじゃ!あとは唾でもつければ治る!ではな!」

 

 そう言うと四肢が戻り、応急処置を終えただけのドワーフは一目散に工房へ走り出してしまった。村の恩人たるゴウン様からドワーフ達がどんな事をしているか詮索は禁じられている。最近は爆発音も無くなり、穏やかになったと思っていたのだが……。

 

「将軍閣下、中の様子を探りましょうか?」

 

 何時もならば即座に却下するゴブリン暗殺隊の進言だが、村を預かる長として、生き死にまで関わっているとなれば悩んでしまう。そんなエンリに……

 

「うひゃー!凄い爆発だったっすね~。わたしも変な声上げそうになったっすよ~!」

 

 ……こんな不慮の事態に打って付けの人物が現れた。

 

「ルプスレギナさん!中に居るドワーフさん達が無事かどうか、確かめてくれませんか!?わたしでは出来なくて!」

 

「ああ、誰も死んでないみたいっすね。あのドワーフぐらいっす。見てて爽快なくらい弾け飛んだっすね~。まぁあれが生きてるなら大丈夫じゃないっすか?」

 

「そう……ですか。よかった。」

 

 何処か事態に関して温度差を感じるが、死者も死に至る怪我人も居ないならば、また夕食かその後くらいに顔を出してくれるだろう。治療はその時にすればいい。エンリはとりあえず、祈る事しか出来なかった。

 

 

 

 ●

 

 

 

「どじゃ!?どじゃ!一文字を、あの一文字を!失われた文字を儂は刻めたのか!?」

 

「成功じゃ!見ろ90のルーン、どれでもない新たなる文字じゃ。これは伝説と言われる裏文字か……はたまた神位文字か!」

 

 奇跡の始まりは偶然だった。魔導王陛下の御名前をルーン文字風で掘ってみようという軽い遊びだった。〝アインズ・ウール・ゴウン〟その最初の文字を刻もうとした瞬間に、異変は起こった。

 

 二画で終わる最初の文字。その一画目を刻んだ瞬間、かつてない魔化が起こり、鑿で刻んだ文字は龍の血を表すが如く赤紫に燃え上がった。その瞬間訪れたドワーフ達の緊張と興奮はかつて無い程のものだった。

 

 神域を見た者はその魂を冥府へ引きずられると解っていながら、一撃を打ち込む手は止められない。鑿の焦点はズレ、木槌はガタガタと震えていた。精神を集中させ、覚悟を決めるのに2時間ほど。職人の手によって打ち込まれた一撃は、こうして文字となり、錬成された鋼は死を司るほどの強力な力を有した。

 

「一文字でこれじゃ……。しかし、これは……。」

 

「ああ。文字の力が強すぎて武器として錬成出来ん!なんたることじゃ!」

 

 神域へ近づいたと思えばまた別の問題が発生した。自分たちが刻み魔化した力を扱い切れないのだ。ドワーフ達は悔しげにボロボロの膝を拳で叩く。

 

「ちゃ~っす。何かすげぇ爆発してたっすけど生きてるっすか?」

 

「ああ、赤毛の娘っこ。今魔導王陛下の御名前をルーン文字で刻んでおったんじゃが……」

 

「――アインズ様の御名を?」

 

 ルプスレギナの声色が刃を宿し、顔が不快気に歪む。

 

「そうじゃ!そうするとなんと!伝説の神位文字となったではないか!正に魔導王陛下は神だったんじゃ!」

 

「マジっすか!?アインズ様やっぱパネーっす!」

 

 だがそれも一瞬で、態度がコロっと変わる。

 

「で、で!どんな感じっすか!?……って一文字じゃないっすか。アインズ様の御名前はもっと長いっす。」

 

「ああ、一文字刻むのが精一杯じゃ。挙げ句儂らではルーンを刻んだ鋼を武器化出来ん。まだまだ研究が必要じゃ。」

 

「ふーん。まぁよく解らないっすけど、武器にならないなら意味無いっすね。」

 

「いずれ全ての文字を刻めるか、実用化出来れば改めて魔導王陛下へ報告する!それまで待ってくれ!」

 

「あ~、解ったっす。まぁ頑張るっすよ~。」

 

 そのまま興味を失ったルプスレギナは姿を消した。ドワーフ達は自分らが伝説の1つに辿り着いた歓喜に打ち震えていた。








<超蛇足>
 アインズ様の御名(AINZ OOAL GOWN)をルーン文字(この世界じゃない北欧の)にするとマジで北欧神話の最高神オーディーン・終わりと始まり・世界樹ユグドラシルを意味する文字になったりします。ま、まさかアインズ様は最初からここまでお考えとは!?
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